【感想・ネタバレ】黄色い家のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

前評判を全く読まずに手に取った一冊。

タイトルはどういう意味なのか、と疑問に思いながら読み始めるとまず「黄」に出会う。そして、「金」の話になり、「風水」の話にも「黄色」が繋がっていく。

さらに描かれるのは「家」の話。
いわゆる普通の「家」=「家族」の話ではない。今でいうなら「多様な家族の形」とも言えるかもしれないが、そんな落ち着いたものではなく、平成という大きなうねりのある時代を生きるために、文字通り「必死」な女性達の姿に、息つく間もなくページをめくる手が止まらない。
お金がないと生きていけない、お金を貯めると安心する、でも同時に不安も猜疑心も生まれ、人間関係にもヒビが入る。悲しいけど、きれいごとを語るより、よっぽどリアルで切実な世界が描かれている。

主人公の花が、母親と話をする場面に涙が出る。
どんなにどうしようもない母親でも、娘にとってはたった1人の肉親。その母親を置いて家を出てしまう花ではあるが、本当に辛い時、母親に向かって枕に顔を埋めながら語りかける。思い出すのは古い文化住宅で明るく笑う母親の姿。子どもにとって母親とは何なんだろうか、と考えさせられる。

死んでしまった母親の部屋に残されていた幼い頃の花との写真、父を失った映水が思い出す幼い頃の父との思い出。親子とは何なのだろう。

体験したことのある平成の時代の混沌、そしてコロナ禍における孤独感も描かれており、怒涛の読書体験となった。

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2024年05月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 色々なタイプの貧困が描かれる。なかでも映水さんの話はきつかった。貧困と犯罪の密接な関係性、そこから抜け出すことの難しさ、民族差別など、フィクションではなくどこかの誰かの話であるように感じた。生まれた環境でその後の人生がある程度決まってしまうことは、否定できない。そこから抜け出そうとしてもどうすればいいのかわからない。こうやって貧富の差は拡大していくのか、と諦めにも似た感情が浮かんだ。
 途中までは主要な登場人物4人の中では花が一番まともで、将来のことを見据えて何とか金を貯めないとという責任感の強い子だと思い、一番感情移入していたが、いつの間にかおかしくなっていることに気づいた瞬間は怖かった。知らない間に徐々に金と犯罪によって人格や顔つきまで変わってしまう恐ろしさ。そう気づいた時にはもう抜け出せなくなっている恐ろしさ。
 トロスケに金を盗まれ、母親にも大金を渡し、本当にひどい目に遭った花だからこそ、落ちぶれていく様子を読み進めるのは辛かった。報われてほしいと思ったけれど、もう取り返しのつかないところまで来てしまっているのが辛かった。最後の二章は一文がとても長く、読点で文が繋げられていたため、息をするのも忘れて読んでしまい、花の感情が差し迫って感じられた。

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2024年05月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

善と悪、事実と真実、信じたいこと
誰が決められるのか
何も選べない、選ぶことができない、道がそれ以外にない
そんな状況でも、それでも生きていかなければならないとき
その選択を誰が責められるのか

表面的に見れば若い女性を集めて暮らしてる「ヤバイ」人
でもその人に救われた、掬われた人間が確実にいた
人の目から見た事実と、花から見た真実は全く違う
自分が信じたいことを、信じたっていいじゃないか


いわゆる裏稼業的な人間が多く出てくるのに、みんな花に優しくてよかった
それも花を静かに沈めていくための...と考えてしまう自分もいるが、信じたいものを信じる

終盤、映水や黄美子に想いを吐露する花がおよそ40歳には見えなくて子供みたいで
ああ、20年前に、もしかしたらそれよりもっと前から、花の心は止まったままだったのかもしれないと思って、苦しかった

明日もまた生きていこう

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2024年05月03日

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ネタバレ

早くこの黄色い家から出たかった。花を取り囲む人々も怖かったけど花自身がどんどん「おかしい人」になっていった。
いわゆる闇の世界を身近に感じてしまい、その中で映水さんや琴美さんに癒しすら感じてしまった。冷静に見ればだいぶ怖い世界だし怖いことをしているのだが。
なので早く読み終わりたかった。
読み応えは充分
それにしても黄美子さんて一体なんだったんだろう。花の心を救ってくれたことには間違いないのだろうけど…

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2024年05月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2024.05.09

読み終わったあと、じんわりと、心があったまるような、それでいて切なくて悲しくてやるせない、なんともいえない感情が心を占めた。

あらすじから勝手に「若い子を監禁した悪い女の話」と思い込んでたのでいい意味で思いっきり裏切られた。
花の読んだ黄美子の事件は、花たちとは別ものだったけれど、まさしく花たちが最後に起こした騒動と重ねてしまった。

お金が人を狂わす、というテーマもあり、1990年代の社会経済も織り混ざった内容で、この時代に子どもだった私はこんな世界もあったのか、と驚きもあった。

花がたんす貯金を貯めていくたびに、なぜかこっちがソワソワしてしまい、金額が膨らめば膨らむほど、最終的に割れてしまう風船のようにどこかで消えてなくなるのでは、と思っては、そうなってしまって心が痛んだ。
花が黄美子と暮らした日々の軸にもなっている「お金」。この「お金」が花を狂わしていき、周りの人々との関係性も変えてしまう。
「お金」がないと生きていけないのに、「お金」によって狂わされる人生。本末転倒で救いようがなく、読み進めていくうちに心苦しくなっていく。

