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Posted by ブクログ
愛する人とともに過ごす幸せに浸りきれない自分がいる。新しい一歩を踏み出すために必要なことは?
自分の今を見つめ直して、新たな生き方を選択する女性たち。その姿を描くヒューマンドラマ短編集。
◇
我が家のごちそうは「すき焼き」で、私は鶏皮が大好物だと言って教室中で大笑いされる小学生時代の夢を見た。
その頃、すき焼きは鶏肉でするものだと信じていた。特に甘辛く煮込まれた鶏皮に白菜を巻いて食べるのが好きだと言って皆に笑われたことで、私は初めて知った。我が家の常識は世間の常識とは大きく違うということを。
そのとき初恋の人である福元くんにまで「貧乏くせぇ」と嘲笑われ、小学校卒業まで「トリカワ」というあだ名で皆に呼ばれたことは大きなトラウマになった。
それ以後、人に自分の家の常識を話すことに私は慎重になったのだった。
久しぶりにその頃の夢を見たのは、実家にいる祖母からの葉書が昨日届いたからだろう。そう言えば祖母は私が恋人を連れて帰省する日を待ち望んでいたなあ。
そんなことを考えながらベッドを出てカーテンを開けていると、後ろでガタンと音がした。
驚いて振り返ると、寝室を覗く章吾の顔が見える。私の寝坊を見越して合鍵でマンションの部屋に入り、コーヒーを入れて起きるのを待ってくれていたらしく、リビングからはいい香りが漂ってくる。
ニヤけつつリビングに移動してコーヒーをひと口飲んだところで、スマホから着信音が聞こえた。見ると「母」からだが、なぜか嫌な予感がする。急いで出てみると、「清陽、おばあちゃんが亡くなったよ」という母の静かな声が聞こえてきた。
( 第1話「おつやのよる」) 全5話。
* * * * *
違ったシチュエーションの5つの話。どれもおもしろくて退屈しませんでした。各話とも簡単に紹介しておきます。
第1話「おつやのよる」
祖母の葬儀に伴い、手伝いも兼ねて門司の実家に急遽帰ることになった清陽は、恋人の章吾が申し出た挨拶がてらの同行を激しく拒絶。結婚を視野に入れた真剣な交際のつもりでいた章吾は傷つき、2人はケンカ別れしてしまう。
実は清陽は、世間とはズレた常識がまかり通る実家や、粗野で下品な実家の人たちを章吾に見せたくなかったのだった。
酒癖の悪い父。パチスロ狂いの母。下品なモラハラ男の叔父。祖母という重しの取れたあの人たちを思うと……。
☆大学・就職と東京で生活拠点を築き、実家の低俗文化の呪縛から逃れられたつもりでいた清陽。優しく育ちの良さそうな彼氏と恋仲になったまではよかったのですが、相手が良識のある人ならば当然、家族との顔合わせは既定路線でしょう。さあ、どうする清陽 ⁉
ということで、個人的にはイチオシの第1話です。
第2話「ばばあのマーチ」
前職で同僚からのイジメと上司からのセクハラに遭い、メンタルを傷めて退職した香子。対人恐怖の症状が出ているため、人と接することが少ない仕事しかできず、アルバイト暮らしとなっている。当然ながら生活は苦しく、気分は一向に晴れない。
それでも香子には彼氏がいて、普通はその彼氏が救いになるはずなのだが……。
☆こんなせせこましく器量の小さい彼氏では精神が癒やされることなどないでしょうね。心ではわかっていても、彼氏から離れる決心がつかない香子の気持ちも理解できます。
そんな彼女の救いになるのが、近所でも変人で有名な「オーケストラばばあ」と呼ばれる老女です。 ( あだ名の由来は読んでお確かめください。)
儀式めいたことが立ち直りのきっかけになることはよく耳にするので、なかなか興味深い展開でした。
第3話「入道雲が生まれるころ」
その朝、海斗を起こさないようベッドを抜け出した萌子は、手速く身支度を整えると「別れましょう。今までありがとう」と書いたメモを残して海斗の部屋を出た。
実は、自分の生活圏での人間関係をすべて捨ててしまいたいという欲求が起こることが、萌子には定期的にある。
