【感想・ネタバレ】大暴落1929 (日経BPクラシックス)のレビュー

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Posted by ブクログ

若干の香ばしさが市場に漂う今、もう一度読んでみるべき書籍でしょう。

もう10回以上、読み返していますが、毎回のように群衆心理の面白さを感じます。
市場と経済を取り巻く環境は目まぐるしく変化しますが、市場を構成する心理はある種の普遍的な行動パターンがあるのではと思えます。

市場を構成する主体が生身の人間だけでなくなった今、その普遍性はやや変化したかもしれませんが、学ぶべきことの一つであることに変わりはないでしょう。

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2020年08月30日

Posted by ブクログ

1929年にウォール街で起きた株の大暴落について、様々な目線から書かれた本でした。投資家の立場、当局の立場、証券会社の立場など、様々な目線からどう考えどう行動したのかが見えて、とても興味深く読めました。
人間の織りなすバブル崩壊劇は今も昔も変わらない、という論評がありましたが、その通りだと感じる場面が多かったです。

バブルの崩壊は何が最初のきっかけなのかはわからない、それにわかったとしてもさほど意味がない、いずれ破裂するバブルがはじけただけ、という箇所が印象的でした。
また、株式市場の暴落が所得と雇用、繁栄の実体そのものに悪影響を及ぼさないために、権威ある人物は所得と雇用は減少しないと言い続けた、本当に確信していた人はいないのに。という箇所も印象的でした。今も同じことが起きるのではと思いました。

とても読みやすい良本でした。

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2020年01月27日

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1929年10月24日にニューヨーク証券取引所で株価が大暴落。
その後、世界規模の恐慌へと発展した。
原書が出版されたのが1954年。
しかし、まるっきり古さを感じさせない。
まるでつい最近起きた出来事のように、
よくここまで当時の世相や情勢を調べたものだと驚かさせる。
世界金融危機が現在進行中だけに、単なる昔の出来事では済まされない。

ところどころにうかがえる著者のピリッと辛口のユーモアも見逃せない。
この本が堅苦しい経済学の教科書と一線を画している重要な要素といっていい。
もし、ユーモアのセンスをあまり理解できない大学のセンセイが、
この本の翻訳を担当したらどうなっていただろう?
何を言わんやである。
専業の翻訳業の方を起用した出版社の勝利。
ユーモアもきちんとわかった上で訳されているから、
生き生きした日本語になっている。
一昔前だったら、
この手のノンフィクションは大学のセンセイが片手間のアルバイトで翻訳するのが相場と決まっていた。
つくづくいい時代になったと思う。
活字離れなんてもったいないですぜ。

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2014年02月24日

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1950年代に書かれた本にもかかわらず、まるで昨日書かれた本のように読みやすい。人の欲望の尽きることがないように、人が投機とバブルへの熱狂の報いを受ける限りはこの本はきっと価値を持つ。まさしく真の古典、恐らく永久に読まれ続けることでしょう。

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2012年05月08日

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本書は、1920年代末から始まった世界大恐慌のきっかけとも言われる、アメリカ起こった1929年の株式市場の大暴落について書かれたものです。

初版発行はなんと1954年。50年以上も版を重ねて読み継がれている本です。

題名やテーマから、少しとっつきにくいかもしれませんが、内容は分かりやすく特に難しいということも無いと思います。

ご存じのようにバブルというのは現代だけの特殊な現象ではなく、近代から何度も何度も繰り返されているものです。有名なところでは、オランダのチューリップバブルとか、イギリスの南海泡沫会社バブル、新興市場(当時の南米諸国のこと)や鉄道バブル。新しいところではアメリカのインターネットバブルや日本の不動産バブル等々・・・、枚挙に暇がありません。

そして、おそらくこれからも何度も何度も繰り返されるていくのでしょう。

そういった意味では、典型的なバブルの破裂であった1929年の大暴落について知ることは、決して無駄なことではないと思います。

とはいえ、一種のエンターテイメント作品のような面白さが本書にはあるので、あまり難しく考えずに一度手にとってみても良いのではと思います。

良書だと思います。

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2011年11月22日

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帯には、「バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる、恐慌論の名著。」と書かれています。「あとに」というところが悲しいところで、人はなかなか歴史に学べない。この本で中心的に扱っているのは、大恐慌ではなく、大暴落、つまりウォール街で何が起こったのか、です。1929年の大暴落は、どのような背景の下に、どのような経緯を辿って起こったのか。感情論を排した観点から、克明に歴史を追っていきます。

