【感想・ネタバレ】街場のアメリカ論のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

内田樹による、アメリカ論。ただし、誰一人アメリカ問題の専門家がいない講義の中で生まれた本。
それでアメリカ論が成り立つのか、と言えば、実に様々な角度からアメリカの持つ病巣を暴き出してくれる。

アメリカ特有のジンクスである、戦争をやって負かした国がその後同盟国になるという成功例。
その文脈でベトナム戦争やイラク戦争を見れば、私たち日本人の目線から見た「戦争」とは、全く違うものに見えてくる。

あるいは、ヨーロッパから引き継いだ子ども嫌いの文化。
マルクスが産業革命後のロンドンで見たように、子どもは搾取の対象だった。
アメリカには、自己実現を妨げる者は排除べし、という共通理解がある。
子どもが親にとって、自己実現の妨げになったとしたら?
そのような文脈を今まで読んだことがなかった。

訴訟大国アメリカ。
身に起こる様々のトラブルについて、事前に回避する能力を育てるのではなく、他者を責めることで問題を解決しようとする。
そういう人は、自分の失敗から学習するということがないし、社会人として成熟するよりむしろ常識がなく、不用意な「幼児」である方が多くの利益を得られる社会(マクドナルドのコーヒーで火傷した裁判や、「ライト」なタバコで肺がんになった、騙された、と訴えた裁判など)。
自己責任大国アメリカでなぜこういう場面だけ自己責任が問われないのか、本当に不思議。
ともあれ、単純に「アメリカでは弁護士が多いから日本でも弁護士を増やそう」などという単純な論説に対して、内田さんはいや、そもそも…という話をする。
この本の元になった話は2003年だそうだ。もう20年も経つアメリカ論がいまだに有効であることは、内田さんの文章が些末な事柄にこだわるものでなく、「アメリカという国がいくら変わっても変わらない点」を200年前に生きたトクヴィルに向けて書いたものだからである。
このような射程の長い文章は、物事の本質をきちんと捉え、誰にでも分かる論の組み方でないと書けない。
こんなものの考え方ができ、こんな文章を書いてみたい…

0
2022年01月15日

Posted by ブクログ

こんなアメリカ論を、大学の授業で聞いてみたかった。様々な視点から、アメリカがなぜこのような国になったのかを論じていて面白い。
「日本人は従者の呪いにかけられており、アメリカ人に対して倫理的になることができない。」という病識を持つことが、未熟から成熟へ移行していく上で欠かせないことを気づかせてくれる。
さすが、内田樹先生である。

0
2020年01月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ファストフードやアメコミ、統治システム、サイコ(シリアルキラー)などなど、いつものレヴィナスではなく、トクヴィルというフランス貴族の「アメリカにおけるデモクラシーについて」という著作をもとに書いたアメリカ論。トクヴィルの著作は19世紀のものにもかかわらず、底から読み取れるアメリカという国の本質がほとんど建国当初から変わっていない事に驚き。

0
2014年03月02日

Posted by ブクログ

「アメリカの映画やドラマに出てくる子どもは(性格が)かわいくない」とか「アメリカは身体加工への抵抗がきわめて希薄な国である」とか、読みながら、なんか分かる~と実感することばかり。
アメリカは、イギリスからピュアなものだけを持ってきてポンと出来上がった新しい国なんだ、ということを改めて認識。イギリスで歴史を積み上げて作り上げたものをポンと持ってきてできた理想の国・アメリカがだんだんいびつに歪んでゆく様が、出来上がった原子力の技術をポンと持ってきて破綻しかかっている日本の原子力発電に妙に重なっている気がする…。コワイコワイ。新しいことも大切だと思うけど、やっぱり積み重ねられてきたものも大事しないと、ということを感じました。

