感情タグBEST3
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一人の男性の不倫から生じた波紋を 彼に関わる人々をそれぞれ主人公とした六編のオムニバス。
主人公達は波紋に過剰に反応し踠き苦しむ。回避した者も呑み込まれた者もいる。恋人や家族の絆の儚さの冷淡な表現が巧み。
評価が分かれ気味の作品のようですが、各章とも独立した短編として完成していること。ラストの家路に含ませた儚い危うい希望が好みで高評価。
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えっこれが三浦しをん?
ととてもびっくりした。
まほろ駅前とか神去なぁなぁの印象が強かったので。
ああいうほのぼのした作品の裏にこんな一面があったなんて。
前なにかのインタビューで高校の時、お父さんとバスの運転手としか異性と話さなかったみたいなエピソードもあったので、あまり恋愛というか性愛の印象もなかったので。
この本の主人公、村川融のように、三浦しをんもまた色々な角度からみた物語があるのだろうと思った。
この作風から変わっていった経過が知りたいなと思った。
ひたひたと満潮になる静かな水みたいな小説でとても良かった。元々金原瑞人さんのエッセイで勧められていて読んだのだが、そして解説にある通りなのだが、一文一文が美しいと思う。
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何故かモテる大学教授を好きな女性たちの連作短編集
以下、公式のあらすじ
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私は、彼の何を知っているというのか? 彼は私に何を求めていたのだろう? 大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘――それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか……。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編。
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収録は以下6編
結晶
残骸
予言
水葬
冷血
家路
古代王朝の研究をしている村川教授
彼は何故か女性にモテる
そんな大学教授を好きな女を間に挟んだ男達視点の連作短編集
妻、浮気相手、義理の娘、娘
彼女らを介して見える不思議な村川像
読み終わってみても「よくわからない」という感想
どう読めばいいのかわからない
感情をどこに置けばいいのかわからない
村川という人物の輪郭が見えない
同一人物を表しているとは思えない描写がいくつかある
人によって、特に女性によっては彼の見え方が違うのだろうか?
何故村川は彼女らにとって魅力的に映るのだろうか?
再婚相手とその義理の娘
本当にそんな対立があったのだろうか?
それに対して村川は何をし、どう思っていたのか
そこは想像するしかないわけだけれども、何とも怪しいものを感じる
モテる男が出てくる小説といえば、川上弘美「ニシノユキヒコの恋と冒険」を思い浮かべる
でも、あっちはプレイボーイ然としたところがあるので納得感がある
でも、村川の場合優男ではあるが、それがモテる理由かと聞かれるとそうでないようにも思える
今作をより不思議なものにしているのは、村川を好きな女性視点ではなく
その女性に関わる男視点で描かれているところ
うーん、やはりよくわからないなぁ
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さて、突然ですが、あなたは次のような言葉を聞いて話題に上がっている一人の人物をイメージできるでしょうか?
・『村川はいい加減ですが不真面目ではない』by 妻
・『父は決して偉ぶることがなかった』by 息子
・『本ばかり読んで、夢見がちで自分勝手な男』by 義理の娘
・『先生はさびしくて繊細』by 浮気相手
それぞれの関係性から見た同一人物を表したこれらの言葉は、一見同一人物を表しているようにもそうでないようにも感じられます。
私たち人間には、さまざまな顔があります。悪い意味での表と裏ということではなく、それぞれの関係性に合わせた顔という意味です。そこには、長く一緒にいればいるほどに見えてくるものもあるでしょう。付き合い始めたばかりの恋人、初めは良いところばかりが目に入って熱を上げたものの、次第にマイナス面が目立ってきて結局別れに至る、そんなことは決して珍しくありません。また、本人が意識して特定の人の前ではある理想の姿で振る舞っているという場合もあるでしょう。その場合には、正体がバレてビックリ!という未来が待ってもいるかもしれません。人というもの、その人の本来の姿というものを理解するのもなかなかに大変です。
