【感想・ネタバレ】演技と演出のレビュー

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Posted by ブクログ

演出家が書く演技と演出について。
そもそもプレゼンとかコミュニケーションに役立つような何か知見がないもんかと手に取った本だが、期待以上に面白くて。

名作の条件とは「社会的テーマ」と「人間的テーマ」の両極がしっかり描けているかどうか。刑事ものでカツ丼が出るのは、刑事とか容疑者という社会的な人物がいる場面で「食べる」というきわめて人間的な行為を挟むことで、よりその人物たちの人間的な存在を強調するんだって。

最近みたフジテレビの「それでも、生きていく」なんかはまさにこれを象徴してて、被害者家族と加害者家族という究極な社会的テーマに、家族愛や人間の尊厳を掘り下げて描いていた。少し笑いの要素なども添えて。
俳優陣の演技力に加えて、こうした演出効果がうまかったんだなあと今更感心。今後映画やドラマを見る目がちょっと変わるかも。

演劇ってのは時間の流れの中の芸術だが、絵画にしてもこの本に書いてある様々な演出のさじ加減を意識することで、伝えたいものの幅が広がるような気がする。ビジネスにも通ずるところはある。

新しい気づきが多かったため星5つ!

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2013年01月23日

Posted by ブクログ

何に、はっとしたかと言えば、『コミュニケーションの出発点は、「人それぞれ、言葉から受けるイメージが違う」という点にあると考えています。』というくだりだ。最近そのことばかりを考えていたから。自分が勝手に定義している言葉と、相手が考えている言葉は全く違うものであるから。それを「摺り合わせる」ためだけに、コミュニケーションをしているといっても過言ではないだろう。だからこそ、何をすると、どうなる、というイメージをあらかじめ共有していることは、虚構を本物に見せやすい。言葉にはそして、必ずコンテクストがついてくる。見えないコンテクストを見えるようにして、ことばにくっつけてやると、そこにシチュエーションが生まれる。ということらしい。

また、部分にわけるのではなく、複雑なものを複雑なまま記憶すること、の重要性について触れられていることにもびっくりした。まさに頭のよい子が育つ家は、これを狙っているから。人間というのは、細かい理屈で動いているのではなく、複雑なモノを無意識に同時並行に動かしたとき、いいものが生まれてくるようだ。これはつまり、理屈の通りが良い人が必ずしも、センスがいいわけではない、ということに通ずるのだろう。

いずれにしても、平田オリザという人が、これだけ自分の暗黙知を言葉にできることに驚いた。本当に。逆に言えば、普段からこれだけのことを意識的にはっきりと自覚しながら演出を行っているという事だろう。そういう人がいる、という現実に本当に驚いた。

自分の人生を演出する必要がある全ての人間に必読の一冊。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

(01)
演劇は生きることそのものではないが,生きることに少し似ていると著者は締め括る.その似る姿は,この人間はあの人間に似ていながら,かつ互いに他者であり続けることに相似している.人間社会と個人生活を映し出す演劇ではあるが,それは観るものにとっても演じるものにとって,社会や個人そのものではないが,似たものとして舞台において提示されている.ワークショップの試みは,他者を通じて社会や個人を探る行為でもあり,そのものの延長に演劇があるとも言える.
著者の経験的な理論から近代演劇史に基づいた理論(*02)までが,テスト的なテキストを用い,ワークショップ成功のポイントを示しながら論じられていく.動作や言葉が織りなす他者との関係性がワークショップには現れており,その関係性に介入するのが演出の役割とも考えられ,同時にそれは社会の改革や個人のカウンセリングにも通じる手法でもあるのかもしれない.

(02)
スタニスラフスキーが俎上に,あるいは槍玉に挙げられる.また,ブレヒトの演劇理論についても触れられる.宗教とカルト,ワークショップとメソッドは,時に人生を壊し,社会を壊す危険性があることを示している.人は木になることはできないが,木を強制させられ,その強制に演者自らの意志を集中し,没入する危険は,演技という行為のどこかにいつも潜んでいる.ブレヒトの「なーんちゃって」という覚醒は,その洗脳や没入から救い出す手立てとして論じられていく.集団や社会の現代的な問題を視野に入れた指摘と言えるだろう.