その欲求を抑えるのは難しく、結果として勤務先ばかりか居住地も変え、顔見知りが1人もいないところで新生活を始めるということを、萌子は繰り返してきた。
歩いているとスマホに実家の母から電話があり、親戚の藤江さんが亡くなったと知らされた。ちょうど次の生活拠点を探そうとしていた萌子は、故郷に帰る決心を固めたのだった。
そのとき海斗からも電話があり、躊躇したものの、覚悟を決めて出た萌子は……。
☆生きていくためには、人間関係を作り上げていくことが必要になります。
人間関係は相手を理解し、自分を理解してもらうところから始まります。そして、その「理解」の内容を互いに維持し続けることで「信頼」が生まれ、円滑な日常生活に繋がるのです。
でも、「理解」や「信頼」を維持することに、何か虚しさというか物足りなさみたいなものを感じて、すべて投げ出してしまいたくなるときがある。
この「リセット症候群」と萌子が呼ぶ衝動はよくわかるだけに、テーマとしてはこの第3話がもっとも印象的でした。
第4話「くろい穴」
美鈴は八百屋で栗をふたカゴ分買った。栗の渋皮煮を作るためだ。
祖母直伝の渋皮煮は美鈴の得意料理だ。入社2年目に会社に持っていったことがあり、誰からも好評だった。その頃から不倫関係にあった上司の馬淵もひと瓶持ち帰ってくれている。それから5年。
今回、渋皮煮を作ることになったのは、馬淵に頼まれたからだ。
甘いものが苦手な馬淵だが彼の妻が大好物で、市販のものよりも美鈴が作った渋皮煮をどうしても食べたがっているということだった。
美鈴との関係を続けながら妻と離婚する気配も見せず、美鈴の部屋に来てもすぐに自宅に帰る馬渕。自分を都合のいい女としか思っていない馬渕への不満を抑えつつ買ってきた栗の選別を始めた美鈴は、「くろい穴」のあいた虫食いの栗が1つ混じっているのを見つけ……。
☆中盤までのぞっとする展開。なかなかでした。終盤の着地点もすばらしい。
多くは語りません。ホラーサスペンスのテイスト、ぜひ味わってください。
それにしても、女の勘(妻の勘?)の鋭さはモチーフとしても十分ですね。
第5話「先を生くひと」
高校生の加代は最近、同じマンションに住む幼馴染の藍生の様子がおかしいということに気がついた。朝早く家を出るし帰りも遅い。もしや彼女ができたのではと思った加代は、自分は藍生のことが好きだったのだと知る。
おまけに藍生が「死神ばあさん」と呼ばれる老女宅に出入りしているという噂を耳にした加代は、いてもたってもいられなくなり行動を起こすことにした。
ある朝、藍生を尾行した加代は、一軒の古びた家の玄関先で藍生を迎える若い女性を目にする。かなり親しそうに話す2人の姿。死神どころか美人じゃないか!
そう思った加代はたまらず門扉に突進して行ったのだった。
☆それまでの、大人のめんどくさい愛憎を描いた話から一転。ジュニア小説のような展開です。だから登場人物もわかりやすく魅力的に描かれています。
生真面目で誠実な藍生。
激情家で一途な加代。
可愛らしい「死神ばあさん」の澪さん。
その姪孫で若いながら賢くてステキなお姉さんの菜摘。
死を目前にした澪さんが加代たちに贈ることばが、高校生のこれからの人生へのよい餞になっていました。
加代の一途な想いは藍生に伝わるのか。そのあたりも楽しみにお読みください。
人生や恋愛で行き詰まり、悩みを抱える若い女性たち。
そんな彼女たちにそっと寄り添い背中を押してくれるのは、年老いた女性たち。
年輪を重ねた彼女たちが、その生きざまや何かの形で遺してくれたメッセージを紐解く展開が、心を温めてくれます。
そして、含蓄に満ちたそれらを咀嚼し、自身を見つめ直し新しい一歩に繋げていく若い女性たちの姿がとても素敵でした。
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あなたはここにいなくても、のタイトルが秀逸すぎて…!
