感情タグBEST3
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書籍に関して「誰が書くか」にはあまり頓着がなく、『楽園の犬』のついでとして買った本作だった。しかし読み終わって後書きを読んで初めて「これが岩井圭也という作家のデビュー作なのか」と驚嘆した。自分と同じ年代の人間が、デビュー作でこれを書けるのか。あまりに驚いて、中身についての感想を書く余裕がなくなってしまった。引き込まれて、あっという間に読み終わってしまった。
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私は全くの文系人間なので、数学の世界は全くわからないけど、数学の天才、数覚のある人の見ている世界を想像させてもらえた。
ある種の天才がたどる、天才が故の孤独と狂気。
そういう人に畏怖の念を抱いてしまう。
天才は幸せなのか、とかそういう次元の問題じゃなくて、それはもう宿命なんだろう。
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稀有な数学センスを持つがゆえの孤独。
ようやく得た理解者と、その繋がりへの執着。
それらを抱えながら、転がるように落ちていく過程が痛ましい。
選ばれし者のみが見ることができる美しい世界、素晴らしかった。
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天才数学者の生涯の話。
孤独、数学への思いの共有、そしてまた孤独、、、
未解決の問題に取り組む数学者。
数学の知識が無くても読めた。
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下手に感想を述べたくないくらいに好きな本。
文体、内容、読んでいる時の心地と肌感覚……何から何まで至高です。是非、というか絶対に読んでほしい、としか言えないです。
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才能に溢れた数学者たちの苦悩、嫉妬、劣等感、葛藤
そして孤独…
それぞれが抱く感情の揺れ動きを繊細に描いた物語
数学に関して飛び抜けた才能を持つ瞭司は、特別推薦生として大学へ入学する。
同じく特推生の熊沢や佐那と出会い、初めての友人を得た瞭司は、信頼する恩師と友人たちに囲まれ、数学に没頭し、幸せな青春時代を過ごすのだが…
あまりにも突出した才能がゆえに壊れていく瞭司。
それを知りながら離れていく熊沢と佐那。
その後二人は罪悪感に苦しむ事となる。
物語後半は辛い場面が多く読むのも苦しいが、印象的な森の中のシーンと光のあるラストに涙が溢れる。
バラバラになった3人は数学によって再び繋がるのだ。
深い森と数学の世界を重ね合わせたような描写は、数学の持つ美しさや正しさがくっきりと見えるような気がする。
先日読んだ「付き添うひと」がとても良かったので、著者のデビュー作である本書を手に取ったのですが、こちらも読んで大正解。
数学苦手な私でも、全く問題なしです^_^
嫉妬や劣等感などは、きっと誰もが経験する感情で、心の何処かに“孤独”も同居しているのではないでしょうか。
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電車で読んで失敗した。涙が…
数学は数学者だけのものじゃないし、数学者にもいろんなスタイルがあっていいんだなって思わせてくれる。
でも、多様であればあるからこそ、自分にとっての何かを見つける苦労や苦悩は深くなるんだろうな。
子孫を残すというかたちじゃなくても、
偉業を成し遂げるというかたちじゃなくても、
有名になって記録や記憶に残るというかたちじゃなくても、
人は永遠になれるんだろう。
蛇足。文庫版の表紙はもっと森のイメージに寄せてほしかったなぁ…
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数学を居場所とし、孤独から仲間といることを覚えた後にまた孤独を感じていく。それぞれが成長したが故の寂しさが切なかった。
どれだけアルコールに溺れても、仲間がそれぞれの道を進んでも数学が好きで、数学を続けていたがその根底にある思いが数学を続けて論文を書けばあの頃みたいに仲間と議論を交わせるという思いだったのが苦しくなった。
彼にとって数学は話題であり、仲間と繋がりを感じるものだった。逆を言えばそれ以外を知らず、見つけられずだったのではないかと思う。
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岩井圭也さんの作家デビュー作!