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2024年02月23日

Posted by ブクログ

演劇を長くやっている事のあるけど、あらためてなるほど、と思う事が多かった。ことばにするむずかさを感じる事もある中で、オリザさんのことばは端的でわかりやすくしてくれる。わかりやすく感じるのは演劇をやっていることもあると思いますが。

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2023年02月06日

Posted by ブクログ

演出家平田オリザさん著作イプセン人形の家、チェーホフかもめ等の等身大の演劇により約140年前位に誕生した
演出家。漫画ガラスの仮面的スタニスラフスキー的内面探究重視演技か小劇的観客の感情移入を拒否するブレストのなーんちゃって演技かいい演技、いい演出とかよくわからない。

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2021年03月24日

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20代の頃によく演劇を観ていましたが、このような芝居を作る側のマニュアルを読むことで演劇への理解がさらに理解が深まると思いました。
プロではない学生演劇、翻訳もののお芝居も観たことがありますが、その時の違和感はこういうことだったのねと納得しました。
翻訳ものは単に役の名前がエリーだのトニーだのと日本人同士で呼び合うから違和感があるのかと思っていましたが、それだけではなく、この本でいうところの西洋のコンテクストと日本人のコンテクストは違うからなのですね。
脚本をつくり、役者とコンテクストのすり合わせを組み立てていく脚本家のお仕事の大変さもよく分かりました。

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2017年11月07日

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これはかなりタメになった。出来ればそのうち手元にしっかりと置いておきたいぐらい。平田オリザさんの戯曲は恥ずかしながら未読なのだけど、そのうち読みたいとは思った。

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2014年01月27日

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「ですから私たちは、主体的に喋っていると同時に、環境によって喋らされているのです。」
読もうと思った理由:プレゼンスキルの向上のため

大切なのは違和感なく話すこと。人それぞれに癖があり、また、自分が思っていることと相手が思っていることの間にある”相違”を意識しなければならない。話すほうも聞く方も人間的存在であるので、違和感なく話をするには手順が必要である。

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2013年11月25日

Posted by ブクログ

 仕事柄の興味もあって読み始めた。でも実は平田オリザさんの演劇を観たことがない(笑)。まあその分、この本が自分にとって面白いかどうかという点で読めたけど。。。 前半ちょっとかったるかったけど、中盤から終盤は面白かった。しかしこの本の色分けで言うと現代演劇というのが僕は多分あまり好きではないような気がするので、職業的な関心がなかったら面白いと言えるかどうかは微妙かも。

 ただ、演出ってなんなの?演技ってなんなの?という疑問を、全くもったいぶらずに、全く先入観なしで、平易に語ろうという姿勢は好感。とっても公平で冷静で謙虚であろうとする意志が感じられて、それは恐らく編集姿勢も含めて後味の良い読書でした。

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2013年03月19日

Posted by ブクログ

演技・演出の世界なんて知るはずもないが、興味を持って読んでみた。
今後も役に立ちそうなことを3つに挙げてみる。

・イメージを共有する際は、共有しやすいものからしにくいもの移っていくとよい。
・観客にいくつかの想像の選択肢を与えて想像を膨らませたなら、答えを見せてその想像力を閉じてあげなくてはいけない。その際、観客が予想した通りの答え、予想しない答えを提供できる。
・社会的な話によりリアリティを感じさせるならば、人間的な話を間に挟む。逆もまた同じ。対比することで、現実味が増す。

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2012年09月17日

Posted by ブクログ

現代演劇にかかわる人、とくに、演劇をかじった人にはぜひ一読をおすすめしたい。

今の時代に生きている私たちが、演劇という「ウソ」の世界を提示するときに、どんな言葉を使うのか。どんな風に見せるのか。

いろんな可能性が、歴史があるからこそ成っていると思えるハズ。

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2012年09月13日

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これは演劇に関係ない人(俺だ)もおもしろいと思う。演技とか演出という時に何が起こっているか。現実に似ているように見える演技に何があり、何がないか。

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2013年09月25日

Posted by ブクログ

広報に役立てばといいなっと思い読んだ本。結果最高に役に立つ。
「個々の作品が名作となるかは二項対立の逆のテーマ(社会的or人間的)をきちんと描いているかどうかにかかってきます。」これは広報にも経営にも全ての演出で言えるなっと思った1番印象的な一文。

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2011年02月20日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
優秀な俳優の条件とは。
演出家はなぜ必要なのか。
演劇的な感動をどう起こすか。
芝居づくりの基本が誰でもわかる画期的な入門書。

[ 目次 ]
序章 演技とは何か?演出とは何か?
第1章 イメージを共有する
第2章 意識を分散する
第3章 コンテクストを摺り合わせる
第4章 観客の想像力を誘導する
第5章 実験を繰り返す
第6章 演出とは何か?

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年11月20日

Posted by ブクログ

四年前くらいに読んだ。
『演劇入門』を読んでから読むのがオススメ。
芝居をはじめたばかりの人には非常に勉強になる。

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2010年06月02日

Posted by ブクログ

私は
人が生きることそのものが
ある意味で「演劇」だと考えています。

配役から脚本から、演出から監督まですべてを自分が決めて演じていく演劇だと。

もしかしたら、その点では平田オリザさんと同じ方向を向いているのかもしれません。

素敵なコトバを紹介します。

「・・・・
演劇は、一生をかけるに値する、すばらしい仕事ですが、
しかしそれは、
身体や精神を病んでまでやるほどのことではない。
その一歩手前で踏みとどまれるかどうかに、
君たちの成功の鍵があります」

