感情タグBEST3
Posted by ブクログ
【嘘の木】という不気味で謎な植物が謎を解くキーとなっていてダークな雰囲気が漂う物語。
女性は表舞台に立てず、知識を持っていると奇異な目で見られた時代。好奇心旺盛で知識もある少女・フェイスは鬱屈としていた。そんな彼女だからこそ秘密裏に行動して真相に辿り着けたのだから胸がすく。
少女が大人の目を掻い潜って謎に迫るハラハラ感が面白くて彼女の成長する姿がYA文学ならではでとても良い。
フランシス・ハーディングの他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
フランシス・ハーディングの作品はカッコーの歌、影を呑んだ少女 ときて3番目に読んだのがこれ。中盤まで嫌〜な大人たちの描写が続き、それに比例するかのようにジワジワと主人公も陰湿な内面が出てくるあたりはいつも通り。周りの陰湿さで言うと上述の2つよりこの本のほうが陰湿で読んでいてゲンナリしてくる。ただ、中盤以降で話が大きく動いていくのは流石で作品のテーマもわかりやすく、『嘘』という事柄が最初から最後まで一貫していたしエンドも投げっぱなしではないところが良かった。残りのハーディング作品も早く読みたい。
Posted by ブクログ
・あらすじ
19世紀英国舞台のフーダニットミステリーでもありファンタジーでもあり、ジュブナイルもの。
19世紀英国、フェイスは高名な考古学者である父親の仕事の都合でとある島に移住。
大人しく目立たない存在であろうとするフェイスは、尊敬する父親の秘密と嘘と罪が暴かれるごとにその殻を破って、父親を殺した犯人を突き止めていく。また父親が隠し殺される原因となった嘘を食べて育つ木の正体は…?
・感想
殺人事件が起こるまでは19世紀の厳格な家父長制描写とか主人公が父親を神の如く盲信してたりちょっとイライラもどかしく思いながら読んでたけど、父親が死んでから父親の呪縛と呪いから開放され殻を脱ぎ捨てたフェイスと母親の描写がすごく良かった…。
①フーダニットミステリー②嘘の木をめぐるファンタジー③時代故の価値観に苦しめられるフェイスの成長譚という3つの属性がきれいに一つの作品を織り上げていて読み応え抜群
。
とても面白かった 。
Posted by ブクログ
父の死の真相と嘘の木の解明をめぐるミステリー。
YA向きです。もっと若いとき、できれば主人公と同じ年頃で読みたかったと思います。歳をとって読んでもこれだけ面白いのですから。
ダーウィンの『種の起源』が発表された頃、まだ女性が自由ではなかった時代の話。
女性たちとひとくくりにされながらも、登場人物たちがそれぞれの個性を活かしてしたたかなところがグッときました。
自分にもし娘がいたら、読んでみて、と薦めたくなる本でした。
Posted by ブクログ
登場人物はみんな名前で呼ばれるので、最初の方は誰が誰の父で母で子なのか混乱するが、読み進めていくと意図的にそうしていることがわかってくる。みんな父や母や子である前に一人の人間で、独立した考えを持っているし、必ずしも「正しい」面ばかりではない。
大人や社会が押し付けてくる「こうあるべき」に疑問を持った思春期の女の子が、危うい橋を渡りながら、自分の生き方を探っていく話。
Posted by ブクログ
こんなに贅沢な児童文学もないものだと感じ入りながら、読み応えのある物語を堪能しました。文学小説家としてもフランシス・ハーディングさんは天性の才能を持っている方だな思っております。
Posted by ブクログ
前半は、鬱々として、うーん辛いと思いつつ進んでいくと、途中からの主人公フェイスの脱皮で、物語は凄みを帯びてくる。
そこからは怒涛の展開で、ラストは涙した。
ファンタジーでありミステリであり、ダークヒロインの物語であり、少女の成長と勇気の物語である。
とても好きだった。読み返すと思う。
Posted by ブクログ
初のフランシス・ハーディング。
児童文学賞とか嘘やん笑、と言いたくなるほどがっつりミステリ。
序盤は主人公のフェイスに襲いかかる苦難が読んでいて辛くて辛くて。
19世紀のイギリスという時代背景も含め、女性がとことん生き辛い世の中、父の捏造の噂からの死。自殺で処理されると埋葬もできない、加えて後半判明するが資産相続もできないため、これから生きていくためには、父は殺されたのだという証明=犯人探しが必要となる。
このあたり、中盤以降に登場する「嘘の木」の性質をうまく利用し、フェイスが島の裏で暗躍する段になってからがかなり読み応えが良くなった印象。児童文学としていいかどうかは置いといて笑
犯人に至るまでの過程も見事。伏線がうまく張られていた。
帯にもあったが、終盤の親娘の会話も良かった。
19世紀の女性の闘い方で家族を守ろうとした母親、新しい時代を切り開こうとした娘。どっちも正しいよなぁと。
評判どおりの面白さで、次作も楽しみ。
Posted by ブクログ
とんでもない行動力と体力と知力がある少女が主人公。
これはSFになるんだろうか。
『すずめの戸締まり』のすずめ並みの体力をもつ主人公。(うろ覚え)
悪党に嘘の木を渡すな!
