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空き家や介護問題そしてアンチエイジング。社会的な問題を織り込みつついつものペーソスに富んだ仕上がりの作品。アラ還からの生き方にも希望が持てそう。
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空き家の数だけそれぞれの家族の歴史が沢山詰まっている。昨今、空き家の増える中
この空き家問題は今後大きな社会問題にもなる事だと思う。
物語に登場する個性的な女性陣からも学びがあり年齢を重ねれば重ねる程、人生をいかにシンプルに楽しむ事の大事さに気づいた作品でした。
『出会った人は皆んな何かを教えてくれる先生』年齢に関係なく出会いも大事にしたいものです。
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久しぶりの重松清さんの小説。空き家問題、介護、夢に向かって励む30過ぎの息子など現代社会を反映している。みちるさんのことを盛り立てるセブンの教養の深さに驚いた。
私も実家の空き家問題に直面しているので、切実。子供が大変な思いをしないように私の代でスッキリさせようと思っている!
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話の節々に、煮え切らないいつもの重松節が絡みついて、うーん、ちょっとね。
という感じだけど…
最後の一節はよかった。
ビストロからの帰り道は、その酔いかげんを保ったまま、散歩気分で歩いた。
手をつなぐでも肩を寄せ合うでもなく、けれど誰も割り込めない微妙な距離を、とりとめのな
いおしゃべりが埋めていく。
若い頃の思い出話ではない。それはさすがに出来すぎになってしまう。老後の話は興醒めだし、話題をテレビや新聞から無理に探すぐらいなら、満たされた沈黙を味わったほうがずっといい。
結局、話すのは、どうということのない確認や連絡ばかりだった。
「明日の朝は、ご飯だからね。納豆、今日までだったの忘れてた」
「わかった。あと、明日のゴミって不燃だっけ、ペットボトルだっけ」
「第三月曜だから、ペットボトル。よろしくね」
「りょーかーい」
そんなありふれたやり取りを、いつか、ずっと遠い先のある日、片割れは涙が出るほど懐かし
く思いだすだろう。そして、先に逝った片割れを思い、がらんとした我が家で、静かなため息をつくだろう。
しかし、それもまた、別の話にしておこう。
二人は我が家に帰り着く。
たとえ待っている人は誰もいなくても、黙って我が家に入るのはやはり寂しい。
玄関のドアを開け、声をそろえて――
「ただいま!」
p419
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人が住んでこその「家」。
長く住んできた家、住み慣れた家には住人の想いが詰まっている。
両親の死後、実家の処分を巡って兄と対立する女性を中心に、「家」に対する人々の想いを描くヒューマンドラマ。
◇
水原孝夫は、自社が管理する空き家の定期的なメンテナンスに出向いていた。間もなく還暦を迎える孝夫だが、心配事が2つある。
1つは息子のケンゾーのこと。
若い頃は戦隊ヒーローの1人として俳優活動をスタートさせたケンゾーだが、番組終了後パッとしない。同じ戦隊仲間がアイドルや俳優として華々しい転身を遂げたのに比べ、遊園地や商業施設のアトラクションで細々と役者活動を続けるケンゾーを見ると、心配でならない。
もう1つは妻の美沙のことだ。
近くに住む両親の介護を終えた美沙は、介護ロスもあって精神状態が不安定になっている。そこに実家の処分問題が持ち上がってきた。
実家を相続した兄はすぐにでも処分する気でいるのだが、家族の想い出に浸りたい美沙は猛反発し兄と対立し始めた。
空き家管理の手間や実態をよく知る孝夫だが、妻の心情も痛いほど理解できる。妙案が浮かばずひとり気を揉む孝夫。
そんなある日のこと、ケンゾーが右足を骨折してしまい……。
* * * * *
現在の日本で社会問題にもなっている事象が具体的に描かれていました。
その1つは空き家問題です。
古家となった空き家は、都会の1等地でもない限り優良な資産とは言えないため、管理コストが嵩むだけというのが実情のようです。
特に地元を離れ遠方で一家を構えて久しい子ども世帯にとって空き家となった実家は頭痛の種でしょう。
もう1つは火葬場の順番待ち問題です。人口密度が高く、高齢化が進む都市部で火葬場の順番待ちが起きているそうです。1週間待ちはざらだとか。
でも需要があるからといって、おいそれと建造するわけにもいかない施設です。遺体を葬儀社で保管することも難しい。遺族にとっては頭の痛い問題です。 ( 実際に「遺体ホテル」が既に都市部で開業しているのを知り驚きました。)
他にも、独居老人や若者の非正規雇用など、リアリティのある問題が作品中で取り上げられていました。
それらをきっちりとストーリーに盛り込みつつ、ときにユーモラスな描写を加えながら展開させていく重松清さんはさすが優れたストーリーテラーだと思いました。
さて、本作で問題となっているのは、空き家となった実家の扱いというより、実家に対する美沙とその兄の思い入れの違いによる対立でした。
実家は都市部の住宅地にあり、水原家から通えるところにあります。美沙はそこで両親を介護し看取ったのです。しかも多忙なエリート銀行員である兄の手はほとんど借りずにです。
大学入学とともに家を出た兄よりも、美沙に実家への思い入れが強いのは当然と言えます。
一方、実家を相続した兄の側の主張もよくわかります。合理性を重視し、効率的に動くことを信条とする彼にとっては不良債権のような古家は早々に処分するべきと考えるのも無理ないでしょう。
