【感想・ネタバレ】事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴のレビュー

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Posted by ブクログ

[リスクとの付き合い方法、教えます]事故回避のための新技術や万全とも言える備えが導入されるにもかかわらず、自動車事故やヒューマン・エラーが起きてしまうのはなぜなのか。事故発生の外部的要因のみならず、人間の心理状態にまで分け入りながら、その原因と更なる対策を提唱する作品です。著者は、産業心理学や交通心理学を専門とされている芳賀繁。


「リスク」にまつわる話が本書の大部を占めているのですが、そのリスクを完全に否定するのではなく、それと上手くやっていこうという姿勢が示されているところが興味深い。どのくらいまでのリスクであれば許容しうるのか、そしてその許容度にどのようにして個人差が生まれるのかなどの研究が取り上げられており、普段読まない分野の本ということもあってか、なるほどと思いながら読書を進めていくことができました。


抽象的な話ではなく、図やグラフ、そして大小含めて実際に生じた事故に例を取りながら説明がなされているため、とにかくわかりやすいというところにも好感が持てます。著者があとがきに書くように若干総花的になってしまった感は否めませんが、幅広い事故対策に関する考え方が紹介されていることもあり、足がかりとしながら更なる研究を進めるには打ってつけの作品だと思います。

〜一般人はゼロリスクを求めていると考えるのは、一種の神話ではないだろうか。その神話を信じて、専門家や事業者の側が、「リスクはありません」、「極めて低いです」、「安全です」と強調してしまうのは、筋違いな対応なのではないだろうか。むしろ、リスクがあることを認めて、そこから話し合いを進めるべきだと思う。〜

事故というか台風に伴う日本各地の被害をいくつか目にしました。どうぞお気をつけてください☆5つ

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2014年08月22日

Posted by ブクログ

ー リスク補償行動とは低下したリスクを埋め合わせるように行動が変化し、元のリスク水準に戻してしまうことをいう。細くて見通しの悪い道路から幅の広い直線道路に出たドライバーがクルマの速度を上げたり、雪道をノーマルタイヤでのろのろ走っていたクルマがスノータイヤに履き替えたとたんにスピードを出したりする現象が典型である。

運転速度のように測定できる行動変化だけでなく、注意力が低下したり、他のことを同時にしたり、より大きなリスクをとる方向の判断や決定を行う確率が高まることもリスク補償の現れである。 ー

テクノロジーの進化と共に、リスクも減ってきていると思われがちであるが、テクノロジーの使い方によっては逆効果になってしまうことも理解する必要がある事を、さまざまな事例を用いて教えてくれる。勉強になり、面白い作品。

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2018年12月03日

Posted by ブクログ

事故がなぜ起こって、なぜ防げないのか?永遠のテーマです。このテーマをどのようにとらえるのか?内外の研究例を紐解きながら、わかりやすく導いてくれる導入書です。いい本だと思います。

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2018年01月02日

Posted by ブクログ

リスク対策に関する良書。
特にリスクのホメオスターシス理論、つまり安全対策を講じてもそれに安住して更に危険行動がエスカレートし、結果的に事故確率は変わらないと。結局は心理が大きく影響するということ。
次回、平成26年度の(平成27年1月)JMA研究発表会の主題基調講演にどうか。

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2014年03月12日

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とても勉強になった。リスクマネジメント、安全について幅広く学ぶことができた。参考文献にも手を伸ばしたい。

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2013年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

*目的
事故が亡くならない原因を理解する。
対策を立てる際の注意点に着いてわかる。

*芳賀繁 専門:産業心理学、交通心理学、人間工学

子守唄効果(ララバイイフェクト):安全対策がまるで子守唄のように人を安心させ、まどろみに誘う、そのことが危険を大きくすることを指す。

リスク補償行動とは、低下したリスクを埋め合わせるように行動が変化し、元のリスク水準に戻してしまうことをいう。
ジェラルドワイドが提唱したリスクホメオスタシス理論。リスクの目標水準を変えるような対策でなければ、長期的には元に戻る。私の考えとしては、自信がつけばスピードがあがり間違え安くなり、システムが揃えば、攻めても大丈夫というのに繋がる。
安全装置は、安全性向上ではなく、自分たちの行いたい行動の目的に利用できる便利な装置にすぎないのである。
NO.645,687,

ルール違反を起こしやすくなる要因
ルールを知らない、ルールを理解していない(違反のハードルを勝手に下げる)、ルールに納得していない、みんなも守っていない、守らなくても注意を受けたり罰せられたりしない。

