【感想・ネタバレ】我が手の太陽のレビュー

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ネタバレ

溶接工の技術や知識は皆無でしかも終始職人技の話と主人公のプライドと慢心などの心の葛藤で進んでいくがどうして今まで出来ていた事がある日突然に出来なくなったのか、しかも溶接工から外されてからの他人を見下すような態度を取るようになったのか先に先にと読まずにはいられなくなってしまい中断せず、中断できずに読み終わる。
読書熱が無くなったと嘆いていたのがウソのような食いつきにびっくり。

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2024年05月19日

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何の仕事であろうと、傲慢になったり失敗したりすることがある。事務仕事でいつもしているチェックを疎かにしたがため、大変になったという経験も誰しもあると思う。そういう時には何か感じるところがあり、その書類をチェックのため2度と見たくないという感情が働いたためだったのだろうか。
この小説は芥川賞候補になったが、読む価値は大である。

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2023年10月08日

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ネタバレ

⚫︎感想(※ネタバレ)

何度か出てくるこの表現に注目した。
「自分が仕事で相手にするものは、そのまま自分のことだ。それは自分の力量で、自分の職能で、自分の価値のことだ。」

ベテラン溶接工、伊東。40歳。仕事に対するプライド、スランプ。その原因は何なのか。年齢か、職業病か、奢りか、見て見ぬふりをしている不安か。「検査員」がやってきて、伊東の不手際を忠告しにくる。「検査員」は無意識の自分自身であり、また同時に自分であるということは、上記の記述から、自分が仕事で相手にするものである鉄鋼をも意味しているのではないか。

師匠である牧野の手は「思いのほか冷たく、ショックを受けた」のは、牧野が太陽を手放したのだと感じたからではないか。

「検査員」の手は熱く、硬かった。
最後に冷たく柔らかい自分の手が残った。「検査員」であり、自分の仕事相手である鋼鉄が持っていってしまったものは、かつては熱さを扱えた、我が手の太陽だったのか。しかも硬くなく、柔らかいのだ。弱いのだ。

誰しも第一線での活躍が死ぬまで続くわけはない。いつかはそれぞれが、誇りを持つ何かを手放していかなくてはならない。現実を受け入れるとは、そういうことなのだ。

石田夏穂さんの作品、3冊目となった。共通して最後まで読ませる推進力につきる。こちらはユーモアはなく、「我が友、スミス」「黄金比に縁」にくらべて純文学色が濃く感じた。

⚫︎あらすじ(本概要より転載)第169回芥川賞候補作。
鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。

“「人の上に立つ」ことにまるで関心がなかった。
自分の手を実際に動かさないのなら、それは仕事ではなかった。”
”お前が一番、火を舐めてるんだよ”
”お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。
お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに”

腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。
いま文学界が最も注目する才能が放つ異色の職人小説。

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2024年03月23日

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読書備忘録784号。
★★★★。

石田さん。難解やねん。よ~わからん。
でも読んでまう。
この方の作品で描かれるテーマは毎度めちゃくちゃ狭い。でも底なしのように深い。
スミスマシンの話だったり、新卒採用面談の話だったり、まだ読んでいませんが冷え性の話だったり。

で、本作は溶接。
太陽の表面温度!には全然敵いませんが、高温のバーナーで鉄を溶かし一体にする作業が溶接。
凄い溶接は、一体の金属より強度があるとまで言われている。そして溶接の完成度を確認するためにX線検査をする。完璧な溶接は細い1本の白い線として映る・・・。
そんな溶接作業は高度な技術が必要で、溶接工は建設現場の花形で報酬も高い。

そんな溶接工の話。
建設工事会社カワダ工業の熟練溶接工伊東は溶接一筋20年。こんど40歳になる。
そんな伊東が溶接工事の検査で不合格を出した。そしてスランプに陥る・・・。

太陽を扱うことが出来る万能感。
再び不合格を出してしまうのではないかという不安感。
溶接の仕上がりの為には禁忌である安全確保違反。
目と肺をやられる溶接工の健康不安。
はやく溶接作業に戻らないと技能が落ちる焦りと不安。
伊東の心はぐちゃぐちゃになる。

そして自信を取り戻すために人の仕事を奪って担当することにした溶接工事現場。そして工事日直前に起こした重度の火傷事故。
労災になったら自分は終わる。労災を隠し、火傷を隠し、溶接現場へ。
動かない手。垂れるリンパ液。
そして気づく。火は決して手なづけられるものではない・・・。ぞんざいに扱うと牙をむく・・・。

以上!
で、この結末はなに?どうなったん?何か起きたん?
分かりませんでした!

