【感想・ネタバレ】基礎情報学 : 生命から社会へのレビュー

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Posted by ブクログ

タイトルは「情報学の基礎」の意味ではなく「基礎情報の学」。”情報”の統一的な基礎付けをしようという意欲的な著作。だから、油断して読みだすととたんに迷子になること請け合い。

情報といえば、シャノン=ウィーバーの情報理論なのだけど、あれは情報の定量化による通信可能性に関する理論であって、情報の持つ意味内容にはいっさい手をつけていない(だからこそ情報を定量的に取り扱うことができた)。でも、情報とは何かという根本的な問いを立てたのなら、それが含有する意味内容、そしてそれが与える影響にまで踏み込無必要がある。

というわけで、西垣の基礎情報学になるわけだけど、ここで西垣は情報を「それによって生物がパターンをつくりだすパターン」と定義する。一般的な情報の理解とはかなり異なる定義だが、それは情報が持つ意味内容までを包括した理論化を目論んでいるから。意味内容の視点から考えるのであれば、必ずそれを受容し利用する生物の存在に行き着かざるを得ない。「生命から社会へ」という副題の意味はそこにある。

そして、こうした情報と生物との関係を記述するために、西垣はオートポイエーシス理論を援用した分析を試みる。マトゥラーナ=ヴァレラが提唱した自律的・自己言及的な生命システム像であるオートポイエーシス理論は、生物の構成を閉鎖的なもの、外的な刺激とその反応の連鎖として捉える。その後ルーマンによって社会学・システム論に応用されるのだけれど、西垣はそこに情報を位置づけることで、生命に対する意義を見出そうとする。

ここまででも相当に普通の情報学とは違って理解が難しい。続編の「続 基礎情報学」はこれに輪をかけて難しい。そもそも、西垣の主張、構想の妥当性も正直良くわからない。それでも情報の統一的な基礎付けを行うという挑戦には夢があるし、好奇心も刺激される。


【読書メモ】
・情報とは「それによって生物がパターンをつくりだすパターン」
・情報は生命の世界認知活動「意味」と関わるはず→しかし情報工学は意味を排除する方向に。
・社会は「人」の集まりではなく「コミュニケーション」を構成素とするオートポイエティック・システム
・近代は「機能的分化社会」→それぞれのサブシステムの中でコミュニケーションが自律的に生成消滅し、意味が伝達
・マスメディアは「現実ー像」を提供→現実に一定の解釈をほどこし、斉一的な「説明」として人々に提示される一種の虚像

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2011年12月11日

Posted by ブクログ

10点

生命現象に見られる「情報」(西垣先生はこれを「パターンを作りだすパターン)」と定義)から社会に氾濫する「情報」(機会情報)に至るまで「情報」とはは何かという根本的な問いを発し、その「情報」によって私たちはどのような影響を受けているのかといったことまでを見事に暴き出した素晴らしい本。西垣先生はまだこれは始まったばかりの試みであり、「基礎情報学」の完成には程遠いとおっしゃっている。次にでる「基礎情報学」の本が楽しみで仕方がない。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

根本的なところの情報科学について語っている数少ない本。少なくとも、流行に乗って出版された本ではない。
内容はきわめて難しく範囲はとてつもなく広いが、情報という概念を知る上で重要であると思う。同時に現在の薄っぺらい情報化が感じられる。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

社会情報学ないしは情報社会学なる分野は未だ確立されていない。社会学方面、工学方面からのアプローチに加えて、医学生理学方面からのアプローチが足りないのが一因か?

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2015年12月23日

Posted by ブクログ

基礎情報学の入門書、「生命と機械をつなぐ知」を先に読んでいたので、内容的にはすでに大体のところは把握済みだった。入門書と同様の内容が丁寧に書かれている。最後はインターネットシステムについての可能性について述べられて終わる。この本は2004年出版のものだから、入門書の方が基礎情報学としても先に進んでいるわけだ。

基礎情報学とは、オートポイエーシスという生物学の考え方を情報学に応用したものという認識だったが、この本を読んでみると、むしろルーマン社会学を情報学向けに考察しなおしている感じが強い。

内容としては、観察者のところで混乱した。具体的には「社会観察者はその機能に直接関連して専門的に活動している者ではない」というところだ。あれ?社会システムでコミュニケーションを行ってる心的システムは観察者だとばっかり思っていたのに…。でも、よくよく読んでみると、どうやら観察者≠社会観察者のようだ。観察者=コミュニケーションの参加者の心的システム、社会観察者=ジャーナリストの心的システムということで、ひとまず理解しておく。

次は、続 基礎情報学を読んで、基礎情報学がどのように発展していくかみていくことにする。

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2014年12月12日

Posted by ブクログ

情報の「本質」は生命による「意味」作用であり、意味を表す記号同士の論理的関係性やメディアによる伝達作用は派生物に過ぎない。情報の「意味」とは、生命システムにおいて発生し、伝達されるものである。そして本書で取り上げている「基礎情報学」は、世界を「情報」から眺め、かつ従来の情報工学や情報科学では扱いが難しかった、意味の世界を探る学問である。その背景には、近年のテレビやマルチメディアによる各種表現の広がりによる、これまでのテクストのみによる情報伝達及び意味処理形態の限界などがある。

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2014年04月06日

Posted by ブクログ

関連本二冊目だけどむしろ疑問が増えた。 1. 「階層的」自律システムの制約強すぎないか? 2. 社会システムの説明あたりで、急に現象論的で場当たり的になってる気がする。 3. 観察者や相互作用の辺り良くわからない。写像・要素・作用素とかでシンプルに出来ない?

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2013年11月16日

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