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Posted by ブクログ
徳川家康観に新しい側面から光を当てた評論。
一般には腹黒いだの狸オヤジだの論評が定着している家康が、置かれた状況の中での彼の考え方のロジックが理解できれば、その評は間違っていることが分かるはずだと繰り返し説く。
家康は幼少の頃人質として扱われていたのは誰しも知っていることではあるが、「人質」は今のぼくらが感じるニュアンスとは少々異なり、むしろ安全な位置にいたのだとの指摘には、なるほどそういう見方もあったのかと軽く驚いた。(全面的に賛意するわけではないけど)
著者の見解の裏付けとなる当時の文書が縦横無尽に夥しく引用されている。少し古い文章を読む力がなければ幾分敷居が高いと感じられる本ではあるが、自分のこれまでの視点の浅さを突いてくれる。
出だしがいきなり毛利元就の話で始まる理由は、読み進んでいけば自ずと理解されるであろう。
これほど傑出した人物がいたならば、あの戦争も・・・という著者の嘆息を感じるのは、この人の著作をおおかた読んでしまったぼくの深読みだろうか。