【感想・ネタバレ】ただしさに殺されないために~声なき者への社会論のレビュー

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Posted by ブクログ

普段、意識することはあっても、そこまで真剣に考えるテーマではなかったため、刺激的でとても面白かった。序盤は読んでいて少し気が重かったが、2章以降は興味があったためかスラスラと読み進めることができ、それによって序盤の内容も後から理解が追いついてきた。
「自由」や「平等」がヨシとされている中で、意外とそれらの言葉が条件付きのものであることが明快に述べられている。わりと当たり前とされていることや、共有されている価値観みたいなものについて改めて考えてみることができる。
著者は各トピックについて話題提供を行うのみで、その答えは読者に委ねられているようである。もちろん、著者なりの見解もあり、首肯できるものもあれば、そうでないものもある。多くの人の意見を聞いてみたいと思える内容であった。

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2024年01月30日

Posted by ブクログ

差別などしない善人だと思ってる自分が読んでて不愉快な気持ちになった。それぐらい無意識に正しさで他者をジャッジし排除してる。能力主義だったり、ルッキズムだったり。もちろんジャッジも常にされている。小さな潔癖が集合体となり社会全体の大きな潔癖となり、それにより行き場をなくした人々がやがて無敵の人になる。じゃ、どうすればいいのか。一生かけて考えて行動しても答えの出ないことかもしれない。ただ、前から思ってたのがネットニュースには「これは間違っている!」と正しいことをコメントすること(しなくても思うこと)で、日々のストレスを発散させてるふしがあり、またいいね!がつけば称賛にも似た快感が得られて、無料の娯楽になってるような気がする。記事も閲覧回数稼ぎのため、正しさを刺激するものを狙ってわざと書いてるのではないかと。ただしさに殺されないためにはどうすればいいのか。人の善意に優しさにかけるしかないかな。わからない。難しい。

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2022年12月18日

Posted by ブクログ

社会思想・エッセイ・哲学の中間地点のような印象。
筆者論に賛同するかはさておき、新たな視点の提示として読んで抜群に面白い。ディスカッションのベースとして読んでも大いに役立ちそう。

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2022年08月20日

Posted by ブクログ

いやー。この人の存在を寡聞にして知らず、知れて良かった。学者でも作家でもメディア関係者でもなく、市井の人というのがまたすごい。シニカルでも青臭い理想というわけでもなく、こういう主張を発信して問題提起できるのは相当の知性が必要なはず。DEIとかに取り組んでる人全員に読んでほしい。あらゆる差別の定義のところは、がーんてショックだった

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2022年08月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルがもう不穏ですね。これを手に取る人は自分なりに「正しさ」というものについてきちんと一度は考えたことのある人なんではないかなと想像。

「本書は物語の否定である」確かに読み終えて振り返るとそういう一冊だったと思う。
私自身が往々にして、世間によくある「いい話」を見たり聞いたりすると鼻白むことがあるのは、著者が言うような「誰からも快く受け入れられるように美しく整えられた物語」だと感じさせられるからだなとわかった。もやもやしていたものが言語化されてちょっとすっとしましたね。

「不寛容には不寛容に対処すべき」「被害者ポジション」「面倒くさい他者が訪ねてきたらもっとふさわしい場所があるよと優しく排除」「どんどん潔癖で倫理的になっている善良な市民」響く言葉や文章が目白押しでした。
「排除アート」なる言葉を本書で初めて知りました。しかしモノは見たことがあります。
そ、そういうことだったのか、と己の無知を痛感しました。

しかし、本書が刺さる人はどのくらいいるでしょうか。これを手に取る人でも全編に頷ける人は少ないかもしれない。
ただ、頷けなくてもここに著された人たちが世の中には見えないだけですごくいる、ということに気づくこと自体にも意味はあると私は思いたい。
そういう視点を忘れずに社会を観る姿勢を持ち続けていきたいと私は思いました。

本書も最も読むべき人にこそ一番届きにくい一冊だな…としみじみ感じます。

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2023年08月23日

Posted by ブクログ

 人権の落とし穴、差別をよりマイルドにして差別と思わせない方法、国民が自主的に行う言論統制、結果責任の分散化、複雑に絡み合って今の閉塞感を感じる世界が出来上がっていく。夢も希望も理想もないな。なんて思いながら読み進めて、すっかり鬱な気分になった。
 この本に書かれた問題から、きっと私は目を逸らし続けるのだろうな。
 ネットやニュースを見ていて、心に降り積もり続けたモヤモヤを言語化してくれた本だった。「ただしさ」とは何なのだろう?万人が一致する答えが出ない限り、解決方法なんて無いのだろうな。

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2022年10月10日

Posted by ブクログ

先生のnoteは読んだことなかったが、この本を買った。

一つの現象に対して多種多様なレトリックを駆使して深掘りしていくのは圧巻だった。このような著者の豊穣な語彙のアプローチはSNS上での note購読者とのコミュニケーションによって洗練されたのだろう。しかし序盤と終盤が特にそうなのだが、あまりにも詩的で陶酔的な文章だと、「慈愛に満ちた人たちが作った影のある社会に対する挑戦」という本著のスタンスが崩れる気がする。

一番面白かったのさ「排除アート」の章です。存在そのものは知っていました。排除アートはまさに著者が問題意識を抱える現象の象徴のようなものである。「加害性の無自覚、無意識」を指摘する姿勢は本著の基盤であり、まさに一事例として最適。

この本を読まなければ一生考えることがなかった問題を知れてよかったと思う反面、このような社会問題とガチンコで向き合っていけるほど私には余裕がないし、根気もない。私は本著が求めるハードルの高さを超えられるのか?

