感情タグBEST3
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そっち側が主人公なんだと
焦点のあて方の素晴らしさ。
どうしてこんなにリアルに書けるのだろう。
上から目線や揶揄することも否定することもなく同じ視点で書き続けられること。
エンタメ小説としてのレイヤーだけじゃない時代背景やコロナ禍という社会も織り込んで読みやすい本。
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表題作は妻の友人宅で開かれたホームパーティーにて突如始まった、主人公の不倫追及の会を描いた短編である。
表題作をはじめ、様々な人の闇や毒をドライに描いた短編集。
文体はかなり独特。現代的な話し言葉のような文章で、絵文字が使われてもいる。
どの短編を読んでいても、今の時代こういうことってあるのかもと思えるリアリティがあった。
今作の短編の多くはコロナ禍を描いており、文体や内容、登場人物のドライさも含めて「令和」という今の時代をリアルに切り取った一冊のように感じられた。
あらすじは楽しい話ではないのに、登場人物たちのユーモアある発言や各主人公の心の声に笑ってしまうことが多々あった。
共感できる登場人物はほとんどおらず毒々しい話ばかりなのだが、笑えることも多かったためか読後感は悪くなく、むしろ自分の代わりに毒を吐き出してくれているような、爽快感すらあったように思う。
激しいロックの曲を聴いてスッキリするのと近い感覚なのかもしれない。
色々なことが嫌になって自分の中に毒が溜まったたときに読み返してみたいと思う、不思議な作品であった。
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お!も!し!ろ!か!っ!た!!!!
「眼帯のミニーマウス」は主人公の女の子が強くて最高だった
綿矢りさ明日カノ読んで自分も書きたくなったんかな!?!?と思ったけど、そもそも令和というこの時代を書き残しておこうと思ったらこういう話になるのかも。おもろい。
「神田タ」はイケメンYouTuberの話かと思ったら結構ムサい系??だったので「えー!こっち系でも粘着ファンっているの!?!?」と衝撃だったが、現実でもそんなんばっかだよな
「いやここリアコ勢いないでしょwww」ってとこにもいるよねリアコ勢。恋愛は自由。放火は犯罪。
「嫌いなら呼ぶなよ」はもう!!!もう!!!!
私はこういう、「自分は上手く立ち回ってますよ」的な、「僕が女好きなわけじゃなくて女の人が僕を放っておかないんですよね」的な、自分にやたらと自信があって自分の非を一切認めなくてみたいな男が本当に本当に心の底から気味が悪くて気持ち悪くて死ぬほど嫌いな部類なのでラストでスッキリした。
現実にもおるよねこういう、「感情的になるのって恥ずかしいことですよ」みたいなタイプ。きっしょい。相成らん。だってこいつしれっと不倫してませんとかって嘘ついとるからな。ありえへん。自分を守ることばっかり考えとる。自己愛のかたまり。そんなん中学生で終わらせとけや。読んでてほんまスッキリした。スカッとジャパン物語。
「老は害で若も輩」は声だして笑った。おもろ。わろてまいます。
ラストの「うわーーーーー!!!!!やってもたーーーー!!!!」な終わり方も大好き。時間戻ってほしいね。
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文体が痛快ですごく気持ちのいい本だった。なんかノリがリアルで読みながらニヤニヤした。特に眼帯のミニーマウスは若者の思考感っぽいのが面白かったし、ぴえんが区切りに使われてたのが可愛い…特にタイトルとかやけど、言葉選びが最高。けみおの本とか読んでる時のそうやってこれ表す?!気持ちいい語幹ってゆうかいい言い回し!ってなる感覚に近いものを感じてうわ〜そうきたかっていっぱいなって楽しかった。
Posted by ブクログ
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嫌いなら呼ぶなよ
綿矢りさ
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SNS、整形、コロナ、不倫、ストーカーとか現代人が抱える闇を書いたらしい
全ての話の主人公に共感はできませんでした!
