【感想・ネタバレ】AI 2041 人工知能が変える20年後の未来のレビュー

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Posted by ブクログ

ものすごいツボに入った。
2041年に起こりうるAIによる変化が起きた世界を物語として提示しつつ、その技術的な説明もセットで掲載。
物語がどれもすごく興味深く、それだけで読んでいてすっごく楽しい。説明もわかりやすい。
リスクはあるとは思いつつも、早くこんな未来が来て欲しい。

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2024年02月24日

Posted by ブクログ

SFとしても、その解説としても素晴らしい。
何よりAIと人間の共存に向けての希望と示唆に満ちている。

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2023年11月05日

Posted by ブクログ

その本を選んだ理由
2023年の年間ベストブックで選ばれていたのと、ラジオ番組「bibliotheca」で山口周と長濱ねるがとりあげていたこと。そして、現在の日本のIT技術が20年前から進歩していない、行き止まり感。世界から置いて行かれている感じ。この現状をブレイクスルーするためのヒントになるのではないかと考えたこと。
筆者の紹介
台湾生まれのアメリカ人計算機科学者、起業家、投資家、ライターである。彼は現在、中国の北京を拠点としている。
最も印象に残ったシーン・一押しポイント
今作は10本の短編を収録している。そのどれもが現実に起こりうるAIによる近未来の話である。Googleに所属していた作家陣による内容で、非現実的なSFにならないように現実的な内容のSFなので、現実にそのようになるのだろうと思う。

「恋占い」
AIによる管理社会。保険金を下げるために付き合う人間などAIが人間に指令をだす
「仮面の神」
アフリカンビートのフェラクティになりすます話。ディープフェイク。
「金雀と銀雀」
全く同じ遺伝子を持つ一卵性の双子でもAI教育で全く違う人間になる
「コンタクトレスラブ」
メタヴァースから出られない話
「アイドル召喚!」
日本人、まじでイカれているな。って世界で笑われている。
「ゴーストドライバー」
AIを腕効きのドライバーが遠隔操作している。
「人類殺戮計画」
大昔のSFが好きな展開っぽいけど違う。
「大転職時代」
AIによって人間の職が奪われた世界
「幸福島」
AIが人間の幸福を定義する社会
「豊穣の夢」
階級によって通貨が異なる世界。

確かに現在の技術がこのまま発展していったらそうなるだろうって思う内容ばかりでリアルだった。
日本が面白民族になっているのリアルだった。勤勉で働き者、金持ちって思われていたのは遠い昔で今の世界で日本は「少年少女のアイドルを偶像崇拝する変態民族、しかも安い国」になってた。正解です。悲しいけど日本人って、能無しなのよね。ただ、日本が建国されて以来ずっと能無しなので、1980年代は優秀だったなんて勘違いしないでよね!
とにかく現在技術の引き伸ばしをしたら、国より先に日本国民が死に絶えてしまう。時代に食らいついていかないといけない。
今後の自分の行動や考え方の変化
このまま人工知能に向き合わずに生きていたら、冗談抜きで仕事を失うと思う。20年後に今の日本の仕事の半分以上がなくなっていても驚かない。ただ、実は誰でもできる仕事の方がAIには難しく、上層の仕事の方がAIに奪われやすい。日本の社会構造がそれを許すとは思えないし、許さない場合、やはりグローバルな舞台から日本は姿を消すのだろう。この国に付き合う必要はない。AIを学び、AIに使われる人間でなくAIを使う側の人間になるしかない。

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2023年10月21日

Posted by ブクログ

AIの進歩に関する10の短編とそれに使われている技術説明の部分の抱き合わせ。
どのお話もとても面白かったですが、個人的には「コンタクトレス・ラブ」「アイドル召喚!」「幸福島」あたりが興味深かった。

「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない」

とは有名な言葉ですが、この中で使われている技術は時に魔法のようです。
AIはある種人間を超える力で、新しい世界を切り開いてくれます。
もしかしたら労働という概念もなくなるかもしれない。
その中で人はどのように自己実現していくのか。
それを問いかける話でもあります。

技術説明部分もとても丁寧で、勉強になりました。

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2023年09月05日

Posted by ブクログ

仮想現実、拡張現実、複合現実など新たな技術の最大の課題は想像力、コンテンツ制作だ。AI による仕事は今後あらゆる面での雇用問題が噴出する。人間の仕事の40%が2033年までに代替可能となり「大転職時代」になると予測している。
AIの苦手分野とは3つ、創造性、共感、それに器用さである。そんな中で有望な職業とは。認知系職業:ソーシャルワーカー、キャリアカウンセラー、芸能人、エキスパート。身体的職業:介護士、スタイリスト、理学療法士、トレーナー

量子コンピュータ(ビットではなく、素粒子を使う量子ビットにより格段に性能拡大と開発スピードの短縮で、費用も安くできる、と言う。だが、些細な振動、電気干渉、温度変化に弱く、自律性が今後の課題となる。それは自律兵器など人類の存亡をかける「悪」の世界が量子コンピュータにより凌駕することは間違いないがその時代に人間は如何なる対応が出来るだろうか。更に、2041年には、非物質化が旺盛となる。それは物理的製品はソフトウェアに吸収され無料化に近づくと言うことだが、製薬、遺伝子治療などはコストは下がるが生物体として残り、食品産業も動物などの肉等合成食品などで電気、水、肥料等だけで食材革命が起こる、と言う。「豊饒時代」は人々に仕事が無く、金融崩壊から貨幣も通用しない世界が来る、というが量子コンピュータ:自律ロボット等が想像を絶する世界を作ることは間違いない。