目次:
-夢見る投資家
-当局の立場
-ゴールドマン・サックス登場
-夢の終わり
-大暴落
-事態の悪化
-暴落後の日々1
-暴落後の日々2
-原因と結果

鋭い考察が随所に織り込まれています。大暴落、大恐慌がなぜ起きたのか、それは再び起こるのか、という分析は最終章で扱われていて、定説とその妥当性が分析されています。

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2010年09月04日

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おすすめ度:90点

1954年初版。
帯には「バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる、恐慌論の名著。」とあります。
崩壊劇を活写。一気に読めました。
現在とデジャブ。
登場人物の当時の投資信託が現代のヘッジファンド。レバレッジを効かしていたことも同じ。
当初は強気一辺倒の学者やマスコミ、楽観的な発言が多かったことや時間軸が非常に似かよっていることにも驚きです。
何ら決定できない頻繁に開かれる重要そうな会議は、現在のG7,G20に重ねられるのでしょうか。
今も昔も変わらぬことがわかります。
今日まで、その経緯とチャートが相似形。
変わっていることは、バーナンキを始めとするFRBの対応の迅速さ。
新興国をも巻き込んだ国際経済の拡がりと各国の協調体制。
大暴落後に大恐慌へ突き進んでいった理由も明確。所得格差が生じていたということ。
金融危機をきっかけとして、実経済に徐々に影響を及ぼしつつある今、我々は大恐慌への道を歩んでいるのか。
1929年の大暴落よりもむしろ、その後の方が数倍もはるかに大きい暴落であったという事実。
とすると、2009年以降にも2008年に起こった大暴落の数倍大きい大暴落が、我々を待ち受けていることになります。

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2010年01月31日

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大恐慌について、深く述べられた本です。
金融危機の現在、どうするか、どうなるのかを考えさせられます。
おすすめ。

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2009年10月07日

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高校生の頃にも一度読んだ本。翻訳が絶版になっていたので、ペーパーバック版をつん読にしていたが、日経BPクラシックとして再版になったようだ。FRBによる低金利政策や続々とIPOする怪しい企業、投資信託ブームなど、いつの世も同じだなぁと痛感させられる。バブルはimmunizing effect を持つので、しばらくは再発しないが、何年か経つと繰り返される。29年の暴落がその後、大恐慌として長く影響を残すことになった理由についても考察が行なわれている。大きな理由の一つとして格差問題が挙げられている。当時は格差が大きく、株価暴落による資産効果へのインパクトを通じて富裕層に与えたダメージが大きかったことがその後の経済低迷を招いたとしている。本書が書かれた当時('54) は、格差も小さくなっており、仮に、今('54)株価が暴落しても大恐慌のようなことにはならないだろう、という見通しは、今回の金融危機を考える上でちょっと怖い。■ like all booms, it had to end.■ It is another feature of the speculative mood that, as time passes, the tendency to look beyond the simple fact of increasing values to the reason on which it depends greatly diminishes.■ Stock prices have reached what looks like a permanently high plateau (Irving Fisher)

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2011年08月07日

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1929年に起こった大恐慌について知りたいと読んだ。
大半が株の大暴落について書かれている。現在のコロナに起因する大恐慌の比較にはなりにくい。
株式市場の混乱の要因を知るには適当だが、経済の大混乱をより幅広くと考えた場合には物足りない。10%程度は参考になる部分もある。
訳は読みやすい。

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2020年05月29日

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大暴落直前、期中、その後の恐慌や人々の様子をデータとエピソードによりガルブレイスらしく描写。
直後の楽観論-ファンダメンタルは基本的に健全とのコメント-など現在のコロナ暴落後の様子ともシンクロ。

恐慌が長引いた原因
(1)所得分配 富裕層の消費は非恒常的で不安定、脆弱化(2)企業構造 資金詰まりを起こした企業は投資を犠牲にしてでも債務償還や配当に当てるため経済は縮小スパイラル
(3)銀行システム 経営基盤が脆弱な金融機関多数存在。システム的信用収縮、所得、雇用、物価の落ち込み銀行破綻
(4)経常収支 高関税政策による貿易収支黒字に加え資本収支黒字により不均衡が蓄積、ドイツと中南米債務国 資金出し手は州政府を含む政府。ペルーやキューバ政権の貸倒
(5)専門家の経済知識 政策アドバイザーは均衡財政、為替の金リンクなど当時の考え方に教条主義的墨守。

