【感想・ネタバレ】日本式モノづくりの敗戦―なぜ米中企業に勝てなくなったのかのレビュー

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日本式モノづくりの敗戦―なぜ米中企業に勝てなくなったのか 単行本 – 2012/12/1

中国と同じ分野で競争するのは無意味
2013年5月31日記述

1940年体制、超整理法、超勉強法などの著作を持つ野口悠紀雄氏の本。

本作では著者が従来から説明してきた製造業に固執しシェアを落とす日本についてだ。
本書は大きく分けて3部に分かれている。
その内最も精読しておくべきは1部だろう。

アップルがなぜ高収益企業であるのかの説明と中国でどのように生産体制を敷いているのかを説明している。
工場を持たないファブレス企業とはどんなものか分かるだろう。
(日本ではキーエンスが工場を持たないビジネスモデルを持っている。しかし、国内では少数だ)

水平分業の進む製造業で中国のEMSで製造可能なモノは日本国内で生き残るのは厳しいということ。
本書でも説明されていたことだがEMSは単なる中国の工場ではなく都市レベルの規模であることは注意しなければならない。
(iPod nanoを生産するフォックスコンという工場の労働者は45万人である)

かつての最終組立というレベルではなく中国製造業のレベルは確実に上がっている。
P69の中国貧困絶望工場という書籍からの引用である。
「まだアメリカ国内で労働集約型ビジネスを続けているなら、今すぐに手を引く方が出血多量で死ぬよりましだ」。と

日本の製造業が生き残る上で必要なこととして水平分業体制へ対応できるようになるべし。
中国の質的成長を無視した予測は無意味。
中国企業の実力は上がっている(特に製造業)
日本型雇用と中小企業支配体制では水平分業化の進む海外との競争に勝てない。
解雇規制が強すぎるため労働者の産業間移動が殆どない。
日本の製造業はエコポイント制などの補助策に支えられている。実質的に製造業の農業化が起こっている。

もう一点本書で重要な視点は新興国市場への過大な期待は持つべからずということ。
新興国では激烈な価格競争に巻き込まれ利益が思った程期待出来ない場合が多いのだという。
(楽天も中国でのビジネスからの撤退をしている・・)
新興国の人々の所得は著しく低いのは変わっていない。それを矛盾しないビジネスを展開すべし。

最後に海外人材の活用を訴えている。

はじめにでも述べていたように方向性を誤らないことが特に重要だと思った。
「頑張ろう日本」ではなく「考えよう日本」とは真に至言だ。

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2022年01月16日

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ものづくりに関わっているものにとって、気になっていた本です。
新興国の工場に行くと、日本式の運営方法が取り入れられている。すなわち、カイゼンや5S【整理、整頓、清潔、清掃、躾】だ。どんなに小さな工場に行っても、5Sは大きく表示されていて、日本式工場運営がグローバルスタンダードになっているのが垣間見える。
だが、これから日本の工場がどんどん海外に出て行ってしまうと、日本式工場運営の伝承が失われてしまうのではないかと思う。もしかすると、日本式工場運営を覚えた、東南アジアが次の担い手になるかもしれない。
著者はアップル、イコール水平分業の頂点として、評価しているが、日本はアップルを生む土壌はないのではないか。
しかし、日本の製造業は水平分業には向いていない。何故なら、日本の工場は現場が強すぎるからだ。
日本の製造業を今後どのような方向に進めばよいか、考えさせられるいい機会となった。

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2013年06月16日

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実質的に今年の1冊目。その意味でなかなか年初に相応しい1冊目だったのではないかと。

震災直後の野口教授の主張、「金融政策は今の日本には機能しない。今こそ大規模な財政政策が求められる」には、前半には大いに同意ながら、後半はものすごく条件を付けないと賛同出来ないところもあったが、この本で書かれていることにはほぼ全篇に渡って同感。

それは、具体策はあまり書かれておらず、現状に対する認識と今後必要な方向性が主な内容だからかもしれないが、垂直統合モデルで強みを発揮した日本の製造業が水平分業モデルによるハードよりもソフトでの競争環境下でいかに敗退しているかの解説はその通り。これはエレクトロニクスや自動車以外の業界でも同様の方向へ進むことは不可避であり、私が働いている業界においても他人事ではない。

その日本製造業の敗因と中国の状況解説を踏まえた上で後半は「新興国とどう向き合うか」、「改革の主体は、政府ではなく経営者」、「人材開国で日本を活性化」という章題で日本、そして日本企業が今後取るべき方向性について論じられており、新しい年の初めに大いに考えさせられた。