Posted by ブクログ
舞台は19世紀イギリス。価値観や風俗が現在と異なるのでタイムスリップしたような気分になれます。
前半は男尊女卑の甚だしさにちょっと辟易しましたが、半ばから物語が動き出してそこからは面白くて一気に読んでしまいました。
SFでありミステリーであり冒険であり、ストーリーの面白さだけでなく文学としても素晴らしく、傑作と謳われるのに納得しました。
Posted by ブクログ
うん。予想外におもしろかった。
読み始めるまでは文学文学してるような難解な話なのかな~とか、思わせぶりな隠喩だらけの抹香臭いような話なのかな~とか、あんまり期待せずに読んだのがよかったのかな。
単純におもしろかった。
冒険ヒロイックミステリー。
封建的で男尊女卑な19世紀のイギリスが舞台で、「種の起源」が発表された九年後という設定もうまい。
化石の捏造を指摘された高名な博物学者である父親の死の真相を調べます。
主人公の14歳の少女フェイスが小気味いい。
知恵も度胸も行動力もある。
最初のうちは
【十四年間かけて植えつけられてきた恐怖が頭の中を駆け巡る。見知らぬ男。わたしはもうすぐ大人の女になろうとしている娘。保護者やお目付けなしで、見知らぬ男の近くにいてはならない。そんなことをしたら、恐ろしいことが数かぎりなく起きる谷に落ちるだけだ。】
な~んてことを言ってたのに後半では
【人は動物で、動物はただの歯だ。先にかみつき、食らいつけ。それが生き残る道なのだ。】
と勇ましくなっていく。
ジブリとかがアニメ化してくれないかなー。
似合うと思うんだが。
お仕着せのレディーの格好をさせられたフェイスが駆け回る姿を見てみたい。
そういえば久し振りの★4評価です。
去年の「百瀬、こっちを向いて。」以来。
一年二か月振りでした。
ちょっと点数甘いかなとも思いましたが、読み終わった後に拍手してしまいましたからね。
★4でいいです。
惜しむらくは「嘘の木」ですね。
これがなんだかわからない。
京極夏彦さんの「塗仏の宴」に出てきた不死の生命体「くんほう様」みたいに、なんらかの解釈を与えて欲しかったな。
Posted by ブクログ
19世紀英国。女性の立場は低く、学問を志すことも自立した生き方も許されず、ただ貞淑で家庭にいることを強いられていた時代。まさに子供から女になろうとする14歳のフェイスが、知恵と勇気をふるい多くの束縛や困難を乗り越えて真実を追い求めるミステリー。
高名な学者であり畏れつつも敬愛していた父が殺され、その汚名をすすぎ犯人を見つけるために奮闘するのだが、高潔と信じていた父が実はそうではなかったという皮肉。
それに対し、美しく着飾り男に媚を売ってばかりの母を軽蔑していたのに、それが家庭を守るための母なりの闘いだったのだと知り、終盤で母娘がお互いを認め合うシーンが良かった。
自分の信念(faith)を持って闘う少女は、女が自由に生きられる新しい時代を切り拓いてゆくに違いない。
Posted by ブクログ
ミステリ。ファンタジー。
初めて読む作家。
イギリスでは児童書だったらしい。
背表紙のあらすじ的にはSF要素もありそうだったが、実際はほぼなし。ファンタジー。
全体としては、主人公フェイスの頑張る姿を応援する作品、という印象。
中盤の実験と捜査と工作、終盤の解決、どちらも面白いが、個人的に一番良かったのは序盤。
ミステリとは関係なく、19世紀のイギリス・小さな島という環境によって主人公が置かれた立場が興味深い。
特にジェンダー論に関して、かなり考えさせられる。
児童文学としては難しい気もするが、面白いのは間違いなし。
Posted by ブクログ
ウソを食べて育つ『嘘の木』の果実を食べると… 暗く静かでキレイなファンタジーミステリー #嘘の木
■あらすじ
19世紀のイギリス、宗教の協議と進化論が折り合わない時代。
博物学者を主とする一家が、研究結果捏造の中傷を浴びてしまい、島に移住をしてきた。島の住民に疎まれながら、肩身の狭い生活を余儀なくされる。
娘であるフェイスは、ある日の夜中、博物学者の父に秘密の場所に引き連れられる。しかしよく朝起きると、父は不審死を遂げてしまうのだった。納得ができないフェイスは独自で調査を始めるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
これがファンタジー小説というやつか… 美しく幻想的な作品でした。
翻訳ミステリーは物語をいかに盛り上げていくかが読みどころなんですが、本作はひたすら静かに、そしてゆっくりと進行していきます。何もかもはっきりとは説明もされず、ずっと薄暗い世界を読み進むことになるのです。
そこに現れるのが「嘘の木」。
夢のような効果が得られる植物にも関わらず、やはりそこには暗澹たる世界しかない。素晴らしいダークファンタジーを体験することができました。
