【感想・ネタバレ】桑田佳祐論(新潮新書)のレビュー

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Posted by ブクログ

サザンや桑田佳祐の楽曲を歌詞の観点から分析した一冊。バラエティ番組にも積極的に出るメディア露出のイメージから大衆的、清濁の濁の文脈で語られがちな存在だが、それは完全に過小評価だと分かる。そういったタイアップ戦略もあって恐らく日本人なら(少なくとも受動的には)聴いたことのあるサザンの歌詞がこんなに深いものだったとは。でも本書が素敵なのはそういった考察をしながら「まぁでも難しいこと考えずに聴いてみなよ。気持ちいい名曲ばかりだよ?」というスタンスを採っていることだと思う。自分自身もソロ2枚目のベストアルバム『TOP OF THE POPS』のCDを学生時代に買って聴いてた頃の記憶が蘇ってきた。カラオケで何度も歌ってきた「芥川龍之介がスライを聴いて“お歌が上手”とほざいたと言う」が声に出して歌いたい日本語の最高峰という評価には首肯しかないw

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2022年11月23日

Posted by ブクログ

最近の巷のJ-POPの歌詞の世界観の狭さを揶揄
する「過剰なJ-POP」というネットの書き込み
があるそうです。

「桜舞い散り過ぎ」「君と出会った奇跡過ぎ」
「あの頃僕らは未熟過ぎ」など、手垢がついた
表現を使いまくっている歌詞をバカにしたもの
です。

要は語彙が全く少ないのです。

では日本一のポップスバンドのサザンオールス
ターズを率いる桑田佳祐の歌詞はいかなる世界
観を構築しているのか。

サザンは楽曲が先行して語られることが多い為
歌詞までは深く検証されることが少ないです。

しかしこの本で語られる歌詞の深さを知ること
によって桑田佳祐の凄さが再認識させられます。

まるで俳句のように読み手(聞き手)の目線が
計算され尽くして歌詞が書かれているのです。

しかもJ-POPのように半径3メートル以内の恋
愛を題材にするのではなく、時にはエロ、時に
はメッセージ、時にラブソング、時に意味不明
なナンセンス、ともはや何でもアリの世界観な
のです。

俳句を愛でる日本人こそ、この目線の重きを置
いた桑田節の歌詞の凄みに今一度気づくべき一
冊です。

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2022年07月29日

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とてもよく解説されていて、感動した。

桑田佳祐は歌詞を言葉としてだけではなく、音として当て込む。そのため、方言や古語、造語などが入り、曲の中には全く意味を持たない言葉の羅列のものも数多く存在する。

だけど、「そこの音にはその言葉以外は入らない」っていうような耳触りの歌詞ばかりで、なぜそれが耳触りよく聴こえるのかを本書で解説してくれている。

例えば、『マンピーのG★スポット』の「芥川龍之介がスライを聴いて"お歌が上手"とほざいたと言う」の歌詞。意味は全くない。突然の芥川龍之介。だけど、ここはこの言葉がとってもしっくりくる。著者は「声に出して歌いたい日本語の最高峰」だと述べているけど、まさにその通り。音符の上に綺麗に乗っかってる。芸術的なフレーズだと思う。

桑田佳祐がつくった曲はラブソングだけでなく、メッセージソング、コミックソング、エロソング、言葉の意味を全く持たぬナンセンスソングなど幅広い。だけど、その深い曲の世界観はあまり世間に認知されてない。

著者は桑田佳祐を「最も知られていそうで最も知られていない音楽家」と本書で述べているけれど、まさにその通りだと思った。

「サザンいいよねー、夏といえばサザンだよねー」の人にぜひ読んで欲しいけれど、取り上げてる曲や中身がマニアック過ぎてファンしか分かってもらえなさそうなのが、歯痒いところ。

本書はサザン、桑田ソロ、坂本冬美への提供曲を含めた全26曲について解説している。まだまだこの26曲では魅力は語り尽くせないので、ぜひ第2弾をやって欲しい。

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2022年07月07日

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ネタバレ

サザンの26曲をとりあげ、分析している。スージー鈴木さんならではの鋭さと軽妙さで面白い。

『78年8月31日夜。演奏が終わった瞬間、日本のロックが一段上に跳ね上がった。見えてきたものは江ノ島と、新しい日本のロックのありようだ。』

『ルイ16世「女呼んでもんで抱いてとか、おっぱいとか、これは暴動か?」

リアンクール公「いいえ、陛下、暴動ではございません。革命でございます。」』

『《いとしのエリー》たった一曲の中にも「誘い涙」「みぞりまじり」「泣かせ文句」という強烈な桑田語が並んでいた。これらは、言ってみれば、日本語ロックにおける「言語革命」の痕跡である。』