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2023年08月14日

Posted by ブクログ

今から約20年後、AIが社会にどのように利用されており、どんなことが実現されていて、また同時にどういう弊害が発生する可能性があるのかを分かりやすく解説。
偏見・分断の固定化、ディープフェイク、医療、教育、自動運転、自律兵器、淘汰される職業、幸福など各テーマを扱う短編のフィクション(2041年の架空の世界を設定)と、それを補完する解説部分が一つの章を構成し、全10章。
各章前半の小説部分だけでも読み応え十分。この数年の間にずいぶんAIの存在感が大きくなり、特に生成AIが登場して一気にステージが変わった感がありますが、その延長線上の世界が非常に分かりやすく伝わって来ます。
各章後半の解説部分は、さすが著者がAI技術者だけあって、現代と小説で描かれる世界とのギャップ、AI活用の問題点などを鋭い視点と、要点を押えた解説で、前半部分の小説の世界の理解をより深堀りし、難解なAI関連の技術的な用語や概念を、新聞やニュースに触れておれば理解できる程度の易しさで解説しています。
1章から10章に進むにしたがって、よりAI活用の深さ、広さが大きくなるのですが、8章あたりからは単なる技術的問題というより倫理的な側面が大きくなると感じます。職業淘汰や幸福感のテーマにおける問題提起は新鮮でした。『仕事はAIが代行してくれる世界で、お金に不自由しない状況であっても「仕事を通して社会に貢献している」といった働き甲斐、生き甲斐の様なものをどう残すのか』、『VRなどで人間が望む体験をAIが安価かつ潤沢に提供する世界で、人間は幸福になるのか(短期的には所有や体験などの要求がAIで満たされても、次の段階として自己実現・社会的承認要求などの要求が増えたらどうするか)』等々です。否応なく関わらざるを得ない技術となりつつあるAIだけに、本書の投げかける問題は大変参考になりました。
AIを真正面から解説する技術的な本はハードルが高い、一方で単なるSF(サイエンスフィクション)ではちょっと物足りない、という人にとってはうってつけの1冊です。
最後にもう一つ本書をお勧めする点は、日本語訳が素晴らしく、読みやすい事です。ほとんど日本語を母国語にしている人が書いた文章かと思えるほどでした。

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2023年05月31日

Posted by ブクログ

久しぶりの大当たりの書籍。
AI関して、現在の技術をベースに(無理なブレークスルーが安易に達成されるとは予測せずに)2041年に実現するであろう社会を10の小説にまとめ、各ストーリーに技術面と社会課題面からの解説が加えられる。

●クラウド上でユーザーのあらゆるデータを分析して保険料を算出するAIアプリ(短絡的な目的関数による不適切な結論導出が課題)
●フェイク動画生成技術の発展により現在の情報セキュリティと同様にフェイク検出機能が各デバイスに搭載される未来
●自然言語処理モデルの発展により個々人に最適化された教育的パートナーAIが登場し子ども一人ひとりに個別最適な教育が行われる未来
●医療現場では膨大な診療データを学習し患者に個別最適な診療ができる医療AI、膨大な物質の組合せから最適な候補を探し出して創薬に活用されるAI、自律的に動作するロボットが製造現場でも農業でも家事でも活用される未来
●VR・AR・MRといったXR技術が身体的負担のないデバイスで実装されることでスマホに代わるスマートデバイスとしてグラスとイヤホンが常時装着され補助的情報や没入型娯楽コンテンツが常時得られる未来
●都市設備の情報化によって自動運転が実装されるがシステムトラブルや自然災害などの異常事態には熟練ドライバーが遠隔操作で対応する未来
●AI以上のインパクトをもたらす量子コンピュータによる桁違いの並列計算能力、自律型殺人兵器がターゲットを正確に探しだしてピンポイントで殺害できるようになり、大量の自律型殺人ドローンにより極少数の組織でも世界を破滅させることが可能になる未来
●AIがあらゆるタスクを人間よりも遥かに低コストで高速かつ正確かつ適切にこなせるようになり人間が職業を失い、ベーシックインカムは尊厳を伴わないため失敗に終わり、転職斡旋機関は人間の再訓練と斡旋を行うも時間稼ぎにしかならず、遂には架空のバーチャルゲームを仕事と称して失業者に与える未来
●信頼できるデータ保存機関に個人データを集約させることでマズローの欲求段階説における低次な欲求(生理・安全)はAIが個別最適に満たしてくれるが、高次の欲求(愛・帰属・承認・自己実現)の充足による幸福の実現は、幸福の定義と測定と目的関数の設定が困難であるために未だ実現していない未来
●再生可能エネルギーと蓄電技術と最適配分技術によりエネルギーコストが下がり、合成生物学による生成により材料コストが下がり、AIによる自動化によって人件費コストが不要になることであらゆるものが無料同然になる豊穣時代において、欠乏を前提とする経済システムからの転換を求められ、生存のための必需品についての交換手段と高次の欲求充足に係る評価システムが分離され、働きたい人だけが自己実現を求めて働く未来

が提示されていた。
AIの行く末は人間同等の知性ではなく(そのためには深層学習並のブレークスルーが10回以上必要になる。例えば意識や感情のメカニズム解明など)、人間とは異質の知性として発展し、人間は、創造や共感や戦略的決定や目標の設定という独自のタスクを強みとし、AIを強力なツールとして使いこなしていくべきとする著者の意見には完全に同感。

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2023年05月13日

Posted by ブクログ

技術解説が載ってる短編小説集。
本の作り方といい、各小説の生々しさといい、斬新。想像力をかき立てられる、ワクワクするような、ゾッとするような、作品。

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2023年03月25日

Posted by ブクログ

著者陣の肩書の物々しさにたじろぐ感もあるものの
硬質な翻訳SFの妙味を堪能しながら、AIの話題が急加速的に目につくことが増えた現状を経てシンギュラリティ予測の間際に起こる諸現象について
その最前線に対峙する専門家の知見をこれでもかと指し示すものとして、よくぞこのような企画の大著が結実したものだと思う

物語の骨組みがどうしても技術革新の現実性に論拠せざるを得ない都合もあってか、エピソードの幾許かはある種予定調和的な、裏で糸を引く黒幕の存在に収斂する都合もあったが、質感のあるSFを組み上げる作家の素養としては、知への探究心とそれによって磨かれた知識が大いに役立つのだろうと昔日の同作家群にも同様の敬意を改めて払いたいと思う。

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2023年02月27日

Posted by ブクログ

AIについて何か知りたいなと本屋さんを眺めていて目に入ってきたこちら。とても分厚いので最初はひよりましたが、評価も高く帯の宣伝も力強かったので買ってみました。
結果、正解◎
読みやすい構成になっており、とてもスムーズに読むことができました。

AIについての本だと専門用語で書かれていたりAIの歴史に疎くかいつまんで聞いても理解が進まなかったりするかと思っていて敬遠していたのですが、こちらはSFフィクションの物語パートがあり、それがわかりやすく良かったです。
研究者による解説パートは、専門用語がたくさんあるのですが、物語パートでAIの機能の概要?実際生活の面ではどんな影響があるのかがわかるので解説パートの理解もそこまで困難ではありません。といっても専門用語も多いのですべての理解はできませんがAIを知る最初の一歩の本となりうる易しさはあるかなと思います。