決してどうでもいいわけじゃなくて、出来るならそばにいてほしかった。でもその前提があった上で、今ここにいなくても、その思いや優しさが消えるわけじゃないからいいと、痛みを受け入れられるようになるまでの短編集でした。
どこかに置いてきた痛みに苦しんでいる時、きっとこの本は道標になる。
そんな風に思える素敵な一冊でした。
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ままならない出来事が起きたとき、人はどうしても立ち止まってしまうし、心が折れるときもある。町田そのこさんは心が回復していく過程を描くのがうますぎる…。
心を休ませながら生きていかないと自分にとっては人生は長すぎて、弱気になることも多いからこそ本を読み立て直す。つらくて負けそうになるのは自分だけではないと励まされる。
『52ヘルツ〜』が映画化され、読者も増えただろう。多くの人に読んでほしい。
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5つのおはなし、みんなよかった。おつやのよるは、わたしも同じこと思ってたなあと共感。自分の家族が嫌いだったから、恥ずかしかったから。でも、やっぱり今は好きな家族だったと。大嫌いだった父親と実は似ていたんだなあと思ったり。自分と照らし合わせて読んでた。
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『粋』なおばあちゃん
いろんな優しさが見える
悩んでいたり、ここ最近明るい気持ちになれていない人が読んだら少し心が軽くなる気がする
解決するわけじゃないけど、生き方の幅が見える気がする
あなたはここにいなくとも
息苦しい日々や辛い経験をここにいない誰かのことを思い出すことで乗り越える人を描いた短編集です。
どの物語も北九州に関係しますが、短編間の繋がりはなく、独立した物語です。
後悔なく生きようと改めて思えるような素敵な作品でした。
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この本を読んで、私は「ああ、実家に帰ってきたなぁ」と感じた。当の私は実家暮らしなのだが。
この本には、5つの女性の物語が描かれている。そして、もう1つ軸となるのが、九州の訛りだ。その訛りが、まるで古い巣を思い出させる温もりを感じた。私の実家は九州ではないが、「昆布締め食べるけ?」と聞く祖母の声を思い出した。しかし、同時に田舎の残酷さも感じずにはいられなかった。世間体を気にせずにはいられない窮屈さ、「あの家は本家で、うちは分家やから」みたいな常に付き纏う上下関係、「人が為ってない」と正論という建前の水面下で面白がられる絶えないゴシップ…「田舎っていいよね」と言われるたびに感じてきたモヤモヤが言語化された気がして、救われた。そして、つらいだけじゃない、現代を生きるちょっと前向きな最後に私も少しでいいから顔を上げてみる心の余裕をくれた。
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家族であれ友達であれ、何かの理由で別れた人との思い出は、心の中に形を変えて残っている。
この本は5話の短編集で、特に最後の話でそのことにもう一度気付ける。
その人にもらった言葉や思い出は何かのきっかけでふと思い出すこともある。
この本の主題からは逸れるけど、別れた人じゃなくとも、本の中や友達の言葉で印象に残ったものは、一生自分の中に残って励ましてくれることもある。
だからこの先も、色んな人の話を聞いたり、色んな本を読んだりして、元気になれる言葉や考え方をたくさん知りたい。
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田舎の家族感が鬱陶しくて、でも、家族のあったかさがあった
最後の先を生くひとよかった
先人の知恵というかあったかさと死に向けた覚悟と純粋さと眩しいな
好きにも種類はあるけど真っ直ぐっていいな
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その人の存在が自分を勇気づけてくれる。例え側にいなくても。私にも、そう思える存在が家族以外にいるのかな。そんな素敵な出会いに気付いていないだけなのかな?
