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Posted by ブクログ
・ゲノムとは体の設計図。その中にある、タンパク質生成の司令塔が遺伝子。
◎病気の発生 = 病気のなりやすさ(遺伝) + 遺伝子変異 + ジェネティクス変異
・日本人の遺伝子や体質の特徴として、以下のことがあげられる。
酒に弱い
動脈硬化を起こしにくい
内臓脂肪がつきやすく、高血圧や糖尿病になりやすい
・現代の日本人は、飲酒と過度な脂肪摂取に注意し、穀物由来の食物繊維をより取り入れるべき。
・生まれつきの遺伝子が病気の発生に影響はするものの、生活習慣の影響度合いも無視できない。
・ストレスのほか、感染症や内臓脂肪による慢性炎症は、遺伝子変異の原因になる。
・遺伝子の種類ではなく、「遺伝子のスイッチ」が重要。
・遺伝子のスイッチは、受精卵や母体の状況、生後の生活習慣など、多くの要因に影響されるため、個々人が自身の人種の遺伝子的特徴を抑え、健康的な生活習慣を心がける必要がある。
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これは面白い。分かりやすく、だからといって内容が省略され過ぎてイージーになり過ぎる事もなく。多様な文献や論文も引かれ、バランスも良い。
例えば、日本人はニコチンを分解する力が弱い、なんて知らなかった。人種や遺伝形質によるものなのか、生活習慣によるものなのか。食生活も影響するだろうし、統計は因果関係が逆の場合もあって、例えば、元気だから酒を飲めるので、一杯程度なら一杯も飲めない病気の人より健康みたいな。そんな疑問にも乗り越えてくれる。
更に、酒に弱い日本人は有害物質アセトアルデヒドが血液に多く溶けているため、侵入した病原体が活発に活動できない可能性がある、など。酒に弱い方が生き延びやすかったのではないかと言う仮説。酒に弱い人の割合は最も高かったのが三重県、次いで愛知県、石川県、岐阜県。これらはハマダラカが発生していた地域だという。こういう話は興味深い。あくまで仮説だけれど。
ピロリ菌がいると、胃の粘膜に炎症が起き、その分胃酸が少なくなる。胃酸が少なかったために逆流する事はなかったのだが、ピロリ菌の除菌が進むにつれ、かつ脂肪の摂取が増える事で、逆流性食道炎が増えた。日本人の胃は内容物をすぐ腸に送る構造になっていないため、脂肪が長時間胃にとどまって、胃酸の分泌が続く。ピロリ菌にも功罪あり。
日本人の悪玉コレステロールにはリノール酸、アラキドン酸よりもEPA やDHAが多く含まれていることがわかっている。動脈硬化の進行を抑える善玉HDLが欧州系米国人より10%多い。動脈硬化が起きにくい体質。逆に日本人が苦手なのは、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素。
更には日本人のルーツを探るような話へ。HTLV-1というウイルスによる感染症は、感染しても白血病になる人はわずかで、大多数は発症しない。この感染率が高いのは日本とアフリカ中部のナイジェリアとコンゴ、南米のブラジル、アジアでは中国南部と台湾でわずかに確認。日本でも、九州、沖縄、北海道で感染率が高く、ゲノム解析により縄文人と関係があることがわかっている。日本人はゲノムの15%を縄文人から受け継いでいる。このウイルスから、縄文人のルーツはアフリカだと言えるのかも知れない。
極め付けは、エピジェネティクス変異。子供や孫に後天性遺伝が引き継がれる可能性がある。マウスの実験ではオスのマウスに桜の花に似た香りをかがせながら、電気ショックを与える実験を繰り返し、子のマウスに対して桜の匂いを嗅がせると、子は怯える行動を2倍強く見せたとの事。
色んな観点で楽しめて、興味の幅も更に広がる。
Posted by ブクログ
遺伝子や生活習慣が与える影響についてイラストを交えて説明されていたので、理解しやすかった。
遺伝子で全てが決まるわけではなく、生活習慣の改善で対応できることもあると知れたのは良かった。
両親がアホでも
キリスト教神学の予定説を思わせる「遺伝子決定論」のような本が出回っていて「蛙の子は所詮カエル」と考えていたが、本書によるとそれは真実ではないとのこと。両親がアホでも病弱でも、節制し努力することによって悪い遺伝の発現を抑制できるとのこと。そしてその悪い遺伝の発現の抑制を次世代に引き継ぐことができるとのこと。大変に身につまされる本であった。