自動運転の章が興味深かったです。
交通事故(特に高齢者による)のニュースがあると世論は自動運転の早い導入を待望する声が多く見受けられますし、いつかそんな未来が来るのかなと実現性が高いものと思ってましたが車だけの開発では成し遂げられないということが解説パートを読んでわかり興味深いなと思いました。
街全体を自動運転車に合わせた方が自動運転車の普及がはやい(ウーブンシティが楽しみです)とか、自動運転車で事故が起きたときの責任はどこに誰にいくかという倫理的な視点での課題など。
特に倫理的な視点については、AIの機能を語る際は技術の進化にばかり注目して欠けがちと思い不満だったのできちんとその視点からフォローされているのが良かったです。
というか、この本はAI技術に対して比較的倫理的な視点でのフォローもあるのが好感もてます。

未来10の舞台がオーストラリアというのがなるほどなと思うのですが実際この中に書かれたことが日本でもいえるのかはやや疑問です。
オーストラリアを訪れた際、人々の価値観や生活スタイルが日本社会と大きく異なると感じました。
未来の2041年ごろには各国の慣習の差が平坦になるくらいに人が行き来してグローバリゼーションが進み日本社会の国際情勢や世界のムーブを無視した歪な価値観も変わっているのでしょうか。
お金にしがみついた人が多いしのさばっているイメージがあるので、日本でどうなるか気になります。

『未来倫理』という本を読んだときにテクノロジーの破局を想像するときに研究や分析だけでは足りないという考えを読んで目から鱗でした。なぜなら破局以前のテクノロジーの機能自体の理解を研究ではできていないので、その反対の悪影響まで考え及ばないという。どうするのか、それはSFを参考にすること、人間の想像力を頼りにすること。
この本でも『スタートレック』が何度か出てきます。
実際に起きうることしか人間は想像できない→想像できるものはすべて起きる可能性をはらんでいる。
フィクションとして流しているSFほかフィクションの中に、ヒントや答えがあるかも。

AIの技術の進化に恐れて、自分の立ち位置を奪われるかもなんて反発するより、来たる避けがたい人間の歴史の流れとして受け入れながら、人間としてやっていけることを模索し、またAIが絶対にしてはいけないルールのかじ取りなど二人三脚で豊かな世界になっていくように動いていくのがいいのかなと思いました。
教員の負担が多く問題視される現代、2041年にここで描かれているように単純作業の負担をAIに任せて、内面の指導やフォローとして導くなど、役割分担ができるのはとても理想的だと思いました。

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2023年02月23日

Posted by ブクログ

小説の部分だけ読んでも十分楽しめた。
テクノロジーの部分についての説明もしっかりとされていて理解しやすい内容になっていた。

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2024年05月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

感想
・最初の話題で感じたのは、やはりビッグデータから平均解を出して提案するので、個性がなくなる世界みたいなことになりかねないと思った。

5話目は日本での話だが、アイドル、ラーメン、探偵って安直で笑えた。

最終話はユートピアのようでもあり、ディストピアのようでもある。いつの時代も自分は何をしたいのかを持ち続けることが大事だと感じた。

あらすじ
AI技術者である筆者と技術者からSF小説家に転身した陳氏がSF小説仕立てで、20年後の未来を語る。
・最初はAI動的保険とその弊害
 リスクを避けて保険料を安くするために個人がAIに従うように誘導する。
・深層学習に必要なのは、大量のデータ、単一の領域、明確な目的関数
・2話目はナイジェリアで民族紛争のために職を求める若者がフェイク動画を作る話。GANなどが使われる
・3話目は孤児院で子供に学習をさせるAI友達。自然言語処理NLPを使用。
・4話目はコロナが定期的に流行る世の中で、感染を恐れて3年間も家から出ていない女性の恋物語。AIを用いた診断、創薬など医療がテーマ。ロボット手術も発達するとある。
・5話目は、アイドルである博嗣が死んだ原因をファンである愛子が追う話。VR、AR、MRなどの技術が出てくる
・6話目はスリランカの子供がVRレースで働く話。VRゴーグルに加えて、体感スーツを着用して現実さながらのレースを体験する。ゲームだと思っていたものは実は現実だった。災害やテロなど突発的な事態に自動運転が対象できない際のゴーストドライバーだった。
・自動運転技術は、タクシーフィーの削減や自由時間の増加、無駄なCO2排出削減、事故低減などのメリットがあるが、一方で、事故時の責任所在問題やドライバーの雇用問題がデメリットとして挙げられる。
・7話目は自律兵器で人類が存亡の危機に立つ話。量子コンピュータによって計算能力が飛躍的に向上する
・8話目はAIにあらゆる仕事がとって変わられる話。人はベーシックインカムを保証されるが、やることがなく、治安が悪化する。建設労働者もAIにとって変わられ、転職を斡旋していた業者さえもがAIに変わる。仕事はAIが評価するゲームのようになっていた。
・9話目は富も名声も全てを手に入れ、燃え尽きた男がAIで幸福を最大化する島に招待されるが、本当の幸福を手に入れることは難しいという話。2041年時点では幸福の定義も曖昧なため最大化することは難しいとされている。
・10話目にはAIが全てを最適化することによって、エネルギーコストが0近くに下がり、衣食住にかかるあらゆるコストも下がる。貨幣はもはや価値をなさなくなり、人は承認要求のために仕事をする。市場は崩壊する。

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2024年03月26日

Posted by ブクログ

昨秋文藝春秋さんから頂いた本。
分厚いのでつい後回しになって、ようやく読み終わった。
AIによる明るい未来、がコンセプトかな。

未来1 恋占い
未来2 仮面の神
未来3 金雀と銀雀
未来4 コンタクトレス・ラブ
未来5 アイドル召喚!
未来6 ゴーストドライバー
未来7 人類殺戮計画
未来8 大転職時代
未来9 幸福島
未来10 豊饒の夢