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2020年03月23日

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ネタバレ

1929年の株価大暴落について、米国内の状況が書き綴られています。リーマン・ショックあたりの本は何冊か読んでたけど、1929年の暴落についての本は初めてでした。

リーマン・ショックの際にCDOがブームになっていたように、この時は会社型投資信託がブームになっていたそうで、これがCDO同様歯止めの効かない流れを生み出した一因になったようです。

私が理解した投資信託が暴落の一因となった仕組みは、以下の通りです。
①投資信託が資金調達する際に、予め利率や配当が決まっている社債等に加えて普通株を発行。
②投資信託が設立後に投資した株式が値上がりすると、投資信託の価値が上がるが、社債等は利率等が決まっているため価値は変わらず、この価値の上昇分全てが普通株に反映される。つまり、投資した株式の値上がりの数倍の価値を投資信託が生む。
③これは即ち値下がりした時に数倍の価値で値下がりすることを意味するため、諸事情で下落した株式の値下がりが雪だるま式に膨らんだ。

今はこんなことにならないような規制がされているのかな...??
知っている方がいたら教えてほしいところ...

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2019年08月20日

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1929年の米国での株式市場の大暴落の前後とその後の経済情勢を述べている。現在はそのころとが違って政府の規制やいろいろな仕組みができてはいるが、第九章のガルブレイスの以下の言葉が気にかかる。「だがかつてもそうだったように現在も、金融上の判断と政治の配慮は逆方向に働く。長期的にみれば経済を救う措置であっても、現在の安寧と秩序を乱すものであれば、けっして高くは評価されない。そこで、たとえ将来に禍根を残すとしてもいまは何もしないでおこう、ということになる。こうした姿勢は、共産主義を蝕んだのと同じように資本主義も脅かす。このような考え方に陥るからこそ、事態が悪化していると知りながら、人はあの言葉を口にするのだ−状況は基本的に健全である、と。」

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2018年10月20日

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ネタバレ

<米国の企業合併の変遷>P80
1.1900年前後:規模の大きい企業による小さい企業の吸収
・対象:同一または関連する製品を同じ国内市場に向けて製造販売している企業。
・目的:競争を減らす/なくす、競争を支配する
・結果:誕生した巨大企業は業界に君臨し、価格・生産に多大な影響力を発揮。投資、技術革新のスピードにも影響を与える
→電力、ガス、水道、乳業、たばこ、鉄鋼

2.1920年代:
・対象:正面からの競争相手ではなく異なる地域を商圏よする企業同士によるM&A
・目的:地方企業にありがちな非効率、無計画、無知、規範の欠如の駆逐(競争の排除ではない)
・結果:(豊富な金融知識など)洗練された都会の経営陣が(経営の)指揮を執ることによるメリットの享受
______________________________
P285~
<恐慌が長引いたことの主たる要因>
1.所得分配
・貧富の差は大きく、富裕層の不労所得が個人所得に占める割合が大きい
→高所得層の奢侈品の消費に依存した経済構造への傾斜
☆恐慌後☆
→株価暴落への感応度高い富裕層の支出・所得を直撃。景気の急激な落ち込みへ

2.企業構造
・新種の経営形態である持ち株会社と投資信託の結びつき
→下流側の事業会社から支払われる配当を、上流側の持ち株会社が発行した社債の利払いに充てる方法により、社債のデフォルトにより企業グループ全体が破綻する構造(逆レバレッジのリスクと損害が大きい)
→設備投資よりも社債利払いを優先させるインセンティブが働く
→設備投資の縮小によるデフレ圧力の強化
→企業収益減少、事業縮小、新規借り入れ困難(デフレスパイラルへ)
☆恐慌後☆
→持ち株会社方式の崩壊と投資信託の破綻により事業資金の出し手が不在に
→金融・証券の不況が実体経済に波及(受注減、失業増)

・企業規律のゆるみ(企業犯罪の全盛期)

3.銀行システム
・経営基盤の脆弱な銀行が多数存在
→(好況時でさえ)一行が破綻することにより破たんの連鎖が起きやすい状況

4.対外収支
・米国はWWⅠ後に純債権国へ転じ、(高率の関税の結果としての)貿易黒字に加えて資本収支の黒字が蓄積
→債務国から米国へ金流入+公債形式による貸し出し増(民間金融機関→対独・対中南米)
→高額な引受手数料獲得のための競争激化で、債権者の利益に反する情報の隠蔽と発行体への賄賂の恒常化
→(輸出先でもある)債務国国債のデフォルト率上昇を招く
☆恐慌後☆
→米国金融セクターの資金不足により対外融資打ち止め
→債務国は輸入減により財政均衡を図る圧力にさらされる
→主要輸出品目である小麦、綿花、タバコに打撃。米国農業セクターの苦境