中々ぶっ飛んでる主人公ばっかやったな
本読んでて感情移入バリバリする派の私にとって、なんでそうなるねんって思っちゃうような事ばっか起こってて、それはそれで面白かった
やっぱ世界には色んな人がいて、私とは全然違う考え、行動してるんやな〜と小説読むと思う
全然知らない世界に触れられるのが小説のいいところよな
綿矢先生って、私の中では、主人公は割とまともでその周りの人に振り回される話が多い気がするけど、この本は振り回す側の人間やったな
Posted by ブクログ
4篇の短編はどれも、共感ポイント低かったけれど、中でも最終話の、老は害でも若(じゃく)も輩(やから)では、30〜40代で老害と扱われることと、若輩者が酔った勢いでやらかしちゃったなぁ、メールの失敗…これが1番ありそうなことかな、と思った。
Posted by ブクログ
深い感情を軽快な言葉で綴る。笑いながらチクッと刺すような心地よい刺激がある。4編目のメールの攻防があるある。やってしまうんだよなメール攻撃、って。やっぱりセンスあるなぁ、この方。
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現代人、令和の時代を生きた人間だからこそ、今しか書けないと思われる短編集。
現代を生きる人間の戦い方を学べる一冊。
“眼帯のミニーマウス”
整形女子 vs 整形ポリス
ゴスロリファッションの女の子。街でよく見かけるが関わったことがないため、何を考えなんでそのファッションになったのか気になると思っていた。令和の時代じゃなければ描けない描写が多かったことが印象に残っている。
私は整形に対して悪いイメージを持っていたが、前を向くためには必要なことかもしれないと思った。
“神田夕”
YouTuber vs 粘着ファン
YouTubeにコメントを入れる人の心情があまり分からない。アンチコメントを入れる人の気持ちはもっと分からない。
この作品を読んで、粘着ファンだからこそアンチコメントを書くんだなと感じた。粘着ファンの気持ちは意外とシンプル。自分の手元から解き放たれて、有名になってしまった推しに振り向いてほしいのかな。
“嫌いなら呼ぶなよ”
不倫夫 vs 妻の友達
不倫する人って寂しさがあるんだなと感じた。不倫でしか埋められない溝のようなものがあり、その溝を埋めるために不倫をするんだな。ただ笑い事では済まされない様相が描かれていて、リアルさにドキッとした。
“老は害で若も輩”
綿矢 vs ライター vs 編集者
女社会でもまれる男の縮図を感じた。
仕事の関係上本音を言えないのは仕方ないとは思うが、言いたいことわ言い換えて丁寧にしても伝わる内容は同じということを感じた。
共通の敵を持つことは簡単な結託の仕方だと改めて感じた。ビジネスの場でも使える。ただし、根回し的な部分を失敗すると復讐されやすい。
お酒の力って強い。気を大きくすることができるし、勢いがついてしまう。
やりたくない仕事との向き合い方を迷宮に迷い込ませる作品だと感じた。
Posted by ブクログ
浮気や不倫を繰り返す男と別れる決心がつかない…そんな人へのおすすめNo.1の本を見つけてしまった。
4つの物語から成るこの本、テーマはルッキズム・YouTuber・不倫・老害で、どれもまさに現在進行形の世の中と繋がっていてゾッとする。
世間に叩かれがちな属性の人物が登場するんだけど、彼・彼女が心に秘めている反論が的を射ていて、逆に「世論」の無遠慮さが恐ろしくなってくる。
4つの物語の中で、タイトルにもなっている「嫌いなら呼ぶなよ」は不倫のお話しで、読み進めるうちに
あー!こういう男!私知ってるぞー!!
と勝手に脳内で元彼(病的な浮気性)の姿で再生してました。
浮気や不倫をされた挙句、まだ「彼は心を入れ替えてくれるはず…」なんて考えている甘ちゃんはぜひこの本を読んで!物語の中の男を客観的に見て!
浮気男と付き合ってるのがアホらしくなるから。
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「一応、暴力だろ。石でも言葉でも嫌悪でも」。妻の親友の家に招かれた僕。だが突然僕の行動をめぐってミニ裁判が始まり……心に潜む “明るすぎる闇“に迫る綿矢りさ新境地! 全4作収録
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おもしろかった
最初の話は、今ショックを受けてたことに関することをグサッと言われてウッとなったり
最後の話は気持ちよかった
総じて読んでて爽快だった
Posted by ブクログ
四つとも痛快で非常に面白かった!