0
2012年11月14日

Posted by ブクログ

アメリカ社会の問題点の根幹がよく分かった。
今後の日米関係を考察する上でも、念頭におきたい事象にあふれていた。
満足度9

0
2011年11月26日

Posted by ブクログ

 街やメディアにあふれる情報から、アメリカの深層心理を探り出す刺激的な本です。どの章を読んでも、漠然と感じていた理由をクッキリと描き出してくれる。扱う内容は、スローフードとファシズム、アメコミ・ヒーローが象徴するもの、アメリカの統治システム=「多数の愚者による支配」=建国時の理念をより維持できるシステム、アメリカが対外戦争を好む理由〜内的戦争による没落、子供嫌いの文化、連続殺人〜「子供嫌い」と「うちのママは世界一」の間、身体と性〜メッセージとしての下層階級の肥満、福音主義〜「人民の人民による・・」宣言は「under God」、訴訟社会〜「他責」が政治的に正しい国、等々。著者は、170年前のフランス人・トクヴィルを意識し、いくら変わっても変わらないアメリカ人論を書くことを目指しています。それによって、日本人が無意識的にアメリカに対してとる心的態度を意識することを問いかけています。

0
2014年06月08日

Posted by ブクログ

とっても読みやすかった。

それもそのはず、この本の読者の対象はトクビルだから。
トクビルが読んでも理解できるように書いたそうです。

こういうところが、内田さんらしくて好きです。
このような考えで自らの著書を書いている人は
トクビルと内田さん以外にいるのでしょうか。

アメリカについて一から学習したい方にとって
とてもお薦めの一冊です^^

0
2011年10月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「アメリカという国の構造」と「日本がアメリカをどうみるか」について論じてある。
「アメリカという国の構造」については、歴史的背景や宗教に基づくアメリカ人の考え方をベースに語ってあるので、全体像が掴める。
興味深いのが、アメリカは理想国家として既に存在しているというところからはじまったということ。ということは最初が100で後は下がっていくしかないということになると思うのだけど、確かに現在のアメリカはそんな状況になってきてる。そんな落ちていくアメリカなしに国のあり方について語れない日本はどーすればいいのか?
それを考えるために筆者が提案しているのが、アメリカという国をまっすぐに見つめるということ。日本は戦争経験からアメリカと言う国だけをまっすぐに見れていない。自らよりも大きくて然るべき国と思っているから、アメリカという国を理解できなくても当然だと思っている。
そんな日本人のアメリカ観をぶちのめすために、現在の日本がアメリカをどうみているか、どのような見方をするべきなのかを考えさせてくれます。

筆者の専門がフランス文学というところも私のおススメポイントです。
アメリカの専門家にはできない視点から読みやすく楽しく語ってくれるのがいいです。
内田先生みたいに、専門外領域についても、専門を活かして積極的に論を展開してくれる学者さんがいると、文学部がもうちょっと盛り上がるんじゃないかなあって思います。

0
2011年09月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

西漸志向というキーワードに集約されるアメリカの国民性。従属国としての日本はアメリカの没落にどのように対処するべきか。個人として生き残っていく戦略を考えるための土台としての一般論がこの一冊に集約されていると思った。

0
2011年06月11日

Posted by ブクログ

『日本辺境論』の前奏曲。
間違って目のウロコ取り器を買ってしまったのかと思った。ボロボロ。
例えば、日本のアニメヒーローがみな「純粋な心を持った少年にしか操縦できない巨大ロボットで悪を討つ」という枠組みになっている、という指摘。
鉄人28号やガンダムが象徴しているものとは。アメコミヒーローと対比することで浮かび上がる日米の歴史や歴史観の新たな側面に興奮の連続。
他にも、ファストフード、政治、戦争、児童、連続殺人、身体観、宗教など盛りだくさん。

0
2011年06月08日

Posted by ブクログ

考えてみれば、今までアメリカ論みたいなのってアメリカ人か日本人からのものしか見たり、聞いたりしたことが無いと思う。この本では、フランス人のアレクシス・ド・トクヴィルの本が紹介されており、時間が経っても斬新さを感じる意見が述べられている。アメリカ建国者たちは権力者を信用しておらず、間違うものとして彼らの民主主義を作り上げた。その慧眼には本当に感心する。それらが機能し今の発展があるのであろう。普通の国のように歴史的な建国ではなく、理念だけを掲げて国を作り上げた自信の結果、宗教までも理念で広げていった。キリスト教が今日広く米国で信じられていることがよくわかった。
最後にショックであったのは、今でこそ子供の人権云々を主張するが、西洋の文化はもともと子供嫌いということがあるということだ。この本でアメリカの思想的なことについて知識を得たという以上のことが分かった。アメリカに対する感じ方、思いを変えるのに十分な本である。