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2022年09月27日

Posted by ブクログ

p054 2021/11 ベラルーシ ルカシェンコ大統領
 難民そのものを、西欧各国が共有する道徳律である「人権」によってコーティングして他国に向けて打ち込む、いうなれば人間ミサイル兵器として活用する方法を考案し、実際にやってみせた

p66 力強く少子化対策にのりだし、そして成功を収めはじめている国がある ハンガリー 年間予算はGDPの4.7% 首相 オルバン フェミニストでなく国粋主義者 自国民以上に出生率が高く、ますますその勢力を拡大する移民を追い出し、純血のハンガリー人をひとりでも多く増やしたいという宿願がある

オルバンがこうした政治的意思決定を断行できるのは、彼が民主主義的な手続きを簡略化または省略し、国民の権利を制限することに対してためらうことがないからであり、また移民を追い出したいという、多様性や寛容性のかけらもない国家主義的な野望を持ち合わせているからだ。リベラリストやフェミニストたちの理想を、その陣営とは対極に立つ独裁者が実現する。それもリベラリストやフェミニスト立ちがもっとも嫌悪する動機によって。

p094 キャンセルカルチャー 先進社会における人権感覚に著しく反する言動・表現を行った人を、マスメディア、ソーシャルメディア上でつるしあげで糾弾し、社会的名誉を失墜させ、なおかつ仕事や地位を剥奪し、世間の表舞台から半永久的に追放することを目的とした一連の社会運動

p097 キャンセルカルチャーのメソッドは、発言や作品が半永久的に記録され・保存されうるネット社会においては整合的で、論理的にも道義的にも一貫性が担保されていたとしても、その調和が恒久的に保持されるとはかぎらないからだ。インターネットやソーシャルネットワーク上に、個人の言動や作品の記録が、すべてのコピーやアーカイブを含めて完全に消去されない限り、保存される社会において、ある個人が「いついかなる時代・場合においても一貫して正しい無謬の人物であり続けることはほとんど不可能である

p102 NIMBY no in my backyard

p107 私は被害者という概念は、実に画期的な発明品だ

私は基本的に、すべての人の権利を尊重するが、しかし相手が私に対して被害をもたらしうるときは、その限りではない(なぜならそれは私の権利が尊重されないことになるからだ)」という留保をつけておくことで、自分の隣人になろうとするハイリスクな他人が現れたら、かれを寛大に迎え入れる道義的責任を否定することができる

p148 ある人の顔立ちやスタイルなどの外見的魅力によって、その人の価値や他者との優劣を決する概念ルッキズムが社会的に浸透して久しくなった

p193  この社会で暮らす誰もが、自分が本当に困っているときだけ、「望ましい関わり」「本当に有益な援助」を提供してくれる人が現れてくれたらいいのにと願う。だが、「面倒くさい他者」「煩わしい他者」「腹立たしい他者」との関わり合いが時折発生する状態を受け入れなければ「窮状に駆けつけてくれる親切な他者」は現れない。都合のよい他者のみを選択的に温存しておくような方法はない。自分にとって害や不快感のある人々を排除して、快適な暮らしを選ぶのであれば、自分にとって益や助けとなる人々の登場をも同時に諦めなければならない

p230 差別がいかに人間性に反する悪徳であり、受ける人の人生をことごとく破壊するのかを理解し深刻に語ることができる見識豊かな人は、差別のない世界で最後まで残される砦が能力による差別であることに気づいている

p252 ノルウェーでは、現地に滞在して清掃や保育などの仕事をしながら言語や文化を学ぶ文化交流事業の名目で設けられたオペア au pairという制度がある、だが実情としてはすでに文化交流ではなく裕福なノルウェー人の家庭における低賃金労働者の供給源として利用されてしまっている

p256 その基本理念が示すとおり、人権は本来平等であることが原則とされる。しかし今すべて人に最高品質のh人権をひとしく配布することは、そのコストがあまりに高まりすぎてしまったため、現実的に不可能である。人権思想の持続可能性を守るため、人権を傾斜配分することを正当化する論理として、能力主義はますます重用される。先進国のエリート女性が最高品質の人権を享受するためには、自国あるいは途上国に生きる自分よりの能力の低い女性たちに低品質な人権で我慢してもらわなければならない

p277 かれらが「こどおじ」になったのは、かれらを支えるつながりがなかったからではない。だれもかれらを支えるつながりになりたくなかったからだ

p289 人間は完全に孤立して生きていくことはできない。どうしたって、つながりや絆と無縁ではいられない。そこで人々は、他者との結びつきをより厳選するようになった。いうなれば、よりきれいなつながり、よりきれいな絆を求めるようになった。だれもかれもと、むやみにつながることをやめた