『ぜひ一度、歌っていただきたい ♪芥川龍之介がスライを聴いて、"お歌が上手"とほざいたと言う。」

私にとってこのフレーズは、声に出して歌いたい日本語の最高峰である。』

といった感じ。ミーハーでいて評論家。


あとがきで退職したことを書いている。退職して初めての著作で、職業人の制約から離れて少しだけ自由に書いたとのこと。仕事から離れることで評論家としての活動が進むのかもしれない。

調べると博報堂にいたんですね。

文中で紹介していた「Jポップにありがちな歌詞」が懐かしくて面白かった。

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2024年03月05日

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ファンなら読むべきだと思った。
歌詞なんかほとんど把握していなくても、
十二分に楽しめるからこそ、見過ごしている。
キャリアの中からバランスよく選曲。
その分析もとても参考になりました。
たしかに、ユーミンや山下達郎、佐野元春、矢沢永吉、浜田省吾…が「マンピーのG★スポット」とは歌わないだろうな笑
偉大すぎます。

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2023年11月08日

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サザン(桑田さん)の(自分にとっての)ど真ん中ストライクは84年の「人気者で行こう」から94年の「祭りのあと」まで。リアルタイムは最後の3年位だが。

この本で取り上げられている26曲の内、ベスト5を挙げると、

1位 スキップ・ビート(ミュージックビデオも、superfly
のカバーも素晴らしい)
2位 夕方 Hold On Me(「人気者で行こう」と「世に万葉の花が咲くなり」は甲乙付けがたい)
3位 いとしのエリー(23歳でこの詞を書けるのが稀有)
4位 勝手にシンドバット(2018年紅白のユーミンとのツーショットは一年分の受信料の価値がありました。どうせなら正隆さんと原坊も抱き合って欲しがった)
5位 月光の聖者達(21世紀の桑田さんはこの路線だと思うのだが)

著者が出ていた番組「カセットテープミュージック」のサザン特集、といった感じ。マキタさんとうめ子さんが帯を書けば良かったのに。番組再開希望。

ジュンク堂書店大阪本店にて購入。

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2022年08月02日

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サザンがデビューした1978年当時、Char・世良公則&ツイスト・原田真二がロック御三家と呼ばれ『ロックがブレイク、お茶の間に進出!』なんて言葉が踊った。

〈お茶の間〉なんて今や死語だけど、当時はテレビが複数台ある家って少なかったし、78年の紅白歌合戦の視聴率って何と72%⁈カウントダウンライブなんてまだ存在しない時代は、大晦日の晩は茶の間に集まり紅白観賞してたんですな。

そんな『ジャパニーズロック』が台頭してくるまでの歌謡界を概観すると、1967年にブルーコメッツがGSの最終ランナーとして、骨と牙を抜かれ、すっかり歌謡曲化した ♫ブルーシャトー でレコ大受賞。それはGSブームという宴の終わりを告げ、代わって天地真理・郷ひろみ・山口百恵らのアイドルが歌謡界を席巻、方や拓郎・陽水・かぐや姫らのフォークが時代を斬り、世俗を反映した歌を次々に歌った。

そんな中で異彩を放ったのが、1970年にデビューした『はっぴいえんど』。日本語ロックに対する疑念と羞恥を敢えて逆手に取り、活動するも1973年に解散。

はっぴいえんど伝説なるものは残すも、ミュージックシーンに新しい風を吹かせたのがユーミン。75年に ♫ あの日に帰りたい がヒット。オシャレさと憂いをまとったシティミュージックの出現。〈スノッブ×都会性〉という価値観の萌芽が、長らく続いた『四畳半フォークをそんな時代もありましたね』的存在に追いやった。

そして和製ロック御三家の登場。そこにしばらくしてサザンも加わり、4組は年齢も近いことからライバル視されるようになる。

ただ、サザンの場合、デビューが派手なジョギングパンツというチープかつインパクトすぎる格好で登場したのが当時国民的番組の〈ザ・ベストテン〉。早口でシャウトする歌のタイトルが『勝手にシンドバッド』。世間はそら、キテレツなコミックバンドとして見ますわ。

そんなキワモノ扱いされたバンドが一曲にして世間の評価が一変どころか激変。シングル3曲目の ♫ いとしのエリー。

僕はこの曲をテレビで初披露した時のことを鮮明に覚えている。フジテレビの『スターどっきりマル秘報告』。司会の三波伸介が『サザンオールスターズの新曲を今夜この番組で初披露です!』と紹介し、スタジオで歌った。