0
2010年12月04日

Posted by ブクログ

久しぶりに内田本を。

アレクシス・ド・トクヴィルに献呈するという
記載から始まっているので、いつもの内田節
と違うのかな?と思ったけれど、そんなものは
杞憂に過ぎなかった(笑)。
ページをめくるそばから、いつもの内田節が
さく裂!

のっけから、この本を書くに至った経緯の中で、
うおっしゃる。

“私はもともと仏文学者であって(今ではその
名乗りもかなり怪しいが)、アメリカ史にも
アメリカ政治にもアメリカ文化にもまったくの
門外漢である。非専門家であるがゆえに、どの
ような法外な仮説をたてて検証しようとも、誰
からも「学者としていかがなものか」という
隠微な(あるいは明確な)圧力をかけられる心配
がない。”
“この立場はアメリカを論じる場合には、単に
「気楽」というのを超えて、積極的に有利な立場
ではないかと思い至ったのである。”

この割り切り(と言うか、開き直り?)ぶりが、
ある一定の読者層をとらえて離さない理由の一つ
なのはまちがいない。

そして、この一冊は、うんうんと頷くことよりは
「うわー、そう来たかぁ!」と思うことが多かった。
そのうちの一つが、アメコミを題材にした第3章で
展開したアメリカン・ヒーローが象徴するものと、
日本のヒーローのそれとの比較。
そんなのアリ?と思いつつ、最後は納得してしまう。
また内田マジックにやられた。


そう言えば、偶然にも昨日(5月29日)の朝日新聞
土曜版beに、内田センセイの凛々しい姿が。

0
2018年12月08日

Posted by ブクログ

単にアメリカの文化、習俗を解説する本ではなかった。現代日本を知るための他者としてのアメリカ。アメリカなくして現代の日本はない。アメリカという国を具に観ていくことでこの日本をより深く知る。そのためのアメリカ論。
そういう理路に根差した本だった。
内田先生の炯眼が光る。
合点のいくアメリカの捉え方。そしてそれはそのまま日本という国のあり方の理解、再認識に繋がっていく。

0
2014年06月03日

Posted by ブクログ

内田先生の本は定期的に読むんですが、何を期待してるかと言うと、
コンテンツではなくマナーなんですよね。
話の内容もさることながら、ものの考え方を学ぼうということです。
ものの書き方や、悪口の言い方なんかもけっこう学べます。

で、今回のアメリカ論なんですが、元ネタは2003年の授業だとか。
10年経った今でも十分にリーダブルでした。
つまり、本質にかかわる記述が、分かりやすく書かれているということです。