ヒューマンエラー
ヒューマンエラーによる事故は、設備ではなく人間の意識や注意力を高める必要があると考えがちだが、
ヒューマンエラーの概念は、システムの中で働く人間が、システムの要求に応えられない時に起きるものなのだから、対策は設備を含めたシステム全体で考えなければ行けない。
ヒューマンエラーは、失敗やうっかりミスと同義語ではない。システムの中で起きる、人間の判断や行動の失敗なのだ。
とりまくシステム
m-SHELモデル。システムの構成要素を分類して、Lのパフォーマンスが他のシステム要素との関係の良し悪しに依存するのを示した図。ホーキンスによって提唱。絵NO.1005

リスクへの理解
過小評価する傾向のことを正常性バイアスという。
死者が少ないハザードについてはリスクが過大評価され、多いハザードについてはリスクが過少評価される。
ダニエルカーネマン(ノーベル賞)プロスペクト理論
リスク判断には主観的要素が大きく作用し、心理学的な原因や法則がある。フレームを利益側にするか、損失側に設定するかで大きな影響がある。利益側であれば、確実性効果が現れ、損失側であれば、ギャンブル的認知バイアスがでる。

腐ったりんご理論
エラーや事故を起こすのは一握りの頼りない、出来の悪い従業員であり、彼らを職場から追放すれば、システムの安全性は確保できる

ハインリッヒの使用方法
事故の結果にこだわるのではなく、過程(転倒するという事象)に注目して対策を取る。

リスクアセスメントの理解
結果として許容しうるリスク(対策不要)という判定がありうる点が、リスク・マネジメントの考え方の新しい点。限られたリソースを効率的に配分して、重大なリスクから先に手を打とうという、極めて合理的かつ冷徹な発想である。

大谷・旁賀 文献8 産業・組織心理学会 28回大会発表論文集 248-251 2012
職業的自尊心と安産行動意図の関系
自尊心が高い人は、仕事の技量を高めたいというタイプであるため、主観的規範が高い。一方結果がすべてである工程厳守型の業務意欲は、ルールを破ってでも工程を守るというリスキーな、行動をする。
自尊心は、誇り高く生きること、将来に希望を持つことで高められる。

広瀬弘忠(防災心理学)

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2013年07月20日

Posted by ブクログ

産業心理学者である著者が事故が起こるメカニズムを分析し、その上で、必要な対策について提議した本。

会社のライブラリで見つけ、自動車の安全を専門としている私にとっては必須の本だと思い手にとりました。

本書で著者は、「安全対策がどのような成果を上げるのか、あるいはあげないのかを決めるのは、その安全対策によって人間の行動がどのように変化するかにかかっている。」と言っています。

そして、これは工学の問題ではなく心理学の問題であると。

本書では、工学的に考えて事故を無くすために導入した安全装置が裏目に出る例をいくつか紹介しています。

例えば、居場所を知らせるビーコン。
これが普及するとともに、従来は危険で誰も近づかなかったような場所に登山家が入り、雪崩にあうケースが増えました。

次に、低タールたばこ。
これに切り替えた愛煙家は、ニコチンの吸収量を確保するために、無意識に深く吸い込んだり、短い時間間隔で吸引したり、煙を肺に長くとどめたりするというデータがあるそうです。

また、東日本大震災においても、かなりの人は、ここまでは津波が来ないだろうと思って逃げなかったために命を落としました。
住民の判断を謝らせた一因は、立派な防波堤・防潮堤の存在です。

また、これらのことは、安全装置だけでなく、訓練や経験についても言えます。
例えば、クルマの操縦や、スキーや、楽器演奏の技能が向上しても、ミスをおかす可能性はそれほど低下しません。
自信は過信につながり、失敗を生むのです。

では、リスクを減らすはずの対策や訓練が、結果として事故や病気や失敗のリスクを低下させられないのはなぜでしょうか。
それは肝心の人間がリスクを増やす方向に行動を変化させるからです。
この現象を「リスク補償」といいます。
リスク補償行動とは、低下したリスクを埋め合わせるように行動が変化し、元のリスク水準に戻してしまうこと。

せっかく苦労して安全性を高める装置を作っても、それを使う人間が安全性を引き下げてしまうのです。

このことは、「リスク・ホメオスタシス理論」という理論でも説明されます。

このホメオスタシスのメカニズムの中で特に重要な点は以下の二つ。
⑴どのような活動であれ、人々がその活動から得られるであろうと期待する利益と引き換えに、自身の健康、安全、その他の価値を損ねるリスクの主観的推定値をある水準まで受容する。
⑵人々は健康・安全対策の施行に反応して行動を変えるが、その対策によって人々が自発的に引き受けるリスク量を変えたいと思わせることができない限り行動の危険性は変化しない。

