【感想・ネタバレ】被差別の食卓のレビュー

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Posted by ブクログ

あぶらかす・フェジョアーダ・ガンボ、そしてフライドチキン。今では一般的な市民権を得たものも多い各地の「ソウルフード」は、かつて差別と貧困に苦しめられた人々が知恵と工夫で編み出した食べ物だった。
関西の被差別部落地域、アメリカ南部、ブラジル、ネパール……と世界各国を旅しながら食べ歩いたソウルフードにはいくつかの共通点があり
・加工調理に手間がかかる
・味に癖がある/食べづらい
・そのため本来は加工の途中で廃棄されていた
・(おもに宗教観に基づき)「穢れ」と見なされている
材料だということ。それに手間暇をかけ、あるいは味付けや香辛料で工夫を施して出来上がった料理だということが挙げられる。
そして彼らはそれを「ソウルフード」として愛着や誇り、または複雑な感情を内包しつつ愛しているということ。
中には、もともと貧しいアメリカ南部黒人奴隷の食べ物であったフライドチキンのように、ファストフードとして世界中で愛されているもの、マストな名物料理としてガイドブックに掲載され、知られているものも少なくない。

筆者自身も被差別部落の出身であり、各地で問題意識を忘れずに被差別の歴史や現状のルポを行っているが、それ以上に「本場本物のソウルフードを味わいたい」という食欲を忘れていないため、重すぎない内容になっていてバランスが保たれている。
その中にあってやはりネパールやロマの話は重く、考えさせられることは多い。

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2013年05月11日

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ネタバレ

元「部落」出身者の著者が、同じく身分制度や奴隷制度の陰で支配階層に冷遇されてきた人々の食卓を巡る。
こんなものを食べているのか!といったものが多数出てきて、単純な紀行ものとしてもかなり面白い。
しかし、本書を単純な紀行ものと分けている点は、筆者の思いだ。
自分と同じルーツを持つ人間が何を食べてきたのか、今何を食べているのか、そしてどう暮らしているのか、それを知りたい。
その思いが、本書に普通の紀行ものにはない「厚み」を与えているように思えた。

また、日本で被差別部落と言ってももはや知る人も少ないと思うのだが、世界ではまだまだ差別問題というのは根深いものなのだと知ることができた。
アメリカ等での有色人種に対する差別は何となく知っていたが、ネパールやインドといったカーストが残る国々で、「不可触民」と呼ばれる最下位カーストの人々がこれほどまでの差別を受けているというのは、正直少しショックを受けてしまった。

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2011年05月08日

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日本だけでなく、アメリカ、ブラジル、ネパール、ブルガリア、トルコなどの被差別民の人々が食べてきた、彼等しかしらない料理。

ハリネズミの処理の仕方は、びっくりしたな~。


「差別をなくそう」の一言で、差別がなくなればいいのに。

人ってなんだかむずかしいね。

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2011年02月04日

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すごく良かった。
被差別部落の出身である著者が、「被差別の民の知恵と結晶」である「むらの食べ物」を通じて、主に海外の被差別民を尋ね歩いた記録。

著者の、人に接する姿勢がとてもまっとうでほっとする。
「被差別者に対する配慮」という特別なものではなく、ただ当たり前に礼を尽くす。
食べ物を残さないようにおなかをすかせて行くとか、読者が取材対象に悪いイメージを持たないよう気を配った書き方とか。
してくれたことやされていること、ちょっとしたことにきちんと気づいてさりげなく拾っていく。

インタビューを受けた人が軒並み「(今では)大した差別はない」と言い、昔の差別は(ひどすぎて)語れないと答えるのが印象的だった。
石を投げられたり顔が変わるほど殴られたり指を端から折られたり殺されたりはしないから「(それに比べれば)差別はない」。そう言えてしまうほど過酷な差別の歴史がある。
そんな悲惨さを書きつつ、決して対象を貶めない、現状を軽んじることもしない。
だから安心して読めた。

