【感想・ネタバレ】オール・ノットのレビュー

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Posted by ブクログ


オールノット、全否定?小説?
この本を手に取るきっかけを忘れていた私が
表紙と最初の数ページを読んで抱いた感想。
しかしそれは否定される。小説に引き込まれる。
あ、オール・ノットの意味はわからないままだったが、

コロナに入る直前の苦学生の女の子が主人公。(苦学生なんて言葉はこの小説では使われていない)
ってことは今思えば2000年生まれくらいか。
そんな彼女がバイト先のスーパーで試食販売員の年上の女性に惹かれる。
親しくなると、その女性のことがだんだんわかってくる。
イギリス仕立ての淑女、なのだ。(淑女ということばもこの小説では使われていない)
なんとも気品がある。身だしなみがすっきりしている。所作も。
生い立ちがわかってくる。
横浜で一世を風靡したお菓子を販売しているレストランの娘だった。
横浜の丘の上のお屋敷に住んでいた。
毎週パーティをしていた。
イギリス風の料理やお菓子を作っていた、、、

なんだか読んでいて楽しかった。
こういう素敵な世界の話なのか、、、と。

しかし、、よくよく考えるに、
ではなぜそんな女性が試食販売員なのか。
・・・物語はだんだん複雑に、おどろおどろしくなってくる。

章ごとに主人公が変わる。
淑女とは連絡が取れなくなっていた。
苦学生は淑女を訪ねて関係者を回る。
その関係者が語る。いうなれば語り部だ。
女性の同級生の本牧の仕立てのシャツ屋の娘、
一世を風靡したお菓子のパッケージのモデルの女の子、、
それぞれ成人して、過去を、淑女との関係を語る。
性的マイノリティ、幼児性的虐待がテーマになる。
その語り部の語る物語で、「淑女」の家の没落がわかってくる。

そして最後は苦学生に戻る。
奨学金という名の借金を20年近くかけ間もなく払い終え、
海外に出ようとしている。
そう、時代は未来。
日本が没落した未来。沸騰化があたりまえになる未来。
その中でそれぞれがどう生きていくか、、、

読み進めるにつれ重くなる内容だったが、
読みごたえがあった。

ちなみにオール・ノットとは、ばらばらにならないようにした真珠の首飾りの結び方だそうな。
どうやったらそんなことができるのだろうか、、

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2024年02月15日

購入済み

読後爽やかで、とても良い体験でした。
貧しい学生の真央が出会ったのは不思議な女性山戸四葉。四葉との出会いと彼女からもらった宝石箱が真央の人生に影響を与えます。
四葉の家庭や過去を知るにつれて搾取されている可哀想な女だと思うこともありましたが、賢く強かでとても素敵な女性でした。弱者としての女性が描かれていますが、同時に強く生きる女性の姿でもありました。

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2023年10月10日

Posted by ブクログ

確か発売前に、書店で試し読みの冊子が配られていましたよね。衰弱しきった真央が四葉さんにビーフティーを振る舞われ、宝石箱を初めて見せてもらう場面が抜粋されていました。キラキラの装丁も相まって、柚木さんお得意の英米文化の薫りただよう優雅な物語、ランチのアッコさんのような頼もしい先輩の助けで人生を切り開いていく主人公の成長譚……のような話を想像していたんですが、見事に裏切られました(笑)。社会問題をこれでもかと詰め込んだ硬派で骨太な物語。こんな世の中だけど頑張って生きていこうぜ!と柚木先輩が励ましてくれるような、そんなお話。

でも、結構多くの人がレビューしているように、私も読後はちょっと気持ちが重くなりました。社会問題について書くなと言う訳じゃないんです。ただ、エンタメ作品で社会問題を扱う意義って、世の中であまり注目されていない問題を掘り起こして光を当てることにあるんじゃないかと私は思っていて。なのにこの作品で挙げられている社会問題って、もうみんな気づいているし、なんなら当事者としてどっぷり浸かっているものじゃないですか。若者の貧困、日本人の国外流出、物価高、少子高齢化、性被害、同姓婚問題……。問題があることはわかっているけど、どう解決したらいいかはわからない。物語の中でもはっきりした解決策は提示されない(一葉四葉親子が舞の面倒を見て、りぼんのぼうしを自主回収したのはひとつの救いだったかもしれないけど)。いや、解決策を提示せよというのはフィクションに求め過ぎですね。いやでもだからこそ、ノンフィクションや社会論じゃないんだから現代社会の問題点をこんな事細かに書いてくれなくてもいいんだよもっと夢を見させてくれよー!なんて思ってしまいましたね。
時が経てば歴史小説的に面白く読めるのかなあ。コロナ禍のヒリヒリ、性被害告発にまつわる各々の反応、などは非常にリアルで記録として価値がありそうです。

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2024年03月30日

Posted by ブクログ

あなたには、ある人との出会いがその先の人生を変えた…という経験はないでしょうか?