と、SFストーリー仕立てで、
AIが普及した2041年の社会の姿を描いている。

保険プログラム
ディープフェイク
AI教育
パンデミック
娯楽
Ai自動運転
科学者 武器
職業
幸福度
豊穣

がテーマ。
AIによって仕事がなくなる!は今もよく言われるところ。
エネルギーも満ち溢れ働かなくてよくなって
人々は幸福をどう感じるか、、、
問題提起している

正直それぞれの小説はいまひとつだった。
が、大いに知的好奇心をくすぐられるものであった。
インスパイアされたのは、AI教育、かな。
ずっと履歴をAIが押さえることで、最適な教育が組める。
これは健康にも言える。
いつも思う。
その人の体のことを一番よく知っているのは本人。
ただ、表現しきれない。
医者はそのつたない表現と、触診やら目検やらだけで
病気を判断する。
そんなの無理だろう、最近よく思う。
と言って本人に医療知識が十分あるわけではない。
最近はWEBでかなりいいところまで調べられるが、
見当違いということもままある。
だとしたら、、、
AIに活躍してもらえばいい。
個人健康データを可能な限り把握してもらい、
AIの持つ医療知識で最低限の判断をする。
その見立てをもとに、最終的には医者が検査等で総合的に判断する。

そのためにマイナンバーカードを健康保険証替わりにする、
というのなら大賛成だ。
いろんな病院での診察結果をすべて保存する。
人間ドックの結果も、レントゲンもいろんなカルテも。
いまはばらばら。
更にスマートウォッチの記録も、体重も、全部。
まあ別にカードじゃなくてサーバーに個人ごとに蓄積すればいいんだけど、
そこまで整わないなら、せめてカードに焼けばいいという意味。

状況もわからず診察する医者も助かるんじゃないかなあ。
なんでそれができないのか。
厚生労働省がさぼってるんだろうな。
考えりゃ出来そうなものだ。

AIの未来は明るい。
ただ、それを使いこなすことができるか、だ。

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2024年01月09日

Posted by ブクログ

あらゆる欲が過剰供給になり満たされる作者の言う「豊饒時代」が到来したら本当に人類はどうなるのだろう?ソ連みたいに全く働かずダラダラ過ごす人はたくさん出てくるのかなー。マズローの欲求五段階仮説にて最上位の高尚な欲を目指す未来を作者は予想して、作者の言う豊饒時代を描いた一編のあるSF映画スタートレックの乗組員みたいな未知なる「好奇心」を求める人類が居るのか?攻殻機動隊の電脳は嫌だなーと思っていたが、寿命を延ばしてこの目で人類の未来を見たい「欲」がこの本を見て私に出た。これからもSF作家に未来を見させて欲しい。

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2023年09月18日

Posted by ブクログ

10のストーリーからなる小説と解説。それぞれ異なる技術的応用を取り上げている。

ゴーストドライバーなんかは想像していなかったし、完全自動運転は割と2041年での実現可能性が低いというのは意外だった。

いずれにせよ、難しい未来をSF手法で読みやすく理解させてくれる。

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2023年09月08日

Posted by ブクログ

ジュール・ベルヌの生み出した物語を追いかけるように科学技術は「月世界旅行」「海底二万里」「悪魔の発明」を現実のものとしていきます。カレル・チャペックの戯曲「ロボット」を原点とする手塚治虫の「鉄腕アトム」は日本のロボット開発における方向性に大きく影響を与えました。アーサー・C・クラークのヴィションとスタンリー・キューブリックのビジュアルが生み出した「2001年宇宙の旅」のコンピューターHALはAIというものの最初の具現だったように思います。文学などの芸術は科学技術のベクトルを引っ張り、最新のテクノロジーは芸術のカタパルトになっているようです。文学と科学の相互関係は、まるで人間の右脳と左脳の関係みたい。この本は、AIがつくりだす2041年の世界をクラーク役の人工知能学者カイフー・リーとキューブリック役のSF作家(作家だったら、クラークじゃないの?という突っ込みはお許しいただき…)が描き出す10の未来の物語です。ベルヌが放り投げた物語の何割が実現して、何割が実現しなかったのか、あるいは似たような技術は出来たけど、ディテールは大きく違うよね、というように、10個のストーリーの何個がそのようになって、そのようだけど中身は全然異なる、みたいなことはあと18年でわかりますが、その実現確率に意味があるのではなく、ChatGPTが大ブームになっている今このタイミングでのAIの可能性を自分事にするために、めちゃくちゃいい本です。アメリカでベストセラーになったのは、それだけAIの社会的インパクトを考えたいという人が多い、ってことかもしれません。著者自ら語るように基本ポジティブなのは、彼が元Google中国社長だからか…。ついつい危険度を恐れる流れに対して意味あるスタンスだと思います。しかし、10個の物語がグローバルなローカルが舞台になっている多様性を持っているのに、国家体制とデータとAIが一体化している中国本土の物語がなかったのは、それは政治の話になってしまうからかな、と勘ぐりました。そこはSFでもきっとキツいよね。

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2023年09月02日

Posted by ブクログ

WEB+DB PRESS Vol.134でオススメされており、気になったので読んでみた。AI周りの技術や応用等の情報収集になるかな〜という程度の心持ちだったのだが、純粋に小説部分が面白かった。テクノロジー解説の部分ももちろん参考になる。

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2023年08月13日

Posted by ブクログ

専門家とSF作家の描く未来。
この空想と現実というか専門家が描く未来予想図という構成が、いい塩梅の現実感を与える。

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2023年07月20日

Posted by ブクログ

AIが進化した近未来の社会像を10の短編SFで描いて見せる。漫画仕立ての啓発書みたいな本。著者らは、暗い予測が多い中、あえて明るい未来を意図的に描いて見せたとのことだが、確かに楽観的な感じはする。もちろんNECの98シリーズとかをいじっていた30年前と今とでは隔世の感があるが、今から約20~30年後にこの本が描くような社会になっているとはとても思えない。特に、最終章における、電力や資源についての見通しは甘すぎるのではないか。もちろん筆者らは、彼らが描く社会が実現するには経済システム自体の変革が必要であると説いているが、その道筋は(SF的な物語としても)何ら描けていない。幸福についても、欲求の充足という観点にとらわれすぎていて、他者との関係という観点が不十分な気がする。

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2023年06月19日

Posted by ブクログ

2041年に人工知能がどう使われているか、社会がどう変わっているかを10のシナリオで示した本。
かなりのボリュームで読み切るのに時間がかかったが、未来予想とは言え参考になった。技術的には実現しそうな感じはするが、果たして人間側がついていけるかどうか非常に不安である。今でさえデジタル漬けで体調不良者が増えているのに、更に付き合う時間が増えておかしくなってしまわないのか?仕事を全部AIに取られてしまうのではないか?不安ばかりが増えてしまっているが、まぁ悩んでも仕方ないので、今をしっかりとこなしていこうと思う。