数学で圧倒的な才能(本作では「数覚」という)に恵まれた三ツ谷瞭司と、彼に影響され刺激を受けた数学に関わる人達の物語。
文系の私にはついて行けるか心配だったが、全く問題なかった。数学の作品と言えば真っ先に思い当たるのが『博士の愛した数式』
そして天才学者といえば湯川学のガリレオシリーズ!あれは物理学者だけど・・・
本作はまた全く違った切り口で楽しめた。
秀でた才能にフォーカスしてその脳内にみえる景色と、彼の生き方の光と闇がストイックに描かれた作品だった。
大学で初めて分かり合えた仲間達と、数学的才能によって繋がっていく瞭司。突出した才能がゆえに孤独を知る彼にとって、時間も忘れて純粋に数学と仲間達と繋がることの出来たこの時期が、きっと一番輝いていたんだと思う。
作中で、瞭司本人がサラリと語った台詞
「今解けなくても、死ぬまでに解けばいい。自分に解けなければ、他の誰かが解けばいい。だから問題を解くことに挫折はない。」
何だこの台詞・・・
めっちゃカッコいい!
言ってみたい!!!いつ?笑
嫉妬と妬みでこの台詞の真意に辿り着けなかった瞭司の周りは、数年経って漸く瞭司の意図していた思いに気付く。若くしてみえていた世界の違いに圧倒されてとても印象的だった。
でも、数学で生きていく道は限られていて、やがて社会に適応する為に、誰もが数学との折り合いを付けていく。更に追い打ちをかけるかのごとく現れた、超現実主義の平賀教授。
瞭司の後半の転落ぶりは、読むのが辛くなり、胸が締め付けられる程だったが、ラストは熊沢と佐那の救いがあって、何とか気持ちを落ち着けられた。そして、田中先輩からのサプライズに希望を感じられて涙が出た。
読後改めてみると、表紙の雪道に佇む男性が寂しそうで物悲しい。『永遠についての証明』というタイトルも、数学という枠を超えて、社会で生きていくことの本質に迫っている様にも感じられた。いやぁ、なかなか深いぞ・・・
難しいテーマにも関わらず、選び抜いた文字と表現で独特の世界観を描き切った筆力とエネルギーに、圧倒される作品だった。
しかも岩井圭也さん、本作で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞された時、なんと31歳の若さだとか。これは今後がますます楽しみだ。
読後、岩井圭也さんに対する期待値が上がる方も多いと思う。他作品も是非読んでみたいと思った。
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大好きな時代小説家 今村翔吾さんが、
同期、意識している作家と語られていたのがきっかけで。
初めて手に取りました。
数学の天才(神童)とも言うべき三ツ矢瞭司。
幼少期から友達と同じ感覚や会話ができず、
隔たりや孤独を感じていた。
彼を癒していたのは
無数の自然のなかに存在する数字、数学たち。
彼の才能を見出した教師は大学へ導き、
そこで彼はかけがえない友達と出会う。
ここまでは良かったです。
ただ、圧倒的な光や才能を前にすると、
周囲の人間にも大きな影響をあたえ、
時には嫉妬や執着、暗い影をも惹きつけてしまう。
とても孤独で冷たくて、
掴んでいたものが時間と共にこぼれ落ちていく。
読んでいてとても悲しくて胸が苦しくて。
雪の中、振り返りひとり佇む少年(青年)の表紙が。
読後に見返すととても切ない気持ちになります。
バリバリ文系の私は数学に関わる本を読めるか
とても不安でしたが、
まったく問題ありませんでした。
むしろ「蜜蜂と遠雷」や「鋼と羊の森」のような
音楽をテーマに描いている世界観と似ていました。
また素敵な作家さんを知れたことに感謝です。
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「数学することの喜び、興奮」をあまり感じたことがないからなのか、「自然の根底にある数学的真理とのつながり」という大きなテーマ「真理」が最後まで具体的にイメージ出来ず残念。「証拠もなく疑念を抱いている相手には弁解のしようがない」「問題を解くことに挫折はない」「数覚」に恵まれていながら破滅していくのは、挫折ではないんだろうなぁ。やりきれない思い残る。
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瞭司にとって、小沼は初めて瞭司と数学の世界を共有してくれた人で、孤独から連れ出してくれた人。そこからクマと佐那の出会って、瞭司の世界はその研究室で完結し初めて満たされていた。
多くの人が、それまでの人生で別れと出会いを繰り返し経験してきたとしても、誰とも理解しあえなかった瞭司が生まれて初めて世界を共有できた人たちと離れるだなんて、受け入れられるなんて考えられなかったのだと思う。クマとの関係がこじれてしまったのも、クマだけが悪かったわけでもなく誰も悪くなかった。
クマにとって、圧倒的な才能の塊である瞭司の存在は折り合いをつけてこられたにせよ、嫉妬は必ずあったわけで。そんなときに平賀の「正しさ」によって、瞭司の数学のセンスが、そこまでのものでなかったのだとどこか安堵し見下す感覚が芽生えてしまったのも、責められない。
けど、瞭司は自分だけが見えていた世界を共有したくて、純粋にクマと検討したくてクマの部屋に行く様も本当にせつない。その時のクマにはクマの事情や忙しさもあって、瞭司の話に耳を傾けることすらできず、結局、昔のように一緒に検討することはできずに瞭司とは一生の別れとなる。
ムーンシャインの一般化は僕だけでやったのではないという瞭司の言葉は本当にその通りで、クマと佐那それぞれが自分の数覚をもとに役割を果たして完成させたもの。
この頃が一番幸せだったかもしれないけれど、理論の中に生き続ける瞭司とそれを繋いでいくクマたちの最後は、後悔もあるけれど前に進めていて救われた。
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数学というのは‥
雲を、雪を、そして森までを式で表せるのか!