私たち人間は人と人との関わり合いの中で生きています。もちろん、人付き合いが苦手で…と極力人と関わらない生活を心がけている方もいらっしゃるでしょう。しかし、私たちがこの世を生きていく中には、他の人と全く無縁に生活を送ることはできません。

一方で、私たちが他の人について知っていることは限られてもいます。同じ職場で働いていても業務上関わり合いがなければ会話自体存在しないこともあるでしょうし、普段会話をする関係にあっても、相手の人生をどこまで知っているかと言えばそれは限られたものだと思います。そんな中では、いつも見かける人にまさかの背景事情が隠されていたと気づく瞬間の到来…そんなこともあるかもしれません。

さてここに、『アルバイト先の』『スーパーマーケット』で、『試食販売のマネキン』として働く一人の女性と知り合った先に『変化は小さなものだがじわじわと始まっていた』と人生の変化を見る一人の女子大生が主人公となる物語があります。将来の負債となる『奨学金』に漠然とした不安を抱え『節約生活』を送る主人公を見るこの作品。そんな日々に変化をもたらした女性に隠されたまさかの背景事情に驚くこの作品。そしてそれは、「オール・ノット」という書名に込められた『全部ダメってわけでもない』という言葉に主人公の未来を見る物語です。

『よろしければ、どうぞ』と『唐突に目の前に差し出されたあたたかな飲み物に』とまどうのは主人公の宮元真央(みやもと まお)。『七月の終わりで、外気温は三十度』という中の『熱いもの』に抵抗を抱くも『身体の内側がうるおいで満ちていく』中、『これって、アイスティーのモトですよね』と話しかける真央は、『何度もこの店のこの通路で、顔を合わせているひと』、『たぶん五十代くらい』と目の前の女性のことを思います。そんな女性に声をかけられ『紙パック入りのアイスティー原液一リットルを躊躇なくカゴに入れて』いく客を見る真央。『大学の授業料は、毎月、日本学生支援機構から振り込まれる十万円の奨学金でまかな』いつつ、『スーパーマーケット』と『ビジネスホテルの清掃業務で生活費を捻出』する真央は、大学卒業後に残る『奨学金四百八十万円の返済』のことを思います。そんな真央は『パート主婦の杉下』から『あのおばさんの苗字は山戸(やまと)』だということを教えてもらいます。『あの人が試食販売するとものすごくよく売れる』、『どのメーカーの営業』も『指名してくる』とおばさんのことを知っていく真央。
場面は変わり、『あの、よかったら、これどうぞ』、『私が焼いたの。お口に合えばいいんだけど』とおばさんに渡された紙袋の中にはスコーンが入っていました。そんなことをきっかけに『仕事が終わる時間が近い日は』『おばさんを待ち伏せして、一緒に帰るようになった』真央は、『おばさんの名前は四葉(よつば)さん』だと知ります。そして、『この人、とてもお金持ちなんだ。正確には「元」お金持ち』ということも知っていきます。
再度場面は変わり、『この中に、真央さんが欲しいもの、あるかしら』と、四葉に話しかけられた真央。『有名製菓メーカー』の『懸賞の賞品一覧』を見せる四葉は『ハガキにマークを貼る作業さえ付き合ってくれたら、全部、あなたの欲しいものに使ってもいい』と説明します。応募ハガキを書く中で、『四葉さんの実年齢は、四十一歳だ』と知った真央。そして、『神様、どうか真央さんにパソコンが当たりますように』と『指を組み合わせて目を閉じ』る四葉とポストに投函を終えた真央。
そして、『お盆が明けるのと同時に、お菓子メーカーからの当選通知が四葉さんのもとに』届き、『最新式Macの登場で、真央の生活は一変し』ます。『漫画喫茶やメディアセンターに通わずとも勉強できる』日々の中に『夏休みが終わ』り、『大学二年生対象でインターン募集』を始めたホテルへと面接に赴く真央。
再び場面は変わり、四葉に招かれ、アパートに泊まった翌日、『これが私の全財産』と『両手に載るくらいの、小箱』を差し出す四葉は、中身を説明する中に『これはね、オール・ノットっていうの』と『真珠の短いネックレスを指に絡め』ます。そして、四葉は言います。『この宝石箱をあなたにあげる。全部売れば、奨学金を全部今のうちに返して、将来を設計する分くらいにはなると思う…』。そんな突然の申し出を固辞する真央に『これはあなたの失敗のために使って。失敗は誰だって、していいものなの…』と告げる四葉。そんな『宝石箱』を受け取った先の真央の人生が描かれていきます。