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2013年01月06日

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農業→工業→金融その他サービス業
と産業の中心が移動してくるのは、経済発展の宿命
アメリカはすでにGDPの中心が工業ではなくなっており、そのため、為替の動きに対してそれほど激しく反応しない。
日本の保護政策は、一昔前は農業保護だったが、今や他の産業を犠牲にして工業を保護する動きになっている。しかし、それは時代に逆らう動きであって、うまくいかないだろう。
この本は、アベノミクス以前に書かれたんだが、この本の予測からすれば、今の円安、株高は、2003-5頃と同じく、ファンダメンタルが伴わない、一時的な動きということになろう。

将来有用な能力は、専門家としての経営者、ソフトウェア関係の技術者でしょうか。

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2019年05月21日

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・工場のない生産こそアップルの高収益の源
・グーグルとトヨタは本質的に異なる企業
 -トヨタは国家の後ろ盾で大きくなった
・日本の携帯は競争でなく囲い込みの戦い
・垂直統合vs水平分業
 -日本の電気通信は戦後の電電公社独占の影響を受けている
 -競争はハードでなくソフトとで行われる
 -ハードはルーチンワークであり新興国で行える
・巨大EMSと協働するサプライチェーン
 -中国に最終製品を共有しても利益にはならない、中国の工場に部品や機械を供給数することが重要(地の利を生かせる)
 -フォクスコンの利益率は2~3%、日本がいくら頑張ってもこれ以上の利益は上げられないという事だ
・もともとは国有企業が自動車生産→政府と関係のない独立系メーカーが頑張っている
・旧体制の強固な岩盤
 -囲い込みと住み分けの蛸壺体制
 -垂直統合を生んだ20世紀型技術
 -トヨタを頂点とする巨大企業→レベル1、2、3、4、5までの系列
 -給与格差をつけられる

・脱系列で零細企業が生き残る道は
 -技術で水平分業化し、マーケットを海外に求め、外国人従業員を活用
・中国の大企業は国有企業であり、金融は中国が遅れている
・残酷なほど明白な日米取引所の実力差
 -巨額な資本を持つ日本は活用できていない
・中国経済は日本の3.5倍になる(GDP)
 -2030年には米国40兆ドル、中国35兆ドル、のG2
 -日本は10兆ドル程度
・日本は1940年体制が尾を引いている
 -1980年代の技術体系の転換は市場活動の優位性を高めるものであった
・日本企業のアジア戦略は間違っている
 -市場が成長するのは事実だが、収益確保は別のこと
 -他のメーカーが既に参入しており、厳しい競争
 -新興国に求められるのは、高品質というよりは低価格の製品
 -中国の富裕層=日本の中間層
 -中国にシフトすれば利益の絶対額が減少
・崩壊寸前だがまだ日本のブランドは残っている
・1990年代に脱工業化が進展した
 -必要なのは新しい産業を興すこと
 -アメリカGDPの製造業20.5%(1985)→11.2(2009)
 -農業化した日本の製造業、ものづくりに固執
・旧秩序の破壊者が新しい世界をつくる
・日本企業は過剰雇用を抱えている
・中国大卒者の就職難→人的資源の受け入れに門を開けるべき
 -専門家に場を提供して国を栄えさせよう
 -日本は中国の民主化に寄与できる

