【感想・ネタバレ】音楽療法はどれだけ有効か: 科学的根拠から探るその可能性のレビュー

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Posted by ブクログ

音楽療法というと、病の人に音楽を聴かせるとか、一緒に歌ったり、楽器を演奏したりすることかと思っていた。
効果も、他の治療の補助のようなものかと。
叔母が療法士なのに、実はこの程度の認識しかなかったというのが実情だ。

本書は、音楽療法の効果を科学的に検証しようとした本。
筆者はもともとは音楽を学んできて、後で医学部に入り直してその道に入った人とのことだ。

最初に、エビデンスありとの判定はどういう手続きでなされるかが説明される。
音楽が人に与えた影響の測定方法も症例研究、群研究、脳賦活化研究などがあると知る。
そして、脳賦活化の調べ方の方法も、説明を一覧できたのは実は本書が初めてかもしれない。
PETやfMRIなどは他の本でも見たことがあるが、それぞれ何を測っているか、対象とするものの違いなどが整理されていて、素人にとって非常にありがたい。

こうした基本的なことが整理された後で、認知症、失語症、パーキンソン病、脳卒中に対して、どのようなエビデンスが確認されているのかが説明されていく。
病気により用い方も変わっていくということが読んでいて新鮮だった。
自分が予想していたよりも、はるかに効果の検証が進んでいた。
認知症に対して、音楽と運動を組み合わせると、認知機能の維持につながること、失語症に対してメロディック・イントネーション・セラピーという訓練法も脳に新たな発話の経路を作っていく上で効果があるなど、期待が持てる話が紹介されている。

有効性が語られる一方、一番驚いたのは、音楽療法にも副作用があるという指摘だ。
冒頭にも書いたように、音楽療法への知識がなかったせいでこう感じたのだが、病気の原因に直接働きかけるものでなく、何となく効果があるもの、のように思っていたからだ。
失礼だが、薬にもならないが、毒にもならないと思っていた。
が、やり方を心得ていない療法士が施術すれば、患者が興奮状態のままになってしまったり、症状を一気に悪くさせることがあるというのだ。

筆者は、音楽療法士の育成システムにも問題を指摘している。
現在、音大で養成することが多いが、そのために医学的な知識を欠いたままになってしまうことがあるという。

今後どう発展していくか、楽しみだ。

最後に、誤植と思われる箇所。
p143 「・・・音楽的パターンの種類が異なることを述べました(表3-1)。」
この表は3-1ではなく、3-2ではないか?

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2023年10月27日

Posted by ブクログ

高齢者施設やデイサービスなどで音楽を使ったプログラムがあるので、「音楽療法」には何となくよい効果が得られそうなイメージはあった。その音楽療法の効果をエビデンスで探った一冊。本書への納得感は高かったのだが、もうちょい普及して研究が進むと、知見がたまってより内容が充実しそう。最近は弁護士&医師、スポーツ選手→医学部なんていうキャリアの人もいるが、音大出→音楽教諭→医学部→神経内科医という著者のキャリアはかなり稀有なのではないだろうか。そっちにも興味がわいた。

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2024年01月02日

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