【感想・ネタバレ】星宿海への道のレビュー

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Posted by ブクログ

ずいぶん久しぶりに宮本輝の小説を読んだ。何でこんなにしばらく読むことなかったんだろうと思うくらいいい小説だった。いや、この小説がいいという以前に、宮本輝の小説ってやっぱりいいなと思った。貧しいけど品がある人々の物語という感じがするのだ。この小説なんかもそうで、物乞い生活をしていた幼い雅人とその母親の様子が悲惨さがなく仲よく明るく楽しそうに見えたというのなんか、物乞い生活の人をそういう描き方をするのも含めて象徴的だと思う。
しかし、自分なりに清貧だけど満足しているらしき暮らしをしているように見えた雅人だけど心のなかではずっと母親の面影だけを抱えて生きていたんだね。それはどこか実生活でありながら現実に価値をおかないような生活だったんじゃないだろうか。それが千春との間にせつができたことで、人生を清算しようという気持ちになりカシュガルで消息を絶ったんじゃないかなあ。あるいは生まれてくる子どもに亡き母の名をつけてくれるよう頼んだことでやることをやり尽くした気で消息を絶ったかもとも思う。
狼に育てられたため結局人間の生活に慣れることのなかった子のようだと書かれてもいたけど、心に巣食ったものに抗えないように雅人はその生い立ちや経験からそういうふうにしか生きられなかったのかなあ。ちょっと勝手な気もするし、一方でこれだけ周りに気にかけてくれる人がいるというのにかわいそうな人だという気もする。

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2021年08月15日

Posted by ブクログ

「星宿海への道」
読み終わった後、鳥肌がたつような一冊。

弟の語り口から壮絶な過去を持つ兄との回想シーンから始まる。
全ては繋がっている。
輪廻転成や縁を感じずにはいられない。

本来の星海宿、兄が想う星海宿。
母が見た星海宿、全てはつまるところ繋がっていた。

家族というものをもう一度じっくり考えてみたい人におすすめ。

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2019年12月30日

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中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した瀬戸雅人。

物語は、雅人の2歳年下の弟・紀代志と、彼の子を身ごもった千春の視点で進んでいく。

雅人は彼が8歳の時に、瀬戸家の養子となった。

それまでは、盲目の母と橋の下で物乞いをしていた。

母の死をきっかけに、紀代志の両親が雅人を養子にしたのだ。

進学を勧められながらも、中学を卒業してタツタ玩具に就職して30年以上。結婚もせず、地道に、地味なおもちゃを売って生き抜いきた雅人。

雅人が少年の頃から憧れていた「星宿海」。

そこから遠く離れた場所で、彼は突然に姿を消した。

「もし子供が女の子だったら『せつ』という名前をつけたいと思います」

「せつ」は雅人の実の母の名前。

宿命に翻弄され、どん底のような境遇にありながらも、強く明るく生き抜いた母子。


弟の紀代志が、恋人の千春が、雅人の人生をたどっていく中に、幾重にも深い人生の様相が見えてくる。

宿命の嵐に晒されても、人は生き抜いていく。

人間をだますのも人間。だが、人間を救うのも人間だ。

胸の奥に手を入れられて、心をがっちり捕まれたような重さがこの小説にはあった。

宮本輝の人間賛歌、ここにあり。

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2019年07月12日

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久しぶりに凄い小説を読んだ気がする。
実はスケールが非常にに大きくて深い。

ウイグル族とのつながりが気になっていたが、なるほどなあ。

尾道が好きで二度行ったが、やはり日帰りではなく、時間をかけて島まで渡ってみる必要があるなあ。

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2018年08月27日

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子供を身ごもっている時、一気に読みました。
輝さんとの出会いは高校生の時ですが、この作品と出会い、自分の中で第二次宮本輝ブームが起りました。

作中にあった「生きなおす」。
このフレーズが今でもココロに浮かびます。

子供を育てる事で「生きなおす」。
息子は今6歳ですが、子育てを終えた時、私は私を好きでいたい。

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2010年08月12日

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宮本輝の小説は、とてもたくさんのものが詰まっていると思う。この小説では、特にそのことを強く感じました。生と死、愛と恨み、孤独、人生における偶然、運命、意志の力、幸せ。いろいろな事が思い浮かびます。あと、しまなみ海道に行きたくなりました。本文中の風景を自分で見てみたい。

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2011年07月18日

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中国を旅行中に姿を消した雅人。
血の繋がらない弟や籍を入れずに彼の子供を産んだ女性、学生時代からの友人たちが彼の安否を想う。
雅人には簡単には語れない過去があり、姿を消した地にはある思いがあった。
真実はわからないが、それに近づいた時、彼に関係する地に引き寄せられる。
そして、雅人の人知れず抱えていたであろう出来事に胸を揺さぶられる。

2014.12.13

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2014年12月14日

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宮本輝らしい作品

ラストは少し消化不良

読み応えあり。

雅人という人間性にひかれ
ラストまでずんずん読める。

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2014年04月20日

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宮本輝の本はいつもそうであるが、壮大な空間で展開する。この本もしかり。戦後の貧しかった日本がストーリーの根源。ストーリーに終わりがあるようでない。ひとつの区切りとしておわっていく。私は、宮本輝の海外に展開する話が好きだ。

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2011年11月27日

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忽然と姿を消した瀬戸雅人。
血のつながりの無い弟が雅人の足跡を辿るうちに明らかになる
兄の人生。

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2009年10月04日

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ここ最近宮本輝先生の本を立て続けに読んでるのですが、読んでてずっしり来過ぎて咀嚼するのにパワーが入ります。適当に読めないのです。そのぐらい、心に響きます。

