【感想・ネタバレ】屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理のレビュー

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人が本来安らぎ寛げる場である筈の「家」は、同時に外部から中の状況がほとんどの場合窺い知れぬが故、往々にして妄想や狂気を醸成、濃縮する孵卵器となる、ということか。

見慣れた近所の家々も……いや、考えるのは止めておこう。

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2023年03月01日

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屋根裏に誰かいるんですよ。: 都市伝説の精神病理。春日 武彦先生の著書。屋根裏に誰かいるという妄想にとらわれている人に屋根裏に誰もいませんと反論したところで屋根裏に誰かいるんですよと言われてしまうだけ。屋根裏に誰かいるという妄想にとらわれている人を頭ごなしに否定しても何も始まらない。屋根裏に誰かいるという妄想にとらわれている人の気持ちに寄り添ってお話を聞いてあげることが屋根裏に誰かいるという妄想にとらわれている人を助けることにもつながるから。精神科医で医学博士の春日 武彦先生だからこその良書。

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2022年10月08日

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ネタバレ

「屋根裏に誰かが住み着いている、そしてそのヒトが時々部屋に侵入して悪さをしていくんです…。」
そんなことを訴える精神分裂症の患者は意外と多いという(驚いたことに、分裂症でも痴呆でもない老婦人にも同様の訴えをするヒトが多いという)。なぜ患者の妄想上の侵入者は共通して屋根裏にいるのか?筆者は本著の中で、屋根裏妄想の謎を解くヒントとして、実際に屋根裏妄想を抱えていた患者の例や本当に起きた屋根裏侵入事件などの事例を沢山紹介している。

以前、部屋のWifiの調子が悪くなり管理会社に連絡したところ「お風呂場の天井の一角を押し上げて通信機の元電源をオフにし再起動してみてください」と言われた。その通りに天井の板を押し上げると、そこには意外なほど広い空間が広がっていた。まずは不気味というよりも秘密基地のようなワクワク感を覚えたのだが、賃貸マンションなのだからその隣の部屋でも同じ構造になっているはずで、つまりはここから容易によその部屋に侵入できてしまうのではないかとゾッとしたことを覚えている(本著では本当に同じ手口で起こった殺人事件も紹介されている)。天井裏とは不思議な空間だ。家の最深部にあるはずで正規の入り口でありはしないのに、なんとなく暗黙の了解で外と繋がっているというか。精神分裂症の患者の妄想を受け入れる場所といえば、家の中でも屋根裏部屋しかないのかもしれない。

孤独に生きるヒトは妄想をこじらせて病的な状態に陥りやすく、屋根裏に侵入者がいるという妄想はその孤独を癒やすための自己防衛本能なのではないかという考察が面白かった。

また、家の中こそそのヒトの内面が現れるという話も興味深い(ゴミ屋敷とかも)。家の中で表現されるその人の狂気が、更に狂気を濃縮させ妄想をエスカレートさせるのだという。
逆の発想だが、最近流行りのミニマリストたちはミニマルな環境に身を置くことによりよりシンプルな考え方に染まっていくものなのだろうか。ミニマル主義がミニマルな部屋の中で濃縮されエスカレートして、これも無駄、あれも無駄、趣味なんていらない、最終的には生きていることも無駄…みたいな思考に陥らないものなのだろうか。なんて、散らかった部屋で考えてしまった。

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2024年02月15日

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乱歩の「屋根裏の散歩者」を再読する機会があり、これを読もうと思っていたが、なかなか時間が取れず、またまた医者に行った待ち合いで読んだ。
非常に興味深い話だった。何処か異常でなければ、ここに書かれるような訴えをすることはないのではあるとしても、沢山建ち並ぶ家々のどこかで、人知れず妄想に悩まされて生きている人々が、屋根裏の誰かを憎みながらも時に親しみすらいだいたりしながら生きているという事実。
つい最近、他の本の感想を書いた折に、様々な家の中で実は起きているかもしれぬ興味深い事象を空想することがあると書いたけれども、そんな空想が行き着いた一種の到達点が、屋根裏に誰かがいるのです、という心理なのかもしれない、と思う。孤独や不安が、不意に見えない存在を立ち上げてしまうのだろう。
家の中に誰かが潜んでいる、という空想は、する分にはなかなかエキサイティングなものだけれども、信じ込むところに至ったら恐怖しかないが、不思議なことに見えない誰かが罪滅ぼしをするために、わりとどうでもいい親切をして行ったと話したり、もてなそうと思ったり、ということには驚くけれども、実在ではない誰かは、ひどい実害を及ぼさないし、作り出した友達のような部分も持ち合わせるのだろう。
一方で、幻の同居人だけでなく、実際に、家の中の誰かだけが知る、実態のある隠れて暮らす人の話も出てくる。認知症の方の話もある。
人間の心の中の不思議を面白く読んだ。

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2023年06月25日

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題名に惹かれて購入した。統合失調症や痴呆になると、稀に幻の同居人が現れることがあるらしい。不安を口にしつつもなんだか馴れ合っているのは意外でした。屋根裏を題材にした小説なども紹介していたが、精神科医として経験した実例の内容が興味深かった。