5.専門家の経済知識
・専門家の助言は事態を悪化させる性質のものが多かった
例)
質問:「景気回復を促進する政策とは?」
専門家:「財政均衡!」
民主党:「賛成。我が党の綱領にも記されている」
共和党:「賛成。我が党の至上命令である」

例)
質問:「金本位制下で、我が国は膨大な金準備を蓄積している」
専門家:「金本位制からの離脱政策は不安だ」
専門家:「このままではインフレになるのではないか」←史上初の激しいデフレ状況
専門家:「インフレを回避するため、より財政均衡政策に力を入れよう。利下げ不可、信用供給不可、貸出基準も厳格なものを維持しよう」
専門家:「金本位制に反するドル切り下げなどもってのほかだ!」
民主党:「賛成」
共和党:「賛成」
フーバー大統領:「通貨の変動や切り下げを行わないこと、必要とあらば増税を行ってでも財政均衡を実現すること、国債の増発を控えて政府の債務をこれ以上増やさないこと。以上の点を直ちに確実に実施すれば、国は安定するでありましょう」
→金融政策は八方ふさがりへ
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歴史って面白いですねぇ。

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2013年11月29日

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「金利や信用供給よりもはるかに重要な役割を果たしたのは、時代の空気である。」

1955年に出版された”大恐慌の前後について”書かれた本。この本を読んで一番初めに思ったことはリーマンショックであった。歴史は繰り返す、とはまさにこのことである。今の日本も少しずつ景気が回復してきており、将来のインフレに期待ができる。しかし、その時に、20年前のバブルを忘れずに振る舞うことが大切だ。空気に流されないようにしたい。また、新たなお金を生む仕組みを考えてきた人々は非常に優秀だと思う。

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2013年10月04日

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ネタバレ

1929年前後の当時の状況が詳細に書かれている。
経済本というよりは一つの読み物のように感じたが、そのおかげで当時の「空気感」がとても伝わってきた。
暴落直前の描写によって、そのドキドキ感を味わうことができた

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2012年09月01日

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1929年の大暴落の経緯を、バブル期から暗黒の木曜日を経てその後に至るまで、わかりやすく詳述している。
分析は少なめであるが、村井章子の邦訳がとても読みやすい。

帯「バブル崩壊、、株価暴落のあとに必ず読まれる、恐慌論の名著」

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2012年06月15日

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ネタバレ

結局のところ、今も昔も、熱狂の渦中にいるヒトたちは周りが見えなくなるし、イマを信じたいし、異常な状態にあるのかどうかすらわからなくなる。
仮に異常な状態だと分かったとしても、やめられない。

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2012年01月06日

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ネタバレ

アメリカの大恐慌の流れを追った本。

「暗黒の木曜日」に株価大暴落、というだけのシンプルな流れではなく、様々な人の心理によって動くリアルな市場をここに見ることができる。

バブルが全く認識されていないわけではない。それでも止まらない投機ブームとその崩壊という過程は非常に興味深い。

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2011年06月21日

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のど元過ぎれば熱さを忘れ、歴史は繰り返される。著者が第9章で述べたことは、近年起きたことを思い起こさせる。

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2010年09月12日

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1929年ニューヨーク市場の歴史的な大暴落とそれに続く十年間の不況を経て、ようやく経済状態が落ち着きを見せた 1955年に初版。その後、ITバブル前夜の 1997年に再版され、この日経BPクラシックスとしての邦訳はやはりリーマンショック直前の 2008年。コロナ禍とそれに伴う大規模金融緩和の時代に、またこの本が多く読まれているのだという。

1980年代日本の熱狂的なバブル経済を見てきた世代として、今のこの状況をバブルと呼ぶには抵抗があるが、それでもリーマンショック以降の中央銀行による株価の下支えオペレーションがいつか限界を迎え、大恐慌時代が再来するという予言は多い。もっとも、この本から得られる教訓の一つは、学者にしろ政治家にしろ未来予測はアテにはならないということだが。

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2021年05月23日

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前から読もうと思っていてやっと読めた本。
面白いかと言われると少し違うけど読んで良かった本。
投資家の阿鼻叫喚っぶりが書かれているのかと思ったけどそうではなく、都合の悪いことは隠蔽されたり情報が出てくるタイミングが遅くなったりということがよくわかる。

