【感想・ネタバレ】葬送 第一部(下)のレビュー

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Posted by ブクログ

第1部の締めは見事に芸術の本質をえぐっている。

ドラクロワの使用人ジェニーがことのほか好ましい。そして、ドラクロワの人間味も。

精神的なひ弱さ(ショパン)、傲慢さ(サンド)が恋愛の末期を通して、描かれている。いつの間にか感情移入している。そして、何かの教訓を引き出そうとしている。

中年のビルドゥングス・ロマンを描くにはこのような文体でなければならなかったのかな、と思える。次第にこの文体に親しみを感じてきた。

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2016年01月15日

Posted by ブクログ

読み終わって放心状態・・・。

何と言う世界観・・・。

文章で、これだけの世界を伝えられるのは凄い!
圧倒的な文章力、表現力。

一部の上巻から、随分主人公たちに動きがあり、お話としても面白いのに、とにかく文章が凄い。

一行読む度に溜息が出る。

気に入った場所に付箋を付けながら読んでいったら、付箋だらけになってしまった。

そのくらい気に入る表現が満載だった。

この巻の最後、国民議会下院図書室の天井画の完成の件は圧巻。たかが読書で戦慄を覚える程。

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2015年08月28日

Posted by ブクログ

ここで中心となって描かれるのはサンド夫人の娘であるソランジュと彫刻家のクレサンジェとの結婚と、金の絡んだ複雑な愛憎劇です。俗になろうと思えばいくらでもなるテーマをここまで重厚に纏め上げるのは凄いです。

やっと。やっとのことで読み終えました。しかし、これでもまだ道半ば。まだ後半分残っているかと思うと楽しみであり、また長い旅路になるなぁと思いながら最後のページをめくりました。ここで中心に描かれるのはサンド夫人の娘であるソランジュと、彼と夫婦関係になる彫刻家のクレサンジェが軸になって描かれます。

その結婚をサンド婦人は了承し、あちこちに手紙を書いてそれを知らせるのですが、その愛人であるショパンは重篤な病に伏せっているのでした。彼と親友で画家のドラクロワはクレサンジェの性癖―軽佻・利己・浪費―を普段からよく知っているだけに、この結婚がはたしてうまく行くのかと大変不安がっているところから始まります。

その危惧は残念ながら的中し、クレサンジェは持参金の名の下にサンド夫人から20万フラン(残念ながら当時の価値はわからない)をせしめるためにあの手この手を使って画策をするという場面に相成るわけでございます。それにしても人間の愛憎劇をここまで濃密かつ緻密に、かつ美しく表現するとは至難の業だろうなと、読みながらつい、そう思わずに入られませんでした。

そのハイライトであるサンド夫人と娘のソランジュ、そしてクレサンジェがサンド夫人の家の中で文字通り修羅場を演じ、サンド夫人とソランジュが親子の縁を切る場面の描写は個人的にはついつい人間の持つ俗な部分に目が行ってしまうので、芸術に生きる人間もまた、お金であり、家族関係なりそういったものに向き合わざるを得ないと言うことを突きつけられるものでありました。

やがて、その事実はショパンの下にも伝わり、ソランジュからの『馬車を貸してほしい』という訴えを手紙で受け取り、馬車の手配をしてからサンド夫人との前々からギクシャクしていた関係が一気に表面化してくるのです。そして、彼らの関係は一度もあって話をすることなく、すれ違いのまま破綻することになってしまうのです。

サロンではこの事実が一気に広まり、ショパンの見方をする者をはじめとしてさまざまな態度をするさまが丹念に描きこまれており、これに関しても現代とさほど変わらないなぁと読みながらつくづく思いました。一方のドラクロワはかつで自分のところで修行していた元弟子に自分の芸術を遠まわしに馬鹿にされたりしながらも、病弱の体を押して作品に没頭し、長年関わっていた下院図書室の天井画を感性にまでこぎつけます。