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2023年08月20日

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ネタバレ

雅人は異族として瀬戸家に紛れていただけだった。弟のきよしはずっと一緒に住んできた兄のことを全く理解できていなかった、本当の家族にはなれなかったことを知った。雅人にとって本当の家族はせつだけだったのだ。雅人にとって星宿海はいなくなってしまった母の思い出。母から聞かされた昔話と先生から聞いた黄河の源流の風景の妄想が生み出した、雅人と母が作った場所。

それぞれの道を辿って「星宿海」に辿り着いたことで、千春も雅人も家族になったんじゃないかなあ

宮本輝の小説からは、町工場の油臭さと泥の匂いがする。

お母さんが身体を売るところを見るのは辛くなかったのかな。あの親子が一緒にいるときはいつも屈託がなく幸せそうだった、というのが印象的。人の居場所を奪うのは大概人の目だったりする。

千春と雅人が関係を持つとき、雅人がまるで大きな赤ちゃんであったというのはなんでだろう。雅人はずっと大人になれなかったのか?それとも千春に母を重ね合わせていた?行為から娼婦としての母を千春に重ね合わせていたのか?わからん…

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2021年02月25日

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星宿海への道

雅人という1人の男性が抱えていた、戦後から現代に至る壮絶な人間模様を描いた物語。

雅人に関わってきたひとりひとりの人生や想いがそれぞれ交差して、読み終わった後何とも言えない気持ちになりました。

再度、丁寧に読み返したくなりました。

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2020年07月04日

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あらすじ
中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した瀬戸雅人。彼の帰りを待つ千春と幼子のせつ。血のつながりのない弟・紀代志がその足跡を辿るうちに明らかになる兄の人生──。少年期からの憧れ、黄河源流にある「星宿海」とは? 雅人が抱えていた戦後から現代に至る壮絶な人間模様を、抒情豊かに貫く感動巨編。

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2019年11月05日

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ネタバレ

中国で消息を絶った義理の兄探しをするために、弟がいろんなツテを辿って、その兄に知られざる半生に触れていく。この手の失踪者の足跡をたどるヒューマンミステリーみたいのが、平成の宮本輝作品に多いが、類作同様やや凡作の感じが否めない。

出だしは印象的なのだが、途中、ペースが落ちる。
物乞いをしていた実母を失い、その実母を喪わせた原因のある家庭で養われながらも、決してひねくれていない兄。第一章の家族愛は涙をそそるのだが、関西特有のいぎたないチンピラとか娼婦とか、この人の作品にテンプレ的に出てくるあたりや、特にヤマもなく伏線もなく淡々と進む筋書きに飽きて、一旦投げ出した。

母への思慕が深いのはわかる。が、五十男が仕事も、産まれたばかりの母子を放り出して、自分探しってどうなんや! アホか! と言いたくなった。

飛ばし読みしたところ、確かに失踪するやむを得ない事情はあったろう。母の復讐のために人生を棄ててしまった。ただ金貸しというテーマ、おそらく作家の青春時代の痛恨事なのだろうか。

全体として、火曜サスペンスみたいな感じ。
この人の初期作はおもしろいのに、年とともにつまらなくなってくるのが哀しい。

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2015年05月06日

Posted by ブクログ

こういう小説がかける人ってどんどんいなくなるのかなぁ。荒々しい感じ、が今の脱力感、と比較されてとても新鮮です。新鮮といっては失礼かもしれないが。

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2014年06月10日

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タクラマカン砂漠の村から、自転車とともに消息を絶ってしまった兄。
血のつながらない弟が彼の過去に迫っていくうちに、自分の知らない間に兄と将来を約束していた女性と兄の子どもとも出会う。
いつも兄との間に“溝”のようなものを感じていた。
いったいに兄の過去、人生とはなんだったんだろうか・・・。

過去を追って、いなくなってしまった人の人生に迫る話。近くにいたはずなのに、いつも遠くに感じていた。人間って、結局は理解し合うことは難しいのかな、ってやっぱりなんだかドンヨリしてしまうのよね。

ただお兄さんが、その過去を抱え込みながら、前を向いて歩いていこうとしていたんじゃないか、っていう終わり方のような気がしたのだけは救いだった。

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2010年08月15日

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中国慮国中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した雅人。
彼の帰りを待つ、千春と幼子せつ。血のつながりのない弟・紀代志がその足跡を辿るうちに明らかになる兄の人生。

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2009年10月13日

Posted by ブクログ

中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から自転車に乗ったまま行方不明になってしまった、血の繋がりのない兄・雅人。
その兄の消息を探す弟と、雅人の帰りを待つ恋人。。。。
黄河源流にあると言われる「星宿海」をキーワードに、雅人とその周囲の人々の壮絶な人間模様が描かれている。
この作品は、少々重かった。
人は元々は物乞いの母と一緒に物乞いをしていた少年で、母の死後、その死に関連して後ろめたい気持ちのある紀代志の両親が引き取って、紀代志と雅人は兄弟として育つ。
作られた家族は、どこまでいっても作られた家族で、本物のの家族にはなりえないのか。
雅人の心の奥底には亡き母の姿がずっとあって、その姿を星海宿に照らして、ずっと星海宿に
恋焦がれるように執着する雅人。
家族とは何なのか?人と人との繋がりって何なんだろう。
読んでて切なくて哀しくて。。。
最後は、未来に希望を見出そうとする人達の姿が描かれているけれど、スッキリしない読後感だなぁ。。。。

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2009年10月04日

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