眼帯のミニーマウス
高校生の時のどうしようもない承認欲求と自己顕示欲を思い出してヒリヒリした。所謂地雷系の服を着て、そうじゃない服を着てる人はダサい、地雷系は同族嫌悪私の方が可愛いと思い、すれ違う人全員に睨みを利かせてたあの頃を思い出してなんだか懐かしい気持ちになった。主人公が可愛い顔よりも包帯でぐるぐるにされた顔でいる時の方が、周りからたくさん見られて気分が良かった、と気づいたように、私も地雷系の自分が好きなのではなくて地雷系を着て『お前らとは違う、私が1番可愛い』と肩を揺らして歩くのが楽しかったんだと思う。
神田夕
最高に痛快だなと思いつつも、怒りのエネルギーを必死になって他人に向ける様というのは第三者目線からするとこうも薄気味悪いのか、と感じることができた。最後に神田に誹謗中傷していた事実がバレるのではなく、神田本人は誹謗中傷には目もくれず活動していくというオチがやたらとリアルで、好きの反対は無関心、という言葉はまさしくだな感じた。
嫌いなら呼ぶなよ
表題作であるだけあって最高にうまい、面白い。男性脳と女性脳をうまく書き分けていて、特に女性の陰湿でネチネチしたやり方が読んでいて最高に気分が悪かった、非常にいい意味で。なぜだか憎めず読んでる間も不倫した男性の方に肩入れしてしまう面白い作品だった。
老は害でも若も輩
まさか作者本人が登場とは、、笑しかも本人目線ならよくあるが第三者が語り手となって作者(作者からしたら自分自身)を書いている。嫌いなら呼ぶなよと同じでこちらも男性と女性の、男は理論、女は感情の書き分けがうまく最高だった。作者がこういう編集がいて最悪だったと言う話をエッセイ的に書くのはよく見るが、編集目線で自分自身のことを痛快に描けるのはなかなか見たことがない作品だった。
Posted by ブクログ
以前読んだ「憤死♡」と同じくこれも表紙を見て笑いそうになった。綿矢りさの小説って砂糖でコーティングされた女子的なイメージがあるけど、実はけっこう毒が強くて、そこが大好きなのだ。
特に表題作は傑作だった。霜月は妻の楓と一緒に妻の友人宅に新築祝いに行くが、そこは不倫を重ねる霜月を妻とその友人夫婦で吊し上げるための集まりだった。妻の親友で強気のハムハムに責め立てられるが、霜月の食えなさ加減がすごい。ふつうに考えると不倫夫が悪いの一択なのだろうが、双方の感覚の噛み合わなさに笑ってしまう。
どっち側にもあんまり共感しないけど、霜月のなぜか憎めないキャラクターがいい。タイトルは彼の心の叫びそのものだと思われるが、この絶妙のズレ加減にまた笑ってしまった。
書き下ろしだという「老は害で若も輩」も綿矢りさがもはや捨て身で笑わせに来る(笑)
4篇はいずれもコロナ禍を背景に描かれたものだが、他人との価値観や危機感の違いをこれでもかと思い知らされた数年間だった、ことがきっちりと描写されていて驚く。
マスクについての考察とか、ようやく会食できるようになった開放感と少し億劫な気持ちとか、当時の生活をリアルに思い出した。
Posted by ブクログ
派手派手の表紙とインパクト大のタイトルに惹かれ
初読みの綿矢りささん。
『時すでにお寿司』で心をガッチリ掴まれた。
すぐあだ名付けちゃうのも分かる!
絶対気が合う!友だちになりたい!!笑
ビックリするくらい言葉遣いが悪いんだけど
ズバズバストレートな表現が多くて
同じような性格の私はスカッとする。
それそのまま言っちゃうんだ!みたいな。
ちょっと笑えた。
コロナ禍でのマスク生活や
緊急事態宣言下のアレコレなど
もはや少し懐かしみながら読めるようになった今
読めたのも良かった。
他の作品も是非読んでみたい!