さて、ここに、一人の大学教授が影の主人公となる物語があります。妻と息子、娘の四人家族だというその男性は、やがて浮気相手とその子どもの元へと去ってしまう…そんな前提の物語が描かれるこの作品。そんな男性とさまざまな繋がりにあるさまざまな人物が視点の主を務めていくこの作品。そしてそれは、そんな大学教授に一度も視点が移らない中に、そんな人物の存在が読者の頭の中に徐々に浮かび上がっていく物語です。
『奥さん、いかがです。思い当たることがあったら、どんなことでもおっしゃってください』と、『ついに焦れて』『言葉を発した』のは、この短編の主人公・三崎。『それでも口を開く気配は』ない彼女に『思い当たることは…』と再び言葉を発すると、『たくさんありもするし、なにもないとも言えます』とようやく彼女は言葉を発しました。『彼女に会うのは、数年』ぶり、『もう五十に手が届く年齢』という彼女は『村川はなんと言っています?』と『私の持参した紙を手にとって』続けます。それに、『先生は何もおっしゃいません』と三崎が言うと『三崎さんもご存じでしょう… 私が村川の数ある女の一人になっていることを』と返されます。『どう答えたものなのか』と三崎は逡巡しますが、『先生はいま、非常にまずい立場に追いこまれています。その手紙…怪文書のせいで』、『このままでは先生は、大学を去らねばなりません』と続けます。それに『三崎さんも大変ですね… 村川の私的な厄介事のために奔走して』と言う彼女は『村川が大学を追われたら、あなたの学界での出世にも響きますか』と三崎の立場を気にかけます。『先生がいなくなったら、いまの大学で僕が講師の職に就くことは難しくなるでしょう』と返す三崎。そして、三崎は『滲んだインクで綴られた』便箋を開きます。『大学関係者ナラビニますこみ各位。○○大学文学部歴史学科東洋史専修専任教授村川融ハ教育者トシテフサワシカラヌ人物デアルコトヲココニ告発スル…』と始まる便箋には『修士課程二年倉橋香織ト一年半ニワタリほてるデ兎ノゴトクマグワイ続ケタ…』と綴られていました。『数社の週刊誌にこの手紙のコピーが送られて』いることを告げる三崎は、この手紙を書いた主が誰であるかの心当たりを村川の妻に尋ねに訪れたのでした。そんな中で、彼女は『太田春美を知っていますか』と『意外な名前』を持ち出します。『太田さんは、結婚しています』と言う三崎に『私だって村川と結婚しています』と返す彼女は、『ほたるが盗み撮りした写真です』と、『昼下がりのホテルのロビー』を写した写真を取り出しました。さらに、彼女は『カセットテープを取りだ』し再生すると、そこからは、村川と女性の声が『衣擦れとベッドの軋み』とともに聞こえてきました。太田春美だと思われるその声。そして、彼女は『村川と私のあいだで離婚の話が進んでいることを知って、太田春美はこの時期に告発文を書いたのだと思う』と語ります。それによって『地位を失った先生を手に入れ』、『この町を去る覚悟なのだろう』という太田の考えを推測する三崎は、『あなたは悔しくはないですか』と彼女に問いかけますが、そこに『涙の影』はありませんでした。そして、『手紙は太田春美が書いたのだ。私は太田春美を訪ねるだろう』と思う三崎の姿が描かれる冒頭の短編〈結晶〉。各短編に名前のみ登場する村川融の妻が語る村川の人となりを朧げながらに知ることのできる好編でした。
“「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編”と、内容紹介にうたわれるこの作品。2004年5月に刊行された三浦しをんさんとしては最初期の作品の一つです。この時代の三浦さんは、主人公の翻訳家が訳す、はちゃめちゃな物語が”小説内小説”として登場する「ロマンス小説の七日間」や、”昔話”をコンセプトにしてそれを下地にした物語が創作されていく「むかしのはなし」、そしてBL世界を匂わす「月魚」など、実験的な作品が多々生まれています。そんな後、2006年には傑作「風が強く吹いている」が登場することを考えると、三浦さんの試行錯誤の時代だったのかなとも思います。そして、この作品にもそんな色彩が色濃く登場します。それが、物語の冒頭に唐突に記された『二千年以上前の話』です。
『寵姫が臣下と密通していることを知った若き皇帝は、まず彼女のまぶたを切り取った。これから自分がどんな目に遭うのかを、彼女がしっかりと瞳に映せるように』。
そんな風に始まる物語の内容は衝撃的です。『彼女の体中の穴という穴を、縒った最上級の絹糸で縫いあわせた』、『皇帝は、まぶたと舌を失い、穴を塞がれた女を、それまでどおり豪奢な部屋に置き、着飾らせておいた』と続く物語は、どんどんホラーな表現がキツくなっていきます。選書ミスをしたか?と冷や汗が出だす中に、いきなり『奥さん、いかがです。思い当たることがあったら、どんなことでもおっしゃってください』とこの短編の主人公・三崎の何のことはないセリフの登場によって現実に引き戻される読者。しかし、そんな強烈な印象は後を引きます。また、冒頭の物語が本編にどう関連するのか?その答えを読者は探しますが、明確な繋がりを見つけられない中に、物語は、謎の存在とも言える村川融という人物への関心に移っていきます。とは言えこの短編〈結晶〉には、冒頭の物語の世界観を引きずる文体が多々登場します。この短編で主人公を務める三崎が太田春美という存在の登場を妻に匂わされたことから戸惑う場面の描写を抜き出してみましょう。