ここに描かれた絵を平野氏の書いた文章を読んでから、実際にドラクロワの画集を開いて僕は確かめました。なるほど、描かれているすべての絵が平野氏の筆による詳細な描写によって描かれ、さながら時を越えた芸術家同士の『異種格闘戦』のように思え、自らの仕事をたった一人で再確認するドラクロワと筆者の姿が重なるような思いがいたしました。それにしても、芸術に関する賛歌を高々と歌い上げ、哲学的な思索を施しながらも、その裏にある金や欲望を中心とした悲喜劇まで余すところなく暴き出す。1読者としては20代半ばの若さでなぜここまでの仕事をなしえたのか、本当に敬服と筆者の底知れぬ才能を思わずにはいられませんでした。

読み終えた後にはしばらくの間、放心状態になりますが、もし機会があればぜひ一度手にとって、ご覧になっていただければと思います。

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2013年04月27日

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ネタバレ

解説に作者のことばとして
「ある真理を明示的に分割してひとつひとつの要素で描き、それらが読者の心の中であわさった時、直接的には表現しにくい複雑な真理がいきいきと理解されるように試みた」とある。

なるほど、丹念な状景描写や心理描写は総合的に相まって、読者(私)が抱えている言い表せない心情を言い表してくれているように感じる。
私は物語というよりは自分が言わんとしていることを的確に言い表している文章を綴る作家が好きである。
私がイメージとしてしか包有出来ないものを言葉として文章として掲示してくれるというのは、私には感動的なことである。

たとえば、ドラクロワの創作に対するやる気と倦怠について思い悩む場面。
<病は気持ちのせいなのか? ただ怠けているだけなのでは? 描くことから逃げているだけなのでは?>と自問自答し続ける。その部分で結論は出ない。しかしそれに関連するような別の事柄があり前問いを思い出させたりする。そして読み進めて行くうちに最後の最後にそれに繋がる結論のような描写が出てくる。(勿論「結論のような」であって、結論として描かれているわけではない)

前述があり後述があり、そしてそれが心の中であわさっていく。すべてがそのようにして書かれている。
たぶんこれ以上露骨になると厭味でこれ以下だと分かり難過ぎるんだと思う。私には丁度いい塩梅だった。

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2011年03月09日

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購入済み

内容(「BOOK」データベースより)
彫刻家クレザンジェは、ソランジュに求婚し、その母サンドはこれを了承した。病床にあったショパンは、ドラクロワとともに深い危惧を抱く。その彫刻家の軽佻・利己・浪費といった性行を知っていたからだ。事実、彼は二十万フランもの不動産を持参金という名目で略取しようとしていた。そして…。荘重な文体が織りなす人間の愛憎、芸術的思念、そして哲学的思索。感動の第一部完結編。

第一部の上はショパンのお葬式からはじまり
第一部の下はそのショパンとジョルジュ・サンドとの破局までが描かれてました。

とっても人間関係がおもしろくなってきて
第二部がとっても楽しみです。

今までのところ
わたしはジョルジュ・サンドとい人間が好きになれません。
読んでいくと変わるのかしら?
リストとショパンに愛されたと言うけれど
わたしはあまり好きではないのです。

この先どうなっていくかが楽しみです。

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2010年04月22日

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 ドラクロワが作者の思索を請け負いつつ、ショパン側では人間模様が激しく入り乱れ、面白くなってきます。クレザンジェはイヤなヤツだけどなかなかの策士っぷり。むしろ私はサンド夫人のほうが腹立った。

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2009年11月01日

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第一部(上)は、深い思索がとても哲学的で、時に難解さをも感じたけれども、(下)の途中からは一転、昼ドラ的などろどろとした人間模様が描写されていて、それはそれでおもしろかった。ドラクロワやショパン、ジョルジュ=サンドの感じている憂鬱は、現代の若者の抱えているそれにも通じるような気がしたが、これは、ドラクロワらが現代にも通じるような同じような悩みを抱えて当時を生きていたということを表しているのか、それとも著者である平野氏自身が感じている現代社会の若者の悩みを、ドラクロワ、ショパン、サンド夫人を通して語らせているのか、ちょっとした倒錯感があって、それがまたおもしろかった。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

さて今回は全体の話の流れを紹介したい

ネタバレを含みますが、ネタバレは重要ではない作品なのだ(と勝手に強く思っている)