情の妹と理の兄の激突。論点が違うのですから話し合いは平行線をたどるしかありません。どちらの気持ちもわかります。 ( 介護に力を注いだ美沙に軍配を上げたくはなりますが ) 読んでいて心苦しく感じました。
孝夫やケンゾーが間に立ち、他の人の助けも借りながら問題の収拾を図っていく終盤。
少しうまく運びすぎた気もしますが、自分の主張はいったん置いておき相手の気持ちになって考えてみることこそが問題解決の近道であることがよくわかりました。
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空き家問題、これまでニュースで見たり、本で読んだりしたけど、大概は税制の話や有効活用の例の話メインでした。初めて、自分が育ち、家族の歴史でもある空き家を心情面で捉えた本に出会いました。
通勤の車内で読み進め、ラストの章は換気と庭の手入れに一人定期的に訪れている空き家となって2年になる実家で読み終えました。
もちろん人それぞれ、家族の歴史も違うし色々な考えがあっていいと思う。
空き家を大きくリフォームして貸し出したり、宿泊施設にすることは、確かに家そのものは残るけど、柱の傷ひとつとっても思い出のある大切な家族の歴史の記憶が何だか上書きされてしまうような気持ちにもなる。
家と家族の記憶を大切に思うがこそ、家を残して別の活用するのではなく、取り壊して更地にして、心の中の思い出に残すのも確かに一つの考え方だと思いました。
空き家となって2年、私も美砂さんのように実家への愛着が強く、兄弟間で空き家に対して微妙な温度差があり、悩んでいます。
色々な面で、ちょっとヒントをもらえた本でした。
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不動産会社で空き家のメンテナンスに携わる定年間際のサラリーマン。自身の妻の実家しかり、空き家の数だけ家族があり、その歴史がある。
持ち家はないけど、気持ちはわかる。この歳までなると、もう希望はなくしたし、未来も見えないし、何のために生きてるのかわからなくなる。
抜け殻の家、というのも見方によってはたしかにその通り。同じだけ年老いた自分を重ねてしまう。最後の最後はやはり女性の方が強いのかねぇ。
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空き家今私を悩ませる最もタイムリーな事です。家とのお別れの日にみとどける美沙と健太郎の2人お疲れ様でしたとつぶやくこのシーンは心に深く刻まれました。もがりのいえやうつせみの家や空き家管理の仕事空き家についてもう人ごとではない水原さんのような人に相続したいです。
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家仕舞いは大変だ。家族の歴史がいっぱい詰まった博物館…どう始末付けるか…“もがりの家”現実にあるのかしら?ウィンウィン、理屈ではわかるが…「人のココロというのは、ほんとうに複雑で繊細で難しい」「結局みんな、なにか役割がほしい」「役割があるのは居場所があることと同じ」「夫婦は愛情に始まって、友情になって、人情になって、で最後に行き着くところが…根性!」言い得て妙。
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空き家、親の介護、夢を追いかける息子…気が滅入る問題を、強烈キャラ達が笑いで吹き飛ばす。嫌な人も好い人に変わっていくのが心地好い。『別の話』是非とも期待したい。
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世代的に近く、自分も母を看取ったあとの実家の今後と二人の息子が出て行った後の生活など共感するところが多く感慨深く読んだ。
ちょっとイラッと来る離れた世代のライターとの関わりや追っかけ婆さんトリオなども実家近所の婆さん連中や息子の取り巻きとこれまたあるある話でニヤリともするが全体的には締まりもなくだらだらとした展開で間延びのする内容は面白いともつまらないともいえないどっちつかずの印象だ。
空き家をどのように活用するらまたは踏ん切りつけて更地にするのか、家をローンで買い、支払いを終えるタイミングで実家の相続が訪れる。不動産というと魅力にも聞こえるが、諸問題も抱えて悩ましいのは持った人間でないとわからない。この本はローンを抱え、戸建実家を持つ人に読んでもらいたいなぁ。もちろん、面白いかは別な。
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空き家をめぐる悲喜交々。
不動産プロからの目線や、空き家所有の人々の思いなど身につまされる内容だったけど、とても勉強させてもらった。
実家を取り壊す時、様子を見に行くか行かないか‥私自身、近い将来必ずやってくる。
私は絶対見に行く!いや、見に行かなくては後悔すると思う。
あと、「うつせみの庵」、私は絶対利用しない(笑)
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実家終いをかかえているなかで読んだので、思い出がつまっている家がなくなることにひきこまれました。
小説のような住宅地ではなく、北海道の過疎地に住んでいるので受け継がれることのない家も多くじわじわきました。
小説はハッピーエンドでよかったです。
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重松清さんは大好きな作家さんのひとりで
この本が58冊目!
