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第140回芥川賞候補作。”主婦”という存在になることに抗いたい気持ちと、守られている安心と安定を手に入れたい気持ちの狭間で揺れる私には非常に共感できる描写が多かった。男性にも是非読んで欲しい作品。
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中篇2篇の作品集。表題作「女の庭」では、平穏で平凡な毎日を過ごしている、自称普通の主婦のひとりよがりな妄想記。ゴミ収集所前での井戸端会議やら、隣に引っ越してきた外人ナオミへの意識上の同化やら、わからなくも無いがその姿は、滑稽すぎて哀切。もう一方の多和田葉子「聖女伝説」を連想する、猥雑でぶっ飛んでる「嫁入り前」の方が好き。鹿島田真希は滑稽さが、美しい。
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表題作「女の庭」は、奥様同士のご近所づきあいにやや閉塞している主婦の隣人として現れた「外国人」の女性の自由な雰囲気に惹かれ、空想の中で話しかけるという話。孤独と連帯という題材に惹かれるし、空想や語りかけといった語りの構造もおもしろい。
もう一つの収録作「嫁入り前」は、思い切った虚構的なホラ話。母の命令で真逆のタイプの姉妹が怪しげな「教室」に通うという筋なのだけど、端正な文体の物語の中に淡々と卑猥な言葉が挿入されていくファルス(喜劇)で、どんどんとんでもないところに連れて行かれる。
まったく違うタイプの二作だが、どちらも水準が高く、この一冊で鹿島田文学が堪能できる。鹿島田真希の初心者には、入り口としてよい一冊かもしれない。
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表題作である「女の庭」に、封じ込められている、とでも表現したくなるような病的とすら思える内省は、今という時代においては確かにある意味でありふれた現代病のようなところがあるとは思うけれども、多くの人は同じように孤独に苛まれながらも、突き詰めてしまう前に自分が他人との結びつきを頼りとしていることを思い出し、「女の庭」で展開されるようなスパイラルに落ち込まずに済んでもいるのだろうと思う。それは、悔し紛れに奥歯を強く噛みしめたとしても臼歯を砕いてしまう程強くは噛みしめないでいられるような自己防衛本能と同じで、脳は肉体のみならず、思考に対してもリミッターを掛けるようにできているのだろうと思うのだ。
そのリミッターを外してしまうこと、それは入力信号なしのフィードバック・システムが動き出してしまうようなもので、原因となる音もなしにハウリングをし続ける音響システムに例えてみることもできる。いくらマイクを手で覆っても音は小さくならない。「女の庭」では、その無限拡大のスパイラルが展開されている。脳の中で幾つもの声が一斉に喚き散らしている状態には手がつけられない。それを止めるにはスイッチを切るしかない。
物語はそんなシステムのシャットダウンへ向かうかのように進む。いつ主電源が落とされるのかに怯えながら読み進める。ゾクゾクとした悪寒が走り、首すじの後が総毛立つ感覚に襲われる。するどい小説だと思う。
もう一つの短篇「嫁入り前」は、どうもメタファーを読み損ねてしまって、もう一つ。
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スイッと紛れ込むような、切り込むような捻じ込むような。
こう、常識とか普通とか本来なら という概念に拠り所を求めながら読みすすむ感覚。次第、拠り所にしているものの方がずれているんじゃないか と思えてくる。