まず本書を読むにあたり、一番のネックは(ありがちな)横文字の登場人物の多さ
メモを取りながら読むのだが多過ぎて倒れそうになる
〇〇侯爵夫人、〇〇男爵、〇〇大公妃…次から次へと登場しおまけに名前が長い(ドストエフスキーのがマシ)!
メモを書いても正直わからなくなる
途中から主要人物ではなさそうな人はもういいや!と断念したが、まぁ話は繋がっていく
あまり完璧主義に陥らず読んでも大丈夫そうだ(モヤモヤしては読めない!という方は頑張ってメモしてください…)

「序」章はショパンの葬儀から始まる
そのため、最後まで読み切ってからここにもう一度戻るとよくわかる(あなたは誰ですか?となるため…)
逆に言えば、理解がぼんやりしていても何の問題もない
すっ飛ばしてもいいかもしれない

さて(ようやく)肝心の内容

ショパンとドラクロワを中心にストーリーが展開される
ショパンが主人公!というよりショパンを取り巻く人たちそれぞれにスポットが当たって行く
なかでもドラクロワの立ち位置はショパンと並ぶほどガッツリ描かれる
二人の友情、同じ芸術家の二人の比較、二人の芸術に対する思い、わかり合う喜び、しかし最後のドラクロワの心境は……注目だ

ショパンの愛人である小説家のサンド夫人
愛人という言葉はこの時代にはしっくりくるが、現代ではあまり良い印象はもたれまい
余談ながら当時のフランスは宗教上の理由などにより、おそらく離婚ができなかったのではないか
そのためサンド夫人は戸籍上のご主人と別居状態である
今の「愛人」の感覚とは少々違う気がする
そのサンド夫人と子供たち
ショパンはしばしば彼らと食事や旅行を共にし、ある種家族のように過ごしていた 
サンド夫人とその娘は以前から確執があるが、彼女の結婚をめぐる問題で確執がさらに深まり、これにショパンも巻き込まれる
元々体が丈夫ではないショパンであるが、このことをきっかけに心身ともにやつれ病んでいく…
この親子の確執がある意味ドラマである
確執になる要素は確かにあるとはいえ、原因なんかより、とにかく母娘の性格が非常にクセモノである
似た者同士の意地の張り合いが、まさかここまで…というほどの亀裂へ展開する
滑稽と感じるが、彼女たちは真剣勝負で自分はぜったいに悪くないと一歩も引かない
そこに非常に繊細なショパンが間に入ってきて、なんとも似つかわしくないのが容易にわかるだろう
当然彼の精神は蝕まれていく

ショパンの素晴らしい演奏(素晴らしい演奏に聞き惚れる皆の興奮が伝わる)、ドラクロワの仕事っぷり(いつも悶々しているから、頑張れ!と応援したくなる)、サロンでの社交の場(華やか☆)、パリの生活(そうとう埃っぽく騒がしく臭そうである 喘息の人は住めないんじゃないか)、馬車での移動(大変そう 高齢者や病人はどうしていたのだろうか…)、革命やその時代の政治的動向(ショパンやドラクロワは結構無関心)、サンド夫人の娘の結婚(旦那がクソ過ぎてビックリする)、やがて訪れるサンド夫人との訣別、ショパンを愛してやまないスターリング嬢の登場、そして最後はショパンのお姉さんが…

まぁざっとこんな感じでその世界観に浸るのがなかなか異空間に行ったようで悪くない
実に様々な目線から楽しめる
内容もいちいち広く深く、(なんせ本書の分量が相当なページに及ぶので)じっくり重厚に進んでいくのだが、内容がないといえばある意味ないともいえるかもしれない
いや、深い内容がたくさんあるのだが、狙った内容ではないというのか…
そのためノンフィクションに近い感覚で読める

次回は各登場人物についてご紹介したい

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2021年07月06日

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ネタバレ

上巻ではややもたついていたストーリー展開が,サンド夫人の娘のソランジュがクレサンジュと結婚するあたりから加速し,ドラクロアが自ら描いたリュクサンブール宮の天井画を観て自ら驚愕するところまで.
徐々に病に冒されていくショパンの影が薄くなってゆき,話の着地点がどこなのかが見えなくなってきた.第2部が楽しみだ.
この小説を読んでいて見事だと思うのは,登場人物が会話を,特に親しい友人と,交わす場面における思考の流れ,飛躍の描写である.
ドラクロアは,例の自由の女神の絵の印象が強いのだが,リュクサンブール宮の天井画はすごく観たくなった.ショパンももっとちゃんと聴いてみようかしらん.