p291 これまでの世界であれば、なんでもないごく普通の隣人として、ゆるやかにつながりあえたかもしれない人々が、これからの世界では、物理的にも心理的にもずっと距離の遠い他人ままになる
他者から「きれいである」「有益である」「快適である」と認められる人でなければ、「つながり」や「絆」を結んでもらえなくなっていく
人間社会におてい「つながり」や「絆」は希少財になっていく

p322でも万が一、ヤクザが世の中からなくなったとしても、お前がいうようなスッキリした感じにはならんと思うぞ。さっきもいったけど、ヤクザはどうしようもないやつが最後の最後にそうなっただけのことやからな。最後の最後のその部分だけなくしたからって、どうしようもない奴が消えてなくなるわけじゃない。ヤクザでなくなったら、別のことをやる奴になるだけやろ。「ヤクザにならないだけのヤクザ者」は街にはたくさんおるんと違うか

現代社会に生きる私たちは、自分たちの快適な暮らしを守るために、なにやら厄介ごとを抱えていそうな人やその子供をほとんど無意識に不可視化・透明化して遠ざける

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2022年08月01日

Posted by ブクログ

序章、一章は面白かったが、それ以降がつまらなかった。

友達と普段議論していることが本になったようなイメージ。考え方や論点は面白かったが、特に新しいことが学べたわけではなかった。
また、ケーススタディを重ねて同じようなことを繰り返し言っているような気がした。

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2023年12月19日

Posted by ブクログ

そもそも数字で出せるようなものでないのかもしれないが、こじつけや揚げ足取りのような話の展開が散見された。
終章では読者から「妄言」と捉えらることに著者も自覚はあるようで、安心したがここまで考えての終章のような気もする。
問題提起で終始するのも、結局すぐに解決できる問題はほとんどないから行動・発言する前に少し考えてみようって話なのかな。
少し考える余裕もある種の贅沢品なのかもしれないが。

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2023年04月18日

Posted by ブクログ

ところどころ共感できる部分はありました。
ただ、共感できないところの方が多く、男女の話題、特に非モテ男子についての話はよく理解できませんでした。

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2023年04月10日

Posted by ブクログ

逆バリの結論ありきなので、時事評論というよりはどうしても非モテ文学的なコラムに見えてしまう。特に後半は視点が完全に非モテ男性に固定化されてしまって、読んでいて辛くなった。
ただ、ところどころに見るべきものがあるのも確かで、年収300万の男女が結婚すれば世帯年収600万でやっていけるとの主張は上野千鶴子も言っていた。これほど立場の違う同士が同じことを主張するのかと目から鱗が落ちた。

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2023年02月28日

Posted by ブクログ

社会の色んな問題は、平等や個人の自由を求めてきた結果生じた歪みなのだと痛感した

凄く鋭い指摘のオンパレードで納得することも多いが、全体を通して基本的にはその問題指摘に留まっている

多分解決策なんてない
不平等ばかりだけど人間ってそんなものよねっていう諦めが「粋」につながってた江戸時代に、もしかしたら最適解があるのかも。
身も蓋もないけど。

またこの本では、多様性や個人主義を志向しすぎた結果の歪みや軋みが胸焼けするほど述べられているが、多様性によってもたらされるメリットについては何ひとつ触れられていない。それが少し胸焼け感じさせる読後感につながっている気がする。

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2022年09月02日

Posted by ブクログ

この手の本は、基本と原則、例外に当てはめつつ、批判の気持ちをもって読まないとミスリーディングになりそう。参考文献の数が少ないことが気になった。

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2022年08月11日

Posted by ブクログ

文章上手いなーと思うし見方も面白い。排除アートなど、組み込んでいる構成も唸るものがある。日々書き続けているのも敬服もの。ただ、全編読んで楽しめたかというと難しい、トレンドすぎたものが多かったからか、独創的な視点からの論評に食傷気味だったのかはわからないが、最後の方はちょっと駆け足だった。

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2022年08月03日

Posted by ブクログ

筆者のnoteをしばらく購読していた。主張するところはその通りだと頷くことが多い。けれども、毎回お決まりの内容の呪詛を浴び続けると飽きてしまうし、胸焼けしてしまう。先鋭化した仮想敵を相手にしているのもあってか、どうしても自身の思考も極端になってしまっているようにも思う。

世の中は昔から光が当たる場所と影になる場所があって、皆それを知っている。声高に影の存在を認めない人がいるのは間違いないが、決してそれがマジョリティではない。時代によって影の形は少しずつ変わり、それに伴って社会がコストとして引き受けるリスクの種類も変わっていくけど大きな時代の流れの中ではそれは小さな変化に過ぎない。
人間は差別的で利己的で矛盾を抱えた生き物である。それは今も昔もなんら変わらない。
世の中は昔より良くなっても悪くなってもいない。世の中をつくるのが人間である以上、「変わらない」のだ。

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2022年06月20日

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