Posted by ブクログ
まず表紙がとても可愛くて一目惚れで購入し、一気読みした。
綿谷さんは久々だったので、あまりの口の悪さ、性格の悪さに驚いてしまった。
いやいや、バカにしてるのではなく、私の思う事、言いたい事と似てる〜わかるわかる。
そうだった、これが彼女良さ、彼女の作品にはとても共感できる。
どれもとても読みやすく、面白かった。
Posted by ブクログ
あなたは、嫌いな人を家に呼ぶでしょうか?
ここ数年間のコロナ禍は人と人との関わりが変化を余儀なくされた時代でもありました。従来であれば友だちを家に招くということは双方の都合が合えば問題なくできました。しかし、コロナという目に見えない壁がその気軽さに待ったをかける状況がありました。
しかし、そもそもコロナ禍でなくても人を家に呼ぶには、招く側が来て欲しいと思い、招かれる側が行きたいと思うその両者の合意の上に成り立つものです。その一方でも思いが異なるようであれば、家に招く、家に招かれるなどという行動が発生するはずがありません。
さてここに、『こんにちは!』と友人家族総出で迎えられた主人公を描く物語があります。『こんな素敵な新居に招待してもらえて、うれしいよ』と喜ぶ主人公のその先を描いていくこの作品。そんな作品を含めた四つの短編が収録されたこの作品。そしてそれは、「嫌いなら呼ぶなよ」という言葉の先に、綿矢さんのとんがった筆致に酔う他ない物語です。
『はあ、私このままだとほんとに会社にいられないかもしれない。まさか自分がたった入社一年半でギブアップしそうになるなんて思ってなかった』と『最近異例の昇進をしたらしいタッキー』と電話するのは主人公の りな。『立場に責任が伴ったせいで、期待される成果も重くなって』と続けるタッキーに『あなたあんまりよく眠れてないんじゃない?だからマイナス思考になるのよ』と返す りなは、『タッキーと話しながらスマホのカメラを起動して』、『左手の爪の上』にくっついている『赤緑黄の三体のグミベア』『全員が愛らしく写るよう、スマホの角度を変えたり、指を動かしたりして角度を調節』します。『がさがさ音がするけど、何かしながら話してる?』と問うタッキーに『インスタにのっけるための、ネイルの写真撮ってる』、『一日に十枚ぐらいアップしてる。テレワークでスキマ時間増えたからね』と返す りな。『りなっちって相変わらず承認欲求のカタマリだね』、『りなっちのインスタみたいに、コロナ禍でもできる趣味が私にもあったら、こんなに会社の悩みごとで煮詰まらなかったかも』と言うタッキー。
場面は変わり、『私がねだるとミニーマウスそっくりのワンピースを手芸屋で買った生地で作ってくれた』と『無類の可愛いもの好きであるママ』が『本格的なミシンを使って丸えりやフリルやピンクや赤などをふんだんに使用した、糖度の高い衣装を何枚も作って私に着せた』ことを思い出す りな。『ママと同じ趣味の私は大喜び』だったものの『自分自身が着せ替え人形になって仕上げに白いタイツをはき、団地の下の公園へ飛び出して遊びに行った』時、『変な奴に滑り台付近でパンチラのいやらしい写真を撮られたあげく誘拐されそうになって』しまい『我が家は大騒動になっ』てしまいます。そして、『パパとおばあちゃんから責められ』たママは、『私のお洋服を作らなくな』りましたが『ロリ服好きなまま』だった りなは納得できません。一方で結局のところ『可愛い物好きの炎』が鎮火されなかったママが『周りの目を盗むようにして可愛いものを買って、こっそり身に着け始め』、『小学校中学年になると』、『一見可愛いとは分からない黒系の服を買い』はじめたため、『属性が甘ロリから闇ロリへ変わった』りな。やがて、『大学に入ってインスタを始めた』りなは、『予想外にフォロワーが増え』、『フォロワーを”私の信者”と呼び始め』ます。『つまらない不満が爆発してときどきSNSに病んだメッセージ書いたり、ヒステリックな配信が増え』る中に『ネット上では私は人気だった』という時代を過ごした りな。そんなある日、『ママ、あのね。お金貸して?』、『出世払いで返すからさあ、おねがーい』と言う りなに、『あらまあ、りなちゃん、何に使うの?』と返すママ。それに、『整形』、『目を二重にしたい』、『私はいま奥二重寄りの二重なのね。でも私が整形でなりたいのは平行二重』と訴える りなに、『りなちゃんの美へのこだわりは理解してるつもりだけど、さすがにこだわりすぎなんじゃない?』と答えるママ。『ちょっと切って縫うだけ。両目三十万。頼むわ』と『ゴリ押し』する りなに、ママは折れ『三十万円貸してくれることにな』りました。『りなちゃん、なんかごめんなさいね』と言うママは、『りなちゃんの気に入る顔に産んであげられなくてごめんね』と謝ります。『私ママの手作りお洋服、とても好きだったよ』、『だから反省なんかしないで』と返す りなは、『品川整形外科』へと赴き、『両目のまぶた切開手術をし』ました。『左目を先に右目を次にやったけど、腫れが引いたあとの左目は大成功で、私は有頂天になった』りな。そんな りなが社会人となった先の日常が描かれていきます。