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2023年06月18日

Posted by ブクログ

AIは人間が一生かけて読む文章の数百年分はある量を読んでいる。イラスト生成AIならpixivや他の場所にあるイラストすべてを見て学習している。人間が読み込める以上の圧倒的な量のインプットがある。そして、その圧倒的な量のインプットの中から特徴を抜き出すのがAIの最も得意としているところ。この大量のインプットの時点で人間は機械に叶わない。AIが得意とする分野がどこかなのかを知ることができた。

小説の出来栄えは序盤は物足りないが後半になると面白くなっていく。とくにアイドル召喚はギミックとストーリーの組み合わせがいい。人類殺戮計画はサスペンスとして面白い。

技術とその発展の紹介として良く出来ていると思う。
人間の未来予測いかに的はずれなのかは過去の未来予測のハズレかたが証明しているので、未来がどうなるのか誰にもわからないでしょう。実際はAI以外にもあらゆるものが影響しあっていくわけなので。

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2023年06月12日

Posted by ブクログ

未来予想というのは難しい物だと思う。20年後の世界はどうなっているだろうか。今から20年前がどうだったかを思い起こすとどうだろう。インターネットはそれなりに普及していたけど、スマホはまだ存在しない。携帯全盛期。人によるとは思うけど、リアル店舗での買い物の比率は今よりずっと高かった。プリウスが発売されたのがこの頃でハイブリッド車が環境対応車の先端だった。人工知能はマイナーな冗談でしかなかった。
では生活の仕方はどれくらい変わった?確かにスマホは生活を変えた。携帯の小さな画面で動画を観ることが生活の一部になるなんて思っていた人はいなかったのではないか。電気自動車も増えた。人工知能が日々のニュースを騒がすようになった。ネットでの買い物が一層増えた。でも私たちの生活そのものはそこまで大きくは変わっていないようにも思う。一番大きく変わったのはテレワークの普及で通勤しなくてよくなった(人による)ことかもしれない。でもこれはコロナ禍がなければ起きなかったことかもしれない。
この本で描かれる未来で一番の根本的な今との違いは、人工知能の発達にあると思う。それは2020年から数年の生成系人工知能の目に見える進歩が社会に与えている衝撃を考えると無理がない。人工知能がインターネットのように普及して誰でも使いこなせるように広がり、さらに高度になっていったら、というふうに今の衝撃レベルが勢いそのままにリニアに続いていけばこのような未来が20年くらい経ったら実現する可能性があるかも?という未来が描かれていると感じる。
10のエピソードはどれも少しディストピア感がある未来を描く。その根本にあるのはAIに仕事を奪われる人々の多さへの危惧があると思われる。どのようなスピードでそのような社会の転換が進むのか、それはわからない。個人的には20年かそこらではこの本に書かれている2041年の6割位まで到達できれば大した物なのではないかと思うけど、それは保守的すぎるのかもしれない。でもリアルの世界でのモノの製造などはそこまで簡単にAI任せにはできないだろうと思う。そういう意味では人間の感覚を操作する系のAIの方が普及のスピードは早いのかもしれない。

いずれにせよ今の時代からの未来予測として刺激的であることは間違いない。小説と解説のような組み立てはとても良いアイディアで論点のエッセンスをストーリーを楽しみながら理解していけるのは素晴らしい。

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2023年05月16日

Posted by ブクログ

シンプルなタイトルに惹かれ購入しました。購入するまでこれがSF小説仕立てになっているとは知らなかったのですが、このスタイルはありかと思います。すらすら読めましたし、AIの課題と同時にAIが生み出すプラス面についても大いに想像力が刺激されました。

本書では、2041年を舞台にした10個のSF小説がオムニバス形式で紹介されています。それぞれAIが何らかの役割を果たしていて、章の最後には、テクノロジー専門家による解説がついています。舞台も幅広く、中国、韓国、インド、日本、ナイジェリア、カタール・・・など、意図的なのか様々な国を舞台にしています。テーマとしては教育や医療、娯楽、輸送、自律兵器、コミュニケーション(フェイク問題)などを取り上げてはいますが、本書のすべてのテーマが、最後の2つのストーリーで語られている「幸福」および「豊饒」というキーワードにつながっていると感じました。「豊饒」については、ジェレミー・リフキンの描く「限界費用ゼロ社会」の世界観がベースになっていると思います。そして、欠乏感が多くの領域でなくなっている「豊饒の世界」において、欠乏を前提に発展した経済学はどう変わるべきか、人間は何を求めているのか、より具体的には、Aさん、Bさん、Cさん各人にとっての幸福とは何か、AIはこれらの課題にどう向き合っているのだろうか、という問いかけだと思います。

本書では、AIが人類殺戮計画に使われたり、大量失業時代をもたらすような暗いストーリーも描かれてはいますが、それこそ人間が創造的になってAIの活用方法を模索すれば、各人の潜在能力が最大限に生かされ、多くの人がいきがいのある人生を送れるような社会が作れる、といったポジティブなトーンを全体からは感じました。

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2023年05月08日

Posted by ブクログ

これから何らかの将来ビジョンを作る人にとっては、ハラリ博士の「ホモ・デウス」と並んで必読の書だと思います。

ただ、初期のAI研究者・経営者として大成功を収めた作者の経歴から、AIの将来の可能性について非常に自信を持っており、政治や社会の問題について楽観視し過ぎているようにも感じます。

また、物語部分がSF作品としてそれほど面白くなかったので1点減点しました。

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2023年04月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

深層学習の短所
AIが個人を知りすぎること。目的関数が単一だと、個人の幸せにつながらないリードをすることがありうる。
不公平と偏見。AIの学習サンプルに偏りがある場合。またはAIの判断が差別につながる場合。
説明不能。理由はわからないがそういっている、という場合に何に従うのか。

ディープフェイク
フェイク動画を作成できる。デジタルのものはすべて偽造の疑いがある。ディープフェイク検出ソフトが必要。
ブロックチェーンを使えば画像や動画の真実性を証明できるがまだだいぶ先になる。

高度なAIコンパニオンの登場
教師付きNLPはデータの用意に限界があるが、自己教師あり学習による一般NLPは、AIが教師役になるので限界がない。
GPT3は、1750億個のパラメータを持つ。グーグルブレインは1兆7500億個のパラメータを持つ。
GPTは、例文を巧妙に記憶しているだけで真の知性ではない、という批判もある。
2041年には、創造性、戦略的思考、推理、反事実志向、感情、意識、などはまだ不可能。
汎用人工知能をどのように活用するか、は人間の領域。
AGIにこだわるのは、人間が至高の存在であると思いたがるナルシズム。
p168

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2023年03月23日

Posted by ブクログ

【感想】
ChatGPTの出現により、「AIが人間にとって代わる」未来がいよいよ見えてきた、と私は思っている。
では、このままAIが進化し続けたとしたら、20年後の未来はどうなっているのか?ヒトの感性や経験など無用になるぐらい人間を凌駕し、世界を支配するのか?それとも従来のまま、人間の仕事を補助するアシスタントに過ぎない役割を担うのか?

