【感想・ネタバレ】テスカトリポカのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

作品の世界観が映像として目や耳、肌に伝わってくる作品であり、とことん作りこまれたドラマを見ているような気になる作品である。

景色や人物の外見、動作、内面などが具体的に描写されているからなのか、読みながら頭の中で映像が浮かぶ。

読みながら映像が浮かぶ作品は私の中では他に北方健三シリーズのみ。

画でなくドラマを見ているような気になるのは、ページを(映像でいえば時間を)たっぷり使って、世界観を作りこむための細かい記述があるから。

例えば、作品の本筋である臓器手術後に患者であり死体のブーツの靴底を、元ドラッグギャングであり、臓器ビジネスのボスである切れ者の男がカッターで切り、薬物を見つけるシーンがある。

これは以降のストーリーに関係ない描写だと個人的には思っている。

しかし、これがあることで、「ブーツの底に薬物を隠すことが薬物が出回っている地域では現実世界でもあるのだろうな」とか、「他の描写も本当に薬物の世界を忠実に描写しているのではなかろうか」と思わせてくれる。

また、アステカの神話や歴史も繰り返し記述されており、本当にそのような神話や歴史があるのかは調べずに読み進めたが、奇妙で理解しがたい話であっても本当の神話や歴史のように捉えさせてくれる記述であった。

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2024年01月21日

e3

ネタバレ 購入済み

レビューというか感想

ぐいぐい引き込まれて三日で一気読みしてしまった。

前半は群像劇風。
人物造形はキャッチーで分かりやすく、それぞれの主人公に感情移入しながら読めました。
特にジャカルタのあたりはワクワクしたなぁ。

パブロと出会うまでのコシモのパートは読んでて悲しかったけど、
調理師のビジネスにどうやって関わるのかを想像しながら読むのは面白かった。

後半の日本編からは、もう気が気じゃ無い状態で読んでましたね。

登場人物だいたい全員いかれてるしやべーことやってるけど、それなりに愛着もあって、
応援したいような、はやく報いを受けて欲しいような、不思議な気持ちで読んでました。

なお、シカリオの人たちは脳内では刃牙キャラの顔でした。
あんな人材がぞろぞろ集ってくるなんて川崎修羅の国すぎでしょ。

前半は『白夜行』ってこんな読み味だったかもなぁ(記憶が曖昧)みたいな気持ちで読んでたけど、
後半で宗教結社じみた側面が出てきてからは『煉獄の使徒』なんかを思い出してました。

宗教の絡み方がいいんですよね。
ファミリアの閉鎖した関係の中で醸成される狂気に納得感がある。
コシモが日食の気づきを得るところでは、静かな感動がありました。
ちなみに、初の儀式で蜘蛛先生がファミリアに冷めた目を向けてたときから
この人きっかけで崩壊だろうという想像をしてたので、正解できて嬉しい。

パブロは最後残念だったけど、正しいことをして、ちゃんと報われた方だと思う。
読んでる間ずっと、パブロの描写が全体的に薄いのが不満だったんだけど、
勇気を出してカヌーに誘って宗教戦争ふっかけるシーンはちょっと泣きそうになった。
描写が薄い=コシモに対して何もできていなかったことが効いてた。
最後に急に株を上げてきた男。パブロ・カタルシス。バランス感覚に脱帽でした。

矢鈴にも最後救いがあったのが意外だった。
読者に嫌われるタイプだろうけど、最後の頑張りで劇場版のび太君ぽさを醸し出してきたね。

こんなにのめりこんだ作品は久しぶりでした。

#切ない #感動する #ダーク

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2022年01月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゴリゴリのノワール小説だからか、メインキャラクターだいたい死んで欲しいな…という思いに駆られながら読んだ。パブロとコシモだけはどうにか良い結末を…と思っていたので、ラストは満足。しかし映像化されたら怖くて多分見れないなこれ。
ありがたいことに日々ぼんやり生きていられているので、犯罪者って色々考えてんだなぁという呑気な感想になる。作者の下調べは凄い。

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2024年05月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表紙に惹かれて、あらすじを読んでなんか凄そうな話だな…と思いつつ一気読み。
普段読まないような、暴力!血液!薬!って内容だったけど登場人物が濃いのと、話に勢いがあってぐいぐい読めました。
保育士の先生が出てきた時はまともな人が出てきた!と思ったけど職場のトイレで吸引していて、まともじゃなかった…と笑ってしまいました。でも、そうでもしないとやっていけないようなブラックな状況でもあったってことだよね。
読み終わってからもなんだかすごいものを読んだぞ…とやや放心しながらも面白い本でした。

