【感想・ネタバレ】レクイエムのレビュー

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ネタバレ

孤独な死者たちへ奏でる短編集。

どの物語も短さを感じさせない確立された世界観で、読者を巧みに誘い込む。
死の物語の中に不思議と癒しを感じる。語られる哀しみ、願い、記憶、そういったものが穏やかに鎮めていく。
『コヨーテは月に落ちる』が特に好み。マンションに閉じ込められるのも、役人として働き続けるのも、同じようなものと言い切れる人生に、深く感じ入るものがある。

祈りが人々にもたらす安らぎの漂う一冊。

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2020年12月13日

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篠田節子の短編集の中で、一番好きなものです。とくに、最初の「彼岸の風景」の冒頭列車の描写がすごく好き。

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2009年10月04日

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タイトル通り、「死」をテーマにした短編集。最初の作品は純文学と言った部類だが、その他の作品は篠田節子らしい怪談じみた話。怖い話ってわけでもないけど。

夫の死、伯父の死などの死を契機に、様々な出来事がフラッシュバックするというようなところが6本それぞれの共通点か。中間部はバブル経済とその崩壊、最後は大戦の終戦間際という、動乱を軸にしているところが篠田節子らしいっちゃあらしい。

6本サラリと読んで、どれが好きかと言われると、結構どれも好きな作品である。バブル前にお告げを受け、バブル後にまた同じ救いを求める女性、貧してもトラサルディのスーツは譲れない不動産屋など、心機一転できそうなのに、枠組に縛られて動けず朽ちていく悲哀を描いていくさまは秀逸である。

6本のうち、ある意味核になっているのに浮いている「コヨーテ」は、SFである。SFホラーにしようとして、完全にはできなかった作品だが、それを純文学に逃げなかったことは高く評価されて良い。ただ、切れが悪いところはイマイチなんだけどね。

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2017年10月26日

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大人の短編集。

【コンクリートの巣】はやりきれない話。
こんな風に親から子への虐待が行われているのか…
と辛い思いで読み進めた。

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2011年11月15日

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ネタバレ

ホラー小説になるのだろうけど始終物哀しい空気でした。SFあり、壮絶な戦争ものもあり、引き込まれます。
なかでも「コヨーテは月に落ちる」と「帰還兵の休日」が好きです。破滅ものが好きなのかも…と思ったら物騒ですが。作者の後書きを読んで思ったのですが村山由佳さんどうしてコヨーテにお詳しいんだろう?
「レクイエム」は壮絶でした。確かに、第二次大戦中に悲惨な戦場にいた従軍経験者は戦争経験語らないと同僚も言ってましたし、わたしの母方の祖父も家族に全く語らないままだったようです。
愛する人が永遠に失われようとしている時に自分は体内に取り込めるのか…考えてしまいました。

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2022年05月03日

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 『死神』につづき篠田節子の短編がなかなかか良い。最後の短編『レクイエム』で戦争体験者の老人が語る言葉に「戦友会なんてやって思い出を語れる連中は地獄を見ていない」とある。この老人が語りだす体験談が凄まじいの一言、世の中、数ある恐怖、ホラー小説はあれど史実にはかなわない。

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2016年07月11日

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ネタバレ

今回は、不思議な世界へ誘う短編集です。

1)「彼岸の風景」

末期癌を患った夫と8年ぶりに訪れる夫の実家。
豪農だった旧家のその家に結婚の許しを得に言って以来、二度と来ることはないと思っていた二人。
夫の死を前に、せめてもう一度両親に会わせておきたいと夫を連れて来たものの、嫁とは認められず単なる客人として扱われていることの虚しさ。
夫がその実家で亡くなった後、彼女に残されたものは思い出と戸籍だけだった・・分骨も許されず居場所もない彼女の目に仏壇に納められている夫の喉仏が映る。とっさにその喉仏を掴んで夫の実家を飛び出す彼女・・。
8年前と同じことを繰り返して・・。
亡くなった夫を偲んで思い出の場所に訪れた彼女の目の前に、あの時の夫の後姿が現れて・・。

