【感想・ネタバレ】海の祭礼のレビュー

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Posted by ブクログ

幕末時に幕府側の通訳として活躍した森山栄之助を主人公とした歴史小説。
森山は、日本に憧れ利尻島に上陸し長崎で抑留されていた米国人より英語を学び、当時は珍しかった英語を使える通詞としてペリーやハリスの来航時にも活躍する。
森山は条約の整備等、外交官的な働きもし、当時の欧米列国の外交官にも名が知れ渡った第一人者であったが、討幕後は引退し、燃え尽きるように死去する。

当時、米国が日本に開港を求めた大きな理由は捕鯨船の寄港を目的としていたのだが、そのビジネスの重要性、ペリー来航に至るまでの諸事情・背景、米国の国家戦略等も触れられており興味深い。

吉村昭の作品である「高野長英」もそうだが、当時の外国語を習得する熱意には驚かされるものがあるし、その重要性を知ることができる。
森山のような通詞がいたからこそ、欧米列強と渡り合えたのかもしれない。
歴史上、余り知られていないが魅力に溢れる人物、森山栄之助を小説の題材に選んだことも吉村昭らしいといえる。

以下引用~
・もしも、会話力の不足からまちがった通訳をすれば、異国船との間に紛争をひき起こすことも十分に予想され、国益に重大な支障をまねく。かれ(森山)は、一刻も早く会話に習熟しなければならぬ、と自らをはげましていた。

・日本にアメリカの眼がむけられたのは、捕鯨業と、中国との貿易を有利なものとしようとする太平洋横断航路計画によるものであった。
・・・蒸気船の動力である石炭を補給する地が必要であった。計画の研究者たちは、それに適した場所を、小笠原諸島、琉球と日本列島である、と断定した。

・(米国は)日本との貿易などは眼中になく、ただ、中国への航路の中継基地としての意味しかなかったのである。

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2014年02月12日

Posted by ブクログ

開国史にはいつも出てくる「森山栄之助」。
彼はどこでどのように外国語を学んだのか、
どんな人だったのか気になっていた。

ラナルドマクドナルドと彼の交流は
自分の経験と重なり、とても心に残った。
ラナルドにとって日本はどんな風に映ったのか、
その記述があまりなかったのが残念。
彼の生い立ちから、日本に憧れを抱く経緯、
漂流者を装って単身日本に上陸するという情熱を持って来日。
日本人に警戒されながら、日本の暮らしになじもうとする謙虚な姿勢が
認められ、森山は彼を師と仰ぎ、彼から英語を学んだ。


森山栄之助は開国を迫られた日本を背負って
国の運命を握っていた。重大な役目を終え、
引退すると同時に一気に老け込んで亡くなった。

何度も読みたくなる本に久しぶりに出会った。

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2009年10月04日

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ネタバレ

有色の肌に生まれ、超えられない米社会の壁。自らのルーツを日本に見る。捕鯨船に乗り込み、ボートで単身島へ渡る。鎖国下の日本。どういう運命が待つかわからない。差別はそこまでの覚悟をさせる。座敷牢で暮らすが、丁重に扱われる。日本語を覚える一方、英語を教える。結局送り返されることになるが、通詞たちが生の英語に触れたことは、その後の日米交渉に計り知れない功績をもたらす。…途中、主人公が入れ替わり、最後は史実の叙述になる。焦点定まらず、小説としては読みずらいところもあるかもしれない。それでも、読後は充実感を味わえる。

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2024年05月05日

Posted by ブクログ

先日、「ブラタモリ•利尻島」を見ていたら、ラナルド•マクドナルド(1824〜1894)というアメリカ人の記念碑があるということが紹介されていた。何処かで聞いたような…と思っていたら、この作品でした。

ネイティブアメリカンの血を受けた彼は、日本に興味を持って幕末の1848年に利尻島に単身密入国します。長崎で幽囚の身となりますが、長崎通詞だった森山栄之助(1820〜1871)らに英語を教授します。物語は、森山栄之助がその後関わっていく幕末の外交交渉史を俯瞰的に描いていきます。一般的に、薩摩•長州ら新政府側からの視点で描かれる事が多い『幕末史』を、幕府側の外交下役だった一通詞の視点で見ることはとても新鮮に感じました。