と言う訳で、今回はコンテンツ的にも収穫大ということで、星4つでございます。

0
2013年12月12日

Posted by ブクログ

かつて盲信的なハードロック少年だった私にとって、アメリカの原初的なイメージは「ハードロック王国」です。
私がハマったのはモトリー・クルー、ガンズアンドローゼズ、メタリカ、ハードロックではないですがレニー・クラヴィッツほかいろいろ。
日本人が逆立ちしたってかなわないハードロック王国。
もちろん、軍事力も経済力も超一流。こんなことは自明過ぎて、誰も言わないほどに強大な国、アメリカ。特に冷戦終結後は、史上に冠絶する超大国として世界に君臨しました。
「しました」と過去形で書いたのは、近年の凋落ぶりが著しいからですね。
自動車の都・デトロイトの財政破綻に象徴されるように自動車産業の衰退は著しいですし、財政面でも機能不全が目立っています。良くも悪くも中国の存在感が増すことで相対的に国際的地位は低下しているのが現状ではないでしょうか。
国力が減退してくると、それまで目立たなかった負の部分が露わになってくるもの。
「この国、本当に大丈夫か?」と私が割と真剣に心配し始めたのは、堤未果著「ルポ貧困大国アメリカ」(岩波新書)を読んで以降ですから、5年前ですか。
それまでわが国の「宗主国」であるアメリカの病的な実相を正面から取り上げた著作は珍しかったですから(だからこそあれだけ売れたのでしょう)、注目して読みました。
こういう本が出版されて受け入れられること自体、アメリカという国の没落を物語っているような気がします。日本人にアメリカに対する疑念が芽生えていたのでしょう。
読後の私の率直な感想は「あ、やっぱり、おかしい、この国」でした。
でも、アメリカって、そもそもどんな国なのだろう。私は今まで真剣に考えたことはありませんでした。
その疑問に明快に答えてくれるのが本書です(前置きが長くなりました)。
大著「アメリカにおけるデモクラシーについて」を170年前に著したアレクシス・ド・トクヴィルを援用しながら、アメリカという国の本質をむき出しにします。
アメリカがかくも好戦的なのは何ゆえか。内田先生はアメリカの歴史を紐解きながら、「戦争しないことよりも戦争に勝つことの方が同盟者を増やすうえでは効率的である」(P130)というアメリカ人が採用しているロジックを摘出してみせます。
アンドリュー・ジャクソンやジョージ・W・ブッシュなど、しばしば無能な大統領を選んでしまうのは、「アメリカの建国の父たちは、『アメリカが今よりよい国になる』ための制度を整備することより、『アメリカが今より悪い国にならない』ための制度を整備することに腐心したからです。(中略)建国の父たちは『多数の愚者が支配するシステム』の方が『少数の賢者が支配するシステム』よりもアメリカ建国時の初期条件を保持し続けるためには有効であろうと判断したのです」(P117~118)などという指摘には膝を打ちました。
アメリカ人が、「指を切り落とすとか、角を生やすとか、猫になってひげを生やすとか、蛇になって舌を真ん中からスプリットタンにしちゃう」(P198)など、常識的な日本人には理解できない奇行に及ぶのは、「身体を道具」だと考えているから。ワークアウトに熱心なのも、ドーピングへの抵抗が希薄なのも「身体を道具」だと信じて疑わないからでしょう。
困ったものです。
アメリカの政治、文化、社会構造に対して全編、辛辣な批判を加えていますが、どれも説得力に富んでいて頷けます。
しかも、どうして私がこれまでアメリカという国の本質について考えてこなかったのか、その理由まで明らかにしてくれます。最後の最後、「文庫版のためのあとがき」にはこう書かれています。
「その理由はやはり先の大戦での敗戦経験があまりに壊滅的だったからでしょう。あまりに徹底的に敗北したために、日本人は眼を上げて相手を見つめることさえできなくなってしまった」(P271)
アメリカを理解しようとしなかったのは、どうやら私だけではなさそうで安心しました。
本邦の指導層にもぜひ読んでほしい1冊です。そして問うてみたい。「本当にこの国についていって大丈夫ですか?」と。

0
2013年11月23日

Posted by ブクログ

さすが内田先生。 暴力や戦争といったアメリカ社会の典型的な論点について、独特の切り口から掘り下げている。 

時間をあけて再読したい。

0
2013年06月16日

Posted by ブクログ

本屋さんを探してついに発見。
表紙の星を区切ったようなデザインが好みのセンスです。

・日米関係の考察
・ファーストフードとスローフード
・アメリカの戦争に関する考察
・児童虐待とその背景
・キリスト教のアメリカにおける在り方
に関しての、著者なりの考察が述べられています。

内田さんの本の素敵なところは、その問題について基礎知識のない人間にも分かりやすく、背景や推移を明示してくれるところです。
基礎なくして応用なしなので、根本を(たとえそれが一意見だったとしても)〇〇で~と示してくれるのは助かります。
個人的に、アメリカ憲法の構造に対する自説や、訴訟大国としてのアメリカの内情への批判についてなるほどと思いました。
こういう本を読んでいると教養の重要性をひしひしと感じますね。