おっさん特有の長広舌の懐メロ噺はさておき本書。
著者は昭和歌謡にフォーク、ニューミュージックに最新ヒット曲まで広範な守備範囲をほこる〈J-POP無双 スージー鈴木氏〉。

サザン/桑田佳祐がビッグになり過ぎ、今や〈メガ・サザン〉になり、日本語を洋楽風に歌う桑田佳祐の最大の特徴もあり、詞・言葉がサウンドの付随物となった感を憂う著者。

そこで桑田チルドレンを名乗る著者はペンを執る。味わうべき考えるべき桑田佳祐の歌詞に着目してほしいと、サザン・ソロ含め1,000曲から26曲を厳選。一曲一曲手を替え品を替えの徹底分析。自身の偏愛ぶりは振りかざさず、音楽評論の醍醐味を味わえる一冊となっている。

お花畑と思われながらもポジティブで楽天的なメッセージソングもあれば、お下劣エロに、おフザケのコミックソング、涙ちょちょ切れるラブソング、ノリノリのロックンロール、意味から解き放たれたナンセンスソング…と広大な面積の歌詞の世界を自由きままに飛び回る桑田ワールド。

では、桑田佳祐ははたしてどんな詞の作り方しているかが気になるところ…。

その桑田佳祐の作詞法については…
桑田佳祐著『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』より〉引用されている。

歌詞はメロディが浮かぶと同時に、デタラメ言葉
ーまぁ、英語が多いんだけどーで浮かんでくるわ
け。日本語の歌詞は絶対に浮かんでこない。浮か
んだ言葉とメロディをごにょごにょ歌ってくとコ
ード進行がピーンとわかる。今度はギターを持っ
て、言葉はデタラメのまま、何度も何度も歌うん
だよね。それは僕ひとりでもやるし、バンドと一
緒にもやる。そのうちに何となく、そのデタラメ
言葉にピッタリとくる日本語が何ヶ所か出てくる
わけ。

それが…
砂まじりの茅ヶ崎に
誘い涙の日が落ちる
女呼んで もんで 抱いて いい気持ち
たまにゃ Makin’ love そうでなきゃ Hand job
生まれく叙事詩(せりふ)とは 蒼き星の挿話
夏の旋律(しらべ)とは 愛の言霊
友は政治と酒におぼれて声を枯らし
20世紀で懲りたはずでしょう?

デビューから最近までの楽曲を順に取り上げた26曲。さぁ、深くて広い胸騒ぎ必至の『桑田語の世界』にどっぷり浸かっちゃってください。

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2022年07月01日

Posted by ブクログ

”サザン、好き”っていう答えは、もう聞き飽きるくらい、聞いてきたんだけど、ここまでマニアックに語れる人は、少なくとも自分の周りにはいないんだな。そんな訳で、本書を通しての作者との対話は、実に楽しかった。会食もカラオケもライブも従来通りに行えない昨今だけに、なおさらそんな気持ちを強く感じたのかも。そして夏の気配が日ごと強まる今日この頃、今日も通勤の車内には桑田佳祐が鳴り響くのであった。

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2022年06月28日

Posted by ブクログ

天才桑田。ずっと前からそう思ってきた。メロディラインやアレンジはともかく、バラード以外は、歌詞は音に隠れて、あまり評価されてなかったような世論に、物申す?一冊。確かに!納得の内容だが。。。歌詞の分析って、本来恥ずかしい気持ちする。文字に起こすと、結構やばいもの多し。

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2023年02月05日

Posted by ブクログ

このタイトル見たら、サザンや桑田さんのファンとしては買わざるを得ない。

以前同じ著者によるKAMAKURAまでのアルバムを紹介した本も見たが、今回はソロも含めてある程度最新のものまで網羅。 あらためて、桑田さんの取り上げるテーマの多彩さを確認することができたと思う。

また311や病気後の作品に感じるものについての話題は、個人的に同じように感じる部分があり、納得感あった。

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2022年07月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<目次>
はじめに~こんなもん、ただの歌詞じゃないよ
第1章  胸騒ぎの腰つき(1978~1985)
第2章  米国は僕のヒーロー(1986~2010)
第3章  20世紀で懲りたはずでしょう?(2011~2022)
終章   桑田佳祐と戦後民主主義(1945~2022)

<内容>
桑田佳祐の(サザンオールスターズ)の歌詞を元に、彼に生き様や時代背景などを(類推しながら)解いていった本。まあ、著者の言うとおり、当初は意味のなさげな(ありげな)和洋折衷の歌詞を曲につけて、やがて確信犯的に自分の気持ち(日本や世界の良くない政治の流れ)を歌詞にぶち込んでいるんだろう。そう思う。 

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2022年06月24日

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