【感想・ネタバレ】八甲田山死の彷徨のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

1902年におきた八甲田雪中行軍遭難事件をモデルにした小説。
八甲田雪中行軍遭難事件とは、210人中199人が死ぬという、日本山岳史上最悪の遭難事故です。
遭難の描写は壮絶。
明治時代の日本軍の話なので、理不尽さも凄い。
吹雪の中、部下にラッパを吹かせるなど正気とは思えないですし、そのせいで唇が剥がれ凍死してしまった兵士が本当に可哀想です。

本作の主人公、神田大尉は、遭難中に現地解散を指示し、リーダーとしての責任を放棄してしまった人です。

しかし悪役には描かれていません。
責任は神田大尉が負っているのに、上官の山田少佐が同行し、あれこれ指示をだす。
平民出の引け目もあり山田少佐に逆らえず、次第に窮地に陥っていく。
読者が共感し、思わず同情してしまう人物像になっています。

平民から大尉の栄光を手にした神田大尉が、尽力虚しく無能指揮官の誹りを背負い死んでいく。 
壮絶な遭難描写だけでなく、神田大尉の悲哀もこの小説の見所です。

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2024年04月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

R4.4.29~5.3

面白かった!
新田次郎のエンタメ文章力は凄い。迫力の山中描写です。
フィクションが含まれているようなので理解しながら楽しみました。お勧めの一冊です。

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2022年05月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

声の大きい無能上司のせいで散々な目に合う優秀な部下、という設定だけで泣けてくる。ちゃんと生存した方が何も成果が得られなかったかのように扱われ、失敗した方が褒め称えられるのに、組織の異常さを感じて怖くなった。戦争なんてものがなければ、こんな実験をしなくてよかったのに。

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2022年01月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今の会社に入って選抜研修に参加した時の課題図書でしたが、研修終了後も何度も読み返した一冊。

研修ではリーダーとして神田大尉と徳島大尉を比較し、違いを理解しながら目指すべきリーダー像を討議していきました。

著者の読み終えた作品の中ではぶっちぎりに好きな作品です。

明治時代の悲しき史実。

日露戦争を目前にし、真冬の八甲田山で行われた雪中行軍は199名もの死者を出してしまいます。

真冬の八甲田山、死の足音を聞きながら軍隊という環境の中で行われる指揮命令はまさに隊員の命を左右します。

息づかいや、風の音、人々が倒れる音、活字から音を感じた作品としては本書が初めてだった気がします。

その位にリアルな描写はお見事としか言いようがありません。

辛く、悲しい歴史と共に未読の方は是非!!

レビューを書きながら、又、読みたい気持ちがフツフツと。

年末年始休暇には2年振りの帰省をしようと思っているので、帰ったら探してみよう!!


説明
内容紹介
明治35年、青森・八甲田山で起きた大規模遭難事件。
陸軍によって隠蔽されていた、199名の死者が出た実際の悲劇を発掘、小説化した。
高倉健、北大路欣也主演の映画原作としても知られる。北大路の台詞「天は我々を見放した」は流行語となった。

日露戦争前夜、厳寒の八甲田山中で過酷な人体実験が強いられた。神田大尉が率いる青森5聯隊は雪中で進退を協議しているとき、大隊長が突然“前進”の命令を下し、指揮系統の混乱から、ついには199名の死者を出す。徳島大尉が率いる少数精鋭の弘前31聯隊は210余キロ、11日間にわたる全行程を完全に踏破する。2隊を対比して、組織とリーダーのあり方を問い、自然と人間の闘いを描いた名作。

【目次】
序章
第一章 雪地獄
第二章 彷徨
第三章 奇蹟の生還
終章
解説:山本健吉

【大ヒット映画原作】
1977年、東宝。監督:森谷司郎、脚本:橋本忍。出演: 高倉健(徳島大尉)、北大路欣也(神田大尉)、丹波哲郎(児島大佐)、三國連太郎(山田少佐)、加山雄三(倉田大尉)、秋吉久美子(滝口さわ)ほか超豪華キャスト!