本書はそうしたAIの未来を、2041年という時間軸に立って予測する一冊だ。筆者はカイフ・リーとチェン・チウファンの2人。リーは、40年間AⅠ研究にたずさわり、AppleやMicrosoftやGoogleで製品開発をおこなってきた、AI研究のプロフェッショナルである。そんなリーとタッグを組むチウファンは、近未来を舞台とした小説である『荒潮』を著したSF作家だ。
本書の骨格は、2041年の世界を舞台にチェン・チウファンが物語を書き、そこに登場するAI技術を、専門家であるカイフ・リーが補足・解説する、といった構成になっている。短編はテーマ別(恋愛、教育、パンデミック、VR、兵器、幸福など)に10作品収録されており、各短編でそれぞれ一冊の本にできそうなぐらい濃密にまとまっている。
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冒頭で取り上げられるのは「恋占い」という作品だ。
2041年のインドでは、『GI』というアプリを活用した保険サービスが普及している。GIには動的なAIアルゴリズムが搭載されており、生活を送る中でこのAIが「リスク要因」に応じて保険料を自動調整していく。喫煙、飲酒、暴飲暴食といった非健康的で危険な生活をすれば、その分保険料が上がってしまう。代わりに、AIに従って規律正しい生活をすれば保険料はお得になるし、GIには保険以外のあらゆる生活情報も付帯しているため、日常生活の全てを便利に済ませられる、という仕組みだ。

問題は、GIの恩恵を受けるためには、家族全員の個人情報を企業に渡さなければならないことである。そして、自身が見ているウェブページや訪れた場所といった情報まで収集され、それが保険料の形で逐一「理想的/理想的でない」と判定されることである。

主人公のナヤナは、サヘジという男の子に恋をした。しかしサヘジはカースト弱者である。ナヤナはサヘジに近づこうとするものの、GIはサヘジを「リスク対象」とみなしており、接触を避けるように誘導される。そして保険料の上昇という形で家族に恋がバレてしまう。AIが全知の存在になったことで、恋や好き嫌いといった「感情」の部分も、AIによって測られるようになってしまったのだ。

2人の恋の行方は、ぜひ本書を読んで確かめてみてほしい。
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以上のような形で、テーマ別に10個の作品が紹介される。

各作品に共通するのは、「AIによって人間のありかたはどう変わるのか?」というテーマだ。
ChatGPTの出現が示唆するように、今後のAIはかつて無いほどのスピードで発展していく。数年前には、AIが人間の領域に進出しても、人にしかできない新たな仕事が誕生し、そちらにシフトチェンジするだけだ、という論調が見られた。しかしながら、そうした楽観論はもはや終わったというべきだろう。

実際、『AI2041』で描かれるのは楽観的な世界ではない。人間らしさが発揮できる領域にまでAIが進出し、人々はAIの決定事項を追認するだけの存在になっている。ほとんどの作品で、AIを上位存在のように位置づけ、その下で暮らす人間のあり方を描写している。

しかしながら、AIに世界が埋め尽くされながらも、決してディストピアではない――そうした希望に満ちた結末を、どの作品も示している。AIには確かに未完成の部分がある。倫理的な良し悪しを判断できないAIは、人間の価値観を脅かし、不安にさせる場面がある。それでも、人間とAIは共生でき、よりよい未来を作り出すことができる。

未来への光を指し示すような本。小説部分は非常に面白く、技術解説もわかりやすく詳しい。ぜひ読んでほしいおすすめの一冊だ。

――強力なAIのせいで人間は無用階級になると考えるなら、自己改造の機会はなくなる。きたるべき豊饒時代にただ享楽し、進歩も努力もしなければ、人類文明の発展もそこで終わる。シンギュラリティが近いからと絶望と無力を感じるようなら、本当にそれが来るかどうかにかかわらず、人間は深い闇に落ちる。
それに対して単純作業からの解放や、飢えや貧困の消滅を感謝し、AIが持たない自由意思を大切にし、人間とAIの共生関係は1+1以上の価値を生み出すと信じるなら、人間はAIをよき伴侶として、前人未踏の宇宙へ勇敢に船出することができるだろう。
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【まとめ】
10編のうち、印象に残った作品を以下にまとめた。

0 まえがき
本書がめざすのは、AIの本当の姿を語ることだ。率直でバランスのとれた語り口で、建設的で希望ある内容を書く。
描くのはAIの実像だ。すでにある技術、または今後20年で成熟すると合理的に予測できる技術を紹介する。そうやって2041年の世界のさまざまな側面を描く。20年後に80%以上の確率で登場しているはずの技術をあつかう。


1 恋占い
舞台はインドのムンバイ。2041年のインドでは、GIという動的なAIアルゴリズムが搭載された保険を導入することで、最小の費用で最大の保証を実現している。GIと連携した生活アプリをインストールし、模範的な生活――保険料が下がるような健康的で安全な行動――をすれば、暮らしのあれこれを非常にお得・便利に済ませることができる。しかし、その対価として家族全員のデータリンクを企業に提供しなければならない。

主人公の少女、ナヤナは不可触民のサヘジという男の子に恋をするが、SNSでサヘジの投稿を閲覧したり、サヘジと直接接触したりすると、保険料がどんどん上がっていく。GIにとって、カースト弱者であるサヘジは「リスク対象」であるからだ。カーストはとっくの昔に法律で禁止されたが、AIはデータ分析によって潜在的なカースト差別を読みとって、それを保険料の算定というかたちで顕在化させている。
「AIによって禁じられた愛」のゆくえはいかに......。