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2023年03月07日

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江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』の話をちりばめながら、「屋根裏に誰かがいる」という妄想に取り憑かれる人に対しての、精神科医である春日先生の考察など。
「幻の同居人」という表現から、痴呆や妄想に取り憑かれた人の頭の中がよく想像できた。読後、天井裏が気になって仕方がありませんが、強いてそこを開けようとは思わないな。でもその存在を意識するようになったのは確か。それと、実家にも足を運んで両親で暮らす家に、外からの空気を積極的に入れ循環させようと思った。

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2022年10月09日

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●=引用

●幻の同居人の存在を訴える老婦人たちは、なるほど天井に向かって「そこから出ていけ!」と怒鳴ることもあろう。(略)だがそのいっぽう彼女たちには、過剰に侵入者個人を意識するといった点おいても、あまりにも被害内容が生活に密着し具体的である点においても、またどこか危機感が希薄な点においても、さらには迷惑を訴えても恐ろしさや不安感を訴えぬ点においても、なにがしかの屈折した親近感を屋根裏の某へ抱いているような気配を指摘し得るのである。(略)天井裏の侵入者は、実は老婦人の孤独を癒すべく彼女と不思議な交流を実現していると考えることも出来るのである。
●ひっそりと一人暮らしを営む老女たちにとって天井裏を這い回る幻の同居人は、文字通り昔なじみの世界に同化しているからこそ「不気味な」存在なのである。しかもそんな幻の同居人は、彼女たちの孤独救済願望の産物でもある。そのようなパラドクスゆえに胡散臭げな侵入者たちは、どこか老女たちと狎れ合った奇妙なトーンを形作るのだろう。
●おおむねゴミ屋敷の住民は独り暮らしである。(略)自分の周囲に馴染のあるものを集めることで、気持ちの安定を図ろうとする心理が働くらしい(略)ただしそういった心理機制はいつしか形骸化し、しかも歯止めを失ってしまう。
●天井裏は身近にありながら非日常的、そして窃視の欲望を孕んだ闇に支配された「小世界」である。歪んだ好奇心、屈折した全能感、懐かしさ、不気味さ、不健全さ。あるいは生理的不快感、閉塞感、孤立感、意外性、スリル―そのような感情を励起する場所が天井裏であり、しかもそこに孤独および狂気という触媒が作用すれば、たちまちのうちに幻の同居人がたちあらわれてくる。
●わたしは前章の最後において誰の心の中にも「物語の胚珠」が埋め込まれていると述べたが、大原が指摘する「物語になる以前のモヤモヤとしたもの」とは、日常生活における獏とした不安感や違和感が「物語の胚珠」へと働きかけ、発芽させ、くっきりとした形を得ようとしているそのプロセスを指しているのではないかと思うのである。
●彼女は、花瓶の向きがちょっと変わっていたとか、額縁がほんの少し傾いていたとか、置物の位置がずれていたとか、そのような些細な変事から、何者かが侵入して室内を「くまなくさがしまわっている」といった結論を引き出した。通常は錯覚とか勘違いとして忘れ去ってしまうようなディテールに拘泥し、しかも一片の歯の化石から太古に活躍していた巨大な恐竜の姿を思い浮かべるようなたくましい想像力を以て、得体の知れぬ侵入者の実在を主張している。これはまさに、妄想に取りつかれた人たちと共通したロジックなのである。
●孤独は現実感覚を遠のかせ、そのとき心に埋め込まれた物語の胚珠が発芽を始めやすいことは再三述べてきた。おおむね被害妄想的なトーンを帯やすいことは確かだが、ストーリーとしては様々なパターンがある。奇想天外なものもあり、その好例が「幻の同居人」であった。(略)まず孤独によってヒトは現実感覚を失い、やがて日常の中で違和感や不信な出来事に遭遇する。普段なら偶然のこと、思い過ごしと見逃してしまうそのようなエピソードに対して、孤独な暮らしぶりゆえ精神的視野狭窄を呈している病者は過剰な意味をそこに見いだそうとする。おおむねそれは被害感情に裏打ちされ、ひどく通俗的な「物語の胚珠」が芽吹き始める。物語に沿って、病者は論理だった考えを進めていく。もちろんそこにはバイアスが加わり、可能性は必然性にすり替えられ、常識から遠く隔たった結論が引き出される。そしてその結論とは妄想そのものであり、妄想のフィルターを透して見る世の中には、妄想を証拠立てる事象が次々に発見されることになる。

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2024年02月17日

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かなり興味深い一作だった
精神を病んだ人の家族(身近の人)も一種の精神病になり得るという事が恐ろしい
それでは誰がそのサイクルや生活から助けられるのだろうかと思うと、今もそれに気づかないで生活している者は沢山いるんだろうなと思った
ただ自覚症状がないだけで

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2023年12月18日

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いつの頃からか読むようになった春日先生の本。最近は読み終わると、これでもう読まないかも、と思うんだけど、やっぱりまた読んでしまうんだよなあ。

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2023年09月24日

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会社の人からのおすすめで。思ったよりエッセイのような感じ。

精神に疾患のある人がよく言う屋根裏に誰かいるんですよ。をテーマに語られている。
実際にあった事件や昔の話まで(知的障害の兄弟を屋根裏に隠して過ごしている話など)興味深い話もあった。

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2023年06月04日

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日常に隠れている不穏と屋根裏の不気味さを上手く絡めて精神機能にもたらす影響を考察している。屋根裏に関する事件が数多く引用されており、面白かった。人と生活環境を見る時、頭の隅に入れておきたい内容。孤独と不安がささいな偶然、記憶違いで妄想の種を育てる。

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2022年11月27日

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