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2019年01月30日

Posted by ブクログ

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チェック項目22箇所。日本の中心産業である製造業全体が深刻な経営危機に直面している、「その他」ではなく「中核」が問題を起こしているのだ、このことこそ、日本が抱える問題の本質である、個々の細かい対処でなく、基本の方向付けを誤っているために、こうした事態に陥っている。いま日本にとって必要な標語は「考え直そう日本」である、「日本を含む先進国は所得が低く、新興国の大部分の人々の所得は著しく低い」という当然の事実を再確認し、それと矛盾しないビジネスモデルを構築することである。自動車をはじめとする多くの分野の企業が、「これからの市場は新興国」と考えている、新興国の市場が成長することは疑いないが、そこで利益を上げられるかどうかは、まったく別問題だ。新しい産業の構築には、人材が決定的な役割を果たす、1990年代の世界を見ると、外国人がそうした役割を果たした事例が多い、外国人排斥に凝り固まっている日本人の考え方を根本から変えることだ。iPhoneの原型はNTTドコモのiモードだ、タッチパネル方式もゼロックスが開発したものであり、アップルはそれを真似ただけだ、さまざまな技術の組み合わせから、従来はなかった新しいコンセプトの製品を作り出したことが、重要なのである。iPhoneの重要な点は、タッチパネルというよりは、背後にインターネットがあることだ、iPhoneによって、個人レベルでのクラウドコンピューティングが始まっている。日本企業が不振を続ける基本的原因は、企業外部の問題ではなく、企業のビジネスモデルそのものにあると考えざるをえない、条件が大きく変化したにもかかわらず、古いビジネスモデルに固執することが間違いなのだ。日本にも競争はある、しかし、それは電波の質と価格の競争ではなく、利用者の囲い込み競争だ、これは一見したところ競争に見えるが、クラウド大戦争とは本質的に異質のものである、なぜなら本来の競争は進歩をもたらすが、囲い込みは停滞とガラパゴス化しかもたらさないからだ。アジア新興国の市場は、急拡大している、たとえば、中国での2011年の自動車の生産台数、販売台数は、ともに1800万台を突破し、3年連続で世界首位となった。アジア消費者市場への参入が日本企業の救世主にならないと考える第一の理由は、他の先進国や新興国のメーカーがすでに参入しており、激しい競争が展開されているからだ。第二の理由は、新興国で求められるのは、高品質の製品というよりは、低価格の製品であることだ。ブランドは残っている、アメリカの消費者は、自室にはビデオを置くが。居間に置くのはソニーやシャープだという、そうするのは、画像が優れているからではない、ソニーやシャープがアメリカ市場に残っているのは、性能がよいからでなく、ブランド力があるからである。日本の企業は「よいモノを安く作る」のがモノづくりだと思っている、現実には日本のテレビは「普通のモノ」になってしまった、それでも高く売れる、つまり、「普通のモノを高く売る」ことも可能なのだ。日本の場合には、そもそも「経営者のマーケット」が存在しない、だから改革者を国内に求めるのは、難しい、外国に求めるほうが効率的だ、実は日本はこうしたスタイルの改革をすでに経験したことがある、それは第二次世界大戦後の連合国による占領である、最高権力者が入れ替わり、国家運営の最高目的が、戦争遂行から経済成長に変わった。これまでの日本tの中国との関係は、「中国で生産された消費財を日本が輸入し、中国に対しては日本が資本財を輸出する」というものであった、ここにおける中国の役割は、単純労働力の供給である。日本が目指すべき方向は、いま中国に出現しつつある新しい世代の能力を活用することである、つまり中国を知識労働者の供給国と見なすことだ。労働力減少に対する適切な対策とは、外国から労働力を受け入れることである、これは世界標準の考え方だ、日本だけが外国人労働者に固く門を閉ざしている、これはまったく非合理な態度だ。専門家の採用はもっと広い観点から考え、即戦力を求めないほうがいよい、それよりは企画力や発想力を求めるべきだ、日本企業に足りない部分を補ってもらい、可能性を拡げる、という発想が必要だ。中国人人材の利点は何か、まずどのような分野であれ、英語力に期待できる、英語力は日本企業が水平分業を実現するためにも必要だ。先端金融も、日本が遅れている分野だ、この分野で中国の教育が格別優れているわけではないが、中国人の英語能力に期待できる面が多い。イギリスの人口は日本の約半分だが、移民の「出」は日本の6.1倍、移民の「入り」は日本の3.2倍となっている。イギリスが持っている旧植民地との強い関係に相当するものを、日本が持っていないのは事実だ、また、英語が世界語になっているために、グローバリゼーションが進んだ世界でイギリスが有利な立場にいることも事実だ。21世紀は、米中というG2がリードする時代になることは否定しえない、しかし、日本はのけ者ではない、世界の方向付けに重要な影響を与えられる、それが、日本の未来をも左右するのである。

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2013年05月21日

Posted by ブクログ

・日本企業は、事業の中核部分が赤字を起こすという大問題を抱えている。
・アップルは独自技術を新たに開発したわけじゃない。そもそも新しい技術なんぞ、原爆とロケットくらいなもの。
・一票の格差は、農村対都市という側面もあるが、第二次産業対大三次産業という要素もある。
・大学のキャンパスの国籍構成比が次の20年後の姿。
・日本企業は垂直統合に美学を感じてきたが、これがまずい。
・日本は、自動車減税やエコカー補助など、製造業中心の保護をしようとしているが、全く間違っている。
→対外資産の運用利回りをアップしろ。
・中国で造ればたくさん売れるので利益が出るというのは幻だ。

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2013年02月02日

Posted by ブクログ

■日本産業の方向

A.現在、アジア新興国の市場が急拡大している。日本企業も参入すべきとの意見が多いが、新興国に最終消費財の市場を求めるのは間違っている。その理由は、次の通りである。
・他国のメーカーがすでに参入しており、競争が激しい。
・新興国では低価格の製品が求められるが、日本の製造業は、低価格製品の生産において比較優位を持っていない。

B.日本企業では、少数の例外を除き、水平分業化・ファブレス化がなされていない。それは、利益の追求ではなく、「従業
員共同体の維持」が企業経営の目的になっているからである。

C.日本の製造業が赤字に陥る中、アップルは驚異的な高収益を上げている。その源は、次のようなものである。
・部品の供給メーカーを固定化せず、条件の変化に応じ、常に最適な相手と取引する「水平分業方式」でコストを下げる。
・「ファブレス化」(工場がない製造業)の実現。すなわち、低付加価値の生産・組立工程を外注し、自らは開発、販売
という高付加価値業務に特化する。

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2013年02月09日

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