『私の心は、何万年もかけて生成された氷柱に貫かれたかのように痺れた』と強烈に始まる一文は、『憎しみも恨みも凍結され、絶対零度で細胞を灼かれる痛みのみが、遠い宇宙から降り注ぐ電気信号のように私の神経にかそけく届く。私はもう泣くことも叫ぶこともできなかった』と、三崎の心情を劇画調の表現で描写していきます。『彼女にすがりつき、泣きながらこの絶望を訴えたい』と言う三崎は『私の四肢はむなしくソファに沈んだままだった』と自身の姿を俯瞰します。他にも『彼女は噴きあがる熱気にひるむことなく、かげろうのごとく摑みどころのない体と心で、業火の中にたたずむ』や『私は、蠍のように研ぎ澄ました毒の滴る針をもって、太田春美の言葉を殺す。そこに真実はないと断じるのみだ』といった、とにかく劇画調の表現の頻出は間違いなく、この作品を読み始めた読者を戸惑わせます。しかし、ご安心ください。この表現はこの短編〈結晶〉のみです。物語は、二編目以降別物に読みやすくなっていきますのでくれぐれもこの短編の途中で”挫折”されないようご注意ください(笑)。もちろん、こういった表現がお好きな方には逆にたまらない短編だと思います。
そんなこの作品は六つの短編が連作短編を構成しています。そして、そんな六つの短編全てに登場し、物語を一つに繋げていくのが大学教授、村川融(むらかわ とおる)の存在です。六つの短編はそれぞれに視点の主となる主人公が登場しますが、六つの短編全てに登場する村川融に視点が移ることはありません。そうです、この作品は影の主人公・村川融に何らかの関係を持つ人たちがそんな村川融の存在を匂わせながら、それぞれの人生を語っていく中に物語が展開していくという体をとっているのです。似たような体裁としては、川上弘美さん「ニシノユキヒコの恋と冒険」、柚木麻子さん「伊藤くんA to E」があります。これら二作品は書名に影の主人公の名前まで登場させるこだわりを見せます。一方で三浦さんの作品では『彼』と匂わすところにミステリー感が漂います。
では、六つの短編タイトルおよび視点の主と関係性、そしてそこに語られる村川融という存在、さらには印象的に登場するこだわりの存在をまとめてみましょう。
・〈結晶〉: 三崎(大学の研究室の助手)、『村川の魅力は、ある種の女にはたまらないもの』、『村川の専門でもある、古代の朝廷』、『村川の誕生日は、二月四日』、『村川はいい加減ですが不真面目ではない』、『エゴイストですがロマンティスト』
※こだわり: 二千年以上も前の話
・〈残骸〉: 賢司(浮気相手の夫)、『先生はさびしくて繊細』、『村川は哀れで愚かな男』、『口当たりのよい夢の果実ばかりを求める』
※こだわり: うさぎ
・〈予言〉: 村川呼人(息子)、『世の中のなんの役に立つわけでもないのに、古代の中国について調べ続ける父をすごいと思っていた』、『父は自分の脳みそと研究にかける情熱だけを頼りに、俺たちを食わせていた』、『父は決して偉ぶることがなかった』、『父はなんで俺たちを捨てたんだろう』
※こだわり: バイク
・〈水葬〉: 渋谷俊介(義理の娘の隣人)、(義理の娘の)村川綾子は『週に一度は父親宛に手紙を書き、これまた週に一度、必ず父親から返信が届く』
※こだわり: ぬか漬け
・〈冷血〉: 市川律(義理の娘の婚約者)、『本ばかり読んで、夢見がちで自分勝手な男』『あなたは冷たいところが父と似てる』
※こだわり: 化学
・〈家路〉: 三崎(大学の研究室の元助手)、『先生にかかわる女たちは、時を止める魔法を知っているのかもしれない』、『だれもが、先生に一番愛されたのは自分だと競いあった』、『先生は女たちに愛を求め、女たちは先生を愛した。だが、先生を理解したものはなく、先生に理解されたものもいない。だれ一人として』
※こだわり: 徘徊老人のアナウンス
義理の娘の隣人という予想外な人物まで登場させて物語は予想外な内容に展開していきます。しかし、影の主人公・村川融に関する描写は当然に関係性が近い人物の登場回の方がより具体的です。上記で抜き出した表現だけ読んでもどことなく村川融という人物が思い浮かんでもきます。物語は、そんな村川融という存在によって人生が何らかの形で影響を受けていく様が描かれていきます。そして、それは短編の中でその展開が匂わされてもいくため、ある短編を読んだ読者は、前の短編の結果が、その短編に登場する主人公にこんな影響を及ぼしたんだということが朧げながらに伝わってきます。そして、最後の短編〈家路〉で全てが決着し、『彼』=村川融という存在の大きさを感じる中に物語は幕を下ろします。
“私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう?”