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2021年01月12日

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1929年の大恐慌がどのように起こったかを解説した、 原著が1955年の本
制度派経済学で名文家のガルブレイスによる解説はとても分かりやすい

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2020年07月13日

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ガルブレイスは、100歳近くまで存命し、ルーズベルトを含む民主党の複数の大統領のアドバイザーを務めました。経済学者としての業績には、毀誉褒貶がありますが、その知名度は著作の読みやすさもあって、抜群のようです。

本書では、1929年のアメリカの大恐慌前後の経済状況、特に金融市場の状況から恐慌前後の状態を解説しています。2008年のサブプライムと同じレバレッジを利かせた投資方法(当時としては空売りや、社債や優先株でレバレッジをかけた投資信託)などが一気に巻き戻った結果、暴落が加速したあたりは80年を経て歴史が繰り返したことを克明に語っていると言えるでしょう。バブルが破裂する際に優良な資産程売られるのは、マージンコールの支払いのために現金化が必要とされるため、というくだりはまさにレバレッジの巻き戻りが市場に与えるインパクトの凄まじさを示す例でしょう。

ガルブレイスは2006年に鬼籍に入りましたが、2008年以降のリーマン危機時に存命であれば、1929年との対比でどのような分析をしたことでしょうか。

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2020年01月13日

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ガルブレイス 「 大暴落 1929 」 1929年に起きた ウォール街の株の大暴落の経緯を説明した本。経済の変化というより、経済に踊らされている人の変化に着目している。

経済に踊らされている人の動き
*政府〜実態と異なるウソの発表
*銀行と投資家〜終わりがきたことをなかなか認めない
*社会〜金儲け一色に染まり価値観がどこかしら狂っている

「株の大暴落は 投機ブームが終わっただけ」「投機ブームは 時代の空気〜普通の人でも金持ちになれるという自信」とした著者の見解に、日本のバブル崩壊を想起した。

著者は 株の大暴落と 直後に起こった 世界恐慌に 関係性を見いだしていない。

株の大暴落についての著者の見解
*市場が不況に気付いたから暴落が起きたのではない
*株が下がった時点では 不況は予測できなかった
*指標の悪化に一部の投資家が敏感に反応して売りに転じ、いずれ破裂するバブルがはじけた 可能性はある


「政府から 経済は基本的に健全である と聞かされたら、何かがうまくいっていない と考えた方がいい」



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2020年01月05日

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本棚を見ていてふと気になり再読。
アメリカ人ってある意味凄い、何ら変わらんもんね。やってみて駄目ならやり直すしかないでしょ的な発想、この志向に資本主義は確かにマッチします。痛い目に合う時は容赦ないけれど、それも呑み込む共通認識が社会に備わっている気がするな。だからこういう過去の教訓があっても同じことを何度となく繰り返す。うん?日本も違う意味で同じかな?
ところで実はトランプという人は意外に経済という観点でアメリカ的にはダメな人かもしれない。とにかくアメリカに拘っていて、何でも良いからガンガン行くという能天気さが実のところ薄い感じがしなくは無いと思うのですが。

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2017年09月18日

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ネタバレ

【内容】
 本書によって、バブルや投機ブームがなぜ生じたか、当時の社会情勢を中心にして、示唆的な説明がなされる。名目上責任ある規制当局の人間が「風船を破裂させるのは簡単だが、針を刺して徐々に空気を抜くのはむずかしい」(p52)と考えていたこと、これが問題の本質を捉える言葉だと感じる。何らかの対処の必要性を感じる人間は、人工的に破裂させた場合、責任が明確になる。そして、誰もが責任を負いたくなかった。FRBは「自ら望んで役立たずにな」り(p62)、フーバー大統領は責任は政治的干渉を免れているFRBにあり、自分にはないと言い聞かせた(p54)。結局、投機への対処に法律どころか、警告すら発されることは無く、何かをやっていることを示すために、無目的会議が開催された。
 
 社会レベルに目を転じると、投機ブームを支持した重要な要因は「時代の空気」(p275)であった。意外にも、1929年のピーク時に投機に加わっていた人間はせいぜい100万人以下しかいなかった(p132)。しかし、「アメリカ人の生活が株式市場を中心に回り始め」ていた。報道は株高が永遠に続くかのように楽観的なものであった。彼らは自らゲームの参加者になっており、水を差すような言葉は発しなかった。少数ながら投機への懸念を表明する人は、ほとんど注目されないか、「破壊工作員」として排斥されるかのどちらかであった。著名な学者ですら「株価は恒久的に続く高原状態(プラトー)に達した」(p120)と主張し、ハーバード経済学会は当初の見通しから転向し、下落が続く中でも「不況が起きる確率は無視出来る程度」と主張し続けた。
 