“友達もいない、恋人もいない、将来の希望なんてもっとない。貧困にあえぐ苦学生の真央が出会ったのは、かつて栄華を誇った山戸家の生き残り・四葉。「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんて、そんなのおかしい」彼女に託された一つの宝石箱が、真央の人生を変えていく”と内容紹介にうたわれるこの作品。カタカナで記された書名の「オール・ノット」が『all not』という英熟語を思い起こさせます。では、そんな「オール・ノット」という書名の意味合いを含めこの作品の読みどころを三つの方向から見ていきたいと思います。

まず一つ目は、この作品の舞台の一時期が『コロナ禍』にかかることです。この作品が刊行されたのは2023年4月19日であり、同時期には連休明けの感染症法上の扱いの変更も決まっていました。しかし、作者の柚木麻子さんが執筆されていらした時期はまだまだ『コロナ禍』であり、作品にそんな世の中が描かれているのは自然なことです。そして、『コロナ禍』を背景にした作品をすでに10冊以上読んできた私ですが、この作品で取り上げられる背景事情は初めてのものです。この作品の主人公となる宮元真央は、”貧困にあえぐ苦学生”としての日常を生きています。『我が家にそんな余裕はない』、『仕送りは絶対不可、と釘を刺され』一人上京した真央。

 『生活費を切り詰めても四万八千円の家賃と合わせたら、毎月の支出が十万円に届きそうな時がある』

そんな日々の中に『奨学金四百八十万円の返済』が将来にのしかかっていく真央。そんな中に突如訪れた『コロナ禍』。

 『アルバイトは自宅待機を余儀なくされ』、『苦渋の選択で奨学金に手をつけて、数ヵ月をしのいだ』

そんな状況は、

 『卒業の年になっても、コロナは収束する気配をまったく見せなかった』、『卒業式もオンラインだった』

一生に一度しかない大学時代、それをまさかの『コロナ禍』で奪われ、かつ、それでなくとも生活苦に喘いでいた日々がさらに厳しいものなっていくという真央の人生。『コロナ禍』が”貧困にあえぐ苦学生”にどれだけ辛いものであったかを物語は描いていきます。この側面から『コロナ禍』を描いた作品は私にとって初めてであり、そんな『コロナ禍』を経てその後の人生を生きていく真央のことがとても気になります。

二つ目は、上記でも触れた”その後の人生”という点です。実はこの作品の構成は非常に凝っています。というより大胆極まりない展開を見せるのです。それは、描かれる時代の幅の広さと、まさかの近未来が描かれていくという点です。物語を通しての主人公は宮元真央が務めます。

 『去年と変わらない、アルバイトだけの夏だった。大きな出来事はなかった。恋もしなかった。でも、それは真央の生涯で忘れられない夏となった』。

そんな日々の中に大きな起点を作ってくれたのが、山戸四葉の存在です。『アルバイト先の』『スーパーマーケット』で『試食販売のマネキン』として働く四葉。物語は真央が大学二年、二十歳の時がスタート地点になります。何かと謎めいた存在である四葉の人となりは、ある人物を通して、

 『九〇年代初期の横浜で、山戸四葉にぴたりと寄り添うことは、この世界すべてを味方につけるに等しかった』。

そんな過去が物語の中で語られていきます。えっ!と驚くまさかの過去が描かれていく物語は時代を感じさせる独特な雰囲気感に包まれています。このレビューではこれ以上触れることは控えますが、これから読まれる方には是非お楽しみにしていただければと思います。一方で私がここで触れるのは、この正反対に位置する時間のことです。この作品では、なんと近未来が描かれていくのです。と言ってもこの作品はSFではありません。”タイムマシン”も”ドラえもん”も登場しません。そこには、あまりに自然に未来世界を舞台にした物語が語られていくのです。それこそが、『三十四歳の真央は…』と語られる〈第三章〉、『今年で四十歳になった…』と語られる〈第五章〉に描かれる物語です。とは言え西暦何年のことかは物語中はっきりとは登場しませんので、記されている内容から時代を特定してみましょう。〈第一章〉で『もう二十歳だから、いいわよね』という記載と、『大学二年生対象でインターン募集』という記載がある一方で、早々に『大学の授業はすぐにオンラインに切り替わった』という記載があることから真央が『大学二年生』、20歳になる年度が2019年度であることがわかります。ここから算出すると、

 ・〈第一章〉: 真央20歳 → 2019年
 ・〈第三章〉: 真央34歳 → 2033年
 ・〈第五章〉: 真央40歳 → 2039年

という数字が導き出されます。これは凄いです!作品の後半はまさかの未来世界が描かれていることになるからです。では、そんな未来世界を柚木さんがどんな風に描かれているのか、少しだけ見てみましょう。これが2039年の日本の姿です!