人というものは、誰であれ、その存在によって他の人に影響を及ぼしていくものです。この作品では、村川融という存在が彼の人生に何らかの形で関わっていくそれぞれの主人公たちの人生に影響を及ぼしていく様が描かれていました。短編ごとに語られていく村川融の存在が短編を経るごとに大きくなっていくのを感じるこの作品。短編ごとに『バイク』や『ぬか漬け』、そして『うさぎ』などを短編世界に意味を持って登場させることで、物語に不思議と深みを与えていくのを感じるこの作品。
美しく綴られていく物語の中に、今の三浦しをんさんらしさに繋がるこだわりの感情を見た、そんな作品でした。
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人生、愛が全て、というわけではないんですが…。とりあえず彼の周りの人間の嫉妬心が凄すぎる。ここまでの男の人っていったいどういう人なんでしょうか??
自分は渦中には絶対に入りたくない。でも、小説として読むのには、好きな感じ。
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NTRである。
だがちょっとまって欲しい。過去の古典作品にはNTR要素がよく出てくるのではなかろうか。しょっちゅう他の旦那の妻を奪ったり。
いやしかし本作では大学教授である。こいつが暇な主婦を捕まえるわけだけど、冴えないオッサンという設定がまたイカす。男性陣から見ればNTR要素としてというか、M要素である。
そんなどうしようもない男どもの様子を見ながら、ハラハラ・ドキドキするのが本作の楽しみ方であろう。
最後の三崎くんのナルシストっぷりも最高である。NTR要素抜群で、家に帰って高校生とやってるところに遭遇するのが吉であろう。
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まず、結婚に対してまた疑念が増えた…果たしてどうしたら長く良好な関係を築けるのか、謎だ。
愛のあるときも、嫉妬に溺れるときも超えた先にしずかな美しいものが残る。人の気持ちは完全に手に入ることはないし、理解することもできない、自分だけの痛みと記憶だけが誰にも取られずにいられるってところが刺さったな。息子の心をほんわか包んであっためた椿くんがいいキャラだったな!教授の妻がだす空気感とか雰囲気、セリフがすごい好き。惚れちゃうと思う。三崎さんよく耐えたな。
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事実はひとつ、真実はひとつじゃない。一人一人の人生のドラマに目を向けたい。
1人の男性村川を取り巻く、周囲の人、妻、浮気相手の旦那、再婚相手、実息子、再婚後娘、等それぞれ目線の物語。取り巻く女性達は村川の不貞を知りながらも、それを理解した上でも愛してしまう。
村川のような男性は、常に自分が人生の主役。「女のために全てを投げ出す自分の役柄に夢中」と奥さんが彼をいうように。生涯自分が一番幸せな道を選び続けていくことは、どこか羨ましいと思いながらもやはりできないなと思った。だからこそ皆村川のような生き方を批判しながらも心のどこかで羨ましい思いがあり、引き込まれる女性、振り回される男性がいるのか。
しをんさんの作品はどれも文体、表現に引き込まれるものがある。単なる簡単な「辛い」「悲しい」の言葉では完成されない。しをんさんの文章だからこそ、重いけれども引き込まれてしまう作品ができるのだと思った。
◼️印象深い文章、表現メモ
いい加減ですが、不真面目ではないのです。
責任を負うことはしないけれど、義務は己に課します。エゴイストですがロマンチストでもあります。
無邪気に愛を集めて喜び、冷え冷えとした魂を腹に隠しながら何食わぬ顔顔をで生きる
私のうちにある汚いものひどいものを突きつけられる
屈辱を闘志にかえ、どんな手段を使っても女を排除する
愛の言葉を麻酔に捕食されることを是とする。女のために全てを捨てる役柄に夢中
事実はひとつ。真実は複数ある
夫をいつ撮られるのか、猜疑心の塊になって暮らす日々
理解がないところに愛は生まれない。
だが確かに愛があると思っていた場所に後から理解の及ばない空白が出陣したらどうしたらいい?