…それにしても、パレスチナでの戦闘やウクライナ侵略戦争が続いている次節柄、"アの国"の傲岸不遜ぶりがどうしても鼻につきます。昔からずっとこうだったんだなぁ。
マクドナルドのような人物がいたという事が、何か奇跡のようにも思えます。

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2023年11月05日

Posted by ブクログ

読みづらいが、読み応えあり。
感情やセリフが少ない分、妙に心情が響く。
歴史に埋もれて名も残らない方々にスポットを当て、調べ上げる作業は大変であろう。
それを一冊の本としてまとめ上げられたからこそ、こうやって知ることができる。大変ありがたいことだ。

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2022年06月05日

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ネタバレ

画像は新装版を使いましたが、実際は平成元年10月5日5刷りのハードカバーを読みました。

江戸後期から幕末にかけての外交史を語っている。小説だがセリフが少なく、まるでノンフィクションを読んでいるようだ。それでいて読みやすい。

前半では、日本に不法入国したアメリカ人のラナルド・マクドナルドが、オランダ語通詞の森山栄之助らに英語を教える過程を通じて日本の外交を描き、後半では幕末期の各国との外交の歴史を、森山が大通詞から外交官として活躍する流れとともに描いている。

後半はアメリカの横暴な態度に腹を立てながら読んだ。無理難題を押し付けてくるペリーに対し、日本側も譲歩しない。外交経験がほとんどない日本にしては、よく頑張ったと思う。それでも軍事力を盾に脅しに開国を迫るアメリカ。「日本は、平和主義を理念とするアメリカと一刻も早く通商条約を結ぶべきだ、…(本文より)」とはよく言ったものだ。こうして「パクス・トクガワーナ(徳川の平和)」は終焉を迎える。

そんな中で、森山とマクドナルドの交流にはほっこりするものがあり、二人の別れのシーンは不覚にも涙してしまった。厳しい現役生活に疲れ切った晩年の森山を慰めたのも、マクドナルドとの思い出だった。最後に二人を会わせてやりたかった。

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2017年08月26日

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鎖国中の日本に憧れ捕鯨船の乗組み員になり、日本に上陸したラナルド・マクドナルドから英語を学ぶ守山栄之助。オランダ語の通訳(長崎通司)である彼は英語の必要性を痛感し、貪欲に英語を学んでゆく。ペリーやハリスの来航時にも通訳を務め、アメリカのみならず、イギリス、ロシア、フランス等との通商条約締結の矢面に立つ。尊王攘夷の嵐が吹き荒れる幕末に、通訳としての正確さのみならず、最後は外交官として役割も果たす。鎖国が崩壊してゆく過程が垣間見える。

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2017年02月21日

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力作。幕末の通訳、森山栄之助の活躍を通して日本の開国史が描かれている。ラナルド・マクドナルドなど、史料の少ない人物についてもよく描かれている。後半、ペリー来航前後の件は史実の羅列といった感じで、創造性やサプライズ感には乏しいが、森山やマクドナルドがひっそりと息を引き取るシーンは、庶民的で、いかにも歴史の「影の立役者」らしく、胸打つものがあった。

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2015年08月15日

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ちょっと早かった、残念なアメリカ青年の話。開国前夜〜初期の奮闘する通詞の姿に働きマンとして感動。タイトルのみ、あまりしっくりこないが。

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2010年04月13日

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今こうして日本という国で暮らしていられるのも、歴史に埋もれたこの本の主人公たちのおかげなのだということは知っておくべきだと思った。森山栄之助の人生を通してみる日本開国史。

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2009年10月04日

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幕末に英語通辞として活躍した蘭語通辞と、英語を教えた米国人漂流者の物語を通して、幕末の開国の騒乱を描き出す。

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2017年04月12日

Posted by ブクログ

外国語を学習するモチベーションにつながる話。淡々と時系列で事実の羅列が続き、登場人物の心の描写はあまり多くない。感情を抑えた筆致。

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2017年04月01日

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