ただ、ロマに「自分は日本のジプシーだ」というところはひっかかった。学校を出て仕事をして食っていけて外国にだって行ける著者がこの場所にいる子供と同じなわけがない。

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2012年03月19日

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個人的に上原善広いブームが訪れたかもしれません。ジャーナリストとしては無責任な行動や、クズな言動に辟易しながらも、他の人の文章では見る事の出来ない生々しさが惹きつける要素ではないかと思います。
被差別部落出身であることを隠さず、それを強みとして入り込みにくい部分までぐいぐい入り込んでいく力技で、今回は被差別者達のソウルフードを追いかけて行きます。
各国で長年差別されてきた人々が、命をつなぐために食べて来た食べ物。それは大多数の人々が捨てたものを工夫して美味しく生まれ変わらせた、魂の籠った食事。まさに「ソウルフード」です。
やはり食肉に関わる事が多いからか、臓物料理がとても多いですね。日本の屠畜への蔑視も強いものが有りますが、その割に皆最近はホルモンよく食べますよね。忌避される食材ではなくなっているので、材料の高騰が大分前から言われています。皆大好きなお肉なのに、それを製造する過程を忌み嫌うというのはとても矛盾しているし、馬鹿馬鹿しいことだと思います。
さて、この本に出てくる料理たちはどれもこれも単独で語れない料理ばかりです。綿々と続いて来た、そして今だ続いている差別を抜きには正確な姿は見えてこないと思います。

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2020年11月13日

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俗説で言われるところのホオルもん、ホルモンは実は被差別側からの巧妙な印象付けにより、その美味を隠しつつ独占して来たのでは。といううがった見方はないのだろうか。それほどホルモンは旨いし、今や正肉に比べても高級食材ともいえる。
フライドチキンしかり、差別の歴史はその歴史に反して余儀なくされたにしてはあまりにも美味な着地をしている。
多少動物臭が臭かったり、痛みかけとしても、絶妙なグルメ点があったといえる。
本来美味とはそういったものではないか。

辺見庸の「もの食う人びと」までの体の張り方がないのと、結果こちら先達のほうが美味そうだったわけだが。

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2019年07月19日

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世界の各地域でいわゆるソウルフードと呼ばれる被差別階級の食卓を見つめることで筆者が自己のアイデンティティを確立していく。大阪・更池部落のさいぼし・あぶらかす・こうごり。アメリカ黒人社会のフライドチキン・BBQポーク・なまずフライ。果てはブルガリアのロマの食卓やネパールの牛食文化にまでスポットが当てられ、人間社会の隅で生きるものたちの生活がありありと浮かび上がる。良書。

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2018年12月14日

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「ソウルフード」は差別と根っこのところでつながっている。アメリカのフライドチキンやなまずフライ、ブラジルのフェジョアーダやムケカ、ロマのハリネズミ料理など、実際にその地を訪ねて差別されている人たちに入り込んで食べさせてもらう。ネパールの不可触民・サルキが食べる牛肉のエピソードはすごい迫力。原点には、著者自身の体験からくるあぶらかすの料理がある。いままでにない視点からのディープな民族料理レポートだ。

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2018年11月23日

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ネタバレ

自分の好みにタイプのタイトルなのでジャケ買い。文体も違和感がないし、内容も非常に興味深く面白い。
作者のフィールドワークの細かさが正確に伝わってくる。そこにあるものを食べるだけでなく、可能な限り人の話を聞いているし、その土地のことも詳細に書いてある。
おそらくもともと被差別の話は文字で残っているものが少ないんだろうな思った。口承や経験から辿る話が多く、誰かが研究として残さないと、おそらくなくなっていってしまうものであるかとも感じた。当然背景には被差別であったことを自ら残したくないんだろうという予想が容易につく。
『食っていうのは、命そのものでしょう』『料理にとっての精神性とは、多くの場合雰囲気だけではない。雰囲気というのは心理であり、精神性の一つでしかないからだ。料理の精神性とは、その料理の生まれ、歴史、場所から生じる。』