 『ここ数年で四十度越えが当たり前になった』

これはリアルです。もう今年の夏さえもあり得そうで怖い予測です。次は、気候だけでなく身近な生活を見てみましょう。

 ・『正規の授業料を払えるような家庭は子に早い段階で留学させているのが普通で、そもそも多くの富裕層家庭はすでに海外に逃れていた』。

 ・『多くの日本の十代は高校卒業後、非正規のまま一生働き続ける』。

あまりに衝撃的な未来観に言葉を失いそうです。流石にこんなことはないと信じたいですが、日々のニュースを見ていると100%来ない!と言い切れる自信がないところに今の落ちぶれた日本の現実を憂いもします。では、少し明るく、身近な話題も見てみましょう。

 『壁のスキャナーに真央は手のひらをかざした。これでマイナンバーとクレジットカードにひも付けられた情報はすべて読み取られる…慣れると財布や健康保険証がいちいち必要だった時代を思い出せない』。

これは凄いです。『マイナンバー』と『健康保険証』の一体化が話題に上がる昨今ですが、そんな次元ではありません。15年後にこのような時代が来ているのでしょうか?楽しみでもあり、ちょっと怖い気もします。これから読まれる方には、是非、この柚木さんの描く未来世界も楽しみにしていただければと思います。

そして、三つ目は書名の「オール・ノット」です。上記した通り、私はこの言葉に『all not』という英熟語を思い浮かべました。

 『全部ダメって意味もあるけど、全部ダメってわけでもない、っていう意味もある』

そんな英熟語ですが、一方でこの作品の表紙をよく見ると連なるように真珠が描かれています。私は宝石に関する知識は一切持ち合わせていませんが、宝石がお好きな方はピンと来られたかもしれません。

 『一粒真珠を通すたびに、しっかり固く結んで、たとえ切れたとしても真珠がバラバラにならない』、『真珠を絶対に離れないようにつなぐ、そういうネックレスの技法』

このことを「オール・ノット」と呼ぶのだそうです。物語では、『ネックレス』が登場しますが、その一方で上記した英熟語の意味合いもこの言葉にかけられてもいきます。なるほど、と納得するこの書名に繋がる物語。つくづく上手く作られた作品だと思いました。

そんなこの作品は上記してきたように、”貧困にあえぐ苦学生”である主人公の真央が、アルバイト先のスーパーマーケットで『試食販売のマネキン』として働いている四葉と出会ったことから動き出します。

 『去年と変わらない、アルバイトだけの夏だった。大きな出来事はなかった。恋もしなかった』。

そんな日常を一見淡々と過ごす真央ですが、卒業後に重くのしかかってくる『奨学金四百八十万円の返済』を踏まえ、『絶対に内定を得ないといけない』という思いの中にギリギリの生活を送っています。そんな中で出会った四葉は、不思議な魅力を真央に魅せていきます。

 『四葉さんと一緒だと、周りがとても優しくなる』。

そして、

 『彼女の不思議な力を紐解いていくと、そこには必ず、明確な理由があった』。

そんな四葉との関係を作っていく中に

 『この宝石箱をあなたにあげる。全部売れば、奨学金を全部今のうちに返して、将来を設計する分くらいにはなると思う…』

そんな風に譲り受けた『宝石箱』。物語は、そんな『宝石箱』の由来となる過去の物語、そして、上記もした真央の34歳、40歳という時代を描きながら展開していきます。複数の時代を生きた数多の登場人物、数多の時代背景を鮮やかに一つに結びつけていく柚木さんの筆致は読む手を止めさせてはくれません。そんな物語は、上記した『貧困』、『奨学金返済』、『コロナ禍』といったリアルな問題だけにとどまらず、昨今強く光が当てられるようになった『性加害』の問題にまで及んでいきます。さまざまな社会問題が、これでもかと、もうてんこ盛りに盛り込まれていく先に見る物語の結末。そこには、そんな世の中にそれでも力強く生きていく真央の姿、清々しい読後感を見せる物語の姿がありました。

 『そうだよ。全部ダメってわけじゃないんだよ。なにごとも』。

そんな意味を持つ「オール・ノット」という言葉と、真珠の『ネックレスの技法』を掛け合わせた書名を冠するこの作品。そこには、主人公・真央の二十年にも及ぶ人生の苦悩と歓喜の物語が描かれていました。まさかの近未来の描写に興味が尽きないこの作品。そんな物語に顔を出す数多の社会問題に鋭く光を当てるこの作品。