本作は儚げな美人を眺めているような文章で、可憐すぎるんですよ。圧倒的な筆力。じわっと心の染み入る表現が素晴らしかった。
本書 P81 引用:
女性たちがひっそりと羽をのばして素の姿になっている。
見た目の変化はなくとも、花が開くように、あるいは折りたたみ式ナイフを開くように、本当の姿を見せはじめていた。
本作は登場人物の推しは、やっぱり主人公フェイス。
控え目ながらも、父を想う優しい心と、問題解決に立ち向かう熱い姿が可愛い。19世紀イギリスでなくとも、現代の日本社会の第一線で戦っている女性たちを見た時と同じにように、勇気と生気をもらいました。
そして事件の結末と真相も、まさに胃が締め付けられるような展開でしたね… ただこれから未来のフェイスには、一筋の光が差し込んでいるような気がしました。
■ぜっさん推しポイント
書き連ねてくるテーマ性がめっちゃ痺れましたね。
作者はまだまだいっぱい作品があるので、楽しみに読もうと思います。
・女性の生き方
この時代における社会や家庭における女性の立場が、あまりにも痛み入る。どんなに優秀であっても、正しくても、権利が与えられないという現実がどれほど人の価値観を卑屈にしていくか…
・宗教と種の起源
人はどこから生まれ、どこに帰っていくのか。キリスト教の禁忌を犯した者の運命は… 深い深いテーマに人の欲が絡み合ったとき、こんな物語になるのだと感動しました。
Posted by ブクログ
これ、児童文学?
幻想に入り込むのは難しく、カタカナ名で誰が誰だかわからなくなったが、読後の不思議な満足感はなんだろうか。
単に父親殺しの犯人を探し出す…のがテーマではなく、この時代の限られた女性の生き方が語られていることに、心を奪われた。
Posted by ブクログ
もっと盛り上がるかと期待したのだが、カタルシスは弱かった。彼女が女であるだけで否定されて自信を叩き潰される様を見続けて、だからこそ大きなカタルシスを求めてしまうのだ。周りの女たちにもそれぞれの言い分があるような薄い描写もあったが、児童文学でこの雑な片付け方は、イギリスならではの皮肉なのか?これでいいのか?大きな賞を獲っているようだが、あまり納得はできなかった。
Posted by ブクログ
ファンタジー要素は少なく
40%くらいまで現実的なミステリーです。
後半は中々のトリップ感があります。
種の起源の発表後のキリスト教世界と
嘘で膨張する植物を絡ませた物語は、いつもながら児童文学とは思えないですね。
Posted by ブクログ
児童文学とは思えぬダークミステリー。
これはファンタジーとされているが
ミステリー要素が最初から散りばめられ
学者の父が犯した捏造の噂から逃れる為
一家はある島に逃げる様に移住する。
そして、父親の不審死から謎の植物の存在
が発覚する。
それは人間の吐く嘘を養分にして大きく
実がなり、それを食すと世の中の理や真実が
ビジョンとして頭の中に映し出される
と言う不思議な力をもった植物だった。
この時代の女性達は男性に従ってしか
生きられず、娘は父の死の謎を解き明かす
為に今までの抑圧された生活から
一歩踏み出し、嘘の木と父親の死の謎を
解き明かす。
抑圧されたこの物語の全ての女性達は
最後の最後に嘘の木の消滅と共に
全ての鎧を脱ぎ捨て、力強く生きるのだ。
Posted by ブクログ
時代背景をよく表した本であると思った。
当時の女性は、こうあるべきだ、といったものがとても強かったのだろう。
そして、そのように生きなければ生きられないくらい厳しい時代だったのも事実。
だが、そんな中でも少数派として生きていく人は、誰かに共感してほしく、どうにかして自分を貫いて、表には出ない形で活躍していく。
主人公の周囲を考えないで突き進んでいく行動力はよくもあり、悪くもあるが、こうあるべきだ、という概念が強すぎる時代には必要なのかもしれない。
今の比較的自由な価値観を持つことが許されるようになった時代の前には、数々の苦労があったと思う。その苦労があったからこそ、今の自由があるのだと感謝して生きていこうと思った。
Posted by ブクログ
不思議な読後感。
おもしろくて、ページをめくる手が止まらない!
というわけではなく、どういう着地をするのか、
気になって最後まで読んだ、という感じ。
嘘を与えると成長する木、という、途方もない設定なんだけど、関わる者みんながそれに取り憑かれ、
信じてしまう。そのことにそれほど違和感を感じなかったのは、それだけこの作者に筆力があったからだろう。
主人公の少女は完璧なヒロインではなかった。
悩み、時に卑屈になり、親の愛情に疑問を持ったり飢えていたり。かと思えば、この時代に似つかわしくない大胆さで意見や行動をする。
世の中の多くの少女が持つそんな特性に、読んでいて共感する部分も多いかもしれない。
少女の母親も含め、登場する女性の描き方がおもしろい作品だった。