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2016年05月07日

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ふつーに面白く読んだ。
なんか色々美味しそう‼︎
あぶらかすも気になるがカロリー凄そう…
あまり身近で被差別部落を感じたことないけど、
世界のいろんな民族との比較も
興味深かった。
ちょっと母の味のくだりはしつこかった。
自分で再現しなさいな‼︎

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2016年03月14日

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アメリカ、ブラジル、ブルガリア、イラク、ネパール、そして日本。
各国の被差別民とされる人たちが暮らす地域を訪ね、その食をレポートした本。
今も差別が色濃く残るところ、水面下に潜んで見えなくなってしまったところ。
どんな差別を受けたのかといったことは、(かなりソフトに書かれているのではと思うが)やはり衝撃的。
冒頭で紹介された、有色人種だからとあからさまに無視されるといったことでも私などはショックだったが…。
ネパールなどでの身体的な暴力まで伴う差別の状況を読むと、心がえぐられる感じがする。

アメリカのソウル・フードは、なんとなく想像がつく食べ物が多かったが…
ブラジルのフェジョアーダやムケカ、ロマのハリネズミ料理となってくると、だんだんどんな料理だか、想像もできなくなってくる。
食に関してとても保守的な自分を再発見してしまった。

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2015年07月16日

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フライドチキンが被差別料理というのは意外だった。
昔は一般の人が食べていなかったホルモンも今ではメジャーな食材になっているし、被差別料理の垣根はどんどん低くなってきているのかも。そのうち「あぶらかす」もスーパーで売られるようになったりして。
被差別部落出身というバックグラウンドを活かして、外国でもするっと特殊なコミュニティで話を聞いている。被害者ぶらず、淡々と自分の知らない世界を紹介してくれるので読みやすい。

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2015年07月14日

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今や大阪のかすうどんは大阪名物の土産として駅売店に売っているぐらいなので世の中どうなるか分からないものである。

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2014年02月10日

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世界各地の被差別地帯に伝わるその地特有の「ソウルフード」と、今も残る差別の実態を紹介したルポ。
すごく興味深かったです。余り物や本来捨てられるような部分をうまく利用した料理の数々から、なんというか反骨精神のようなものを感じました。
しかしハリネズミ調理方だけなぜそんな写真入りで詳細に…
黒人差別の話は昔学校でぼんやり習った程度だったけど、改めて考えてみると、肌の色が違うというだけで同じ人間を奴隷として売買していたというのはすごいことだなと…。今も確執があるのは仕方のないことなのだろうか。
あぶらかすという食べ物を初めて知りました。味の想像がつかない…いっぺん食べてみたいです。日本では昔は四足の生物は食べなかったというのも初めて知った。

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2014年09月28日

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若くしてよくこんな調査をしたものだと驚いた。被差別部落出身の著者がかつて当たり前に食べていた食事から始まる調査。
テーマが世界の被差別民がどのようなものを、どのようないきさつで食べているのかなので、内容は過酷なところもあるが、実に冷静な文章で読んでいて心苦しくなるようなところがない。
とても面白かった。

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2013年04月16日

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いやー面白かった。

テーマは、扱い方によっては重たくもなるものを、軽くさらっと書いている。フライドチキンが被差別のものだったとは、寡聞にして初めて知りました。

全体的に面白いし、あんまり重たい話もないんだけど、中東のロマのところは気持ち悪くなりました。だって私、現代日本人だもん。衛生面が悪いのはダメだよ。食事中に読まない方がいいです。

しかし、これ読みながら、差別に関してはいろいろ考えたり思い出したりしました。
それこそ現代日本で「普通」の家庭に生まれた人って、当たり前のように、自分は絶対差別されないって自信を持って、無神経なことを言うことあるよね。とかね。