数多の社会問題と幅の広い時代背景を描いていくにも関わらず、軸が全くぶれない見事な構成力を見せる物語の中に柚木さんの凄さを見る素晴らしい作品でした。

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2024年03月25日

Posted by ブクログ

貧困…こんな世の中はもうすぐなのかな。若い人たちは子供を持つなんてもちろん、結婚も、そのうち進学も出来なくなるのでしょうね。そんな国にしたのは皆さんの親世代、祖父母世代の連中です。258ページ、下の世代が自分よりさらに酷い苦境に立たされているのをみると腹の底から湧いてくる感情は憐れみではない、この国への怒りなのだ。この国とは自民党や官僚はもちろんですが、自分さえ良ければ他人はどうでも良いと生きているそこら中にいる中高年と老人たちです。

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2024年03月24日

Posted by ブクログ

好き嫌いが分かれる作品だと思う。
自分は結構好き。

コロナ時に女子大生の年代の子の話がら始まり

60年代〜70年代初頭と思われる時期に生まれた人々やその周辺の親だったり祖父母だったり色々な人たちの群像劇っぽいところもあり。

どんなに便利な世の中になっても人との関わりがなくならない限り、自分の人生はわからない。
たとえ自分が、貧乏でも裕福でも賢くても残念でも美人でもオバさんだったとしてもわからない。
幸せとか不幸とかさえも。


自己犠牲ではなく自己満足。
という一文が残っている。




《〜失敗できるチャンスが欲しかっただけなんだよな。うん。》


現代の、真面目で頑張り屋さんの若い人たちに必要なことだ。

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2024年02月22日

Posted by ブクログ

読み始めた時と読み終わった今、ガラリと印象の変わる物語でした。
読み始めは、奨学金で大学に通い、生活を切り詰めている真央が、バイト先で不思議なおばさん四葉に出会い、影響を受けていくという、どちらかというとホンワカという感じでした。
謎に包まれた四葉と仲良くなっていくと、どうも昔は大金持ちのお嬢様だったらしいということが分かってくる。
しかし、ここから先、ガラッと印象が変わってきます。なぜお嬢様が今、派遣社員としてスーパーで試食販売をしているのか…単純に考えると家にお金がなくなったから、ということになるのだけれど、それだけではないものが四葉さんにはある。
四葉の周りには不思議と人が集まってくる。お金があるからと、それを目当てに集まってくるのであればそれは当たり前。でも、不思議と集まってくるのです。
それはきっと、四葉に強い芯のようなものが一本通っているからなのだろうな。同じ女性として、それは憧れであったとしても、鬱陶しさであったとしても、無視できずに目で追ってしまう存在になってしまうのではないかな。(だけど、男から見たら違うんでしょう。「クソがー( #`꒳´ )」と思う男は出てきましたよw)
四葉が子どもの頃から、中年になるまでの数十年間の物語だったので、世間の常識が180度といっていいくらいに変わっていきます。LGBTQや性加害など、今では当たり前に語られることが、声を挙げられなかった時代…そんな時代を生きてきた四葉の姿勢、行動は十年早過ぎた…ても、そうやって血を流してくれた人たちのお陰で今があるのかもしれません。
しかし!何年経っても変わらないのは、お金と教育の問題!と柚木麻子さんは最後まで投げかけています。
色々な女性の生き様が描かれた作品でした。

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2024年01月31日

Posted by ブクログ

苦学生の真央はバイト先で試食販売員の四葉と出逢う。
出逢いから人生が好転していく物語かと思いきや、多くの人が入り乱れ予想とはだいぶ違った方向に広がっていった。

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2024年01月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後、四葉さんが鑑定士として活躍しているのが知れて良かったけど、真央さんとまた会ってほしい
学生の時を大切に過ごそうと思った

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2024年01月16日

Posted by ブクログ

下の世代が自分よりさらにひどい苦境に立たされているのを見て、腹の底から湧いてくるこの国への怒り

ー そんな怒りがこの小説には満ちている。
おじさんになるまで、そんな国の価値観や仕組みを作る一端を担った(この国に所在する組織で働くということはそういうことだ)者として、非常に読むのが辛い小説だった。
さらに、読み終えて残るどこにも持っていきようのない、名状し難い感情…

淡々と描かれているこの国の姿は非常に衝撃的だ。
閉塞感漂い、国際競争力もなく、支え合う地域の縁もない社会。ディストピアなのだ。
これが、いまから数年先にリアルにならなければ良いけど…

♫レクイエムー怒りの日(ヴェルディ)

