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Posted by ブクログ
『犯罪』『罪悪』に続く短編集。当初は本書を含めた三部作として構想されていたらしい。
前作および前々作と同様、描写は簡潔で、登場人物の心情はほとんど語られないため、読者の脳内で埋める余白部分が非常に多いのが著者の特徴。
幸せが一瞬のうちに奈落の底に突き落とされるような急転直下の展開が多いが、読んでいて驚くと同時にどこか納得してしまうのは、余白部分を埋めるパズルのピースの取捨選択が恐らく完璧だからで、率直に凄いと思う。
バッドエンドが多いので読後感の良さを求めるのであれば本書は向かないが、緊張感のある読み心地を体験したいのであればおススメの一冊である。
やはりシーラッハは現代を代表する短編作家だと、本書を読んで再認識した次第です。
いずれ翻訳モノではない、日本語ベースで書かれたこういうタイプの作品を読んでみたい。
Posted by ブクログ
初のフェルディナン・フォン・シーラッハ。
短編集。巻末の解説から、実は「犯罪」「罪悪」との三部作で完結作とのこと。失敗しました。
作品全体にだが、余計な文章が全くない。
登場人物の感情がほとんど描かれておらず、その辺りは読み手が推察することになる。
ここまで徹底するのは凄い。
犯した罪と、その罰のバランスが取れているのか、ということが主題だったと思う。
おすすめは、参審員、逆さ、小男、友人。
Posted by ブクログ
止むに止まれぬ心情から繰り出された犯罪の瞬間を描いた傑作短編集。
短い文章で、ことの顛末を描き出す見事な描写に毎回唸るしかない。その犯罪に対して、司法がどのように対峙したのかも描かれる。ドイツの司法制度ではあるが、法の解釈、考え方を学ぶ場にもなっている。
夢中になって一気に読み切った。今のところ翻訳されているシーラッハ作品は全て読んでいる。どの作品も好きだ。
次回作も首を長くして待つことにする。
Posted by ブクログ
久しぶりのシーラッハ。
いつも通り、感情の起伏がない、淡々とした空気感。なのに、内容はやはり衝撃的でした。
でも今回は、なぜかとても文学的な雰囲気を感じて、ちょっと感動してしまった。
私のなかでは、ミステリーではなく、文学だな。
Posted by ブクログ
・感想
シーラッハはコリーニ事件しか読んでないけど淡々とした平易な文章は変わらず。
様々な事件のその罪の在り処と与えられる罰の話。
善と悪とかではなく罪と罰の話ではその「罪」は法治国家である以上は法律によって裁かれ、与えられる罰の量も法律によって決まる。
Posted by ブクログ
刑事事件弁護士として活躍する著者が、罪と罰の在り方を問う12編。
デビュー作『犯罪』、第二短編集『罪悪』に続く短編集3作目。翻訳者さんによるあとがきによると、作者さんは当初から三部作を構想していたそうです。
作中でどんな犯罪を描こうとも、書き方は常に淡々としていて心情描写も薄い。それなのに、何故か心がざらつく読後感。
犯罪と、罪と向かい合う仕事についている筆者さんにしか書けないものがある気がします。
解説でも似たようなことが書かれていますが、釣り合わない罪と罰、理想をもってなったはずの弁護士という仕事の理想と現実、現実のような虚構と虚構のような現実。そんなすべてをひっくるめた現実のやるせなさや心の傷を、文学として昇華し再構成しているような、そんな印象を受けます。
個人的に好きだった話は、『リュディア』。
Posted by ブクログ
持ち歩いて出先で少しずつ読む用に買ったのに、読み始めたらとまらず一気に読んでしまった。
救いのない話ばかりで、どこが面白いのか訊かれても答えられないのに。
シーラッハの事実だけを淡々と描写する文章が好きなんだと思う。
解説を読んで三部作の二作目『罪悪』を飛ばしていたことに気づいたので読まなければ…。
Posted by ブクログ
やや星新一のようなブラックな読後感の短編集です。
こちらはSFではなく、ミステリですが。
人を殺した、という「罪」を抱く人々が裁判を通して「罰」を受けるというのが法治国家の当たり前の姿ですが、証拠として揃ったものから論理的に判断しているようにみえても、巧妙に真相が隠されていたり、罪を被った人が実は騙されていたりと、複雑な人間模様が濃縮された作品集です。
荒唐無稽な設定はなく、淡々と描かれる登場人物の描写にはリアリティがある一方で、やや「盛り上がり」に賭ける部分があるかもしれません。
イメージでいうと、どの作品も「どんよりした雲り空」のような雰囲気で、不快ではないし雨が降ったようなしんみりとした気持ちにもならないが、かといって楽しいわけでも心地よいわけでもない、というような感じでした。