そういう世界を見られるというのは、とても興奮する、きっと幸福な世界なのだろう
ひとがその天才的な能力を持つとき、世渡りの術とか、生活力とかいう この世を生きていく力を併せ持てない事が多いのかも知れない
その結果の孤独 嫉妬もされるだろう
数学の(真理というのか)本質は、すでにずーっと
この世に存在しており、それをいかにみつけるか、完璧に式に表すか、という事らしい
今まで見えていなかった、新たな世界を発見するのが天才
そして天才の持つ能力を、その発見した事を
とてつもない能力であり 発見であると理解して世に広める能力を持つ人々がいて
そんな数学の世界を生きる 数学者たちのものがたり
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この作家さんは初めて読みました。たぶん、タイトルに惹かれたのとたまたまダブルカバーで存在していたので手にして積読していたのですが…読み始めるとなんで手を付けていなかつたんだろう?って後悔するくらいに惹き込まれた作品でした。数学を題材にしていて、数学詳しくなくても、たぶん苦手でもある意味二人の主人公を通して描かれる数学との関わり方、そして未解の問題へ向かい合う姿勢やプロセス、そこに生じる熱量や想いなんかが上手く盛り込まれていて登場人物それぞれの立ち位置やその変化読み進むほど先の行く先が気になって読み進めてしまう感じでした。最後の展開は…その後も気になるような、ある意味しっくり出来たような読む人によって感じ方違うかも…な印象でした。
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圧倒的な才能を持つがゆえの栄光と孤独、そして天才の周りの人間が抱える憧れと嫉妬を、様々な側面から描いた青春小説でした。これらを余すことなく描くことで、才能の異質さや残酷さも浮き彫りにされます。
物語は現在のパートと過去のパートが並行して進んでいきます。現在パートでは、亡くなった数学の天才、瞭司の遺した研究ノートをめぐっての物語。過去パートでは、その瞭司の大学時代のエピソードが語られます。
信頼できる仲間や恩師との出会い。自分の興味や情熱にしたがい、研究に没頭する日々。それは大学時代という一種のモラトリアムだからこそ、かなえられた幸福な時間。
そして突きつけられる現実と挫折。瞭司に対し、複雑な感情を抱き、それぞれの道へ進み出す仲間や恩師たち。その才能ゆえに瞭司は、数学から適切な距離を取ることができず、どん底へと墜ちていきます。
天才の内面描写は難しいと思うけれど、学生時代の仲間意識やワクワク、あるいは現実に突き当たっての挫折、というふうに、凡人である自分にも、共感しやすく書かれていて、入り込みやすかった。
一方で天才らしい発想や感性というものも、文中で繊細に描かれます。瞭司の専門分野は数学なのだけど、それが読んでいる自分に難しく感じられることもなく、逆に数学の美しさすらも感じさせます。
天才数学者を描いた話だと、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』や小川洋子さんの『博士の愛した数式』が、
大学生活ならでは青春の青さと苦さを描いた話では、森博嗣さんの『喜嶋先生の静かな世界』が思い浮かびます。
そうした作品とはまた違った角度から、天才が故の苦悩や挫折を、青春の一コマ一コマを、数学と人とのつながりを描ききった、素晴らしい一作だったと思います!