花が自分を追い詰めたり、悩んだりするたび、黄美子との初めて会った日のこと、初めていなくなった日のことを何度か思い出す描写が出てくる。
「冷蔵庫にたくさん詰まった食べ物」の表現は、それだけで黄美子と東村山で過ごした時の彼女の優しさ、思いやりが一気に思い出されて、好きだ。
その「たくさん食べ物が詰まった冷蔵庫の隙間からの光」の表現も、冷蔵庫だから冷たいはずなのに、とても温かみを感じていいなあ、と思った。


ところどころ、「どくとくの雰囲気」や「みっつのカレー」、「それだけをつよくつよく思った」など、あえてひらがな表記なのかな、と思うところが気になった。
ひらがなだけど、やわらかい印象はなく、なぜか強く心に残るのが不思議だった。

以下お気に入りのフレーズ
◎ なめらかで、はっきりとしていて、耳に届くというよりも、まるで頭の中の静かな場所にそっと物が置かれるような、不思議な重みのある声だった。

この表現が映水さんの最初の描写だったのでその後の展開でもなぜかこの人はいい人なんだろうという印象が消えなかった。


◎ 考えるべきことや知るべきことがわたしたちにもあったはずなのに、その考えらべきことや知るべきことのほうから、こんなわたしたちに愛想を尽かして離れていきつつあるような、そんな感じさえした。

物事を擬人化しているような川上さんの表現がなんとも心地よくて気に入っている。

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2024年05月09日

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すっごいボリュームのある本で一ページに文字がびっしり!
セリフの「」の後に文章、そしてまた「」という感じなので行間のスペースがなく延々と文字を追いかける形になり600ページがすっごい重荷になりました。
だからと言って物語がつまらないことは全然なく、まるでヨーロッパ小説を読んでいるような重厚で濃密な心理描写や情景が書かれており、もうここまで来ると哲学かなとさえ思ってしまえる精神の揺れ動きがリアル以上にリアルに切迫感を感じた。
ネグレストや貧困、発達障害に母子家庭、読み始めはアパート監禁リンチ殺人事件をモチーフにしているのかなと勘違いしかけたがそうではなく、もっと現代の底辺層にあるそうな世界の中で十代半ばの女の子が狂気の世界に堕ちていく、そしてそのそばにいつもいる女性こそがその元凶であり、”黄色い家”が出来上がってしまう。後半の主人公の変貌にゾッとし、冒頭の女性との変わり身を延々と読み続けてきたラストにようやく知ることになる。最期は救われた、のか...?

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2024年05月08日

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読み終えて心に重い物が乗っかるような作品でした。
一人の弱い少女がいかにして、何もない状況で自分や自分の生活を守る事ができるのかもがき苦しんでいる様子がとてもリアルに書かれており読んでてとても苦しかった。
誰かと一緒に生活を共にするという難しさ、それぞれが抱えている悩みや不安の差異。がとても鮮明で花が最後に爆発してしまった事も共感でき読む手が止まらなかったです。
未来=お金に執着してしまい先の事しか考えられなかった故に足元がボロボロになり崩壊していく様はリアルすぎて自身も未来と現状、両方に目を向けてこれからを生きていこうと考えさせられました。

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2024年05月06日

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後半話が転がっていきどんどん重たくなっていく。
久しぶりにガツンときたよ。登場人物の今後が気になる。
幸せになれてるといいね。

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2024年05月06日

Posted by ブクログ

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最近の親ガチャとか環境ガチャとか努力で東大にだっていけるはずのアンサーになってるようなそんな小説になってる気が

親ガチャがハズレでも最後には実家に帰って寝るところはあるし、環境ガチャはハズレかもしれないけどあそこでトロスケに盗まれてもそのままバイトを続けたり店長に相談するという選択もあった(それが出来ないからハズレだとも言えるけど)

説明されたカードの出し子も完璧にこなせるくらいきっちりと出来るなら他の仕事だって出来ただろうと思う(それが出来ないから環境がハズレなんだろうけど(2回目))

全然最悪に転ぶ必要はなくて誰も本気で彼女たちを助ける大人が居なかったから彼女たちは周りの大人の被害者だと思う
でもその選択をしたのは紛れもなく彼女たちで自己責任だとも言えるこの2つの境界をギリギリで行き来してて最終的には彼女たちは周りの大人の被害者だと私は思う

闇バイトに手を出す若者には少なからずこのような環境の子がいて選択肢がない子がいるんだろうな
大人が子どもを守らないといけないのに、自己責任で片付けるような世の中になってはいけないのに、自己責任だろって言いたくなる自分もいて、まとまらない気持ちになった

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2024年05月04日

Posted by ブクログ

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オーディブルにて。
生育環境の悪さからお金にも運にも見放された主人公とその周りの人の話。
ことごとく上手く生きれないんだなーと。
お金があってもなくても、中学生の頃に自分を支えてくれてた人の存在が大きいのか。
うーん、聴きやすいけど共感しづらいというか、感想が難しいな。

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2024年05月15日

Posted by ブクログ

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母親がお金を買えそうとしているいいなあ、ネグレクト気味だったとは思うけど、小説の中では頭が悪いだけで花のことは好きだったように見えた
花の視点だから花に感情移入するけど、他の人から見たら花ってどう写っていたんだろう

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2024年05月12日

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