そうなんです。

人生は、
自分が演じかつ演出する、その2つのミカタを持っていることがとても大事なのです。
ぐんとのめりこみ、パッと全体を見通すバランス力が必要なのです。

自分だけが演じるドラマではなく、そのドラマを観る自分がいること。
一人何役もこなすドラマなのです。

また、平田さんはこういっています。

「・・・・おそらく、
すぐれた演出家ほど、
構成のチカラと、それを実践する演技指導の2つのバランス感覚を
しっかりと持っているのです。・・・」

そうなのです。

人生の中にある仕事もまた、
この演出家のように
構成し届けるべき人にその作品の「何たるか?」を届けると同時に、
その構成に沿ってその作品を仲間と「どう創るのか?」を考え行動する2つのミカタが必要なのです。

題材は、演劇に関することですが、
人とともに何かしらのカタチを創り上げることについて
考え方とその手法を手にする新しい視点からのヒントを得ることが出来るのではないでしょうか?

わかりやすく面白い一冊です。

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2010年06月02日

Posted by ブクログ

セリフに解釈はせず、カオスをカオスのまま提示する平田オリザの演出論。内面の作り込みではなく、どうすればリアルに聞こえるセリフが言えるような環境が作れるかという理論を興味深く読んだ。

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2019年03月14日

Posted by ブクログ

ここ1年くらいで「劇」というものを見に行くことが増えて、ここらでちゃんと演劇というものを知りたいな、と思って手に取った本。言われてみれば確かに「演出家」って何をする人なのかあいまいなイメージしかなかったけれど、コンテキストを埋めること、と言われるとなるほど納得した。
文中でガラスの仮面が特定の年代の女性に刷り込んだ、演劇に関する誤謬の悪影響を語っているけれど、私まさにそれだ・・・。

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2017年01月09日

Posted by ブクログ

演技と演出、ハウツー本である。
人前であがらないためのヒントがありました。
実践は難しいけれども、できるとこから始めます。

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2013年03月24日

Posted by ブクログ

緊張感や喜びが観ている人にも伝わって、結果としてそこに本当にはない縄が見えるようになるのが、演劇を支えているメカニズム。演出家は、このメカニズムを駆使して、虚構を本物らしく見せる。
イメージの共有のしやすいものから入っていって、イメージの共有のしにくいものへとたどり着く。
演出家の仕事は、この関係のイメージ、コンテクストを明瞭に示していくことであり、俳優の仕事は、そのイメージを的確に掴んで他者との関係を織り上げていくことにあります。

「間」を観客の想像力を見積もって、その範囲内で取ることが重要。ただし、想像力を閉じる作業も必要。どこで、観客の想像力が開き、どこで閉じていくのかを考えるのが、演出家の仕事
あたかも観客が自分で気付いたかのように仕向けるのが、演出の仕事。そのためには、どうしても、一度観客の想像力が大きく開く瞬間を作らなければならない。観客の脳の中に、無意識にいくつも選択肢を作っておいて、その中のひとつを、観客があたかも自分で選んだかのように誘導していかなくてはならない。
観客はわがまま。「分からない」と言っては怒り、「分かりやすすぎる」と言っては、また不満を言う。
観客の想像力の幅を意識して、その範囲内で作品を創ること。

社会的会話ー人間的会話の2つの会話スタイルを、バランスよく構成する
社会的なテーマを扱う作品ほど、人間的な側面を掘り下げて書かなくてはならない。人間的なテーマを扱う作品ほど、その社会的な背景をきちんと描かなくてはならない ex. 障害者のテーマ→恋愛の問題、東京物語 家族、親孝行のテーマ→都市への人口流入の問題→普遍性
俳優の演技においても同様 社会的な役柄、社会的な台詞の多い役柄を演じる時ほど、その人が、暑がりなのか寒がりなのか、紅茶が好きなのかコーヒーが好きなのかを考えなくてはならない。人間的な役割を演じる時ほど、その人の社会的な背景を考えなくてはならない。 
ex. 科学者に見えるのなら標準的な科学者像から最も遠いところを探さなくてはならない 「最も遠いリアル」
いかにも科学者らしい姿を見せつけられても、観客は退屈するだけ。誰も思いつかない、しかし、形をして提示すれば「うーん、言われてみれば、たしかにそんな科学者もいるな」と思わせるそんな人間造形こそ、追求しなければならない。

喜劇、演劇的な笑いは、人間的なものが、社会的なものに浸食してきた時に起こる。 ex. タキシードを着た紳士がバナナの皮で滑る
社会的な構造を壊す、バナナの皮にあたるものを見つければ、演劇的な構造を作ることが出来る。そのために、実験を繰り返す。

作家の主題を的確に観客に伝える事を第一義とした近代演劇→世界の混沌を混沌のまま描こうとするのが、現代演劇

スタニスラフスキー メソード演技
ブレヒト 異化効果 観客が常に冷静に物語を観察し、社会への批判能力を高めるようにというのがブレヒトの「叙事演劇」

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2009年10月07日

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