【感想・ネタバレ】「もう、うんざりだ!」自暴自棄の精神病理のレビュー

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Posted by ブクログ

誰でも思い通りにことが運ばないことはある。容易には解決できない問題の前で、蜘蛛の巣に絡め取られたように自由が効かずに、「もう、うんざりだ!」と言いたくなったことは、誰にでもあるはずだ。

そうした時に、大声で「うんざりだ!」と自己主張せずにはいられない人がいる一方で、その場はじっと耐える人もいる。いずれにしても、その鬱屈が澱のように心に溜まっていき、他人からは自暴自棄としか見えない行為に及ぶ人もいる。

本書は、さまざまな小説から自暴自棄に至るまでの状況や登場人物の心の動きを取り出して、自暴自棄について考察している。

「誰でも自暴自棄への誘惑に駆られることがある。ある種のカタルシスが伴うことは確かにせよ、そんなことをしたら「損」なことはしっかり理解している。にもかかわらず、人は自暴自棄に走りたくなる。」(p.4)

と著者は書いているが、自暴自棄の行動に走ったときに、理性はどれほど働いているのだろうか。損得の理性の歯止めが効かなくなるから自暴自棄になるのではないか。

アメリカ映画を観ていていつも嫌な気分にされるのが、登場人物が些細なことで怒り狂ってモノを投げたり叩き壊したりするシーンが多いことだ。アメリカ人にとって破壊によって怒りを収めるのは普通のことらしい。モノを壊せば使えなくなるし、後で掃除が大変だったりする。映画で描かれることないが、放り投げ散らばってしまったモノは自分で拾いに行くのだろう。その時にこんな馬鹿なことは二度とやるまいと反省しないのか。

「ひょっとしたら、自暴自棄とは不条理な事態への異議申し立てをするために心が創りだした突飛きわまる装置といえるのではないだろうか。不条理を与えてくれるのが(抽象的な意味での)神であるなら、神へ抗議するためには自暴自棄という理屈を超えた行為でなけでば怒りは届くまい」(p.5)

自殺は究極の自暴自棄である。自殺に関しても考察している。「自殺を決意した私」を演じるうちに、それがやがて自殺を実行できるかどうかの二項対立に陥ってしまい、自殺の決意から逃れられなくなってしまう。

著者は、患者が自殺をするつもりだとか打ち明けているわけでもないのに、「引き返すことのできなくなるような決断は、熟慮したつもりでも錯覚を伴いやすいから気をつけたほうがいいよ」とか、「踏みとどまることは、恥でも臆病でもないからね」などと、「独り言のように」語ることがあるという。患者はきょとんとしているか、薄ら笑いを浮かべながら黙っている、そのどちらかだという。しかし、著者がこう語った患者の中に自殺者はないくて、こうしたメッセージを発しなかった患者の中には自殺者がいるということは、自殺の抑止に役立っているのかもしれないという。

究極の自暴自棄である自殺から逃れるには、隣にそっと立って見守ってくれる存在が必要だということなのだろう。

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2011年08月29日

Posted by ブクログ

〈あらすじ〉



自暴自棄とは何なのか。なぜ起こるの
かについて、羞恥や怒りなどの色々な事象、経験、小説を引用して、分かりやすく説明している。

〈レビュー〉
誰にでも起こりうる自暴自棄。それを6つの感情や行動から分かりやすく説明しているので、とても読みやすかった。

特に五章の突飛と孤独で、突飛な行動(反社会的な行動とか)が、一種
の自暴自棄繋がっているところが、印象に残った。

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2011年08月19日

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