ちょっと危うい空気が充満している石田小説。大好き。

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2023年12月06日

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マニアックにも程がある。著者の作品は大抵ニッチな題材だが、本作は飛びぬけてマニアック。今回のテーマは溶接工。勤務歴20年のベテラン溶接工、伊東は自他ともに認める仕事のデキる男だった。しかしヒタリ、ヒタリと徐々にミスが続き、いつしかスランプに陥る。俺はどうしちまったんだ、と足掻き藻掻く伊東。...もう最初から最後まで専門用語が多く、すべてを理解するのは難しかった。しかし伊東の職人としてのプライド、要所要所から醸し出される緊張感に目が離せずイッキに読み切った。過去作品の方が好みだったが、硬派でクールな一冊だ。

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2023年09月02日

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前作、「ケチる貴方」でのどこにでもいる様な主人公の冷え性の女性と、女性がそう従事していないであろうプラント工事という現場仕事(主人公は現場作業員では無いが)の環境の描写、という対比、にある種新鮮な驚きを覚え、この作者さんなら…と思っていたところ今作品が芥川賞候補に選ばれた(残念ながら受賞はされなかった)との報道から、読んでみる事にした。

主人公はゴリゴリの男性現場作業員、やはり前作同様、プラント工事、の配管溶接工、と言う技能的にも高度で肉体的な負担も強度の高い、ある意味特殊な職種、を題材としている。

前作ではどちらかと言うとプラント工事におけるマネジメント的なこと、女性主人公がそういう業務に従事しているからでもあるが…、が物語の背景の目立つ点、であったように思うが、今作品では現場作業員としての主人公の目を通して伝えられる、騒音、匂い、汗ばむ空気、埃、緊張感…、がありありと感じられ、またその中でありがちな些細な人間関係のゴタゴタもあり、まさにリアルなゲンバ文学、と言っても良いのでは無いかとも私は感じた。

尤も私がそう感じたのは、汚い、きつい、と思いつつこれまでアルバイトや正社員として私自身がそういう現場を幾度となく見てきて幸運な事に事故もなく経験して来たからかとも思うが、それにしてもこの作品中で伝えられる内容はリアリティに溢れていると思う。

人によってはその様な現場仕事を地味できついだけだと思うのかもしれないしそう言った見方でも退屈を感じるかもしれない…、その様な点からももしかすると受賞に至らなかったのかもしれない。ただ、作者の忠実に情景を伝える文体は評価に値するのでは無いかと思う。これからもその視点でより我々の心に訴えかける様な作品を描いて欲しいと願う。

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2023年08月22日

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ベテラン溶接工の伊東。伊東の視点での溶接作業の臨場感がよく、熱や光や汗を感じられる。伊東は現場での溶接作業に誇りを持っている。それ故に配管工や検査員、工場での決まりきった溶接作業を下に見る癖がある。仕事にプライドを持つのは良いのだが、その持ち方が問題だ。やはり自分以外を下に見たプライドは自慢できるものではない。それは自分が一目置かれない存在になったときに、周りからしっぺ返しをくらう。各個人が持つ誇りは主観的なものでしかない。自分が持っている矜持は他人にとってはどうでもいいことかもしれない。

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2023年08月01日

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ネタバレ

芥川賞候補作。
溶接工の詳しい作業内容は難しすぎたのでさらっと読んだけれど、最後の方は、怪我をしながらミスせず、また怪我をしないでちゃんとできるのかハラハラした。
「あの検査員」というのは、主人公にしか見えていない幻覚なのだとしたら、最後の終わり方はどういうこと?なんかゾッとした。