0
2013年01月10日

Posted by ブクログ

内田樹先生の好評のシリーズ
アメリカというものを冷静な視点で分析しています。
アメリカというよりも、アメリカ人か。かの地の人々が何を考えているかその思考を非常に分かりやすく解説。
日本人にとって非常に近い他人であるアメリカ人だからこそ、我々がアメリカを見る際に感情のフィルターを抜くことは困難。それを取り払って見事に目を開いてくれました。

0
2012年10月27日

Posted by ブクログ

(以下引用)
このような条項が入っているのは独立戦争のときにアメリカには正規軍が整備されていなかったことが理由にあります。国家的独立を守るためには市民全員が武装しなければ間に合わないという状況的要請があって、市民の武装はむしろ国家の側から懇請されたのです。その結果、アメリカでは二億二千二百万の銃が民間に存在し、毎年二万人が銃で殺されるという銃大国になっていますが、それはまた別の話です。(P.156)

訴訟に至らないまでも、大学にクレームをつけてくる親の数は年々急増しています。これは大学人としての言い分ですが、それほどに大学の教育サービスの質が落ちたとは思いません。むしろ、トラブルが起きた時に、自分の責任はなかったことにして、声高に「責任者出てこい!」と怒鳴る人々が急増しているという印象を私は持っています。それは別に日本人が怒りっぽくなったとか、幼児的になったという単純な事実ではなく、そのようにふるまうことこそ「政治的に正しい」のであるという歪んだ思想がしだいしだいに私たちの社会にも浸透してきたことの効果ではないかと思われるのです。((P.258)

いくさに敗れた国民の選ぶべき基本的なマインドセットは「臥薪嘗胆・捲土重来」です。古来そう決まっている。そのようなマインドセットを維持している限り、現実にそれほど軍事的・外交的に圧倒されていても、敗戦国民は戦勝国を「まっすぐ見つめる」ことができる。目をそらしたり、耳をふさいだり、記憶を改竄したりする必要がない。そのようなリアリズムの上にのみ「敵との歴史的和解」という「方便」も構想される。誇りある一国民国家として、対等の立場で敵国との「次の戦い」を放棄するという宣言に署名することができる。僕たち日本人にできないのはこのことです。アメリカに負けたときに、日本人は「次は勝つぞ」ということを国民的合意にすべきだった。それがどれだけ非現実的な夢想であっても、日本人同士の心の中では、そのことを確認しておくべきだった。そう思います。けれでも、あまりに徹底的に負けたために、戦争末期の指導層があまりにも無能だったため、「誇りある敗戦国民」という立場をとることさえできなかった。「次の戦争でアメリカに勝つにはどうしたらいいか」という問いの立て採用しなかった。(P.272)

アメリカが没落し、西太平洋から撤退した後の日本は、このままでは「主人のいない従者」「本国のない属国」「宗主国のない植民地」になる可能性が高い。これは考えうる最悪の国のありようの1つです。そうならないためにも、改めてアメリカについて考えること、より厳密にはアメリカについて考えるときに日本人はどのような知性が不調になるのかについて考えることが要請されているとぼくは思います。(P.274)

0
2012年05月26日

Posted by ブクログ

街場の中国論からアメリカ論を続けて読みました。数年前のアメリカ論ですが、今でも読んで損はない内容でした。

アメリカンドリーム
This is America

アメリカのイメージっていつも強気で夢が叶うようで、自由で・・・そんなイメージのアメリカと、その中に囚われたアメリカ病が凄く納得できました。
「アメリカは初めから夢の国である」という考えがまさに全てだと感じました。アメリカに対する期待はアメリカが出来てからずーーっと、(アメリカ人だってもそうじゃない人も)変わらないんだね。