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2017年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第一部下巻。ショパンの愛人の娘が身持ちの悪さで有名な彫刻家と結婚することになり、物語は急展開。登場人物の感情表現の細かさ深さに圧倒されつつ引き込まれる。一方でドラクロワは全身全霊をこめて大作を完成させるが、最後に完成された作品を眺めて、自らに驚愕する場面が凄い。
とにかく隙のない、密度の物凄く濃い小説です。

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2013年01月22日

Posted by ブクログ

 この巻で主に語られているのはサンド夫人の娘・ソランジュの結婚をめぐる一連の騒動で、それに引っ張られてどんどん読み進めることができたんだけど、読み終わって印象に残るのはやっぱりドラクロワの煩悶だったりします。
 ようやく完成した議員図書室の天井画とそれを見るドラクロワの描写で第一部が完結するからかも知れないですが(しかしこの天井画、ほんとうに見たい……!)
 作中ドラクロワは仕事をするためにアトリエへ行くことへの「抵抗」を、単なる「怠け癖」ではなく「時間の問題」ではないか、というようなことを考え続けていて、最後に完成した天井画の下で「奪われたのは享楽の時ばかりではなかった。彼の生の時そのものであった。そして、削り取られたその痕跡を、画家はただ自分を見捨てゆくもう一つの生の、彼の不在の未来に於る持続を夢見ることによってのみ慰めねばならな」いことに呆然とするのですが、確かにひとりの人間が生きている現在をそれこそ食い潰すほど膨大に費やさなければ芸術は生まれず、あらためて残酷なものだと思いました。
 百年後のドラクロワの評価を知っているし、彼の絵を見てのんきに感動していたので感慨深く読みました。「自分だけが置き去りにされてゆく。今こうして家の中に取り残されているように、この十九世紀という時代の中に。そして彼ばかりが、自分から離れてずっとあとの時代にまで生き残っていく」という愛人・フォルジェ男爵夫人の嘆きもせつない。

 ジョルジュ・サンドは支離滅裂なくらい感情的に描かれていて、ショパンとの関係が破綻する経緯も一方的にショパンに同情するしかないような感じなのですが、……それでも私はサンド夫人がショパンの何を煙たく思うのかちょっとわかるような気がするなあ。
 ショパンを「現実には目を背け、何時も夢のような考えで頭をいっぱいにしている」としか理解しなかった彼女こそが世間知らずのお嬢様で、現実認識ができていなかったのは全くその通りなんですが。