何ていうか、「被差別部落の人を差別するのは悪いことだ」という知識は持っているから、いい年になると言わないけど、「女子高生なんてみんなエンコーしてるよね」的発言は平気でするとかね。
ひとくくりにするなよ、と言っても「だって私が見えるところ(って要するにテレビだよね?)だとそうなんだもん」って、それ、すごい差別発言だよね。ってびっくりして、うまく指摘できなかったことが、今でも忸怩たる気分として残っているので、こういうのを読むと思い出すのです。

中に出てくる食事は、美味しそうなのあり、「申し訳ないけど私だったら食べたくないな」というのあり、いろいろです。

イラクのロマ(ジプシー)の話で、「フセインが政権を持っていた頃は保護してくれたけど、フセインがいなくなってから、定住していた土地を追い出されて、仕事もなくなって、大変なことになった」という話は、いろいろ考えさせられます。
やっぱアメリカが悪いんじゃん!
(湾岸戦争が起こった頃、実家の友達に電話して「アメリカええ加減にせえよ」と言ったら、「こっちの友達はみんな『フセインが悪い』って言うのに、あんたは逆やね」と言われたのです。だってあれ、アメリカの内政干渉じゃん!)

あ、でも、「世界各地の被差別民のところに行って、そこに特有の食事を食べさせてもらおう」という発想は、うまく言えないけど、現代的だと思う。
(もちろん相応のお礼はしてます)

日本の部落問題が『極東カースト問題』と言われていると、初めて知りました。確かにカーストだよね。
というか、「あの人は私たちとは違う」ってヘーキで発言する人いるよね。
自分で自分のカーストを設定して、勝手に私のこともそこに組み込んで、それ前提で話されると、正直つらいです。
ダンナがIT関係、と言ったら、「人種が違う」と言いやがったヤツもいたな。人種は一緒だよ! むかー!
(と友達に愚痴ったら、「今どき、本当に人種が違っても、『人種が違う』って言わないよね」と驚いてくれたので、まぁ、そんな人ばっかりじゃないと思おう)

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2012年01月21日

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ネタバレ

著者は自分の地元でよく食べていた「あぶらかす」「おでんうどん」などの食べ物が被差別部落に特有のソウルフードだったということを知る。

そうした食べ物のルーツや分布を調べていくと、いろいろと興味深いことがわかってきた。
○肉の内臓系が多い
○食べにくいものを工夫して食べられるようにしている
○カロリーが高い
○九州と大阪など離れた被差別部落間で婚姻関係を結ぶことが多く、このため遠く離れた地で全く同じ食べ物が残っていたりする
などなど・・・。

そのうち、作者の興味は海外へ。
フライドチキンにナマズフライなど、海外の「被差別の食卓」にもそれぞれにいろんな歴史や背景がある。
単に被差別というよりは「貧民の食卓」な部分もあるが、それはこのさいヨシとしよう。

・・・と、ここで私なぞが想像するありがちな展開は「いかに被差別民が理不尽な逆境を乗り越えて厳しい環境で暮らしてきたか、その労苦に思いをはせる・・・」という話なんだけど、この本はいい意味で裏切ってくれた。

著者は自分のルーツや被差別民への思いはあるにせよ、単純に「食べることが好き」なのだ。

食べることが好きなので、食べられないものを食べられるように工夫して、しかも美味しい!となると、それだけで嬉しくなるようだ。
この気持ちわかるーー。ww

世の中への怒りや過剰なシンパシーを排除して、淡々と食べ物を語る作者に、同じ食べ物好きとして共感するし、被差別部落問題を本質的なところで考えるきっかけを与えてくれた気がする。

私は「さいぼし」も「あぶらかす」も全く知らずに育って、内臓といえばハラミとレバー(でも好きじゃない)くらいしか食べられないんだけど、なんとなく「美味しそう!」と思えたのは間違いない。

