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タイイトル通り、万有引力定数から光速、プランク定数までの「定数」に関する解説だが、まず世界を人間が捉えるための空間や時間の単位の成り立ちから話が始まる。
距離=メートル法の確立や、時間=1秒の定義、等など、世界を把握するための基本の網目の編み方から詳しく説明してくれているし、しかもなるべく平易に、数式を使った場合もその説明を欠かさず、如何に世界を人の思考と観察を使って分析していくのかということを説明してくれる。
『宇宙を支配する「定数」』という日本語タイトルには、なにか超越的な存在を示唆するような響きが有るが、内容に関しては、徹頭徹尾西洋科学的なアプローチ、つまり人間の能力と技術の及ぶ限り対象を分析して、その存在を分割対象化していく姿勢が伺える。
物理を学校教育で学んだ時には、その世界に対する見方の面白さよりも、公式などを暗記するような作業に辟易した記憶があるのだが、本来的にはこの本の内容のように、如何に人の使えるツールを発明・開発して、それを使って森羅万象の成り立ちを人間に分かるように見極めていくのかという、ある種の物語として読むことも可能なのだろう。
人の思考によって、物理的には絶対に手の届かない遥かな宇宙の構造までもを解き明かしていくことは、とても面白い体験です。
Posted by ブクログ
実は2019年に質量と温度と電流と物理量の定義がこっそり変わっています。そういうものが今はどう定義されているのかという単位の話や、光の速さはどうやって測ってきたのかという科学史的な話など、面白い読み物でした。
Posted by ブクログ
「科学をあなたのポケットに」というブルーバックス発刊のことば通り「科学」を身近に感じさせてくれる本。先月読んだ「数式図鑑」が数学を入口まで誘ってくれたように、本書は読者をワクワクさせながら「物理定数」の世界を見せてくれました。良書であると断言していい1冊と思います。
著者の臼田孝さんは現在、国際度量衡委員会の幹事をされています。いわば「単位」の鉄人であり、「新しい1キログラムの測り方」(ブルーバックス)という著書もあります。
本書はまず「物理定数」とは何かについて、フックの法則や等加速度運動を例にとって説明。そして宇宙の時空構造というマクロの世界から、素粒子が躍動するミクロの世界へと視点を移し、章を改めながら順次、超微細構造、真空中の光速、万有引力定数、電気素量、プランク定数という重要な物理定数を取り上げ、これらに関係する物理法則と物理定数の測定決定についての概論を行います。
本書の面白いところは、例えば光速の説明をするときに長さの測定という基本的な事項についても説明しているところ。そして金属の原器による測定の限界を破るものとして光波長を使った方法を紹介しています。定数以前に我々の身近な存在である質量、温度についても定数の測定や実証実験に絡めながら説明してくれています。しかも、豊富な図表を使っているので、私みたいな文系でもすとんと理解できました。また、定数測定や実験技術の進化も読んでいて楽しかったです。
そして、最後には「宇宙進化と物理定数」の関係を説明。定数が一定不変か考察しますが、宇宙や地球の歴史、4つの力、ブラックマターにも言及されていて夢のある内容になっています。
以上、とても面白いブルーバックス。物理定数に親しむため、これから物理を学ぶ中高生に読んでもらいたい1冊です。
Posted by ブクログ
物理の中の個別テーマ「力学」や「電磁気学」ではなく、物理定数という軸で横断的に見ることで、結果として物理のテーマ全体をサラッと見渡すという体験ができる。
電流の定義が更新されているということを知らなかった。ショック。
Posted by ブクログ
宇宙に普遍定数はあるのか。今、普遍定数と思われているものは、本当に普遍なのか。
そもそも定数とはなんなのか。
定数を定めるには「測る」と言う行為が決定的に重要になる。「測る」が厳密でなければ、当然「定数」を普遍的に定めることはできない。
ヒトは、その、測ると言う行為をどのように突き詰めて来て、今どこまで来てるのか。
概念から始まった「定数」が、究極的な物理の現象から逆に規定されていく。
おもしろし。
Posted by ブクログ
ブルーバックス。最先端の研究者による、わかりやすい解説。光速、万有引力定数、電気素量など、物理定数を決定するためのこれまでの取り組みを解説。著者は産総研での計量標準総合センター長、内容は最新の2019年のプランク定数、電気素量、ボルツマン定数、アボガドロ定数の定義値化までキャッチアップされている。
上野の科学博物館に、光速や万有引力定数を測定する展示があって、非常に良い。