なのですが…
長い間、重松さんの本を読んでいなくて…
なんと4年半ぶり!
家族の形。
それは年齢を重ねることで変化していく…
さらには女性の肩にのしかかる親やパートナーの介護、死別。
家と家族、老後の問題等々。
家族の変化は「家」の変化でもあって。
深刻な問題を重松節で優しく届けてくれる一冊だった。
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妻の美沙は両親の介護終えて
鬱っぽい
息子のケンゾーは昔は戦隊ものに出演
今はひっそりと地方公演をする
将来に心配あり
アラ還の主人公の孝夫は
多摩エステートサービス(不動産会社)
空き家ビジネスをしている
家族ができて
家を建てて
仕事や子育てに励んで
その先は子供が巣立ち
ローンが終わり
自分達の親の介護、看取る
てばなすことが増える熟年世代
「ロス」な心の整えかた
ほろ苦く温かくくすりと笑える
誰にもくること
笑って悔いなく過ごせたら幸せ
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2018年時点で全国に849万戸ある空き家は、今も増え続けている。処分に頭を悩ます家族もいれば、再生をビジネスチャンスと考える業者もいる。
本作品は、そんな空き家を巡るコミカルな家族小説である。
水原孝夫は不動産会社員だが、定年が近くなり、出向で空き家のメンテナンスを担当している
妻の美沙は介護していた両親を看取ってから介護ロスに陥るが、怪しげなお茶会にはまり、脱け殻状態から脱していた。
夫婦には31歳になる息子がいた。彼は元戦隊ヒーローだったが、今はアルバイトをしながら忍者ミュージカル劇団を主宰しており、足を骨折して、孝夫夫婦の家に戻ってきていた。
息子の将来を心配していた水原家だが、美沙の兄・健太郎が管理する実家を気鋭の空き家ビジネス業者に貸しだそうとしたことから波乱が起きる。
「空き家再生請負人」で「空間リノベーター」として活躍する石神井が健太郎に提案していたのは、火葬場に比較的近い場所にある美沙の実家を火葬の順番を待つ遺体の安置場所とする「もがりの家」というプロジェクトだった。
メガバンク取締役で有能な健太郎は、実家を早く処分したいと考えていたが、とりあえずの対策を石神井に依頼した。だが、生家が遺体置き場になることに美沙は耐えられなかった。
仕事優先だった孝夫は、傷ついた妻に寄り添うようになる。
これが主軸になるストーリーだが、他にも空き家にまつわる2つの話が挿入されている。
ひとつは、レトロモダンな洋館で怪しげなお茶会を主宰していた「マダム・みちる」の実像と美沙との関わり。
もうひとつは、孝夫がメンテを担当する空き家をこっそり訪れる離婚した男が話す家族の物語。いずれも哀愁を帯びた話になっている。
対照的に、夫婦の息子を応援する70歳代の女性3人組「追っかけセブン」、孝夫に取材でつきまとう怖いもの知らずのウェブメディア女性記者マッチなど、アクの強い人物も登場し、コミカルさを演出する。
奇抜な展開ではあるが、結局は、空き家をどうするかを巡って家族がもめながらも、最後は関係を修復していくというストーリー。
だが、空き家に関する環境、景観、安全といった問題、相続や行政面での問題、活用事例など様々な社会的課題に突っ込んで
取材した痕跡は見受けられない
空き家となった実家をどうするか考えるときの苦悩、処分を見守る際の気持ちなど家族の揺れ動く感情を描いた情緒とユーモアを味わう大衆的な小説である。
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我が家でも同じようなことがあり、興味深く読み終えた
高齢化社会、熟年離婚、80 50問題 空家 ごみ屋敷
墓仕舞い
世の中まだまだ問題は増えそうだが、自分を含めどうしたら良いか悩みが日々増している
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題名がなかなか良かった。思わず買い求めてしまった。読み始めてどうしてこれがカモナマイハウスなのかよく判らない。題名を"もがりの家"だったら物語性が出てくる様な気がした。
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空き家をめぐるドタバタ泣き笑いのストーリー。長年 住んでいた家が空き家に。住んでいた者は思い出もあり残すのはメンテナンスしていかなければならず、お金もかかる。とても気持ちはわかる。タイムリーな話。
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人口減少社会において深刻化する空き家問題をテーマにした長編小説。
といっても社会派ではなく、いつもの重松節でベタッとした甘いお話。
テレビドラマ並みのわかりやすいキャラ設定とうわっ滑り気味のユーモア、作劇は予定調和で想像を超えるものはない。
…と、辛口レビューになってしまったが、どこか憎めない魅力があるのも重松清ならでは。
個人的には、仕事も子育ても親の看取りも卒業して、ロスを乗り越え改めて向き合うことになる夫婦の姿に、自分たちの10年後を見るようでちょっとしみじみしてしまった。