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2011年10月03日

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いわゆる「ソウルフード」を切り口としながら、日本における被差別部落、アメリカにおける黒人奴隷、印欧におけるロマ(ジプシー)などの共通点を示していく。
実はフライドチキンもまた「被差別の食卓」に由来するものであった、という話は意外な発見。一度普及してしまうと多くの人はその背景を気にすることがなくなるのだろうが、一方で、自分たちの生み出した食文化の由来をきっちりと守りたいという要求もあるように思われる(紹介されていたブラジルの「アカラジェ」という食べ物はそういう事例なのだろう)。この辺の折り合いは難しいところだ。

あまり馴染みのないテーマの書籍であったが、いろいろと発見が多かった。
豆知識的な意味でも是非。

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2011年07月27日

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ネタバレ

 私もたまに食べるファーストフード、ケンタッキーフライドチキンは黒人料理だそう。思いもよらなかった。「アメリカの料理」と漠然とした認識しか持っていなかったけど、料理のルーツをたどれば見えなかったものが見えてくる。
  ほかにも、いろいろな国の被差別社会から生まれた料理が載っていて、どの話も興味深く読めた。 被差別部落でしか食べられない料理「あぶらかす」。道一本はなれた一般地区では食べられていないのに、遠くの被差別部落では、同じように食べられている。 これは、被差別部落が一般地区との隔絶を示していると、作者は言う。  確かにそうだと思う。 部落差別は解消傾向にあると、書いてあったが、早くそうなってほしいものです。

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2011年09月13日

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食べ物と人と文化は切り離すことはできないと思う。被差別の食卓とはなかなか衝撃的な題名だったが、各国の食べ物や人々のルーツを学べた。

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2023年01月26日

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フライドチキンは黒人奴隷料理の代表。
白人が食べずに捨てた手羽、足先、首の部分を、骨も気にせず食べられるようにディープフライしたのがルーツ。

おでんそば。おでんに中華そば。すごい。効率性と満足を求めた結果の料理。昔の母親の朝ごはんで、バンバーグそば出てきたけど全く同じではないか。

最後の締め文がいい。
"料理は、味が決め手である。しかし同時にその国、民族、地方、個人を表す文化でもある。だから他人にはどうということのない味でも、その人にとっては懐かしい味であったりする。"
思い出で飯を食う。背景を知ったうえで料理を楽しむ。

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2021年02月24日

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正直な感想を言えば、読んでいると食欲がなくなる。
しかし、ブルガリアのロマの章などは「うっ」と思ってしまうけれど、実際その過程は私達が牛や豚を食べたりするのと同じことなのだった。
どんなに眉を顰めてしまうような食事風景だとしても、彼らにとってはどれもこれも単に生きるために他ならない。
何を食べるから良い、悪い、などと、私達に批判できる権利など一切ないのだ。
本当に食というのは命そのものだ。

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2018年04月03日

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アメリカ、ブラジル、ブルガリア・イラク、ネパール、そして日本という世界各地の被差別民の生活とその共通性を”ソウルフード”(食事)という観点から描いたノンフィクション。

普段何気なく食べている食事にこそ、文化が表象されるというのは当たり前のこととして、内臓料理の割合が多いことや、香辛料等で煮込むその調理法、など、その共通性が面白い。

これを読んで無性にかすうどんが食べたくなった。東京ではあまり見ないが幾つか店もあるようなので、近いうちに必ず。

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2017年10月22日

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被差別部落出身の著者が、世界の被差別民の食文化を追ったルポ。
正直客観性には欠けているけど、紀行文として面白かった。
自らも被差別部落出身というアイデンティティありきで、それがないと成立しないのは分かるが、ちょっと途中しつこく感じた。
ただ、自分も被差別民だと告げることによって毎度取材対象が心を開いていくのを見ると、やはりこの人でないと書けない本なのかもしれない。
逆に、世界の被差別民が日本の被差別民の食事を口にした時の感想を聞いてみたいと思った。

