【感想・ネタバレ】科学者が人間であることのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年07月14日

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科学的とは多くの場合数字で表わせると いうことです。

東京への一極集中は、生きものとして生きるとい う生き方を許しません。しかも、多くの発信が東京からなので、社 会としての価値観や生き方の選択が東京で決められてしまうことに なります。北海道から沖縄までさまざまな自然の中でそれを生かし た...続きを読む暮らしを作っていくことが、「ヒト」としての豊かな暮らしにつ ながるのに、です。

生命誌の立場から、 一極集中は改めなければならないと言えます。

科学が明らかにしてきた知は放棄しない。しかし同時に、大森の示したような二元論 に基づく「科学」では、痛みや美しさの感じなどが語れないことは明らかなのですか ら、科学だけで世界を理解することはできないとする必要があります。

科学はすべてに答があるとするものです。しかも最近 は、答えるのがよいという風潮がありますので、答のない問いを問い続けることを大切 にしません。そのために、心は最もわからないものと思いこむのではないでしょうか。


ところが日本が近代科学を取り入れた時に、その基本にあるキリ スト教が多くの人々に受け入れられることはありませんでした。日 本の風土として培われた、自然の中に多数の神を見る文化は一神教 とは合いません。しかし、先進国となるためには、ある意味キリス ト教の申し子とも言える科学は、取り入れなければなりませんでし た。

このような考え方には、熊楠の日常にあった仏教が生きているよ うに思います。事実熊楠は、「科学哲学は仏意を賛するものとでも 見て」と言っています。西欧の科学を知識として学ぶだけでなく、 自身の中に取りこみ、それを仏教と組み合わせて新しいものを生み 出そうとする心意気が見えてきます。熊楠は科学を仏教の眼で見よ うというだけでなく、仏教も科学に眼を向けることで隆盛すると考 えています。

そのためにはまず、自然科学者であっても人文・社会科学を学ば なければいけないというのが当然言われることでしょう。

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Posted by ブクログ 2020年04月03日

上品で淡々とした筆致だが、考え抜かれた言葉と表現。そして、根底にある信念。見事な本であった。個人的には、宮沢賢治についての、本当の幸せ、本当の賢さ論が発見であった。

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Posted by ブクログ 2014年01月25日

自然科学の分野に限らず、社会科学の世界でも同じことが言えるのではないかと思う。
専門分化が進むと、全貌が見えにくくなり、何のための学問であるのかを「人間学」として振り返り自問する。
ただ、商業ベースに乗らないこともあり、それが社会に理解されたとしても進歩と捉えられることはないのだろうと思う。

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Posted by ブクログ 2014年01月10日

著者もあとがきで記しているが、あたりまえのことしか書いていない。あたらしいことも書いていない。「科学者は科学者である前に人間でなければならない」と繰り返し主張している。
実際は、研究者の世界も「経済効率優先で科学技術はそれを支えるもの」となっている。現代の世界観は要素還元から成立しているが、要素のみ...続きを読むに注力しては全体像を見失ってしまう。
「木を見て森を見ず」と言うではないか。これからの科学は常に「森」を見ていなくちゃいけないのだ。

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Posted by ブクログ 2013年10月30日

科学者ではない自分は、「科学」をどう受け止めるか、という点を中心に読んだ。

また、科学者の社会的役割についての筆者の見解もよかった。


前半部は読みやすく、後半部は少し読みにくかった。
再読・精読したい。

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Posted by ブクログ 2024年03月29日

今まで読んだ本とは異なる雰囲気でとても楽しめた。具体的な例で中村桂子さんの主張がより明確に伝わり、納得できる部分も多くあり、共感できた。普段は便利な世の中で生き、なかなか気づかない「生きものとしての感覚」についても改めて自分の五感を用いて判断し、責任を持つことが大切と分かった。最新の科学や数字に頼り...続きを読むがちな世の中で、「生きものとして生きる、『自律的な生き方』」ができればなと思う。

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Posted by ブクログ 2021年08月29日

言葉は優しいが、厳しい問いかけである。「役に立つ」研究への「選択と集中」が、何をもたらしているのか。研究者が本来持つべき資質とは。

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Posted by ブクログ 2013年11月26日

科学は数値化し、そして死物化する。数値化を否定すると科学のいろんなところが問題になるが、そうではなくて死物化を問題にする。
研究者であっても人間であり、人間はまた生きものである、という、当たり前ではあるのに何か忘れられたようなことを、もう一度取り戻せ、ということを再三訴える本。キーワードは「重ね描き...続きを読む」「日常感覚と思想性」「環世界」あたり。言われなくてもわかっている、つもりだけれども…

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Posted by ブクログ 2013年11月12日

最初の方は、あまり印象に残らず一般的なことになってしまっている。中盤から具体的な記載で面白くなってくる。ただ、和辻の「風土」の引用など、現在の多様化の世界ではどうかな?というような引用もある。
 卒論に使うのは難しく、随筆として読むのがいいであろう。

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Posted by ブクログ 2013年09月25日

大風呂敷を広げておられるので、最初は何が言いたいのかよくわからなかった。
最後まで読み進むことで、また、生命誌科学館の試みを読むに至ったところで、ようやく著者の意図しているところ、著者の活動がぼんやりと理解できる。
音楽家が演奏という形で我々に身近なものになるように、科学もまた奏でることで、誰にとっ...続きを読むても魅力あるものになればいいなと思います。
ただ、すべての科学者が死物を扱っているようにも思わない。
iPs細胞の山中教授はむしろ著者の語られるような「人間らしさ」を持ち合わせた科学者であるような印象があります。

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