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2024年04月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公がコシモなのかバルミロなのか分かれると思うが、私の中ではバルミロが主人公。
終始物語の流れを作る行動を起こしてるのはバルミロであり、コシモは無知で無教養のせいかほとんどの場面で受け身であり、成り行き任せで感情に乏しいため感情移入がしづらい。
バルミロは生い立ちからして波瀾万丈であり、残虐性の元になったトラウマ級の出来事等も考慮すると、共感はせずとも一定の理解ができる。
一方コシモもネグレクト、両親殺害で少年院、というのはそれはそれで波瀾万丈と言えなくもないが、あくまで日本国内では、というレベルで、常に死を身近に感じて幼い頃から生きて来たバルミロと比べるとどうしても悲惨さが霞む。

バルミロは確かに悪の権化のような存在ではあるが、彼なりの「家族」という概念をずっと大事にしており、それがバルミロの折れない精神力の源になっている。
ただそれは一般常識とはかなりかけ離れており、コシモを「息子」と呼んでいるのも息子同様に親しい存在というわけではなく、
バルミロが本当の家族だと思っていたカサソラ兄弟や祖母リベルタの中に息づくアステカの神々の気配をコシモの中に感じ取ったからこそ、コシモを「息子」呼びしたのだろうと思う。

個人的にはバルミロの裏の世界での成功と復活、復讐と故郷への凱旋が見たかった。
生き抜くために故郷では麻薬組織でのしあがり、家族全滅からの用意周到な逃亡と密入国、異国で単身小さな足掛かりから徐々に既存のマフィアやヤクザ組織に喰い込んでいく様は、大義名分こそ全くないものの、ある種の成り上がり物語とも言え、かなり読み応えがあった。

もう一人の主人公コシモだが、終盤ようやく主体性のある行動が見られる。
だが、その主体的になる原因となった順太との交流がちょっと物足りない。これぐらいのやり取りであのバルミロと対決になる??という感じだった。もう少し決定的なエピソードが欲しかった。

物語は最初から最後までどんどこ人が死に、かつ普通の死に方ではないので(刺されてハイ終わりというのではない)、グロ系が苦手な人にはお薦めしない。

ただ、グロいとはいいつつ、どんなに残虐にしようとも古来から現在に至るまでの古今東西の拷問や処刑方法を一通り知っていれば、人間の殺し方というのはある程度バリエーションは決まっており、予想できるものではある(ただ、今回の液体窒素は私は初見だった)。

あと、物語のキーとなっているのがアステカの神々だが、そもそも日本人にとってあまり馴染み深いものではないためイメージしづらく、字面以上の不気味さや恐怖などを感じることができなかったのは残念。
そのせいで、うっかりするとバルミロがただの盲目的な狂信者に見えてしまう時も。
まぁ私の知識不足なだけかもしれませんが。

とはいえ、裏社会での弱肉強食や理不尽さといったものはうまく描かれていて面白かったです。

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2024年03月07日

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ネタバレ

感想
読んでいて、アステカ文明に関する内容も深そうだし、話の流れに無理がない。作者は相当の文献調査と文脈構成力を駆使して作品を作ったのかが伝わる。

あらすじ
メキシコの麻薬カルテルで幹部をしていたバルミロは、他のカルテルとの抗争に敗れて命からガラジャカルタに逃げる。

バルミロはそこで再起をかけるべく、細々と麻薬密売をしていたが、ある時、日本人の臓器ブローカーの末永と出会う。彼は元心臓外科医で、日本で轢き逃げ事故を起こし、インドネシアに逃げていた。