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2013年07月17日

Posted by ブクログ

「被差別部落」は透明になればなる程よいと思っていた。特に日本の差別問題の場合は、黒人問題と違って、見た目でも名字でも分からないわけだから。(名字で分かるという方もいるかもしれないけれど、本書で書かれているパキスタンの名字ほどではない。)

でも、そこにはそこ特有の文化があって、それをなかったことにしてしまうのはちょっと違うのかもしれない、と考えを改めた。差別がなくなるというのは、「私は部落出身なの」という主張が「私は東京出身なの」というのと同じ受け止められ方になること、なんだなと。

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2012年05月31日

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食の切口からみた、差別と貧困の文化。世界各地の被差別民の食卓には、共通する思想、長く差別され続けることからしか生まれえなかった思想が流れている、と教えてくれる。
テーマは厚いけど、旅行記のような体をとっていてさらりと面白い。

私の問題は、ネパール、インドの牛料理もアメリカのフライドチキンもブラジルのフェジョアーダも差別から生まれた食べ物だと知りながら食べたことがあったのに、
日本のさいぼしやあぶらかすについては聞いたことさえなかったという、外を向いた知識の偏りなんだろう。
「極東カースト問題」…ね。

前に著書を読んだことがある八木澤さんが出てきて驚いた。

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2011年05月20日

Posted by ブクログ

差別と貧困の中で生まれた反骨の食文化を求め、世界各国を旅する筆者のルポ。
私の大好きなフライドチキンがアメリカの黒人奴隷料理がルーツだったとは、驚きました。ほか、ごちそうとして食すハリネズミ料理や、タブーとされた牛を食べることで差別されていたネパールのサルキなど、興味深かったです。

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2011年05月17日

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★3.5
テーマが面白かった。世界中の被差別地域独自の食事を自らの足で周って、レポートされたもの。ブラジルやネパールには出向けないものの、日本のそれも関西なら自分の舌で確かめることができるかも。興味をすごくもった。 しかし、テーマはすごく面白いのだが、そもそも題名に惹かれてこの本を手に取ったのでもっと日本のことを書いてほしかった。関西圏以外は述べられていなかったので。

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2011年03月24日

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 アメリカ、ブラジル、ブルガリアとイラク、ネパール、日本、夫々の被差別民の食事のルポルタージュ。 つい共通点が何かを探そうとしながら読む。やはり内臓、屍肉を食べることから大蒜、唐辛子は被る。消毒、殺菌、匂い消しは共通だ。
 それと酢。これも殺菌、消毒、匂い消しなのだろう。 故平岡正明が全冷中時代に出したテーゼ「世界史は酢の海に浮かんでいる」を思い出す。
 唐辛子、スパイス、ハーブ、ビネガーと書くと、こじゃれて小賢しい料理が浮かぶかも知れない。 だが大蒜、唐辛子が効いた、塩気の強い料理は香りだけで血が騒ぐ。それが何処の国の料理であろうと、だ。 きっと凡ゆる料理のルーツが、殺菌+消毒+匂い消しなのだろう。
 薄味だったり素材を活かした洗練された料理は、ごく一部の階級の特権性→インフラの整備→一般化の流れに沿うのだろうか。 肉体労働と国家専売の塩、権力の象徴とスパイスやハーブの関係も考慮しなければならないだろう。 特にサラリーマンの語源が、ラテン語のサラリウム=塩に由来しているし。

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2011年01月16日

Posted by ブクログ

今日ほどKFCが売れる日はないと思うが、ディープ・フライドチキンは、ソウルフードだということは初めて知った。
洋の東西を問わず、高カロリーで味が濃く、脂が多用されるのが、その特徴だ。
あぶらかす・さいぼしは関東圏では食べる機会が少ないが一度チャレンジしたいものだ。しかし、新宿の横丁には赤身の筋やチレ(脾臓)を新鮮な味で提供する店がある。非日常の味は、ごくたまに食べると本当においしいと感じる。

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2010年12月24日

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