現状、覇権国家として、先進国として今までのアメリカのイメージが崩れてきた今だからこそ、この本の内容がすっとはいりやすい。

0
2012年05月19日

Posted by ブクログ

内田樹の街場のアメリカ論を読みました。現在の日本はアメリカの大きな影響下にあるので、現在の日本を考えるためにはアメリカについて考える必要がある。そのために素人の立場からアメリカ論を書いてみよう、というエッセイでした。歴史を振り返るときに、歴史の転換点でなぜこうなったのか、という視点だけでなく、他の可能性もあったのに、なぜそれらの可能性は実現しなかったのか、という視点でも考えてみようという質問の立て方で議論されています。アメリカの影響下にあって、日本人が利益を得ている部分は大きいけれど、アメリカ自体でも問題が顕在化しているような事柄まで取り込んでしまう傾向があるのはいかがなものか、と感じました。例えば、訴訟社会(自分の権利だけを声高に主張する社会)、子供嫌いの文化、自分の体の感覚ではなく理念が先になる文化、格差社会、などなど日本人の資質として残したいもの(これは一人一人の考え方で違いはあるんだろうけど)を残していきたいものだなあ、と思いました。

0
2011年09月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アメリカの北朝鮮問題や沖縄軍事基地・靖国参拝に対する行動が納得できた。最近の日本を見ていると、アメリカや中国との関係はこのままどちらかが崩壊するまでずるずる行ってしまうんではないか、内田先生がおっしゃる最悪な事態になってしまうのではと感じた。子どもに対する意識の文化の違いやアメコミ、フェミニズム、連続殺人、訴訟などについても興味深かった。もう一度読みたい。

0
2011年08月01日

Posted by ブクログ

アメリカという国は独特だなあ。どう考えても礼讃できるような国ではないよなあ…と疑問を抱いて久しい。でもそういうことあんまり言えない。
その上、わたしは日本でその国の言語を教える人になろうとしている不思議。英語=アメリカでは決してないのだけれど。

もっと事実を反映した、クールなアメリカ観を持たなくてはいけないなと思う。

「第6章 子供嫌いの文化―児童虐待の話」は最近読んだ中で1番怖いと思う文章だった。「子どもはかわいい」と思えない文化ってどうなっているの。ぞっとする。弱者にやさしくなれない社会は破綻するのが目に見えている。
「第4章 上が変でも大丈夫―アメリカの統治システム」はすごく腑に落ちて、納得できること自体危ういのかもしれないけど、人間は間違うということを、勘定に入れた方がいいのかどうか、わたしはまだ判断しかねる。

勉強になりました。これからもっと考えよ。

0
2011年08月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

筆者はアメリカの専門家ではない。
しかし、だからなのか非常に興味深い視点で書かれている。
また、この書をトクヴィルに向けて書いたと主張し、
アメリカの本質、すなわち不変なものを直視しようとする。

特に興味深かったのは、アメリカが反知性主義に基づくという
もの。筆者によるとアメリカは建国時=「完成系」として
理想のままに生まれたので、
いかに理想を崩さないかが焦点だと言います。

そのため、アホな指導者によってその理想が崩れないように、
政治システムは、権力の集中を防ぐものになっており、
当初は少数の宗教指導者に導かれる事を想定していたが、
西漸運動の過程の大覚醒運動で、
政治参加者が拡大した後には指導者に求められるのは
熱狂と大衆の支持を受けるための人間的魅力となる。
それがアメリカの大衆民主主義に反映されている。

要は能力が無い指導者であった方が
アメリカンデモクラシーは働く。
能力の無い指導者が、能力も知識も無い大衆の支持を受ける。
つまり、本質においてリスクヘッジ>ベネフィット最大化の
システムだと言う事です。

またアメリカについて書いていますが、将来あるかもしれない、
アメリカ亡き後の日本を考える本だと言えます。

0
2011年12月01日

Posted by ブクログ

内田樹の著書を読むと、気付かされたり深く同意することは数多くあるが、一方ではたと立ち止まって考えさせるということはあまりない。
しかしそれではあんまりなので、思いつく自分なりのキーワードを書き記しておこうと思う。

