感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
もう畏くはない。
京極堂は呟いた。
「拙僧が−−殺めたのだ」
もう暫く箱根にいようと、私は思った。
夜の庭を見つめ、何もかも抛って帰りたくなっている関口君と飯窪女史の会話から始まり、漸く帰って来た富士見屋での会話。
憑物落としを進める京極堂と邪魔するものは打ち砕くように手助けをする榎木津の息ぴったりぷりと、絶妙の合いの手を入れる関口君らのやりとりは圧巻。最後の最後で、走り回っていた鼠の伏線も回収された事に感嘆の息しか零れません。
時が止まり、世界と隔絶された異界がまたひとつ解かれ、此れから先は個人が抱え込まなくちゃならなくなると紡ぐ京極堂。甘美な闇の世界がまた一つなくなる切なさが溢れます。
Posted by ブクログ
京極堂シリーズ
飯窪の語る松宮家の放火の謎。飯窪が渡された鈴子の手紙の内容。松宮仁と妹・鈴子の関係。殺害された中島祐賢と消えた桑田常信。小坂了念が張った結界の秘密。仁秀老人の謎。明彗寺の宗派の秘密。隠された書物と事件の関係。
Posted by ブクログ
一気に読める幸せ。このお盆休みに読めて良かったです。
しかし、3巻と4巻は分ける必要があったのでしょうか。
併せても1巻や2巻の厚さと変わらない気がするのですが(笑)。
さて、犯人と動機ですが、犯人については意外性はなかったですが、動機については予想外でした。でも最初にヒントは出ていたのかもしれません。
《成長しない迷子》は、辻褄の合わないこともありますが、まぁそういう不思議なこともあるということで納得しました。
榎木津は天才ですね。彼には見えるのでしょう。
彼が登場すると場が明るくなって救われるような気がします。
読んでいて楽しいですし。
そして山下警部補にとっても人生観が変わるほどの事件になりました。彼が今後登場するのかどうか分かりませんが変わることが出来るって素晴らしいです。
一方、山下警部補を一括した貫主といえば ——。
どっぷりと雪の明慧寺の世界につかることが出来ました。
面白かったです。
Posted by ブクログ
箱根山連続僧侶殺人事件シリーズの最終巻。
幼女性愛趣味、男色趣味、そして近親相姦と、バリエーション豊かすぎる人物たちが登場し、それぞれ己が「アブノーマル」であると苦悩したあげく、悲劇が起こるお話でした。
何がノーマルで何がアブノーマルかは、自分の頭でこれが正しいという基準・枠を決めてしまって、その「檻」のなかに己を置こうとするから人はあがくことになるんだろうけれど、まぁ確かにこれは仕方のないことだよね。
人や知的な思考を持てる動物は皆、自分で自分を目に見えない檻に入れてしまっているんだろうな。
逆に檻に入っていることで楽になることもあるんだと思いました。
規律があったほうが、決断すべき選択肢は狭まるからね。
それは思考の範囲に枠をはめることになるし、案外それによって楽になることもある…と。
まぁ、ある意味狭い檻(お寺)のなかでの鬱屈した人間関係と近親相姦のなれのはてが、今回の事件の核だったみたいです。
長いわりには、内容はそれほどでもない。
京極さんが禅宗についての自分の研究を小説という形でまとめておきたかったのかな?
……なんて感想は厳しいでしょうか?(笑)
でも、禅の歴史については詳しくなれたよ。
日本に存在する禅はすべて南宗禅の流れで、北宗禅は早くに断絶して日本には入って来ていないとするのが通説だとか。
道教色の強い南宗禅は「頓悟禅(とんごぜん)」と呼ばれ、人は本来鏡のような心を持っていて、それが何かをきっかけに表に出てくるのを悟りとする。
それに対して儒教色が強い北宗禅は「漸悟禅(ぜんごぜん)」と呼ばれ、一生かけて少しずつ原石を磨くように悟りに近づいていこうとするもの。
奥が深いねぇ!
Posted by ブクログ
不立文字の4文字で言葉を撥ねる禅。
闘わずにして敗北している京極堂。
空と海の間に存在する朱雀以外の神獣の意味―
面白い。
面白いけど難しい。
禅と憑物とそれに纏わる過去が錯綜する様はもう一度読まないと理解できない。
「拙僧が殺めたのだ」
この言葉から始まり、この言葉で終わる不思議な話だった。