“整形、不倫、SNS、老害…心に潜む’明るすぎる闇’に迫る綿矢りさ新境地!”と本の帯に記されるこの作品。真っ赤な表紙に水色のドット、そこに巨大な字で「嫌いなら呼ぶなよ」と記された表紙はインパクト絶大です。作品を読む前から叱られているようでもあり思わず引いてもしまいます(笑)。
四つの短編から構成されているこの作品は、〈眼帯のミニーマウス〉が「すばる」、〈神田夕〉と〈嫌いなら呼ぶなよ〉が「文藝」にそれぞれ掲載されたもの、そして最後の〈老は害でも若は輩〉がこの作品のための書き下ろしという構成をとっています。四つの作品に関連性はなく独立した短編となっていますが、どれもこれも「嫌いなら呼ぶなよ」という書名のキョーレツさの地平に立つ作品群という印象です。
では、そんな四つの短編の中から他誌に掲載された三つの短編をご紹介しましょう。
・〈眼帯のミニーマウス〉: 『無類の可愛いもの好きであるママ』に育てられ『ロリ服』好きなまま大人になった主人公の りな。そんな りなは、『私の信者』と呼ぶ『インスタ』の『フォロワー』を意識する日々を送っています。そして、『目を二重にしたい』と始まり、『ヒアルでデコを丸くきれいに見せる施術を朝受けてから出社してきたんです』と『プチ整形』にはまっていきますが、同僚に『馬鹿丁寧に説明』したことで社内に噂が広がっていきます…。
・〈神田夕〉: 『あそこ歩いてるの、もしかしてカンダかも』と、バイト先で同僚が指差す先を見るのは主人公の紗永恵。そんな紗永恵は『辛いもの食いや電車と競争など、くだらないことに挑戦するも『敗けが濃厚になったら「こっからが本番だな!」と叫ぶのが持ちギャグ』という『YouTuber神田』の動画を何本か見るうちに『一生懸命さに惹かれ』はじめます。そして『絶賛コメントを書き込』み、『立派なファン』になった紗永恵は、忠告含めコメントする日々に溺れていきます…。
・〈嫌いなら呼ぶなよ〉: 妻の楓と、友人の森内夫妻の家へと招かれた主人公の霜月。『こんな素敵な新居に招待してもらえて、うれしいよ…』と喜んでいた霜月でしたが、予想外なことを言われます。『霜月さん、不倫してるんだってね。楓から全部聞いてるよ。しかも楓にばれても嘘をついて、相手とはまだ続いているって。一体どういうこと?』、『ねえ霜月さん、聞いてる?…』と続く言葉に驚く霜月。そして霜月を被告に『裁判所のミニ法廷』が開かれていきます…。
三つの短編はそれぞれに炸裂した、極めて個性的な物語が展開していきます。そんな三つの短編に共通するのが非常なまでにとんがった語り口です。一節を取り上げましょう。
・『私のプライドは一風変わってて、自分の立場や権利を正論で勝ち取るぐらいなら、ぼろくそ言われてる方がましなのだ』。
『整形』しているという噂が社内に広がる中にこんな風に思う りなは『怒ったり泣いたりは美学に反する』と思います。
・『怒りは古い油の臭いがする。胸やけするドーナツを二、三個揚げ終わったあとのような、肋骨の内の油釜。自分の花道に散らかるゲロやゴミは片付けずに踏んづけてのしのし歩いてやる』。
りなの強烈な内面が吐露されていくこの場面は凄みさえ感じます。しかし、無敵なわけでもない りなの本音も語られます。
・『ウケる。ウケる。傷ついたってしょうがないから、とりあえずウケとく。とりあえずみんな楽しそうだったからよかった、私の整形をいじってるとき、放牧されて窮屈な小屋から脱出してアルプス山脈の草原で元気に跳ね回る子やぎの群れぐらい嬉しそうだったもん。職場の仲間たちの、あんな無邪気な笑顔を引き出せて幸せ。って思えるわけもない』。
どうでしょうか。綿矢さんのとんがった物語世界は全く衰えを見せていないことがこの抜き出しだけでもお分かりいただけると思います。凄いです!綿矢さん!