「こんなの俺の仕事じゃない。」
「自分が仕事で相手にするものは、そのまま自分のことだ」
「お前は傲慢なんだよ。自分をすごいと思うのは人の自由だが、どんな仕事も馬鹿にしてはならない。そうだろ。お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。お前自身が、誰よりもさ馬鹿にしているというのに。」
という箇所で、そうだよな、仕事の難易度で仕事を舐めたり馬鹿にしたりしちゃいけないよなと思って読んでいたけど、
「傲慢で何が悪い。そうでなければ、こんな危ないこと毎日毎日できないだろ。」
という箇所で、またハッとされされる。こんな危ない仕事は傲慢にならないとやっていけないのか…って。

プライドを持って仕事をしていた人が、歳をとるにつれてだんだんと体が衰えていき、ミスが増えたり、それでも自分はできると思ったりするところが痛々しかった。

他の石田夏穂さんの作品は笑っちゃう文章が多いけど、この作品は真面目(?)な雰囲気だった。

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2023年07月22日

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専門用語満載の文章はなかなか読むのに骨が折れる。職人気質の溶接工がそのプライドの高さから自分の衰えを認められず、次第に自分を見失っていき、ついには…。

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2023年07月18日

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熟練の溶接工が陥ったのはスランプ? それとも……。
ぼくはガテン系(死語?)の職場で働いたことはないので、やたら専門用語を駆使して書かれた現場のリアルさはイマイチわからない。ただ、臨場感はある。そして仕事に対する矜持は普遍のものだと思う。
初読みの石田さん。硬質な文体と“職人”と呼ぶにふさわしい主人公の描写はマッチしていたけれど、作者が言いたいことが理解できたとは言い難い。検査員って現実の存在? 暗喩? 妄想? 最後の一文の意味は? もやもやする作品だった。

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2024年03月14日

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話の筋はいわゆる転落系。に加え、石田さん得意のニッチな設定をかけあわせたもの。衝撃のラストは比喩表現、か。
なかなか頭に入りづらいマニアックな用語など、細かな説明がとにかく多く、そのためリアリティはとてもあるが、一方、物語というより、説明書を読んでいるかのようであった。ニッチな業界故にそれらはもちろん必要であろうが、それがマイナスに働いたところが多く、また、ユーモアさ欠いた本作は、石田さんらしさも半減したように感じる。
同じような作品を産み続ける作家さんがいる中で、チャレンジする姿勢は素晴らしいが、評価としては、過去作を超えているものではないかな、と。

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2024年02月04日

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ネタバレ

「我が友、スミス」の人とかだったのかと後から知った。「我が〜」シリーズになったら面白いな。
これは溶接工のお話だった。

冒頭の簡易ラジオ基盤作業のところで3人のレンガ職人の話を思い出した。あの話が導こうとする「作業の全体像を掴んで目的意識を持って働いている人は、ただ作業をしている人よりも素晴らしい」的な主張に、うまく言語化できない違和感があったんだけど、読んでいてそれがちょっとだけクリアになった。
作業だけに集中することができる爽快感や、余計な意識を捨て去って自分の手の感覚やガスの色、鉄の変化に向き合うことでのみ到達できる研ぎ澄まされた瞬間の虜となれる幸せは大きいだろうなあ。
「3人のレンガ職人」に納得しきれなかったのは、そういう職人としての美しさを否定されているように感じてしまっていたから。

わたしはその美しさを知らないから、それが絶たれようとしている最中の主人公の焦燥感にそこまで共感できなかったけれど、こうなっちゃったら誰も説得はできないんだろうな、というのはちょっと感じた。

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2023年12月16日

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溶接工の話。
知らない言葉が多く状況がわかりにくいところがあったが主人公の心境はものすごくわかる。
自分の技術や体の衰えなどの日々の葛藤。なかなか他人には理解してもらえない苦労が伝わってくる作品。

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2023年12月10日

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プライドが高い溶接工の話。仕事の腕はいいかもしれないが、技術的なことしか考えられないから、すごく歪。失敗を取り返そうとしてどんどん墓穴を掘っていくような展開にドキドキした。