目には目を、歯に歯にをというのは、強者の理屈だ。
変わってしまうことではなく、変化に対応する意志を無くしてしまう日がくることが
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三浦しをんは「舟を編む」「風が強く吹いている」という作品が有名で、森絵都のようなさわやかな文章を書かれる方だというイメージがあったので、そのイメージが大きく覆った。
老いた大学教授、村川融を巡る、それぞれの独白からなる作品である。
しかし、独白によって構成されている多くの作品(※といっても湊かなえ著の作品以外出会ったことがないので、湊かなえ作品だと言い換えても問題ありません。)と違う点は、全く騒動の全貌が見えてこないことだ。
それもそのはず、各章で語り手となる人物は、中心となる大学教授とどこかで繋がりがあるということが共通しているだけで、繋がりの強さは家族から全くの赤の他人まで幅広い。そして語り手の語っている時代までもが幅広く設定されている。
したがって、先程『騒動を巡る作品』と記述したが、どちらかというと騒動の基となる大学教授のことをどのように見ていたか、そしてどのように感じていたか語り手の視点を通して知るという作品に近いのではないかと思う。
全編を通して、良い意味で全く何も分からなかった。
ただ、中心となる村川融がここまで人を魅了し振り回すことができるのがすごい。作中に何度か村川の魅力が語られるシーンが出てくるが、自分は全くその魅力が分からなかった。
一方で、確かにこういう人を好きになる人がいるのはわかる。趣も何もあった表現ではないが、村川は俗に言うだめんずなのだと思う。
このような人の魅力に振り回されるのも、人生のスパイスとしてある意味楽しいのかもしれない。
そしてこの作品の一番の魅力は、三浦しをんの描写力が光っていることだ。
ここまで人のもやもやとした形にならない心境を、感情を、温度を、空気を、描写できるだろうか。
語り手の視点を余すことなく伝えることができる描写力は、変態的で官能的であるとさえ感じた。
ある章でうさぎが登場するが、この物言わぬ無力なうさぎがとても可愛らしく、記憶の中のうさぎとは別の生き物なのではないかと思わせるほどに官能的だと感じさせられた。
彼女の他の作品は私の思っていたようなさわやかな作品が多いようなので、今度はその中で彼女の光る描写力を楽しみたいと思う。
しかし欲を言えば、彼女のうさぎを官能的と思えてくるような作品も再び読んでみたいという気持ちもある。
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最初はばらばらの短編小説集かなと思ったのだが、話が様々な視点で進んでいき、繋がっていく。繊細な心理描写とスピード感のあるストーリーが同居している。こういうジャンルの小説は 三浦しをん ならでは。
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「彼」・古代中国を研究している大学教授村川融をめぐる男と女の物語は、連作短編という形をとりながら、全て読み終わったあとは20余年にわたる長編小説を読んだような充実感で満たされる絶妙の構成となっている。
そのうえ、一つ一つの短篇の完成度が恐ろしく高い。
どの話も静かに始まり、終盤に向けて大きなカタストロフィを迎え、収束する。そのエネルギーがすさまじくて、物語にぐいぐい引き込まれる。
「彼」の妻や息子、不倫相手、その娘など、関係者それぞれが抱えた闇に焦点をあてた個々の短篇では、恋愛、家族、友情といったあたりまえの人間関係のはかなさや、頼りなさが描かれている。
どのページを開いても、お気に入りのフレーズが見つかるほど言葉の魅力にもあふれた作品で、「予言」は特に優しくて、切ない最上の短編。
この作品、「風が強く吹いている」や「舟を編む」のような爽やかさとは対極にあるものの、こういうのをもっと書いて欲しいな~とつくづく思った。
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何故か女性を惹きつける村川教授。彼をめぐる女性たちは彼の存在によって人生を狂わされた。そしてその女性たちとなんらかの形で関わる男性たち。全体を通して暗い小説なのですが、ページがどんどん進みました。
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人間の孤独を救うのは、愛する事よりも理解される事の方が真実なのかもしれないと感じてしまった。様々な立場の孤独や喪失感。通り越して救われる者もあれば、取り憑かれたままの者もいる。
この人の小説は、言葉選びがとても綺麗だ。好きな小説だった。