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2023年11月19日

Posted by ブクログ

 決して順調でない人生。そんな辛苦のなかを生きる女性たちのゆるやかにつながった縁(えにし)を描くヒューマンドラマ。
          ◇
 宮元真央は奨学金とアルバイトの掛け持ちで学費と生活費を賄う苦学生だ。

 下宿先から通うのは東京でも名の通った私大だが、実家には仕送りしてくれるようなゆとりはなく、頼りにできる親類縁者もいない。おまけに時間に追われ容姿も平凡な真央には、恋人や友人もいない、まさに孤立無援の状態だ。
 経済的にも体力的にもギリギリの毎日は真央から希望を奪っていったが、そのことに気づく余裕さえ真央はなくしていた。

 ある夏のバイト先でのこと。スーパーのバックヤードから缶ビール2ダースを抱えて売り場に出てきた真央に、試飲用の熱い紅茶を差し出してきた中年女性がいた。
 暑さのあまり冷たい飲み物を欲していた真央だったが、ひと口飲んで驚く。7月末にも関わらずその熱い飲み物の美味しさは格別で、いつの間にか真央は暑さを忘れてしまっていた。
 その女性こそ「何でもよく売れる」と評判の試食販売員、山戸四葉だった。
         (第1章) 全5章。

      * * * * *

 降りかかる数多の苦労に耐えながら人生を好転させていく女性を描く、ひと昔前によくあったタイプの物語かなと思ったら、趣が少し違っていました。

 苦学生の真央。没落長者の四葉。画家くずれの実亜子。モデルくずれの舞。
 皆それぞれ人生につまづき辛酸をなめるけれど、しぶとく生き抜き自分なりの道を切り開いていきます。
 そのポイントになったの人物は四葉でした。

 育ちのよさなのか、四葉のスタンスは常に前向きで信じた相手に裏切られようと微動だにしない強さがあります。
 彼女が惜しみなく分け与える善意や指し示す進路により、真央が、実亜子が、そして舞が、苦境を脱し、人生が開けていきます。

 なのに真央たち3人ともが四葉の善意を享受しながら彼女を切り捨て一顧だにしないということに胸が痛んだし、読み続けるのが辛くてこのまま閉じてしまおうかと思ったりしました。
 四葉はある意味いちばんの不運と苦労を背負ったと言えるだけに、長所を活かす生活を手に入れたラストの描写には正直、安堵しました。


 感銘を受けた四葉の姿勢があります。

 1つめは、「嘘つき」でいること。
 ただし、自分のための嘘や人を不幸に陥れるような嘘はつきません。四葉が口にするのは、相手の心を和ませ少しでも前を向けるようにする嘘だけなのです。


 2つめは、縁があって出会ったと思う人間に対し、惜しみなく善意を向けていくこと。
 精神的に物質的に金銭的に。たとえそれで自身が窮することになっても気にしません。ただ相手の人生が立ち行くことを願い喜ぶのです。


 3つめは、窮しても決して挫けたりしないこと。これは、自分にできることとできないことをきちんと弁えているからでしょう。

 持てるものをすべて他人に分け与えて貧していく四葉に、童話『幸福の王子』に似ていると舞が言う場面があります。
 それに対して四葉が答えます。
「自分は自己犠牲は嫌。絶対に長生きするし、ツバメにも町の人達にも幸せになってもらいたい。」と。そして永く語り継がれなくても構わないから、幸せな結末を迎えるという気概を見せます。
 こういう柔軟かつ強靭な精神を持つ女性は本当にステキだと思います。


 『オール・ノット』というタイトルどおり、主要な女性たちは、たとえネックレスの糸が切れてもバラバラに散ってしまうことはない真珠玉のように、それぞれが独立しているけれど実は知らずのうちに細い糸で繋がっていました。
 そしてどんな苦境に陥っても、すべてが悪いというわけでもないということを感じてもいるのです。

 
 柚木麻子さんにしては暗い描写が多い作品でしたが、何か心に刻まれるような作品だったと思います。

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2023年11月13日

Posted by ブクログ

「オール・ノット」
糸が切れてしまっても真珠がバラバラにならないネックレスのつなぎ方のこと。
仮に切れても紛失せずにすむそうです。

このタイトルがつけられた意味をすごく考えてしまいました。
仮に糸が切れてしまっても、ずっと続いていくものがある、ということか
ひとつひとつ丁寧につながれたものは、何があってもつながり続けることができる、ということか