また、冒頭の〈眼帯のミニーマウス〉には嬉しいサプライズが用意されています。それこそが、海松子というなんと読むんだろう?とまず思う人物がこの短編には登場します。『みるこ』という読みがふられているこの人物、綿矢さんの前作「オーラの発表会」の主人公です。”自分探しってなぜこうも、探せば探すほど、玉ねぎを剝いてゆくがごとく芯が見つけられないんだろう”と悩む先に”やっと、一人で生きるっていうことが分かったんです。同時に誰かと共に生きることの意味も少しずつ分かってきました”とひとつの気づきを得ていく海松子。この作品では彼女のそれからの姿が語られていきます。これは同作を読まれた方には是非期待いただきたいと思います。
そんなこの作品ですが、実はその本当の読みどころは上記した三編にはありません。この作品を読む価値は、と言ってしまうと言い過ぎかもしれませんが、それは最後に書き下ろされた〈老は害でも若は輩〉にあります。これも読めるようで読めない章題ですが、『ろうはがいでじゃくもやから』と読みます。『雑誌インタビュー記事の作成の場』を舞台にした短編はその前提がこんな風に記されています。
『四十二歳の女性ライターと三十七歳の女性作家、そして二十六歳の男性編集者が件の記事の作成に関わり、都内の出版社にて作家へのインタビュー取材が行われた』。
『三十七歳の女性作家』という点に引っかかりを覚えるその物語は、『フリーライターの書き起こした記事を、作家が気に入らず全文書き換えしたところ、フリーライターが激怒』という中に困惑する編集者という視点で展開していきます。そんな中にいきなりこんな手紙が登場します。
『綿矢様 CC: 内田様 お世話になっております…どうしても一言言いたいことがあり、綿矢さんに直接連絡させていただきたく存じます。先日、綿矢さんが修正された私の原稿を拝見いたししました…。 シャトル蘭より』
(*˙ᵕ˙*)え?
『シャトル蘭様 CC: 内田様 シャトルさん、メール読みました、よくもまあ。ごめんなさい、片腹痛いです…でもめちゃくちゃ傷ついたのは事実です。謝罪を求めます。 綿矢より』
(;゚д゚)エエーッ!!!
はい、なんと『三十七歳の女性作家』= 綿矢さん!と、まさかのご本人が登場!する中に物語は展開していきます。まあ、たまたま綿矢という名前にしただけ?とも思いますが、そうでもないようです。
『…一応現時点では芥川賞最年少作家といえばこの私なんですけど?!』
なんていう一文も登場します。これって、綿矢さんのリアルなの?それとも???ともう一気読みする他ない笑劇の物語がそこに展開していきます。女性ライターと綿矢さんの板挟みに苦しむ編集者さん、この書き下ろしを受け取られたリアル世界の編集者さんの複雑な胸中をお察しいたします。ということで、もうこの書き下ろしを読むためだけにこの作品を手にしても損はありません。これから読まれる方が羨ましいこの作品、よくぞ書き下ろしてくださいました!と綿矢さんにお礼を言いたくなるそんな短編でした。
『純文学の作家とはこんなにもめんどくさい生き物なのだろうか』。
そんな自虐的な言葉が踊る書き下ろしの短編を含めた四つの短編が収録されたこの作品。そこには、毒々しいまでにとんがった物語世界が描かれていました。コロナ禍を痛烈に見る視点が新しいこの作品。極めて読みやすい物語の中に、とんがった表現が際立つこの作品。
どこまでも吹っ切れた切り口の先に、世の中を鋭く見据える綿矢さんの凄みを見た、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
様々な限界状態に陥っている人たちの短編集、展開が気になってどれも一気に読めました。マスクで口が隠れると、本当にこわかったのは目ではなく口だったと分かった、という件が好き
Posted by ブクログ
綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!綿矢りさ最高!