本文より
「救助隊だ!救助隊だ!」
と叫ぶ声が続いた。
「お母(が)さんに会えるぞ」
と叫んだ兵隊がいた。一声誰かが母に会えると叫ぶと兵たちは、口々に母の名を連呼した。(略)兵たちは、救助隊を見て、すぐ母を思った。いま彼等の心には母しかなかった。母が居たら必ず助けてくれるだろうし、生きることは母に会えることであった。
倉田大尉には救助隊は見えなかった。神田大尉にも見えなかった。二人は顔を見合せてから、兵たちが指さす方向に眼をやった。風の中に疎林の枝が揺れ動いていた。飛雪の幕が、横に動いて行くのを見ながら、ふと眼を飛雪に固定すると、今度は木が動くように見えることがあった。……(第二章「彷徨」)

本書「解説」より
八甲田山の事件の真相は、長く国民には知らされないままになっていた。日露の風雲が切迫していたということもあったろうし、その上に陸軍の秘密主義ということがあったろう。軍の責任に触れ、その恥部を国民に知らしめることを怖れたのだ。(略)
徳島大尉始め、雪中行軍に加わった第三十一聯隊の士卒の半数は、二年あとの日露戦争には、黒溝台の激戦で戦死または戦傷している。成功者も失敗者も、死の訪れには二年の遅速があったに過ぎなかった。それは、日露の戦いの準備行動で死んだか、戦いそのもので死んだかの違いに過ぎなかった。
――山本健吉(文芸評論家)

新田次郎(1912-1980)
1912(明治45)年、長野県上諏訪生れ。無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。1956(昭和31)年『強力伝』で直木賞を受賞。『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、1974年『武田信玄』等で吉川英治文学賞を受ける。1980年、心筋梗塞で急逝。没後、その遺志により新田次郎文学賞が設けられた。実際の出来事を下敷きに、我欲・偏執等人間の本質を深く掘り下げたドラマチックな作風で時代を超えて読み継がれている。


メディア掲載レビューほか
この世の地獄! 日本陸軍史に残る悲惨な事件を味わう

日露戦争前夜の1902年、一つの壮大な人体実験が行われた。厳寒の積雪期において軍の移動が可能であるかを、八甲田山中において検証すべし。青森第五聯隊の神田大尉と弘前第三十一聯隊の徳島大尉は、それぞれ特命を受けて過酷な雪中行軍に挑むことになる。この世の地獄が前途に待ち受けているとも知らずに。

新田次郎『八甲田山死の彷徨』は日本陸軍史に残る悲惨な事件を題材とした山岳小説である。気象学を修め、登山家でもあった新田の描く雪山の情景は、恐ろしいほどの現実感をもって読者の胸に迫る。雪地獄の中に呑み込まれていく兵士たちの姿は余りにも卑小であり、大自然の脅威を改めて認識させられる。

2つの部隊は明暗がはっきりと分かれる。深雪の対策を行った三十一聯隊が1人の犠牲者も出さずに任務を完遂したのに対して、気象の苛烈さを侮り、精神論で行軍に挑んだ五聯隊は199名もの死者を出してしまうのだ。組織が自壊するプロセスを描いた小説でもある。雪の中で絶望した神田大尉は「天はわれ等を見放した」と呻くがそうではない。合理性よりも軍人としての面子を優先して行動を開始したその時、彼らにはすでに死の影が忍び寄っていたのだ。兵士たちを殺したのは軍が抱えていた病理そのものだったといえる。終章で語られる二挺の小銃を巡るエピソードに、その異常さが集約されている。

新田の筆致は冷徹を極める。不可避の運命へと向けて行軍していく者たちの姿が眼前に浮かび上がるが、押し止めることは不可能なのである。読者は、一つ、また一つと命が失われていくさまを、ひたすら見つめ続けなければいけない。(恋)

評者:徹夜本研究会

(週刊文春 2017.3.16号掲載)

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2021年11月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

リーダーの判断の責任と重さ、日本の軍隊の恐ろしさを感じる話だった。

神田大尉がなんとか助かる道を見出しても、上層部の圧により、じわじわと死に近づいていく無念さが辛い。

雪山の恐ろしさ。
あまりにもの疲労と寒さと過酷な環境により、幻覚を見たり、正常な判断力ができくなっていく恐ろしさを感じた。

2021年9月1日

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2021年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これまたトラウマ作品です。
極限の寒さと疲労のため精神に異常をきたして、吹雪のなか着ている服を脱いで裸になってそのまま凍死する兵士。
子供の頃、テレビで見たワンシーンが強烈でした。
小説では雪山と、それに翻弄されながら生死を分ける二つの部隊の描写は、気象学者でもある新田次郎でなければ書けなかったと思います。
組織の在り方とか、明治という時代の暗さとかいろいろ考えさせられる作品でした。
映画もちゃんと観ないといけないな。

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2023年02月25日

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