つまり、リスクをとることは利益につながる。
だから、人々は事故やリスクをある程度受け入れ流のです。

安全対策で事故が減った場合、人々はリスクが低下したと感じ、その分のリスクを受け入れ、ベネフィットを求める。
したがって、今の安全水準で十分と思っている人、自分は事故を起こさないと根拠もなく信じている人、もっと速く走りたい、少しでも早く目的地に着きたいと思いながら運転している人、運転しながら電話をしたり、テレビを見たり、メールを打ったり、カーナビを操作したりする人たちにとって、安全装置は安全性向上ではなく、自分たちの行いたい行動の目的に利用できる便利や装置に過ぎないのです。

これらのことから、安全装置を安全装置として使ってもらうためには、安全への動機付けを高める教育や働きかけ、装置のユーザー・インターフェイスの工夫などが不可欠であると著者は提議しています。

さらに、「1台のクルマとそれを操縦する1人のドライバー」という枠内で安全を図ることの限界に気づき、広く交通環境の中での機械・設備・人間(複数の交通参加者)・組織の相互作用の視点で安全性向上を目指す視点が必要であると。

安全技術を開発している立場の私としては、全く予想していない内容でした。

アクティブ・セーフティ技術(ぶつからないクルマなど)が普及し、さらに精度が高まることによって、交通事故が無い世の中になるということを信じていましたから。

しかし、ただそのような装備を付けるだけでは意味がないようです。

このことは、世の中の全ての安全に関わるエンジニアが知っておくべきことだと思います。

これから少し産業心理学について勉強してみようかな。
そして、人を知った上で、より有効的な技術開発を行なっていきたい。
そう思いました。

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2013年03月13日

Posted by ブクログ

安全を論理的、識字的に理解するのにすごく良い本です。事故に悩んでいる方にはいい。だれもが将来に期待を持ち、誇り高く生きることができる世の中こそが一番の事故防止、か。

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2012年12月14日

Posted by ブクログ

「事故がなくならない理由」芳賀繁。PHP新書。2012年。





大学で心理学を教えている学者さんの本。国鉄などに勤務経験もあるらしく、半ば「事故のプロ」なのでしょう。
2019年4月に読んだ本なのでかなり忘れていますが、大まかに言うと。統計データ上、


「安全技術が進歩しても、事故率はあまり変わらない」


という一寸衝撃的な内容で、つまりは


「安全技術が進歩すれば、人のココロが油断して、例えば自動車ならながら運転などをしてしまう。だから変わらない」


「安全技術が進歩しても、運転がいちばん分かりやすいのだけど、人のココロには”ギリギリのスリルを楽しみたい”という要素があるから、変わらない」


というような話だったと思います。


自分の若い頃の運転を振り返ると、多少思い当たり。
へー、ふむふむ。という感じはありました。


(自動車の運転に限らず、人間関係とか仕事とかお金がらみとか犯罪被害あるいは犯罪加害とか、いろんな事も同じなんでしょうね)


そういう要素がある、ということを肝に銘じて暮らす方が良いんだなあ、ということですね。事故を避けるためには。
 あと、どうやっても「家族そろって絶対に事故を避けて生きていく」ということは、人間社会で生きている以上は、どれだけ気をつけたって、自力では不可能なんですよね。
 むしろ「事故にあっても、最悪の大事に至らないように気をつける」、「事故にあっても失敗しても不幸にあっても、それでもなんとかなるような心持ち、助け合えるような関係でいる」というほうが、現実的かと思います。
 よくウディ・アレンなんか描いていますが、結局は自分の力、実力の賜物に見えるようなことでも、かなりの割合で所詮は複数の偶然の産物、神様の悪戯ってヤツなんだと思います。だからまあ、ヒトのありようってのがそもそも事故なのかも知れません。
 ...とまあ詮無き戯言ですが、本日も家族揃って無事故で過ごせたことを、一日一日感謝。無事是名馬。

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2020年01月11日

Posted by ブクログ

リスクやリスク・マネージメントに関心があって購入.著者は交通心理学が専門のため,自動車など交通関連の例えが多いが,平易に汎用性を意識して書いているようだ.第1章の「安全装置が裏目に出るとき」はふむふむなるほど.第3章のリスク・ホメオスタシス理論が著者の考えの背景にある理論で,人はなぜリスクが低下したと認知したらリスキーな方向に行動が変化するのか?それを説明する理論だそうだ.
私のニーズとはマッチしていなかったが,自動車関係の人にはマッチするかもしれない.

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2012年10月23日

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