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綿矢りさのリリック、最高!!!小説というよりリリック。こじらせている読者のDNA?血液?に文章が流れてくる感じ(読者層からは若干外れる年齢になりつつある気もするけど)。
あと、皆ちょっとおかしい人なのに、そんな自分をかなり客観的に自己分析していて、それがキレキレで刺さる。
全体を通してコロナ禍での生活を書いているものが多い。
最初の「眼帯のミニーマウス」のテンションが特にヤバくて好き。出たよ綿矢りさのやばい女。
「血湧き肉踊るメンヘラの祭典」「傷ついたってしょうがないから、とりあえずウケとく」「プライドの10センチヒール履いてるから足汚れない大丈夫」など令和版声に出して読みたい日本語のオンパレード。
綿矢りさ作品は、現実の女子が思っていてもできないことを最後にやってくれる(やらかしてくれるとも言う)からすごくヤバイけど同じくらい元気をもらえる。自分らしく生きるために一番大事なのは行動力だよね~
表題作「嫌いなら呼ぶなよ」は珍しく男性視点。不倫がやめられない人ってこういうこと考えてるんだなあと面白かった。嫌いだから呼ぶんだよ。
書き下ろしの「老は害でも若は輩」、口コミを見てる感じこれが一番人気があるのかな?こちらも珍しく男性視点のコメディ。コロナ禍で新興宗教にハマって常に「自分は絶好調だけど」を枕詞にするようになった友人が気になりすぎるのでその人主人公の話も読みたい。
Posted by ブクログ
一章ずつ主人公が異なり、最後の章には
綿谷さんが出てきて、人となりを知らないから
より面白く感じた
コロナ禍の出来事、時事性もあり
読みやすく、辛辣な言葉遣いや
人の内面で起きることを言葉にしている
事件性のあることにはドキドキし
盛り返しもよかった
Posted by ブクログ
綿矢さんの本は初めて。
4つの話が入っている短編集です。タイトルに惹かれて手に取りました。
途中、知らない言葉がいくつも出てきたので、スマホで調べながら読んだ。ドラッグの名前とかリアコ(非現実的な相手に本気で恋することらしい)という単語とか。
今どきの若者のぶっ飛んだ話なのかと思いきやそうではなくて、気がついたら色んなことが心に刺さってた。
どの話も主人公の内なる声で語られている。だから周りを遠慮なく罵ったり、呆れて馬鹿にしたり、尖っていてどろどろとした言葉が多い。心の声は誰にも聞こえないから、慎みがないよね。
どの主人公も傍からみたらまともな人間じゃないように思えるけど、でも一旦彼らの内側に入り込んで周りの人たちを眺めると、みんなのほうが異常に見えてくる。
生きてると、他人に何かを押し付けられたり、またはそんなつもりはなくても結局押し付けてたりすることが多々ある。それが嫌ならもうそこから逃げるしかない。寂しいときだけ誰かと繋がって、褒められたいときだけチヤホヤされて、疲れているときはずっとほっといてもらえる、そんな都合のいい人間関係は、誰もが望みながら決して得られることはない。
キツいことを書いているようで、なんかちょっと笑ってしまう、深刻さで炊いたご飯にユーモアの海苔を巻いたおむすび4こ入りのパックです。
この本のタイトルになってる『嫌いなら呼ぶなよ』の話が一番好き。
Posted by ブクログ
どストレートな感情と語彙で刺さる人には刺さる、そんな内容だった。個人的にはパワーワード過ぎて感傷的になってしまったが。。
日々生きていけば他人のこういうところが苦手だの、嫌いだのあると思うが直接言うには勇気がいる。この本を読んで少しでも発散できたら良いのではないかと感じた。
Posted by ブクログ
いやぁ綿谷さんだなぁという感じ!