 ところでこの小説、どこまでが創作なのか気になります。

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2010年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 ソランジュとクレザンジェの結婚からサンド夫人との決別に至るまでテンポよく物語が進んでいく。
 クレザンジェの策略成功のために奔走する様は彼の感情の浮き沈みも相まって面白かった。
 この下巻で気がついたのは以下の3点。
 ①ソランジュの許嫁であったプレオーについて、サンド夫人がその「潔さと未練との入り交じった」「誤字だらけの文章を綴って」きた彼を「娘婿に迎えるのはいかにももの足らぬ青年だった」と断じているシーン。フランス人が(日本人でもそうかもしれないが)言語を大切にし、その扱い方によって人を見てその人となりを判断しているということを表した部分だと思った。上流階級に属し、さらに自身が作家であるサンド夫人からすればプレオーの所作は耐えられないものがあったように感じる。
 ②ショパンの孤独。自分不在のノアンで結婚が決まり、式まで終えた状態でパリへ帰京したサンド夫人一家に対してサンド夫人の愛人である自分が今回の結婚に対する賛否をいかに表明すべきかと悩む中で深い孤独を味わっている。本音を言えば反対であるが、今まで一番にかわいがってきたソランジュが自ら決めた結婚を受け入れなければ家族とはいえないし、ましてや本来は家族でもない人間なのだから口出しすべきではないということも脳裏に過り葛藤する。家族と部外者の狭間のグレーな関係性であるショパンの板挟まれ具合が辛い。
 ③フォルジェ男爵夫人がドラクロワと自分との違いを思うシーン。「これから先の人生」は「まるでただ失うためだけにあるかのようだ」「結局何も残らない」「自分自身ですらやがてはあの永遠の世界へと失われていってしまう」というように、喪失へと向かう人生への不安を吐露しているが、ドラクロワには「芸術があ」り、「自分自身を黄金に煌めく額縁の中に蓄えてゆくことができる」と感じている。
 それに対してドラクロワは自らの芸術作品に対して「画家の命を貪ることによってのみ自らの命を獲、彼から奪った時間によってのみ永遠を練り固めながら、決して画家とは運命をともにせぬ何者かであった」と感じている。フォルジェ男爵夫人が失うことへの恐怖を感じているように、ドラクロワも得体の知れぬ存在によって突き動かされ奪われていると感じている。作品を生み出して世に残していると思われていたドラクロワ自身も何者かに収奪されているという点が面白かった。第二部上巻での「天才と趣味」に関するカントの話にもつながる部分であり、この物語の重要な課題であると思った。

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2022年10月02日

Posted by ブクログ

第二分冊となるこの巻では、ショパンの愛人であるジョルジュ・サンドの娘ソランジュと、彫刻家のオーギュスト・クレザンジェの結婚の前後の話となっています。

自分の利益を追求するクレザンジェが舞台回しの役を担い、ジョルジュ・サンドとソランジュの母娘の決裂と、サンドとショパンの破局がもたらされることになります。前巻にくらべると重厚な芸術談義などは控えめになっており、ストーリーそのものをたのしんで読むことができました。

最後は、ドラクロワがリュクサンブール宮の天井画を完成させる場面がえがかれています。「人生は短く、芸術は永遠である」というのはしばしば語られる箴言ですが、その運命を一身に引き受けることになった一人の芸術家の感慨が語られており、興味深く感じました。

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2021年02月24日

Posted by ブクログ

えらく歩みの遅い作品。おそらくはそういった構成を意図的に採用しているのだろうけれども、その仕掛けは読者に挑戦的な感あり。
内容としてはショパンとドラクロワの話を行ったり来たりする訳だけれども、今のところドラクロワの話の方が芸術に身を投じた人間の苦悩と悦びを粘着的に描いていて面白い。この辺り、美術展評論もしている作家の面目躍如といったところかな。逆にショパンの話はメロドラマであって、正直言ってショパンでなくとも良い訳で。まぁこれもキャラクター採用の時点での作家の意図なのかもしれない。

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2015年12月19日

Posted by ブクログ

なかなかページが進まずに、読み終えるのに2週間もかかってしまった。
早く続きを読みたいとずっと思っているのに、時間をみつけ、いざこの本を手にすると、何だか再び表紙を捲るのが躊躇われてしまう。その繰り返しだった。
しかし長い物語に飽きてしまったのではない。断じて違う。
続きを読むのが億劫なのではなく、恐ろしいのだ。
全てを読み終えるまで、もう、ここから出られなくなってしまうのではないか、という気がして。

上巻を読み終えた時に、「まるで一つの荘厳な神殿のようだ」という感想を持った。
それならば、その奥に座する神に謁見するにも辞去するにも、相応の作法と覚悟が必要なのは自明の理だ。

物語は一つの終焉を迎えた。この小説の内に潜む音楽の神と、絵画の神と、それから物語の神に、更に続くであろう大いなる時間を捧げたい。

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2012年11月22日

Posted by ブクログ

文体としては「日蝕」のような古文体ではありませんが、文語調で書かれているため
「とっつきにくさ」はあるかも。ただ、それすらも凌駕するような文章表現には、ただただ圧巻の一言。

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2009年10月04日

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