何とも切ない。
夫さえいてくれればと思っていた彼女から、夫がいなくなってしまう・・。
ラストシーンはおぞましいような、美しいような・・。

「逝かせてあげる・・・」

夫の喉仏を口に入れて噛みしめる彼女・・。
女の情念を感じるなぁ・・。
私には出来ないけど・・。

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2)「ニライカナイ」

大学生の頃から貢いできた男に捨てられた朋子、28歳。
男から渡された手切れ金の使い道を考える気力もなく、証券会社で働く友達に渡して、死に場所を求めて紀伊半島に向かう・・
そこで体験する不思議な光景・・「ニライカナイ」・・。
海からこちらへ押し寄せる無数の鼠とその背後の巨大な船・・。
それは幻・・?
死ぬきっかけを失って帰宅すると、証券会社勤めの友人から渡したお金が5倍に跳ね上がったと聞かされる。
その後、運命の赴くままに社長夫人に納まる朋子だが、夫の事業の失敗で多額の負債を抱え・・夫婦で死に場所を求めて再び紀伊半島のあのホテルへ向かうと、そこにはまたあの「ニライカナイ」の光景が・・。
二人は再び事業を再建し、成功する朋子の前に、夫が自身の子どもとその子を産んだ女性を連れて来て、朋子に離婚して欲しいと言い出す。
承諾し、自分で起業する朋子・・。
また事業に失敗して落ちぶれていく元夫を尻目に、朋子の事業は成功、儲け話を持ちかけるスーツ姿の「鼠」が朋子に次々と寄ってくる・・。
しかし、いつしか事業に影が射して行き、あっという間に全てを失う朋子・・白髪頭の老婆はまたあのホテルへ向かうのだが・・・

朋子の心が冷め切っているのが、辛いな・・。
どんなに豊かになっても、心は冷たい風が吹いているような・・。
老婆になった彼女が見た「ニライカナイ」は、彼女を連れ去っていったのか・・。そういう契約だったのかな・・。
幻想的であり、朋子の心を暖めてくれたのは「ニライカナイ」で踊る老婆たち(神さま?)だったのかな・・。

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3)「コヨーテは月に落ちる」

町で見かけたコヨーテ。
そのコヨーテに惹かれて、後を追う美佐子。
気が付けば、自分が先日購入したマンションの建物の中。
まだ鍵を渡されていない美佐子は部屋には入れず、マンションを出ようとするが、どうやっても出ることが出来ない・・
生き物のように建物が形を変えて美佐子を閉じ込めているかのよう・・。
マンションの住人も誰もドアを開けて美佐子を助けようとはしない。
再びコヨーテは現れて、美佐子はその後を再び追う・・。


すごい閉塞感・・。
こんな悪夢を見たことがあるなと・・。
建物から出られない・・。
ぐるぐると建物を回って、出口を探すけれど外に出られる通路がない・・。
それは異界なのか、常世なのか・・?
やっと出られたかと思ったら・・・ってこと。
同じように閉じ込められた人の異様さ。
悪夢の世界に入り込んだ気分に・・。

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4)「帰還兵の休日」

バブル景気に乗って、優雅な生活をしていた住宅販売会社に勤める男、菅本。バブルが弾け、極貧の生活に落ちながらも販売の仕事を続ける彼の目の前に映ったのは、橋の下の中州で暮らす浮浪者の3人の老婆。
ふとしたきっかけで、その老婆たちの身の上話を聞くことに。
それは老婆たちの華麗なる過去だった。
しかし、後でそれが全くのでたらめであると知る菅本。
からかわれたのか、老婆の妄想か・・。

二月の豪雨によって、菅本の住む安アパートは床上浸水となり、わずかに残った家財道具も泥まみれになる。
その時になって、辛い過去を一編の物語に作り変えて語った老女たちの心中が分かった菅本。

━『悔恨、羨望、希望、そうしたものが過ぎ去った時代を作り替える。未来は幻に過ぎないし、それまでの人生も各自の記憶の集積に過ぎない。』━と菅本は考える・・・。

老齢になると、過去の自慢話をする人が多いですね・・。
それは、嘘とは言わないまでも、自己の存在価値を伝えておきたいと言う老化現象の一つかもしれません・・誰もが通る道なのかな・・。

洪水が収まった中州に再びビニールシートを張って、何事もなかったかのように生活する老婆たち。
災害に一番強いのは、高価な耐震マンションではなく、あの中州の小屋だと実感する菅本。

そしていつかあのバブルの頃の生活を取り戻すんだと、仕事に向かう・・一発逆転と唱えながら・・。

戦中、戦後を潜り抜けてきた老婆たちを見ていて、自分のいまの状況が大したことじゃないと思えてきたのかな・・。
少し希望の見えるラストでした。

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5)「コンクリートの巣」

衰弱したインコを連れ帰った縁で、同じ団地の階下の小学生亜美と知り合う正恵。
インコは亜美の飼っていたものだった。
その後、階下で亜美と出会うようになる正恵だが、亜美の様子に不審感を抱き始める。
鍵を持っていなかったからと、家の前でいつまでも佇む亜美。
深夜、全裸でずぶ濡れになって、べそをかいている亜美を見つけた時に正恵の疑問は確信に変わる。

―亜美は虐待を受けている―

母親と姉から虐待を受けている亜美、独身の正恵はどうして良いか分からない。こっそり亜美の小学校校長に連絡するも、亜美自身が虐待を否定していると逆に詰問されてしまう。
団地の住人も見て見ぬふり、自分も関わるのはよそうと決めるのだが・・。
ある日、正恵の目の前で、走る車から突き飛ばされ怪我を負う亜美を目撃してしまう。亜美の母はそのまま車でどこかへ行ってしまい、正恵は亜美を病院へ連れて行く。
医師ははっきりと虐待であると判断し、警察を呼ぶ。
母の危機を知って、逃げるようにと母に電話をする亜美。
それを見て、虚しくなる正恵。
駆け付けた警察官が言った言葉に愕然とする正恵。
亜美の母が運転中に操作を誤り、事故死したのだった。
亜美の電話中に聞こえた姉の悲鳴・・あれは事故の時のものだった・・。