【先を生く人】の澪さんの言葉が心に響いた。
「あなたたちは、 可能性に溢れている。 そして、 どんなことだってできる。… 最初から諦めなければい けないことなんてない。 絶望しないといけない障害なんてない。 だから何ひとつ、 憂うこと はない。 後悔しないように、 それだけを忘れなければいい。 もちろん、 大変なことがたくさ んあるでしょう。 頑張ったからって成果かでないこともある。 でも、 どんなに辛いことや哀 しいことがあったとしても、 大丈夫。 … きっといつか、 何もかもを穏やかに眺められる日が来る。 ありのままを受け止めて、 自分なりに頑張ったん だからいいじゃないって言える自分が、 遠い未来にきっといる。 」
なんとなく時を過ごして生きがちだが、後悔しないように生きることを忘れないようにしよう。
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5編からなる小説。
別れにフォーカスすると悲しみが、その中での出会いやその先の未来にフォーカスするなら希望が。
読み方や読み手の置かれている現状によって、捉え方が変わる一冊。
人の心情が彩り豊かに描かれているので、心にスーッと染み渡ります。
Posted by ブクログ
5つの別れの話
「おやつのよる」と「先を生くひと」は涙腺やられちゃった。
春陽おばあちゃんみたいなおばあちゃん素敵だな。
周りの人をこっそり素直に幸せにさせちゃうなんて素敵。
「くろい穴」はちょっと怖かった。
どれもこれから頑張れる!って思える話
Posted by ブクログ
5話の短編集だけど、どの話も本当に良かった。
思う人が側に居なくても、心で話しかける事、その人との思い出はかけがえのない宝物。
写真とか品々が無くなってもずっと心には残り忘れられない。
そんな素敵なお話しの数々。
Posted by ブクログ
5編からなる短編集。
関わった人が色々な意味で突然いなくなってしまっても その人が自分の人生の中に存在したという事実を全く消し去ってしまうということは不可能だ。 痕跡というものは様々な形や記憶で残される。 良くも悪くも。
そしてその人との出会いもまた自分を形どる一部になる。
個人的には「入道雲が生まれるころ」が好きだったがどの話しも読みやすかった。 良い短編集でした。
Posted by ブクログ
さらりと読めるのにずしりと心に残る
ばばあのマーチと先を生く人が好きでした
遠い未来で澪さんに受け止めてもらえるなら、私もがんばれる
現実でこんな素敵な人との出会いはそうそうないけど、むしろ傷付けられる出会いの方が多いけど、本に救われるからこういう物語との出会いは本当に貴重
Posted by ブクログ
とても素敵な言葉が溢れた一冊。
心がじんわりと暖かくなって、幸せな気分になりました。
これから先も、きっといろんなことがあるのだろう。
でも、大丈夫。何もかも、憂うことはない。
Posted by ブクログ
ほんの少しの生きづらさを抱えて心がもつれてしまった五人の女性たち。本当の自分はどこなのかと悩み迷うけど、可能性を信じて前向きにスタートする彼女たちにエールをおくりたい優しい気持ちで一杯になった。
Posted by ブクログ
あんまりおもしろくなかった。
1発目の、おつやのよるには面白かったけど、その他の話はあまり。
何より登場人物に嫌気がさす。
考え方や発言、あえてそう描いてるのかなと思うくらい。
各章みんな鬱陶しいなと思える人物が出てくるので、読むのがしんどい。
最後の章の主人公ですらすごい可愛げがないから感情移入できない。
52ヘルツや宙ごはんとか面白い作品ばかりだったので、かなり残念に感じた。
Posted by ブクログ
町田そのこさんやっぱり好きだな。
どの短編集も心に響いたけど、お話が面白かった。
本のタイトルだけを読むと、なんだか冷たく聞こえる。
もしかして暗いのかなと思ったら、読んでみると励まされるようなお話でした。
「そう。好きとか思い出とか、大事な感情は、これまではいつでも手に取れるように物に託して置いていたけど、自分の奥に収納する。しまい込む」
これを『自分の人生の片付け』と呼ぶのか。とハッとさせられた。
モノ以外に、人間関係も手放してイチからやりなおすことを悪いことのように書いていなくて、私はそこに優しさを感じました。
「ぎょらん」を読んだ時のように、めちゃ泣くということはなかったけど、温かいお茶を飲みながらホッと一息つきながら読めるお話でした。
Posted by ブクログ
良い。
上質な作品。作者の力量を感じる。
不幸だけれど、前向きに終わるのが良い短編集。
