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第169回芥川賞候補作。
鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。
“「人の上に立つ」ことにまるで関心がった。
自分の手を実際に動かさないのなら、それは仕事ではなかった。”
”お前が一番、火を舐めてるんだよ”
”お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。
お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに”
腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。
いま文学界が最も注目する才能が放つ異色の職人小説。
Posted by ブクログ 2023年10月08日
何の仕事であろうと、傲慢になったり失敗したりすることがある。事務仕事でいつもしているチェックを疎かにしたがため、大変になったという経験も誰しもあると思う。そういう時には何か感じるところがあり、その書類をチェックのため2度と見たくないという感情が働いたためだったのだろうか。
この小説は芥川賞候補になっ...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年12月06日
読書備忘録784号。
★★★★。
石田さん。難解やねん。よ~わからん。
でも読んでまう。
この方の作品で描かれるテーマは毎度めちゃくちゃ狭い。でも底なしのように深い。
スミスマシンの話だったり、新卒採用面談の話だったり、まだ読んでいませんが冷え性の話だったり。
で、本作は溶接。
太陽の表面温度!...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年09月02日
マニアックにも程がある。著者の作品は大抵ニッチな題材だが、本作は飛びぬけてマニアック。今回のテーマは溶接工。勤務歴20年のベテラン溶接工、伊東は自他ともに認める仕事のデキる男だった。しかしヒタリ、ヒタリと徐々にミスが続き、いつしかスランプに陥る。俺はどうしちまったんだ、と足掻き藻掻く伊東。...もう...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年08月22日
前作、「ケチる貴方」でのどこにでもいる様な主人公の冷え性の女性と、女性がそう従事していないであろうプラント工事という現場仕事(主人公は現場作業員では無いが)の環境の描写、という対比、にある種新鮮な驚きを覚え、この作者さんなら…と思っていたところ今作品が芥川賞候補に選ばれた(残念ながら受賞はされなかっ...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年08月01日
ベテラン溶接工の伊東。伊東の視点での溶接作業の臨場感がよく、熱や光や汗を感じられる。伊東は現場での溶接作業に誇りを持っている。それ故に配管工や検査員、工場での決まりきった溶接作業を下に見る癖がある。仕事にプライドを持つのは良いのだが、その持ち方が問題だ。やはり自分以外を下に見たプライドは自慢できるも...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年03月14日
熟練の溶接工が陥ったのはスランプ? それとも……。
ぼくはガテン系(死語?)の職場で働いたことはないので、やたら専門用語を駆使して書かれた現場のリアルさはイマイチわからない。ただ、臨場感はある。そして仕事に対する矜持は普遍のものだと思う。
初読みの石田さん。硬質な文体と“職人”と呼ぶにふさわしい主人...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年02月04日
話の筋はいわゆる転落系。に加え、石田さん得意のニッチな設定をかけあわせたもの。衝撃のラストは比喩表現、か。
なかなか頭に入りづらいマニアックな用語など、細かな説明がとにかく多く、そのためリアリティはとてもあるが、一方、物語というより、説明書を読んでいるかのようであった。ニッチな業界故にそれらはもちろ...続きを読む
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