それぞれに苦しい時期を過ごしながらも、今を懸命に生きてきる女性たちの姿は、心に残りました。

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2024年04月19日

Posted by ブクログ

人生全てがだめってことはない

最後の方重め
四葉いろんなこと乗り越えてきたんだねっていうかそんなに人に尽くさなくてもいいよって思ってしまった、、、宝石やお金をあげたりとかさ、、

幸福な王子
ビーフティー
レズ
性被害

今の世の中の問題を取り上げていて
こんな世の中になったのも国のせいじゃないか

あれこれってどういうことだっけ?って読み返そうとしたら次の行から詳しい説明に入るということが何度かあった笑

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2024年04月13日

Posted by ブクログ

いつもの柚木麻子感がない…?
そこに尽きます。
女同士のドロドロだとか、いやーな胸の内の探り合い、マウンティング話が好きな柚木ファンには肩透かし感があるかも。でも、最近書かれたということもあり、実在の「あー、あの場所ね、あのお菓子かな」みたいな想像をしながら読めるのはいい。とりあえず、ビーフティーなるものを味わいたくはなる。
読み進めていくと、10年後20年後の未来が描かれていて、そこはとても興味深い。
ぜひ10年後読み返してみたい気もする。

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2024年04月04日

Posted by ブクログ

貧困にあえぐ苦学生の真央が四葉に出会って、彼女に影響を受けて変わっていく話かと思ったけど…。
主に四葉や彼女に関わる人々の話で、正直入り込めませんでした。
オール・ノットの意味を知って「一カ所が切れても全部がダメになるわけではない」ということだけ印象に残りました。
人生もオール・ノットで。

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2024年03月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この前に読んでたのが「いい話」(=都合の良い話)だったので、読み始めた時はこれもか、とゲンナリしたが、そんな単純な話じゃなく、壮大さを感じた。
書いてしまえば、貧乏な主人公と金持ち一族3代にまつわる話なんだけど、日本の衰退や若年層のワーキングプアといった社会問題も書かれている。
ただ、性的マイノリティの設定は必要だったのかわからないし、性的児童虐待の話も突如出てきた感があった。
章が変わると時代や出てくる人が変わるのは読みにくかった。
オールノットはバラバラにならないネックレスの結び方とのことだが、読み終わった今、縁切れてますよね、と思ってしまった。

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2024年03月07日

Posted by ブクログ

時代があっちゃこっちゃ飛ぶので少し分かりにくかった。
最終的には、現代より少し先の話になっているのかな…?
登場人物も多く、時系列も入り乱れているし、でももう後戻りしながら読むのも面倒になって強引に読み進めた。
貧困問題、性加害問題、LGBT問題など、現代社会が抱える闇が詰め込まれている。が、不思議なほど暗くはならない。物語の中心にいる四葉さんが、たくましく進み続けているからだろう。この内容なのに、読後感もよく、柚木麻子マジックにかかった気がする。
巻頭に登場人物一覧を付けてくれたら星4つはつけられたと思う。

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2024年03月05日

Posted by ブクログ

困っている人がいたら、咄嗟に助けてあげたいと思うのが人の性だと思うのだが
今のニッポンどちらを見ても何かしら壁を感じて困っている人だらけ。
他人をまるっと背負い込むのは無理でも
ほんの少しずつ、助けたり助けられたりしながら生きていければいいのに。
善人ばかりでない曲者揃いの登場人物たちが
人間らしくてなんとも素敵。
そう、人を助けるのは善意からじゃなくたっていいのだ。
国が若者を助けてくれない世界は、この小説の中だけじゃない気がして恐ろしいのだけれど。。。

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2024年03月03日

Posted by ブクログ

表紙のようにキラキラした宝石箱のような物語なのかと思いきや、な作品

何かがうまく行かないと
どこからダメだったんだろう、振り返ってみたら最初からじゃない?
そう思うこと、あるかもしれない
でもその出来事、本当にダメだったんだろうか?
良いことは、ひとつもなかったんだろうか?

全部ダメだったとしてもいいじゃないか!
そう思えることも必要かも?

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2024年02月23日

Posted by ブクログ

横浜を舞台にした、一人の女性と過ごした人たちの物語。過去と現在と未来と、場面が行ったり来たりするし、ジェンダーや貧困や労働環境などいろんなテーマが散りばめられていてまとまりのない印象だった。
それでもラストに少しの希望と、不思議な再会が待っていたのは新しい一歩に彼女たちが進めたようで嬉しかった。

箔押しにはお金がかかるので、それを施した表紙の本は、それだけ出版社が「この本は売れるぞ」という気合と覚悟を込めているという証拠である。
という話を聞いてから、それを見るたびに思い出しては読む前から期待が高まってしまう。
確かに大作だった。苦学生だった真央が大人になって、四葉さんに受けた施しをずっと覚えていて次の世代にも同じように返したいと強く望んだこと。その思いには途切れることなく繋がりつづけるオール・ノットを感じた。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