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数学を題材とした小説と言われてすぐに思いつくのは『博士の愛した数式』。小説もさることながら、映画での寺尾聡の演技が素晴らしく、両方とも心に残る作品となった。博士がいた数学の世界はとてもやさしく美しいもので、数学とはなんの縁もないわたしにも、そのきらきらした光が見えるような気がしたのを覚えている。
しかしこの小説の中の並外れた才能を持つ三ツ矢瞭司は、数学を学ぶことの喜びを味わうと同時に、果てしない孤独に蝕まれていく。
答えが分かっても、それを証明することができなければ数学という学問は成り立たないようだ。みんなに理解してもらえるよう、そしてその証明に矛盾や穴がないように。
目的地に行くには、電車に乗ったり、車で行ったり、遠いところなら飛行機で行く。歩くことも必要になるだろう。そのどれかが間違っていたら、ちゃんとたどり着くことができない。でも瞭司はどこでもドアのようなものを使い、一瞬でそこに到着してしまう。
そんな瞭司の才能を、同じ大学の同級生である熊沢は、妬みながらも魅かれた。佐那はただただすごいと思った。3人は数学という絆で結ばれていたが、時が経つにつれ、それもだんだんほどけてしまう。人が変わっていくのは当たり前のことだ。それを成長と呼ぶこともできるし、挫折とみることもできる。でもそれぞれにちゃんとした事情があるのだ。
ひとり取り残された瞭司は壮絶な孤独感に襲われ、やがてアルコールに溺れていく。
すべての原因は瞭司の中にある弱さだ。
人間として成長できなかった。
誰も悪くなんかない。
周りの誰もが後悔の念や謝罪を口にするけど、もしまた同じようなことが起きても結果は同じだろう。なぜならみんな自分自身の人生があって、まずはそれを守らなければならないんだから。
だから最後はちょっと泣きそうになった。
プルビス理論の塵と弦理論のストリングス。
美しい森の真理。
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数学の才に恵まれるが故に誰からも理解されない瞭司。大学の数学科で同じく特別推薦生である熊沢と佐那に出会い、彼らと友情を築きながら感性で数学の真理を追う瞭司は、その才能から周りとの関係を歪ませていく。
才能を持つからこそ周りの嫉妬や僻みにさらされ、次第に孤独になっていく様子が哀しいし、妬む側の気持ちの方がより理解できるからなおのこと辛い。
数学のせいでばらばらになった彼らだったが、結局数学で繋がっていたのだと気付いた時には涙が溢れた。
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面白かったし悲しかった 誰にも理解できない数学と誰からも理解してもらえない孤独と そしてなんといっても酒 数学の話も面白かったけど人物それぞれの心情、背景がしっかり書かれているので没入感があって良かった 同じ部屋でみてるような感じ 私も目の前の現実なんてどうでもいいくらい何かにハマってみたい人生だったよ 天才は1人で死んだけど、ずっと数学の世界で生き続けるんだなと思った
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数学者、数字を羅列するだけで1日はおろか気付いたら何日も…なんて話には聞くもファンタジーかと思っていた世界がここにあった。
それだけで世界が何層も広がった気がしている。読んで良かった。
ただ好き、を追求するのには暸司くんは天才すぎたのか。生き方って誰にも決められないはずなのにね。
アル中の辛い描写が胸に痛い。
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よかった。
瞭司は数学を追究するだけでなく、数学を通じて熊沢、佐那とつながりたかったのだろう。
けど、瞭司がアル中になるのはよくなかった。
自分は数学者に少し憧れがあるか。
特に純粋に数学を追究する瞭司のような人には。
その瞭司がアル中から命を落とすのはちょっと。
数学に入り込みすぎて別の世界に行ってしまうにしても、生きていて欲しかった。
読み応えあります
む〜ん 後半の暗さである瞭司の苦悩が、私には辛かった。その上で、熊沢の苦悩も辛い。一方で、平賀先生の対応が今の世界の普通の対応でないかとの思いが捨てきれず、現在の生き難さを示していると思う。その上、平賀先生本人は苦悩が無いのであろう。これも真実。
