感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人間の気持ちは、刻一刻と変わり続ける。
感情のまま、ありのままに生きようと
すれば人はどうしても他の誰かを傷つけてしまう。
多くの映画や音楽が人の美しさを歌う中、この作品は
人の暗い側面を静かに語る。
その、冷たいひやりとした心の裏側が見えた時の
生々しさが伝わってくる。
主人公の葉山浮世という、強い原始的な感情を持つ女性に関わる
人たちは、それに触発されて少しずつバランスを崩してゆく。
浮世は、極端な性格のように描かれているけれども、
それは自分の感情に正直すぎるからかも知れず、
自己防衛本能と欲望に従って生きているだけだとも言える。
もう一人の主人公、辻一路は極めて理性的な人間でありながら、
それでも、湧き出る嫉妬や猜疑心からは逃れることが出来ない。
そのことに、自分自身でも戸惑いながらも、
それまで生まれたことのなかった原始的な感情に、
一方では高揚感を感じてもいる。
感情が正のもの負のもの、いずれの名で呼ばれるもの
であったとしても、そのエネルギーは等しく
生きる力の大きさでもある。
思いがけぬ出来事の連続に翻弄される毎日であっても、
平凡で穏やかな日常よりは、はるかに生きている実感が
感じられる生活であり、人は誰でもそれを望む気持ちを
心の奥底に持っているのではないかと思う。