今時の若い女性の感性はわからないけど、こういった女性は多いのかもしれない。
Posted by ブクログ
私の好きな昭和の女流作家、向田邦子さんの小説をふと思い出す町田その子さんの作風が、現代のお話なのにどこか懐かしさを伴います。
恋愛にまつわる短編集ですが、ピリッとしたスパイスをまぶしながら、甘過ぎないストーリーに仕立てたところが町田さんらしい作品です。
あなたはここにいなくてもの“ あなた ”は、身近にいる市井の人々。
大好きな祖母、お付き合いしている彼氏、不倫の相手、 祖父の愛人、初恋の幼なじみ、ご近所の変わり者‥そんな人々が亡くなったり、いなくなったりした時に、大事なことに気づいたり、背中を押してもらったり‥と、「あなた」がいなくなっても、日々の「ある日、あること」の積み重ねで、自然と前に進んでいくのだなぁ、と思いました。
愛や恋や失恋を経験した方にお勧めです。
Posted by ブクログ
自分の家族を恋人に紹介するのを恥ずかしいと躊躇している女の子が主人公の『おやつのよる』
イジメが原因で会社を辞め、優しいが高圧的な恋人の言いなりになっている女の子が主人公の『ばばあのマーチ』
リセット症候群で、他人と深く長く繋がっていくことができない自分を仕方ないと諦めている女の子が主人公の『入道雲が生まれるころ』
不倫相手の気持ちが離れているのを感じつつ、彼の奥さんのために栗の渋皮煮を作る女の子が主人公の『くろい穴』
幼馴染に好きな人ができたらしいと気づき、それを知って初めて彼に恋をしている自分に気がついた女の子が主人公の『先を生く人』
経験を重ねた人生の先輩であるおばあちゃんから、迷える若い女の子が大事な何かを学ぶ5つの短編。
どの話もおばあちゃんが出てきて、それがこの短編集のテーマらしい。
『くろい穴』だけが違う雰囲気を持った話でわたしは好きだ。不倫関係のどろどろとか嫉妬や疑心暗鬼の気持ちとか、彼女の心から生まれるそれらが、栗を煮るときに出てくる灰汁に重なって、その描写が見事だなと思った。
自分自身のことについて考えてみる。
もう若くもなく、かといっておばあちゃんでもない、どっちつかずのわたし。
だけど生き続けていれば、わたしもそのうち必ず正真正銘のおばあちゃんになる。
なってしまう。
それは絶対に。
ということは、いつか藤色と灰色のモヘアで編んだカーディガンを「あら、素敵」と思ったり、健康ランドの大衆演劇を楽しみにするようになるのだろうか。それが悪いわけじゃないけど、歳をとると自然とそういう風に変わっていくものなんだろうか。
JOURNAL STANDARDやBEAMS BOYの服とか、上野動物園の年間パスポートとか、骨格ナチュラルとかイエベ春とか、そういうことがどうでもよく思えてしまう日がくるのだろうか。
老い方ということを改めて考えさせてくれた本でした。
この本の意図することとはちょっと違うのかもしれないけど。
Posted by ブクログ
星3.2くらいかな。亡くなった祖母、別れることにした恋人、田舎のご近所さん、不倫相手の妻、などなど「今ここにはいないけど、自分に影響を及ぼしている人」にまつわるお話が何篇か収録されている作品でした。淡々としたトーンのお話が集まっている中で、「黒い穴」という1作が、かなり印象的だったなあ。他の話は、まあ淡々と読み進める感じだったけど、「黒い穴」だけはどうなるんだどうなるんだと思いつつページをどんどんめくってしまった。笑
Posted by ブクログ
『絶望しないといけない障害なんてない。だから何ひとつ、憂うことはない。後悔しないように、それだけを忘れなければいい。きっといつか、何もかもを穏やかに眺められる日が来る。だから大丈夫よ。この私が保証する』
澪さんの言葉が加代に届いたとき胸がとても熱くなりました。
傷ついた心を時間がゆっくり優しく癒してくれるのだと思います。。
Posted by ブクログ
先を生くひと
澪さんの言葉、よかった。生きた圧倒的な年数のせいか、お年寄りの言葉はすっと入ってくる。
浪人してた時に、電車で単語帳を開いて勉強してたら、隣に座ったお婆さんに、「勉強できるうちが華よ」って言われたこと今もずっと覚えてる。勉強漬けで霞んでた気持ちが、前向きになったこと。1つの反論も見つからなくて状況に感謝すら覚える気持ちに変えてくれたこと。あのお婆さん今どうしてるかなぁー。
恋、この自転車じゃないとだめって気持ち、なかなか消えない。新しい自転車にドキドキする自分も想像つかない。ひっかえとっかえ自転車に乗る気もしない。加代は頑張って泣いたのに、私は頑張れなかった。この気持ちのやりようを、遠い未来の自分だったらなんて思うのかなあ