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文字通り、芥川賞を取ることの出来なかった作品・作者にスポットライトを当てた書評本。自身にとって知らない作品・作者ばかりだったことに加え、著者の考えなど読み込ませる文章もあり一日足らずで全てを読むことが出来たため読み応え、魅力は十分だと思う。後ろの頁には過去から発売当時に至るまでの芥川賞作品タイトルを載せていることも好感が持てた。
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取り上げられている12作品中、読んだことがあったのは「いのちの初夜」だけ…。ああ、情けなや。
やはり私自身非常に感銘を受けた作品だったのと、そもそも「いのちの初夜」を読むきっかけになった書評本から北条民雄に関わるいくつかの知識があったので、その章はイメージが湧きやすかった。
選評や、ここで言われていることなど、受賞には至らなかったものの高く評価されていたこと、また彼の現状に配慮した措置がいろいろとられていたことが、妙にうれしかった。
それ以外の作品も非常に興味深く、読んでみたくなったものがたくさんあった。選評にも、選考した作家の文学的傾向とか背景とか、いろいろなものが見え隠れする、というのがまた面白い視点だ。
ただ一番驚いたのは、錚々たる選考委員の選評に、佐伯氏が忌憚のない意見をズバズバと言っていること。否定したり、わからない、と切り捨ててみたり、遠慮がない。
もちろん、全面的に同意しているものもたくさんあるのだが。
太宰治「逆行」
北条民雄「いのちの初夜」
木山捷平「河骨」
小山清「をぢさんの話」
洲之内徹「棗の木の下」
小沼丹「村のエトランジェ」
山川方夫「海岸公園」
吉村昭「透明標本」
萩原葉子「天上の花―三好達治抄―」
森内俊雄「幼き者は驢馬に乗って」
島田雅彦「優しいサヨクのための嬉遊曲」
干刈あがた「ウホッホ探検隊」
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太宰治や吉村昭、島田雅彦といった今も売れている作家の作品だけでなく、消えてしまい、読まれなくなった作家の作品にも光を当てている。作品をどうやって読んだらいいのか、大変に勉強になった。芥川賞を取れなかった佐伯さんだからこそ語り口に切迫感があり、なお良かった。
干刈あがた、森内敏雄の作品をさっそく注文してみた。
Posted by ブクログ
自分の好きなブックガイドシリーズ。でも予想してたのとは違って、これはちょっと違った目線で楽しませてくれた。芥川賞の候補に挙がった作品をつらつら並べて、それに関する簡単な紹介が羅列されてるのかなと思ったけど、そうではなかった。筆者が特に優れていると思った作品をピックアップして、なぜ取れなかったのか、そのときの評者の意見などをうまく交えながら考察していく、っていう寸法。この本を読むと、むしろ芥川賞を取っていないこれらの作品群をこそ読みたくなってくる。巻末に候補作の一覧が載ってるけど、殆ど未読の作品ばっかで、まずそっちを読めよ、って感じだけど(苦笑)
Posted by ブクログ
本書は芥川賞にまつわるスキャンダラスな出来事よりも、受賞できなかった名作にスポットをあて、鑑賞することに重点を置いています。本書のあおり文から連想するよりも、至極真っ当な文学批評ですね。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
第一回芥川賞選評で、「生活の乱れ」を指摘された太宰治。
受賞の連絡を受け、到着した会場で落選を知らされた吉村昭。
実名モデル小説を「興味本位で不純」と評された萩原葉子…。
「私小説を生きる作家」として良質な文学を世に問い続ける著者が、芥川賞を逃した名作について、その魅力を解き明かす。
[ 目次 ]
太宰治「逆行」
北條民雄「いのちの初夜」
木山捷平「河骨」と小山清「をぢさんの話」
洲之内徹「棗の木の下」
小沼丹「村のエトランジェ」
山川方夫「海岸公園」
吉村昭「透明標本」
萩原葉子「天上の花―三好達治抄―」
森内俊雄「幼き者は驢馬に乗って」
島田雅彦「優しいサヨクのための嬉遊曲」
干刈あがた「ウホッホ探検隊」
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
私自身は芥川賞に何の思い入れもなく、
賞を取った作品だからどうという事もない。
寧ろミーハーな感じがあり、近年の受賞作品は避けてすらいる。
しかしながら友人に
芥川賞を取った作品を好んで−近年に至っては欠かさず−読むという人間がいて、
その友人が勧めてくれた本。
当然のことだが受賞作品に脚光が当たりがちなわけであるが、
受賞を逃したからといって出来が悪いわけではなく、
作品の出来は十分でありながらも運悪く逃した作品は多いはずで、
そこに焦点を当てた点は非常に好奇心を刺激した。
やはり人間の選考には好みや偏見や理解や無理解・その時々の事情や背景があり、
またドラマもある。
必ずしも作品そのものの評価だけではなく、
今後の文学界や芥川賞の在り方も踏まえての選考であったりと、
表には見えない話が興味深かった。
しかしながら友人ほどの評価をしないのは、
やはり私が芥川賞という賞に興味がないからなのだと思う。