 投機ブームへの免疫は時代を経るごとに少なくなっており、先の好況で投機のための貯金が潤沢に存在し、功名な経営者や学者に対する「無邪気な信頼感」(p276)が存在した。これらがブームを支えた。

【感想】
 1929年になぜあのような大暴落が生じたか、それは当然ながらその前の投機ブームに影響がある。本書ではその原因を基本的には「時代の空気」という社会的要因に求めている。「経済は基本的に健全である」といった、国民を安心させようとする発言を、主要な経営者や著名な経済学者、政治家の発言を引きながら、当時の状況がいかに麻痺し、浮かれていたかを示すことには成功していると思う。また、筆者の筆のうまさからか、読み進めるのは楽である。
 
 この株価大暴落がなぜ3年も続いたのか、最終章で⑴所得配分の偏り、⑵企業構造、⑶銀行システム、⑷対外収支、⑸専門家の経済知識、から少し説明している。しかし、なぜ株価大暴落が実体経済へ影響を与え、ひいては大戦の要因ともなる近隣貧窮化政策(通貨切り下げ競争)を向かえるに至ったのか、その説明に関しては米国の社会状況を描くだけでは全く不十分だと感じる。非主流派経済学者でで社会的要因を組み込み、経済を説明することには興味がわく。大暴落以後、世界構造が変化たことを鑑みると、本書内容では、他のバブル(欧州通貨危機や1997年アジア危機、日本のバブルなど)と大暴落がどう違ったのかそれが分からない。
 でもよく考えると、タイトルのThe Great Crashは当たったときの衝撃が如何に凄いかを示唆しており、The Great Depression(恐慌の中身について)とは言ってないのか。
 

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2012年05月23日

Posted by ブクログ

御仕事柄、速読。
1929年の大暴落から証券と銀行の分離や
FRBが機能強化されSECが設置され、預金保険機構が
準備されと、、

内部者取引や空売り規制etc。。

人も進化するわけだ。というか学ぶんだ。
今回のCDS絡みの問題もあったけど逆にそう思った。

最後の「状況は基本は健全である」とこーゆー時期に
人は口にする、的な終わり方はお決まりだね。

最後に、いろいろな原因があるけど国民の所得が
一部に偏るとバブルが発生するのはなんとなく納得。

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2011年08月30日

Posted by ブクログ

市場があやしい雲行きになったときの常套句、すなわち「経済は基本的には健全である」とか「ファンダメンタルズは問題ない」というものだ。この台詞を聞かされたら、何かがうまくいっていないと考える方がいい。

そもそも人間は知っていることばかり話すのでもなければ、知らないことばかり話すのでもなく、知っているつもりだが実は知らないことを話すことが多い。

「夢を失ってはいけない。夢が無くても死にはしないが、もう生きてはいない」マーク・トウェイン

予言を外した予言者は惨めである。外した理由を説明したくとも、その大事な瞬間にもはや聴衆はいない。

人間は確信が持てないときほど独断的になりやすい。

自社株買い>1929年>自分で自分を騙す

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2011年07月01日

Posted by ブクログ

『一九九七年版まえがき』
・最初は値上がりから始まる.株でも不動産でも美術品でも何でもいい.すると世間が注目し,買い手が群がる.買う行為そのものが価格を押し上げ,値上がり期待を現実にする.そしてある日,終わりがやってくる.
・私が言いたいのは,チューリップ・バブルに始まり,この現象は何度と無く繰り返されてきたということだけだ.

『第1章 夢見る投資家』
『第2章 当局の立場』
『第3章 ゴールドマン・サックス登場』
『第4章 夢の終わり』
『第5章 大暴落』
『第6章 事態の悪化』
『第7章 暴落後の日々1』
『第8章 暴落後の日々2』
『第9章 原因と結果』
・大暴落はそれに先立つ投機ブームの中で育まれるが,なぜあのような狂乱ブームが起きたのかはわかっていない.金利や信用供給があっても投機ブームが起きなかった時代もある.それらより重要な役割を果たしたのは,時代の空気である.楽天的でゆるぎない自信.誰も自分に不利や不正は働かないという信頼.貯金が潤沢.

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2010年05月05日

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