AIは人の気持ちが読み取れない。現実に残る不公平や偏見を顕在化させる。そして、未来のAIによる深層学習には、「個人を知りすぎる」という短所が眠っている。それを解消するにはかなり手間がかかるだろうが、それでもやるべきことのいくつかは明白だ。
まず、AIを使っている企業は、どこで、どんな目的で使っているかを公表すべきだ。次に、AI技術者の訓練には一定の職業倫理が適用されるべきだ。製品に埋めこまれる倫理的選択によってだれかの人生を変える判断がなされることを理解し、ユーザーの権利を保護すると誓うべきだ。さらに、AI訓練ツールにはきびしい検査機構を埋めこむべきだ。不公平なサンプル比率のデータでモデルが訓練された場合は警告し、場合によってはその使用を不許可にするといった機能が必要だろう。また、AI監査法を制定する必要もある。


2 金雀と銀雀
金雀(キムザク)と銀雀(ウンザク)は双子の孤児。兄のキムザクは社交的だが、弟のウンザクはアスペルガー症候群を患っているため内向的である。
孤児院では最先端のAI教育を行っており、孤児一人ひとりに専用のパーソナルAIコンパニオンがつく。自分ひとりだけの「先生」からマンツーマン教育を受けることで、眠っている才能や個性を効率的に伸ばしていくことができる。キムザクとウンザクは自らの性格に適したコンパニオンを作り出し、キムザクは競争心と知性を、ウンザクは創造力を伸ばしていった。しかし、相反する性格からか、二人の仲は次第に悪化していく。

キムザクとウンザクは養子として別々の家庭に引き取られる。キムザクは、裕福だが規律の厳しいパク家へ引き取られた。パク家の他の子どもたちは、10代にして最先端分野で活躍している天才ぞろい。キムザクはそんなエリート一家の中で投資家になるために訓練を積んでいく。一方のウンザクは、トランスジェンダーの芸術家夫妻に引き取られるのだが、集団生活になじめず、仮想空間に没頭していく。
二人はAIによって育てられ、AIによって動機付けられ、そしてAIによって変化していく社会の中で成長していくのだが……。

AIが教育現場の多くの場面を肩代わりすることで、教育コストは下がり、より多くの子どもたちが平等に学ぶ機会を得られるようになるだろう。エリート教育機関に囲いこまれていたトップクラスの教師や教育コンテンツが開放され、コストがゼロに近いAI教師によって広く普及するだろう。
一方で経済的に豊かな国や地域では人間の教師を多く育成し(あるいは家庭教師を雇って)、少人数教室を実現したり、専任のメンターやコーチにするだろう。人間とAIの教師は共生可能であり、柔軟な新しい教育モデルをつくれる。AI時代は教育機会を大きく広げ、生徒一人ひとりの能力を引き出すはずだ。


3 ゴーストドライバー
主人公はスリランカ人の少年シャマル。シャマルはVRドライビングゲームのトップランカーである。
2041年の世界では自動運転レベル5が達成されているが、AIによる操作が役に立たない場面がある。大規模災害でインフラが麻痺しているときだ。
シャマルはVRゲームでの挙動を現実世界にフィードバックする装置を使って、自動運転車をマニュアル操作し、災害の被災者をリモートで救助していくのだが......。

真の自動運転車の実現に必要なのは一個のブレークスルーではなく、何十年にもおよぶ試行錯誤の積み重ねだ。
頭においておくべき重要なことは、現在の自動車の単純な発展版として自動運転車が登場するわけではないということだ。自動運転は完全スマート都市インフラの一部として実現するだろう。作品中で描かれたような相互接続技術インフラの存在が前提となる。
レベル5実現の最大のハードルは、AIは大量のデータで学習させなくてはならないところにある。そのデータは、多くのシナリオでの現実の運転を反映したものでなくてはならない。しかし、そこで求められるシナリオの多さと多様さは膨大だ。路上にありうるあらゆる物体と、移動方向と、天候状況のすべての組みあわせをデータで収集する方法は、現在のところない。

しかしある大きな前提に取り組むことで、開発を加速できる可能性もある。レベル5は都市や道路状況を正確に把握する必要があるわけだが、それが「情報化された都市や道路」であったらどうか。つまりセンサーや無線通信が道路に埋めこまれ、前方の危険の有無や、見えないところの道路状況を道路が車両に教えられたらどうか。今後の新しい都市建設で中心街の道路を二層構造にして、自動車と歩行者を完全に分離して衝突の可能性をなくしたらどうか。インフラを再整備して歩行者が自動運転車に近づかないようにすれば、レベル5車は大幅に安全になるし、早い時期に実現できるだろう。


4 人類殺戮計画
国家予算級の大金が入った暗号通貨のウォレットが、何者かによって盗まれた。量子コンピューターレベルのパワーが無いと実現不可能な犯行だ。
盗難事件から2週間後、世界の主要な石油輸送航路が通る7つの要所がドローンによるテロ攻撃にあう。ホルムズ海峡、マラッカ海峡、スエズ運河、エーレスンド海峡、ハブ・エル・マンデブ海峡、トルコ海峡、パナマ運河。主要産油地から世界各国へ運ばれる、1日あたり6,000万バレル以上の原油の大半が、これらの水路を通る。
石油なしに成立する商品やサービスは世界に存在しない。影響はすぐにあらわれた。物価の急上昇、株式市場のパニック、インフレ、交通渋滞。物流とサービスは途絶し、金融システムは崩壊する。車は走らず、飛行機は飛ばず、船は出ない。プラスチックは生産できず、代替エネルギーはない。地域資源の略奪、局地戦、全面戦争。

やがて世界中で、重要人物がドローンによって暗殺され始めた。

この世界での、地球規模の犯罪活動のしくみについては次の通りだ。
非中央集権的でありながら、ブロックチェーンとAI技術で高度に組織化されている。あらゆる取り引きは暗号化され、製造と輸送は自動化されている。犯罪主体と犯罪行為は時間的にも空間的にも分離され、暗号化された契約のみでつながっている。武器は全自動で製造、配送される。麻薬は無人の山間部でロボットによって栽培、収穫、精製され、無人の自動運転車で商業地へ運ばれ、ドローンで末端へ配送される。買い手はオンラインで購入ボタンを押して、人目につかない暗がりで待つだけ。人手を介さないので、昔のギャング映画の定番だった裏切り、密告、潜入捜査などは起こりえない。もし警察に取り引きを嗅ぎつけられても、モジュラー構造のその部分を切り離すだけでいい。すぐに代替構造ができて、損失は最小限ですむ。