○アレクシス・ド・トクヴィル
○西漸志向
○訴訟社会-「内戦」ソリューション
○子供嫌い
○理想国家

特に最後の「理想国家」と関連深いが、アメリカと他の国とが決定的に違うのはその成り立ちであることを説いた第4章が一番面白いと感じた。

0
2011年01月14日

Posted by ブクログ

日本のナショナル・アイデンティティは、「アメリカにとって自分は何者であるのか」という問いをめぐって構築されてきたという観点から、日米関係について考察をおこなっています。さらに、ファスト・フードや戦争、児童虐待、訴訟社会、キリスト教といったテーマを取り上げ、アメリカという国家のあり方を解き明かそうとしています。

いつから内田樹は岸田秀になってしまったのか、と言いたくなるような、精神分析的な観点からのアメリカ社会の考察が展開されています。個々の議論ではおもしろいところも多々あったのですが、全体の枠組みについていけないところもあります。これまで著者に対して共感するところも多かっただけに、ちょっと残念です。

0
2015年04月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

楽しかったではあるけど、推論推論の組み合わせで話が構成されているから、たまに読んでいて大丈夫かなと不安になる。 でもアメリカでは、何故あんなにも太っている人が多いのか。何故ハリウッド映画は、子供嫌いを演出をしているのか、面白い答えを示していると思う。 しかし、アメリカは独特な国だな。てか、変な訴訟が多すぎる。。

0
2014年08月18日

Posted by ブクログ

内田樹氏は言う
『アメリカのような国は アメリカ以前には存在しなかった』

ウェルズは アメリカ以前を 『身分の社会』
アメリカ以後を 『契約の社会』と呼んだ。

たしかに アメリカの前に アメリカのような国はなかった。
歴史がない というのは 起源に戻るとしたら
独立宣言 しかないという アメリカの強みは
あらゆる形で 発揮される。

そのために アメリカは 権力の集中を 制度的に
許さない。人間の悪があることを認め それを刷り込んでいる。

日本は どうも 違った国のカタチを作り上げている。
そして 中国は いかに権力を 集中させるかで
国を統治しようとしている。

日本という国は 首相が わずかな期間で 交代していく
というシステムは 日本的なよさといえる。
権力者の賞味期限が短い。
しかし、田中角栄のように 首相が逮捕されてしまう
というのは 明らかに もう少し違った ところに
権力者がいるということになる。

アメリカは 演劇的戦争・・・
物語を作り上げて 戦争を仕掛け、戦争することで
同盟国を増やしていく・・・・

しかし、テロリストネットワークには
今のアメリカの 演劇的な戦争が 通用しない。

アメリカの母親の生態
子供が邪魔 子供が嫌い・・・・という 状況と
その育った子供が シリアルキラー になる
ということが・・・・アメリカの深層部 だとおもった。

なぜ そのような 子供が嫌い・・・
になるか?は 食生活の問題だろうか?
内陸部の ミネラルがない食生活が 大きく影響している。

中国においても 同じような現象が見られる。
子供たちが おじいちゃんおばあちゃんにあずけ 育てられて
親たちは 働きに 出かける。

なにか 薄ら寒くなる 状況が アメリカにはある。

エドゲインの持つ現実は
かなしいほど・・・つらい。
母親を崇拝し 母親がいなくなることで
孤独感にさいなまされ・・・暴走を始める。
自分の中に 悪魔が 舞い降りる。

その悪魔は ニンゲンをニンゲンと思わない。

0
2016年05月07日

Posted by ブクログ

フランス思想(!?,間違っていたらごめんなさい)がご専門の内田先生によるアメリカ論.日本辺境論でもそうだったが,独特の視点でアメリカを論じていていて興味深い.特に前半は面白く読ませていただいた.

0
2012年01月16日

Posted by ブクログ

第一章の、歴史学と系譜学〜日米関係の歴史の読み解き方が面白い。それ以降もファストフード、アメコミ、統治システム、戦争、シリアルキラーなどのキーワードから、アメリカとは?を新しい切り口で見せてくれる。氏のアメリカ民主主義理解のベースとなっているトクヴィルは必読。さっそく探してみよう。

0
2011年06月17日

「社会・政治」ランキング