【感想・ネタバレ】河畔の街のセリーヌ 2巻のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

19世紀後半のパリを舞台にした玲瓏な少女のお仕事探訪記の第2巻。

1巻の頃から傾向はあるけれど、今巻もなかなかハイコンテクストな話が多い。
単に紙面に目を通すだけでもパリの風景や人々の装いに眼福なのだけれども、背景にある文脈を考え調べながら読んでいくのもまた楽しい。

たとえば第6話は公証人が取引先の老資産家から郊外の館の財産分与をどうするべきか相談される話だ。
放蕩な長女・次女でなく末娘(シスターになって財産分与の対象から除外されている)の修道院の関係筋に寄付するよう公証人は助言する。そのさいの言葉がマタイによる福音書の引用だ。その言葉に対して反発する老翁からは政教分離を理念とする共和派(本作は第三共和政の時代だ)を支持してきた者としての矜持が滲んでいる。
また老翁が気にしていた館に残されたモクレンも、その花言葉として崇高(nobility)、忍耐(perseverance)、威厳(dignity)といった神学的要素が含まれており、政治と宗教がまだ強固に結びついていた時代を生きていた老人の生涯を象徴するアイテムとして登場している。

叙情性という意味でもハイコンテクストで、第7話では都市化する前のモンマルトルの野外舞踏場付きの居酒屋での給仕を通してシングルマザーに育てられている少女と出会う。12歳になったら丘向こうの工場に働きに出ることになっているという。
この話では、パリ改造の余波によって都市化していく故郷や変化せざるをえない少女自身の境遇について、かつての日々の郷愁をパリの煌めきに仮託して偲ぶという話になっている(と自分は読み取った)。
しかし少女自身もセリーヌも、その気持ちをうまく言葉に表すことができない。そのもどかしさが印象に残った。

読むうえで問題のない程度の説明は折り込みつつも、上記のような感じで、象徴的なアイテムに込められた意味や時代の変化による人々の動きや心理を至妙に描いていて、じっくり作品に向き合うのが至上の時間になる。
主人公のセリーヌやキーキャラクターのルネさんの情報も漸次開示されていって、今後の物語がどう動いていくかも気になるところだ。

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2023年05月01日

Posted by ブクログ

セリーヌが人と関わりながら成長していく、ドラマがあるかと言うと、そう言うことも無い。ドラマになりそうでならない、あっさりが持ち味。

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2023年07月17日

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