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好きな作家さんなのでそこそこ読んでいるつもりでしたが、初期の作品である本作は未読でした。読んでびっくり、著者のこんなに暗い作品は初めて。私にとっては「若干乾いた桜木紫乃」といったイメージです。
お世辞にも色男とはいえない、見た目はまるで肝臓を悪くした狸なのに、なぜか女を惹きつける力が半端ではないらしい大学教授・村川透。彼を告発する手紙が大学とマスコミに送りつけられたことで、人生が一転した人々を主人公にした連作。連作というのは巷にもあふれていて珍しくはありませんが、主人公の選び方が面白い。6編の最初の語り手は村川の助手で、村川が辞職に追い込まれれば自分の将来にも暗雲がもたらされると危惧しています。そんな彼が告発状の主を突き止めようと、村川の妻を訪ねるところから本作はスタート。2編以降の語り手は、自分の妻が村川と不倫関係にあると知ってしまった男、村川に捨てられた本妻の息子、村川の再婚相手の娘の動向を調査することになった若者、村川の実の娘の婚約者、そして最後にもう一度、最初の助手が語り手となります。光が感じられる話は少なく、こんな三浦しをんもいるんだと新鮮でした。
村川のよさについては理解できないのが残念。彼には信じられない数の女がいて、そのうち再婚相手に選ぶのは「こんな女性にならばトチ狂っても仕方ない」と思えるような相手ではありません。ただただ情念に駆られた女性で怖いだけ。いろいろと理解できないことだらけなのが余計にありそうだからより重く心に刺さります。この三浦しをんも好みです。
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不倫を繰り返す大学教授の周りに生きる人たちが主役の連作短編
そこに描かれるのはドロドロの熱情ではなく、虚ろな執着と少しだけ熱を残した諦念であるように自分は感じた
文章がとにかく良い
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村川という教授?先生?に関わる人たちの短編集でした
全ての話に出てくる村川は同じ人物なのか時間軸が違うので少し分かりにくかったです
初めに感じたのは村川はなんて勝手で酷い男!色んな人を不幸にしてる!
とも思いもしましたが、逆に色んな人に愛されもしてるんだと理不尽さも感じ、そういう生き方も良いのかもと思いました
水葬で綾子があっけなく海にのまれたのも驚きでしたが、一番好きなのは何となくしこりを感じる様な残骸でした
三浦しをん作品をもっと読みたいと感じる作品でした
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三浦しをんさん初読みだったかも。不倫を繰り返す大学教授とその不倫相手たちに振り回される人々を主人公に書かれています。不思議展開も多く、あまり好みではなかったです。息子さん視点の話が一番良かったかな。他の作品も読みたいとはあまりならなかった。
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2005年(第2回)。9位。
かっこいいわけでもない大学の先生がモテる。女性がいっぱい寄ってきて、妻子を捨てて、子持ちの女性と新家庭を気づく。そして誰も幸せにならなかった。
を、先生に関わってしまった人々の視点から見る小説。捨てられた妻子も、新家庭の誰も幸せじゃない。唯一、先生の助手は、それではいけないと気づく。
結婚して二人でいると閉塞する。子供作って家族作らないと閉塞する。あーあーあーあーあー
な感じで、物語を楽しむというより、作者の言葉(うんちく)に膝を打つ小説。そして助手は気づいてよかったと思う。
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この本を読んだときに唐突に思い出したのは、「桐島、部活やめるってよ」だった。物語の中心である桐島、(私が語りはじめた彼はの場合は村川融)について、周りの登場人物たちの描写からしかわからず、その主観は語られることなく、物語が終わっていく。
それと独特な表現。何かを表現するときの、〜のような〜といったような個性的な表現がとても気になった。三浦しをんさんは女性だそうで、男性視点からの物語だったが、男性の自惚れている様子や自尊心高めな様子、ああ、女性からみた男性はこういう風に考えられている、そしてそれは合っている、と思わざるを得なかった。
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重い。救いもない。
不倫からの家庭崩壊が子どもに落とす陰。
奪い取った妻の座。故に次は奪われるかもしれない立場になり、心からの幸せは得られなかった。
