美麗な絵と卓越したストーリーテリングで数々の名ホラー作品を世に放ってきた伊藤潤二氏。氏の最大の功績は、ホラーでありながらシュールな笑いを誘う……ホラーギャグというこれまでにない新しいジャンルを打ち立てたことだろう!
その代表がこの「双一」シリーズである。主人公の双一少年は、日常的に釘を噛み、気に食わない奴に向かってペッペと吐きつけては、兄の公一さんに怒られ、「ホラーな目にあわせてやる……」と捨て台詞を残して、勝手に呪いをかけては毎回失敗し、自分が痛い目にあって終わるという、チャーミングな男の子。呪いの力は本物なのに、子どもであるが故にうまくいかず、じたばたするところがまた可愛らしい。
ガチホラーは怖くて読めないけれど、ホラーギャグならいけるかも……という方にぜひお手にとって欲しい。ちなみに『HUNTER×HUNTER』作者の冨樫義博氏も伊藤氏の熱心な読者というのは有名な話。
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Posted by ブクログ
本書収録の短編の中でも『道のない街』がすごく良い。寝ている人の枕元で囁くと、相手に恋心を抱かせるという「アリストテレス」という行動。そこから始まる“アリストテレス事件”。何故か突然狂い始める家族と、そこから逃げ出す主人公。逃げた先は、嫌な夢がそのまま目の前に現れた様な奇怪な街。こうした悪夢をビジュアル化する、作者の手腕はスゴイ。ただ、そのストーリーも夢の様に支離滅裂で、オチはない。