末永は、揉め事をキッカケにバルミロに自分のビジネスの展望を話す。それは日本から子供を連れてきて心臓移植するブローカー業だった。

バルミロと末永は日本で心臓ブローカーの事業を始める。バルミロは、人材を集めて、殺し屋集団を作り出し、末永は心臓移植手術を進めていった。

しかし、終わりは仲間割れという形で突然訪れる。

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2024年02月05日

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ネタバレ

すごい話。視点がコロコロ変わり、序盤は誰が主人公なのか、展開が全くわからなかった。
麻薬、医療、刑務所、銃火器、南米、マフィア、アステカ、とにかくいろんな知識がないとこんな小説書けない、すごい。
無戸籍孤児を育てて心臓売買するという発想がすごい。
序盤で語られるキャラ設定ももちろん、登場人物の背景がきちんと説明されるのも良い。
最後に、末永の裏切りは予想外。その後の矢鈴は急に頭が悪くなったように見えるが、パニックだからか。
パブロは冷静で矛盾ない。
バルミロがコシモに殺されるシーンは映像化すると矛盾しそう、どう考えてもバルミロが有利。
コシモがパブロの娘にペンダント渡すのは良かった。
とにかくすごいスケールで圧倒された。

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2024年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すげぇ〜〜〜〜〜〜〜〜が最初に来る本だった。最後のページの3ページにも渡る参考資料を見て、心の底から作者を尊敬した。すごい、偉業だこれはもう。
話は結構あっちこっちに行ってるので 具体的なあらすじを説明するのが非常に難しい。端的に言えば麻薬の話だし、アステカ文明の話でもあった。
麻薬と言うと、地に落ちた人々が……みたいな語り口が多いような気もするが、この話の登場人物は全員イカれているので もはやコカインをやってるごときでは驚かない。ブラックな保育園に務める可哀想な女性の視点にたったかと思えば、その女はおもむろにコカインを吸い始める。日常風景からシームレスにクスリへと話が繋がるので変な笑いが出てしまった。章の区切りが全くないので途中まで気づかなかったが、この話は群像劇の形をとっているらしかった。
兄弟とつくりあげた麻薬組織を再建させ、憎き敵をうとうとしているエルボロと、彼が集めてくる仲間たち。これほど脳内に「イカれたメンバーを紹介するぜ!」のセリフが浮かんでくることは無かった。そして最後のピースとして現れるのが、冒頭で父親をとんでもねぇ腕力でぶっ殺して以降、まるで出番のなかったコシモだった。
正直コシモにはまっとうな人生を生きて欲しかったと思う。なぜなら彼はバスケが好きだったからだ。身長2mでバスケが好きならそれはもうバスケやるべきだろ!!!!おめぇのでっけぇ手は人を殴るためじゃなくバスケットボールを持つためにあるだろう!!などなど……不良時代のミッチーに思ったことと同じことを考えてしまった。ミッチーは喧嘩鬼弱かったけどね。あと何の因果か、こないだ宇都宮ブレックス(推しチーム)が戦った相手の川崎ブレイブサンダースがしれっと登場したのでびっくりしてしまった。しかも作中で実業団からBリーグのプロチームになっていた。なんでコシモとバスケが繋がったのか、そもそもこの血なまぐさい麻薬組織の話に突如バスケが登場したのか。これだけは本気で分からない。コシモは飾り細工的なものも得意だったという話もあるが、これはしっかり話の根幹に結びついていたので、マジでなんでバスケが登場したのか分からない。なぜ………ファンサ……?誰に対して……?
先日、闇の子供たちを読んでしまってからのテスカトリポカだったので、すっかり心が荒んでしまった気がする。そら売春に児童臓器売買に麻薬とアンダーグラウンドのオンパレードなんだからそうなるが。次はもう少し明るいものを読みたい。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

暴力描写が半端なくエグい。
登場人物ほぼ全員倫理観が終わってる。
犠牲になる人がとにかく可哀想。と、とにかく内容がハードでキツかった。

物語の背景にあるアステカ信仰の説明も、正直想像するだけで眉を顰めてしまうくらい残酷で生々しかった。
でも不思議とそれをスイスイ受け入れて読めてしまうのがまたこの本の恐ろしい所。


最終章のバルミロとパウロの対峙はとても好きだった。
一見して主人公をトロフィーにしたキリスト教とアステカ信仰の対決の様にも見えるけど、実際はどちらも「無垢なる主人公」の中にそれぞれの信仰を見出し、それぞれの信仰に殉教していった様にも思える。

キリスト教をよすがにしたパウロは、主人公の中の無垢さに善性を認め、これを自己犠牲で守る事で主の教えに殉じた。
アステカの神を信仰するバルミロは、最後主人公の中に主神の姿を認め、神に認められる為の儀として主人公に向かっていった。

「本当に無垢な存在」と、そこに信仰を見出す人達の対比があった様に見えて美しかった。

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2024年01月20日

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