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人間のどろっとした感情が描き続けられ、飲み込まれるように読み終えた。うまいくて面白くて、なのに、その感情を凌駕する気持ち悪さをここまで緻密に美しく描ききれるのがすごい。
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いつ、「彼」が出てくるのかしら?と
私の中で「彼」がだんだん形成されつつあったのに、終いまでいってしまった。
「彼」自体は、語ることのないままで終えて、座りの悪さを感じた。まるで、御斎の食事のような。
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人は、人と関わることで喜びも見出すが、怒りや憎しみや悲しみも、同じくらいの大きさで見つけてしまう生き物なのかなと感じる物語でした。連続短編なので繋がりがありながらも、各章で主人公が異なります。どの物語も、冷たい石を抱いて眠るような、冷え冷えとしたある種の心地良さも感じます。悲しみに焦点を当てている話が多いように思えたので、個人的好みという意味で星は3にしましたが、ハラハラする展開もあり、読後感にこれ!というものを求めていなければ、星の数は気にしないでください。
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三浦しおんということで、また購入。文体は相変わらず読みやすい。一気に完読した。まどろこしい言い回しなどしない自然な完成された書き方である。しかし多田便利店や舟を編むのようなユーモアあふれる軽快な作品とは程遠かったのはいささか期待はずれだった。オムニバス形式の短編集であったのも大きな違いか。だが一人一人の心情を細かくかつ曖昧に表現した話は、どこか現実感がある。一見それぞれの話は独立しているが一応時系列になっていて、登場人物も重複するので、あまり混乱することはない。登場人物の人物像や性格もいわくつきな過去話や会話の口調でよく表現されていて想像しやすい。どの人物もその後が気になる終わり方である。
結局先生自身については行動や台詞などあまり語らせず象徴的な登場に限られたため、主人公であるこのモテる研究者の具体像は掴めない。他の登場人物が先生の本意を一時あれこれと想像してみるが、これからの各々の人生の中の優先事項、幸福を追求する過程で、先生のことは重要視されなくなっていくだろうと予想できる。それこそ、それぞれが過去を受容し探していた何か、人生の価値に気がつくために先生は存在していて、気がついてしまった語り手たちにはもう先生という象徴が必要ないようである。
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取り立ててどこが良いとも言えないような、妻子を持つ教授が複数の愛人から取り合いをされる。教授は主人公にならずに、あくまでその周りの話。
人のものを盗ると、つぎは盗られる恐怖におびえることになる。最後までモヤモヤした気持ちで終わった。
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ひとりの大学教授の浮気や再婚や死を巡り家族やその周囲が語る。受け取りが甘くて読み終えてもこういう話と説明し辛い。馥郁たるふくよかさみたいなものに満ちていて、薄暗い仄灯りのようで、気付けば引き込まれ作品世界の水にどっぷりと浸るみたい。詳らかにし切らない奥ゆかしさ。自殺に向かう義理の娘が特に印象深い。
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あることがきっかけで人から紹介された本だ
真実は一つではない
それは私自身、このまだまだ少ない人生経験からも実感しているところだ
この話はある一人の男が中心になっているが、その人が直接物語に登場することはない
その人が登場するのは誰か別の人が語っている「彼」であり、他の誰かから見た「彼」である
話が進むにつれてだんだんとぼんやり「彼」はかたち作られていくが、はっきりと形になることはない
最初は推理小説のような話なのかとも思ったけど、明確な答えは用意されていない
あるのはただただ、いろいろな人が語る真実だ
男女のどろどろとした話なのに、客観的でどこか遠くからみているような物語の視点、それがとてもリアルで現実味を帯びているように思った
三浦さんの本を読んだのは初めてだったけど、人の感情の量り方がこわいほどに上手い方なんだなと感じた
この本を手に取ることになったきっかけを思うとなんとも言えない気持ちになる
結局は人から見た事実が真実になる
いろんな状況証拠を比べて合わせて、こうだったんだろうと溜飲を下げることしかできない