ブラックリストに記載された重要人物がすべて殺害されると、ドローンは活動を停止した。
次のテロ計画は、宇宙貨物に偽装した核爆弾の打ち上げだった。成層圏で核爆発を起こすことで電磁パルスを生じさせ、地球上の電子設備を全て破壊する。
テロを計画したルソーが望んでいたのは、人類の活動にブレーキをかけることだった。人類社会を情報革命以前にもどしたいのだ。グローバリズムの網の目を断ち切り、二酸化炭素排出量を低下させ、自然が自己回復する猶予をつくろうとしている。

「人間の活動を原始生活に戻す」。終末の日を目前にして、テロ捜査官のロビンが選んだ選択とは......。

IBMのロードマップでは、量子コンピューター(QC)の量子ビットは今後3年間に倍々で増加し、2023年には1,000量子ビットのプロセッサができると予測している。4,000論理量子ビットあればそろそろそれなりに有用な応用計算ができる。そこで一部の楽観的な予測では、5年から10年で量子コンピュータが登場するという見方もある。
しかしそのような楽観主義者は見落としている困難がある。IBMの研究者は、量子ビットが増えるほどエラーの制御が難しくなると認めている。この問題に対処するには、複雑で繊細な機器を新技術と精密工学で製造しなくてはいけない。また一個の論理量子ビットをエラー訂正のために多数の物理量子ビットで構成し、安定性とエラー耐性を持たせなくてはならない。となると、4,000論理量子ビットの性能を発揮するQCをつくるには、おそらく100万個以上の物理量子ビットが必要だろう。
たとえこうして量子コンピュータの実用運用に成功したとしても、量産となると話はべつだ。そして古典コンピュータとはまったく異なるプログラムで動くので、アルゴリズムを一から開発しなくてはならない。ソフトウェアツールも新しくつくりなおすことになる。以上のような問題を考慮して、ほとんどの専門家は実用的なQCの実現に10年から30年かかると予想している。


5 大転職時代
転職斡旋業界に突如現れたオメガアライアンス社は、人員整理の対象となった労働者を「架空の仕事」に割り当てていた。その仕事は、VRゴーグル越しに、遠隔地にある建設現場の資材を組み立てて行く作業なのだが、実際にはそんな現場は存在しない。全ては美麗なシュミレーションゲームであり、人間に「仕事している感」をもたらすための幻想であった。
いくら失業者の再訓練に労力をつぎ込んでも、日夜進化し続けるAIには勝てない。しかし、人としての尊厳――社会のために価値を生み出しているという感覚――まで取り上げてしまっては、社会の崩壊につながる。そこで、人員整理の対象者をAIによって生かし続けていたのだ。
AIが、住宅ローンの審査だけではなく、建設作業のような肉体労働、さらには人間の従業員の採用や解雇までも行う未来で、働くことの意義はどうなってしまうのか.......。

AIは多くの業務を人間よりうまくやれる。しかもコストはゼロに近い。この事実は莫大な経済的利益を意味するが、同時に前例のない規模で人間の仕事を奪う。ブルーカラーもホワイトカラーもひとしくこの混乱にのみこまれ、人間の仕事の40%が、2033年までにAIと自動化技術によって代替可能になるだろう。

失業率の上昇は、問題のごく一部でしかない。失業者が増え、わずかに残った仕事を奪いあえば、平均賃金は下がる。それにより富の格差はさらに拡大する。AIが多数の人間の職業を消滅させる一方で、これらの新技術を掌握した巨大テクノロジー企業はさらに巨万の富を築く。このままだとAIは21世紀の新たなカースト制度を生み出すだろう。頂点には一握りのAIエリートが君臨し、その下に比較的少数の特別な労働者がいる。彼らは多領域のスキルセットを持ち、戦略性とプランニングと創造力を多く発揮する(ただし賃金は低い)。その下は大多数の無力で苦しむ大衆だ。

AIによる職業置き換えの大波を受けて、単純作業の職種はほぼ絶滅する。このような仕事の多くは初心者むけだが、それがなくなったら、初心者はどうやって学習や経験を積み、単純でない上級者むけの仕事をめざせばいいのか。仕事のスキルを身につける手段は自動化の時代にも残さねばならない。実地で学び、能力をつけて上をめざせるようにしなくてはいけない。下積みと呼ばれるような地道な仕事はなくなり、VR技術で代替されるだろう。

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2023年02月10日

Posted by ブクログ

おそらく、ここに書かれていることは2020年代には実現する。発想が弱くないかな。大規模言語モデルが急激に進化する前に書かれた本だからしょうがなくもあるけど。
これだとSFというフォーマットをとる意味がない。


勉強にはなるけど、SF小説としても未来予測としても残念。

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2023年06月11日

Posted by ブクログ

在りうる未来技術をベースに未来社会を予測した小説(SF)を展開する。絶対に面白いに違いないと思ったわりには、普通。2041年は近すぎたか?
知っている技術と未来予測のオンパレード。ビッグデータと深層学習AIから予測される、保険、成りすまし、AI教師、ロボット医療、バーチャルアイドル、遠隔操作運転、自律兵器、AI代替による仕事内容の変化、個人データから派生する個別サービス、エネルギーや食糧の低価格化とベーシックインカム。
良かったもの:日本を舞台にしたアイドル償還、日本のオタク文化の描写はグッド豊穣の夢:豊穣という言葉は覚えておこう。豊穣の世界での幸福って、定年後の不自由ない年金生活者の幸福論に似ている。

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2023年05月25日

Posted by ブクログ

かなりのボリューム、ゆっくり読まないと疲れます(笑)

G検定受験前に読むと、物語として頭に入るのでよかったかも。

前半は楽しいSF世界だが、後半はデストピアを連想させる深刻さもある。いつの時代も、優れたものは諸刃の剣。人間力が問われる。

量子コンピュータの世界をもっと知りたい。

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2023年02月21日

Posted by ブクログ

AIに関するフィクションものを読みたい人におすすめ。

【概要】
●AIネタを入れ込んだ10の物語
●各物語の後に「テクノロジー解説」

【感想】
●ありそうでなさそうな話が読み物としては面白い。
●未来において実現できる(できない)の判断に明確な根拠がなく感覚的に述べられているものが多いため説得力に欠ける。明確な根拠を提示することは難しいが、今の技術のこの部分がこのように進んだら実現するかもしれない、といった程度の積み上げ論があれば理解しやすいと思った。

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2023年02月12日

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