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2023年11月24日

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熟練の溶接工のプライドと腕の衰えへの怯え、そして溶接への愛と言ってもいい執着。溶接のことはよく分からないけれどかなり詳しい描写があり、お仕事小説です。

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2023年10月26日

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 専門的な用語が多いね〜

長く働いていると
 心身ともに衰えて行くとき、どう対応したらと迷うことがある。
将来に対する不安もつきまとうようになる。

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2023年08月19日

Posted by ブクログ

自分の仕事にプライドを持ってやっているつもりでも、慣れてきて手を抜く。仕事をしている人なら多少手を抜くことはあると思うし、手を抜くことで効率が上がることもある。
ただ、慢心とは怖いもので、毎回マニュアルを遵守するよりかは、リスクは上がってしまう。
どれくらいまでなら手を抜けるのか、これは自分の日々の課題であり、模索中だ。

本書では溶接工の伊東が仕事で苦境に立たされるのだが、その様が読んでいて苦しい。
伊東は決して仕事に不真面目な訳ではない。しかし、周囲の評価はそうではない。
結局、仕事は人の評価でできるできないが決まってしまうのか。そう思いたくないが。

しかも伊東は孤独だ。何でも相談できる人間が周囲にいない。怪我や病気をしたって心配されるのは納期で、誰も体調を心配してなんてくれないのだ。

最後まで苦しい話だった。しかし、夢も希望もないところが逆に気に入った。

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2023年08月15日

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第169回芥川賞候補作。

優秀な溶接工、伊東は工場の配管工事現場からビルの解体現場に格下げ異動させられた。
工場でフェール(溶接不合格)だったと言った男は存在しない…。

読んでみて、わからないのです。

①溶接の知識がついていけなくてわからない。
②わからないから面白くないと感じているのに、なぜ途中で読むのをやめられないのかわからない。
③ホラーではないのに、なぜ、読んだ後も何だか怖くて、ずっと背後が気になるのかがわからない。まるで背中を火傷をしているような気にもなっている。

伊東の過度なまでのプレッシャーが私に憑依したように感じます。彼がやってはいけないことをやっても、そんなに悪いと思えなくなった私は、完全に石田夏穂ワールドに引きこまれたのだと思います。

わからないのが面白いと思える1冊でした。

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2023年08月13日

Posted by ブクログ

第169回芥川賞候補作。

「我が友スミス」以来、4作目の石田作品。
芥川賞候補作らしく、今までの作品に比してより文学的な印象。

工学部卒の経歴だからか、ガテン系の仕事の描写が微に入り細を穿っている。あまり詳しすぎて読み飛ばしたくなるレベル。
独自のプライドを持つ熟練溶接工の伊東が、自らの強いこだわり故に小さなミスをきっかけにスランプに陥り、拠り所である自負心をも失っていく過程がジリジリとした焦燥と共に描かれる。

鉄の溶ける様、熱量、焦りといった作品の空気感は高村薫の「照柿」を思い出させる。
伊東にしか見えない幻の検査員は彼の内面具現化か。ラストの火傷が治った手が意味するところはちょっとわからなかった。難しい。

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2023年08月07日

Posted by ブクログ

読後感が吉田修一の「パークライフ」を読んだ時と似ている。(作品はまったく似てない。笑)

つまり、今後が楽しみな作家ということだな!

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2023年08月01日

Posted by ブクログ

ベテラン溶接工の苦悩な日々を書いた小説。
途中で私には必要のない専門用語を乱用して突き放してきたので、適当に相槌を打つような感じで、
あー、そうなんですか、へぇ〜っていう感じの読み方に
切り替えた。

読み終わった後、否定も肯定もなく、単純に
「大変でしたね、お疲れ様でした!」
という感想を添えておけばいいのかなと思える作品でした。

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2023年07月22日

Posted by ブクログ

こういう純文学もあるのだなぁと思いながら読んだ。おもしろかった。
職人にはどうしても各々の職人魂みたいなものができあがっていく。共感。
なにがあっても「だったらお前がやって見せろよ」を言ってはいけない。プロフェッショナルでいられなくなる。共感。

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2023年07月13日

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