言い回しが独特だなぁ
尖ってて、歪んでて、衝動的で。
衝動的で破滅的な何かを日々抑え込んで生きている私たちの内面のキモさを切実に描いてくれます。大好きよ
Posted by ブクログ
今を生きる人たちへ向けた同時代性のある小説。文体は一人称で、ほかの作家の一人称小説よりも更に砕けた、より口語に近い文体で、居酒屋で隣の席の人たちの会話を盗み聞きしているような感覚を終始感じた。きちんと主人公の思考や行動を描いてくれているので、共感は出来なくても「へえ、そんな考え方もあるんだ」と理解することはできた。そんな筆力が伺える1冊。
Posted by ブクログ
正々堂々とプチ整形履歴を開陳した「カワイイ命」の主人公。しかしそれに対する同僚達の反応は微妙で、反発した主人公は本格的な整形手術を一度は受けようとするが・・・「眼帯のミニーマウス」。
つまらぬYoutuberに嵌った主人公。やがて好き過ぎる余りにアンチコメントを書き込む粘着ファンになる。しかしリアルのYoutuberにであった主人公は・・・「神田タ」
新築祝いに伺った妻の友人宅の一室で、妻と友人夫婦に不倫を問い詰められる自己肯定感過多の夫・・・「嫌いなら呼ぶなよ」
インタビュー記事をめぐる著者本人、インビューア(ライター)、若い編集者のメールバトル・・・「老は害で若も輩」
内容紹介には「心に潜む“明るすぎる闇”に迫る!」とありますが、闇というより普通なら隠れているべき“裏”という気がします。外から見るのではなく「中に入って行ったらこんな“裏”が見えました」というものを描いた作品。
視点は面白いのだけど、ある意味ありきたりかな。もっとハッとするような“裏”が欲しかった様な気がします。
Posted by ブクログ
眼帯のミニーマウスがどーしても読み進められず、この本自体断念しようかと思ったけど、ここで他の方のレビューを読んで1番最後の話が面白そうだったのでそっちから先に読み、後の章から順番に呼んだら読めたけど、
でもやっぱりミニーマウスは私には全くハマらず…でした。
Posted by ブクログ
4つの独立した短編から構成されています。
各短編は、それぞれの主人公視点で出来事が描かれているのですが、主人公たちのあらゆる感情がダダ漏れで凄かったです。
当たり前ですが、自分以外の人が心の中で何を考えているかは普通は分かりようがありません。
ただ、この小説では、誰かの心のうちが全て細やかに描写されていて、それを覗いてしまったことが何だか不思議な体験でした。
みんな、色んなことを考えてますね、、、
人間って、わからない、、、
なかなか得ることのできない読書体験ができたように思います。
Posted by ブクログ
現代らしい鬱憤とか闇とかをバァーッと書き殴った感じ(の印象を受けました)。
闇が深い人についてはなんか痛々しくてうーん自分にはハマってないかも...?でも最後の老害作家とライターに挟まれる編集の気持ちはよくわかる笑 ババア死ねw
綿矢さんを読むのはは7冊目
新刊はひととおり読んできた
レビューも良かったため
読み始めたが
冒頭の「知らない人から嫌われるのは
あなたが素晴らしい証拠」
パリス・ヒルトン
を表現したのか
一見普通の人風の主人公たちの
悪意に満ちた言葉の数々に
ついていけなかった
高瀬隼子さんの
「おいしいごはんが食べられますように」
を読んだ時にも感じた
読後の徒労感にげんなりした
これが共感を呼ぶ時代なのか
コロナや戦争やミサイルや
物価高や円安のせい?
いや私が歳をとったせい?
嫌いなら読むなよ
と言われそうだか
読了はしました
だが次回作は読まない