子どもにとって、親しか拠り所がないんだよね・・。
虐待されても、しがみついていなきゃ生きられない。
だから、叱られたのは自分が悪くて、虐待なんてされていないって言うんだな・・と気づかされる作品。
本人が否定するから、回りもなかなか手が出せないというところもあるんでしょうね。
重いお話です。

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6)「レクイエム」

教団幹部の伯父が、隠し続けた戦地パプアニューギニアでの兵役の実態。
末期癌に侵された伯父が姪の祥子に遺言として託したのは自分の死後、腕を切断してパプアニューギニアの、自分が死にかけて倒れていた、その大地に埋めて欲しいと言うものだった。

戦争末期、食料の補給もない熱帯のジャングルで、仲間に見捨てられ、死を待つだけだった伯父を救ったのは現地に住むパプア人女性だった。

同じ戦地にいた伯父の戦友から聞く戦慄の真実・・。
食料を絶たれた日本兵たちは、何を食料にして生き延びようとしたのか・・?
死んだ仲間の肉を食らったのか?
祥子の脳裏に浮かぶ同胞の死肉をあさる光景・・。
しかし、真実はもっと悲惨だった・・。
彼らは「猿」と呼んでいたパプア人をだまして殺し、食べていたのだった・・。

パプア人の集落で回復し、パプア人女性と恋をした伯父が行方不明の恋人を捜して軍にたどり着いた時、上官は「これでも食え」とある肉を差し出す。それを見て震えだす伯父。
伯父は「ありがとうございました」と、その肉を食べ・・。
上官命令は絶対、殴られても「ありがとうございました」と言わなければならない戦時下の異常な世界・・
だから伯父や、当時その場にいて九死に一生を得た者たちは口をつぐんで、口外しようとしなかったのだと祥子は悟る。

極限のところでは、ヒューマニズムは存在しないのだなと考えさせられる作品。

自分の腕をその戦地に埋めて、芋の栄養にして欲しいと願った伯父の懺悔の気持ちと、復員後、宗教に没頭したのは実は戦地で亡くなった者たちを供養するためだったと知って、伯父の気持ちを理解する祥子。

何だか、目に見えるようなおぞましい内容に、逆に引き込まれます。
結局、伯父の願いは別の形で果たされることになるんですけど。
「腕を持って行け」と言われてもね・・

全体的に短編ながら、読みごたえがありました。

特に「「ニライカナイ」は幻想的で、「コンクリートの巣」は現代社会の問題を痛烈に感じ、「レクイエム」はショッキングな戦争の本質を教えられる気がします。

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2012年10月05日

Posted by ブクログ

あらすじを読んで気になって買ってみたけど…ちょっぴり微妙。
でも言い回しや情景が凛としていて綺麗。あとカバーも結構好き。

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2009年10月24日

Posted by ブクログ

短編集。
全ての作品というわけではないが,
バブル崩壊の前後の光と闇の対照を描いている作品が多い。
また,題名通り死に関する作品も少々あった。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

幻想短編集とあるが、「コンクリートの巣」は幼児虐待を扱っていて、毛色が違う感じ。「自分が悪いから、母親が叱る。悪いのは自分だと自分を納得させているかぎり、家庭内に彼女の居場所は、一応確保されているんだ。」・・・涙。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

短編集。いつものホラー&サスペンスなかんじではなく、幻想的な作品が多いです。
『ニライカナイ』:一人の女性の青春期から壮年期までを描いた作品。短編なので、とにかく淡々と勢いよく進んでいきます。決断の時のあまりの執着のなさ、人生なにが転機となるかわからないおもしろさ、が好きです。‘ピンクの鼻の鼠たち’っていう表現は生々しさとかわいさがあって好きです。
『コヨーテは月に落ちる』:この本のなかで一番幻想的な作品。登場人物たちのちょっとしたダメ人間さに危機感を抱かされます。
『帰還兵の休日』:主人公はどこかにいそうなちょっと嫌な奴という感じでした。飄々と生きるホームレスの老女たちは美しく頼もしい。
『コンクリートの巣』:もし自分が同じ状況に逢ったらどう対処しよう、と考えさせられました。
『レクイエム』:戦争体験者の話。「星々の舟」「ねじまき鳥クロニクル」を思い出しました。愛する人の消滅を知ったとき自分の中にその存在をどうとどめておくか。現代では人生に何度も出会う状況ではないですが、心に残る作品です。

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2009年10月04日

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