瞭司の凄さを理解すると共に瞭司二世が出てきたという、このような終わり方で良いのだろうかという、不満が心の底にある。
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数学のことは全然分からないけど、リーマン予想は容疑者Xの献身に出てきたあれだな、とか浅い知識でうっすら理解した気になって読みました。
天才にもいろいろあって、むしろわかり合えないことの方が多いのかもしれない。
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こちらも前回の読書会でお借りしてきた。岩井圭也作品は楽園の犬に続いて2作目だが、こちらはデビュー作だそう。
物語は、6年前に早逝した天才的数覚をもつ三ツ矢暸司が残した「コラッツ予想の証明に成功した」とされるノートからはじまる。
彼とは大学入学からの友人であり、今や30代半ばにして母校の准教授に就任した数学者熊沢勇一の、時系列で現在の視点と、大学入学から病死する直前までの三ツ矢暸司の視点、交互に進んでいくストーリー。
面白かった。
読んでいて、「哲学的な何か、あと数学とか」を思い出した。
あと、短絡的だけど、ラマヌジャンみたいだなとも思った。
真理の追求は、時に人を蝕む。
自分の中に絶対的な軸があって、それを外の世界へ持ち込むことなく、外側は外側として折り合いがつけられるような器用な人間なら、こんな風にはならないのだろう。
そう言う意味では佐那は自分の軸をしっかり持って外側との折り合いをつけられている稀有なキャラクター。
熊沢の、暸司に対する気持ちもわかる。
自分に見えていない何か、
たぶん正しく美しい何かを見ている友人に嫉妬し、その堕ちていくさまに溜飲を下げてしまう気持ち…。
そこにもう少し早く自覚的であれたら、もう少し外側から俯瞰できていれば、
ちょっとは変わったのかもしれない。
その俯瞰するための時間が暸司が亡くなってから6年必要だったのか。
真理の追求は信仰に近いと思う。
それぞれが持つ相対的な何かではなく、絶対的な真理…そんなものがあるのかはわからないけど、それを追い求められる才能や才覚がもてるならそれは幸せなことなのかな。
読後、漠然とそんな問いが残った。
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初読みの作者さん。フォローしている方のレビューを読んで、数学者たちのお話というのに惹かれて買ってきた。
数学は得意ではなかったが、今でも新聞に入試の問題が載ったりすると、ちょっと覗いてみたくはなる。
大学の数学科に特別推薦生として同期で入学した瞭司と熊沢と佐那。主に瞭司と熊沢それぞれの視点で語られる、彼らの過去と現在。
コラッツ予想にリーマン予想、群論だとかムーンシャインの一般化だとかWikipediaの説明を読んでもさっぱり理解できないが、そんなことは関係なく、面白く読むことが出来る。
とりわけ、圧倒的な〈数覚〉に恵まれた瞭司の天才ぶりと、それに惹きつけられた熊沢と佐那が共同研究で結びついていく前半は、彼らの幸せな時期の様子が描かれて好ましい。
一方、それぞれが自分の道を見出しその関係性が崩れていくようになる後半は、そこから引き起こされる瞭司の孤独、その繊細さや脆さも分からないでもないが、アルコールに溺れていくところがかなり苦々しく、破滅型の天才という絵柄は今どきあまり読みたくなかった。
それでも終章、熊沢が見た景色は瞭司の魂とのつながりを感じさせ、佐那が教えた少年の登場も連綿と続く“知”のつながりを思わせて、素敵な終わり方だったと思った。
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圧倒的な才能の前で自分にないものであったり、自分が昔諦めた道を猛進する人を妬み否定する気持ちは自分でも抱いてしまうだろうなと感じました。
また、数学は高校になってから正に社会で使わないからと勝手に決めつけ苦手になってしまいましたが、世界の真理を表す学問であることは社会人になってから理解することが出来ました。
「固く握られた手に彼女の本心が閉じ込められているようだった。」
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天才が堕ちていく描写がとても辛かった。
天才は孤独になりやすいという話をどこかで聞いた覚えがあるけれど、まさにそんな話だった。
数学の知識はないけれど、十分に楽しめました。
ただ、最終的な結末が微妙に感じた。意外とあっさり終わってしまった…