テーマが散逸になり過ぎて、頭に入ってこない。
人との距離感も、宝石もらったり、家に住みついたり理解不能。

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2024年02月10日

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「ダイアナ」「アッコちゃんシリーズ」を読んでいたので、強いしっかりした女性をイメージしたのだが違ったようだ。帯に「新しいシスターフッドの現在地」とあり、女性の姉妹のような連帯の内容だった。
どの女性も不幸に満ち溢れていて、読んでいて暗くなる。奨学金や生活費に追われる主人公の真央。様々な要因で没落していく四葉。ただ四葉は色んな物を人に与えて行く。PCや宝物を貰ったのに、宝物の価値が思った程で無いと離れて行く真央に呆れてしまう。
自分本位に女性同士の恋愛に明け暮れるミャーコ。性被害に遭う女性。初老の自分には遠い世界に感じた。最後に未来が描かれていたが、多少ホッとする。

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2024年02月01日

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アッコちゃんシリーズはとても好みだったのですが…この作品、序盤はすごく引き込まれたのですが、譲られた宝石に値が付かなかったあたりから雲行きが怪しくなり…
四葉が搾取されてるだけにしか見えず…おまけに中盤、後半と時代と視点がくるくる変わって、ついていけなくなってしまいました。

印象に残ったのは、四葉の小公女に対して貧富の差を書いてないことへの少しの批判と、幸福の王子への考え違いを指摘するあたりかなーこの辺は考え方がしっかりと思ったのに、周りの人に対する疑いのない信頼がなんとなくチグハグな印象でした。

ラストはやや救いあり!?

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2024年01月29日

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ネタバレ

経済的な余裕のない苦悩は、読んでいて苦しくなる。そんなギリギリの状況でもバラバラにならない『オール・ノット』の希望の話ではあると思うが、根本的な解決はされず、ハッピーエンドとは言えない、未来への不安感を残すお話なので、個人的には好きなお話ではなかった。

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2024年01月26日

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つまらなかった訳ではないが、色んな問題てんこ盛りすぎて読み疲れした。
最後はこの国の未来が一層暗く悪い方向に変化してて、主人公の選択しか残されてないのかと思うとため息しか出ない。

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2024年01月21日

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ビーフティーって飲んだことある❓

ってな事で、柚月麻子の『オール・ノット』

柚木麻子さんらしい人との繋がり、温かみ、悲しみも少しありながらじゃけど、ほほ良い人(悪党になりきれないつまらない人間は居たけどw)ばかりで、心を解してくれると言うのか、癒しというのかビーフティー(飲んだことないけど)の様に温かく優しい味わいの本じゃね。

オールノットの如く隣同士を傷付けない、糸が切れても結び目によってバラバラにならないとはなるほどなぁと (o´Д`)

2024年3冊目

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2024年01月20日

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主人公・真央の出会いと成長を描く長編。
真央が苦学生として奮闘する大学生時代〜30代後半ぐらいまでの半生を描きつつ、その生き方に大きな影響を与えた横浜生まれでお嬢様育ちの四葉さんの前途多難な人生も紡がれます。

女性の生きづらさ、日本の貧困問題、性被害の扱われ方の変化、性的マイノリティーの生きづらさ…などなどのメッセージが盛りだくさん!だし、登場人物も(女性ばかり)どんどん出てきて少し混乱します。
ですが、柚木さんの描く古き良き横浜の情景が美しくて、引き込まれるように読めました。

四葉さんのアパートのインテリアの描写が特にワクワクしました。表紙のデザインにもときめきます。

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2024年01月18日

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登場人物が多くて、回想シーンで時間が戻り、章ごとに一人称が変わるので、ストーリーについていけなかった。

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2024年01月14日

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どの物語もどうなるんだろう?と思いながら読むけれど、この本はホントにどうなるんだ??と全く予測がつかなかった。

出会った人の影響が色んな段階で見える、というのは現実にもある。
社会背景は現実と同じなので、あーそうだったなぁと思うことも。
よく分からないまま進んでいく感じがとても面白かった。

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2023年12月20日

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面白かった。
きっとそうなるんだろうなぁという未来が最後。
わたしにもそんな友だちがほしいな。
奨学金返し終わったあとの爽快感は何にも変えられない。
それは長年、借金を返し続けたひとにしか分からないと思う。

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2023年12月02日

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昭和から令和にかけて生きた、それぞれの世代の女性たちの生きづらさのようなものを描いている。
性被害、同性愛や非正規雇用など。
オールノットは果たして何の象徴として描かれているのかと考えてみると、糸は切れても、どこかでつながっている、絆のようなものなのだろうと思う。
最終章は未来像であり、著者の、現状の社会に対する不満と期待が透けて見える。

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2023年11月16日

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