【感想・ネタバレ】ヒカリ文集のレビュー

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Posted by ブクログ

⚫︎感想
だれにも心を開かない、でもだれにでも真心をこめて接することができたヒカリに魅了された元劇団員たちが作り上げた「ヒカリ文集」。みんなに甘やかで特別な記憶を残して、最後まで実在としては登場しない。
家庭環境で幼少期に歪んでしまった部分が、刹那的な本物以上だと他人が感じてしまう優しさを生み出しているらしい。ヒカリ本人はどこまでも孤独が埋められない。

何人もの立場から繊細に立体的に描かれ紡がれるヒカリ。心に残る繊細な文章表現が素敵だった。


⚫︎あらすじ(本概要より転載)
二年前、東北で横死した劇作家兼演出家の破月悠高。妻の久代がその未完成の遺作を発見した。学生時代に夫妻も所属していた劇団NTRをモデルにしたその戯曲を読んだ久代は、同じく劇団員だった鷹野裕に声を掛ける。「裕、あの戯曲の続き書かない?」

相談の結果、元劇団員たちがそれぞれ好きな形式で文章を寄せることになった。作品集のタイトルは「ヒカリ文集」。劇団のマドンナであり、あるとき姿を消してしまった不思議な魅力を持った女性、賀集ヒカリの思い出が描かれてゆく。

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2024年03月13日

Posted by ブクログ

『最愛の子ども』にも感じたけど、何か物寂しいけど柔らかな気持ちになのは、やはりこの文章によるものか。とても心地よいテンポと表現で読むのが楽しみであり、読み終わるのが惜しくなってくる。皆さん言うようにいつまでも読んでいたい気持ちになる。

冒頭の戯曲形式によるイントロダクションで人間関係を説明される中でヒカリへの興味を沸かせて次の章へと移るが、この中に順平がいる事で自分自身も素直にこの中に入っていけた気がする。こうやって読者を物語に引き込むのがとても上手だと思う。

各々のエピソードを通じてヒカリ像を浮かび上がらせる流れの中で、最初はとても魅力的なファムファタールとも言えるヒカリが人との付き合いを重ねる程にどんどん自分自身の孤独感に悩んでいく姿は物悲しいけど、何だかわかる気がする。結局、人は完全に他人と分かり合えることはないとすれば、誰しもがヒカリの要素を持っていて、かつ誰しもが嘘でもいいから分かりやすいフィードバックを求めているのではないか?ヒカリを通じてそういう自分自身の中にある孤独感を見ているような気分になる。

といっても決してどんよりするわけでもない。それは全員の文章からヒカリへの愛が溢れているからか。よく考えれば、最初の戯曲部分は単なる台本なんだから本当に皆で集まってたわけでもないと思うし、おそらく劇団員にはヒカリとは付き合わなかったけど重要な役割の人もいたんだろうと思うとかなり冒頭に引っ張られて過剰に仲間意識を感じてしまっているのかも知れないとは思いながらも、心地よい空気感を楽しめた。

つまるところ、ヒカリは何を求められているか?は理解できても何を自分が求めているのか?はなかなか理解できていなかったのかな?その気持ちわからなくもない気がする。。。

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2022年06月20日

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めちゃくちゃやばいものをズルズルと一気に読んでしまった。
とてつもなく不穏なのに、幸福感で溢れている。

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2022年06月13日

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私にヒカリのような友達はいないけれど、愛情を持たないからと言って冷たい人間であるわけでもなく、愛情がないからと言ってその時々の真心が嘘であるわけでもない、そもそも人に優しくする、人を満たしてあげるのに愛情はそんな必要か?愛に何を夢見てんだ?と松浦理英子にビンタされるような本だった。

劇団員を次々に翻弄し心をかき乱しまくるヒカリという人物は確かにファム・ファタルなんだけれども、それでも等身大でそこにいる大学生で、リアリティのある魅力的な人物だった(だからこそ皆の心がバキバキになる)雪実のエピソードがいちばん好きだった。

でもこういう学生劇団ものの小説を読むたびに、いや…学生劇団ってこんなに…いいものでは…なんというか…もっと泥臭くて根性論と精神論でハラスメントが裸足で逃げ出すようなそんな空間で…こんなスノッブな人たちの集団では…ともやもやしてしまう
文学世界の中は丸ごと異世界そういうことだ!

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2022年05月28日

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寡作の人、松浦理英子がまた傑作を。
横死した劇団主催者、その遺稿の続きを5人の役者が綴る。男女の垣根を超えたその狂おしい愛が切なく胸を締め付ける。欲望、嫉妬が蠢く人間模様、とならないその人物描写、心理描写に唸ると共にぽっかりと空いた喪失感をも抱かせ、読後はしばし放心してしまった。

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2022年05月09日

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ネタバレ

思ったより爽やかな読後感でした。ヒカリの存在が確かにあったのだろうけど、幻のようにつかめない感じ。
久代さんがかなり好きなキャラクター。

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2024年02月02日

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★不在の中心の引力★年齢のことを言うのは野暮だと分かっているが、60歳を超えてこれだけ瑞々しい小説を書くのに驚く。男女を超えた性愛を受け入れる(本人から積極的ではなくあくまで受け身に見える)不在の主人公を巡り、それぞれの立場からの思いを描くことで空白を立体的に描く。同時に各人の完成性も塗り重ねていく。手法としては想定されるものだが、主人公の魅力ととらえどころのなさから、読む手が止まらない。

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2023年04月23日

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元劇団員の男女6人による文集という体の小説。主題は、6人全員が恋をした、闇を抱えつつ魅力にあふれたヒカリという女性。
サークルクラッシャー的でありながら皆に好かれるというヒカリの人物像にあまりリアリティは感じなかったが、構成として面白い小説だった。恋愛や人への依存について考えさせられた。

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2023年02月20日

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ある劇団を舞台に、奔放に生きて男とも女とも関係を持ち惑わせる女、ヒカリとの思い出を6人の劇台員が書き綴って一冊の本に仕上げたという体裁の小説。一人の女性、ヒカリを主人公として、色んな角度から書かれた短編集の集合でもある。演劇はそれほど熱心に楽しむ方ではないので、実際のところはわからないが、誰とでも親しげに接するが、常に冷静で心を心底から開くことのない、ある意味面倒くさい女は、なんとなく演劇の世界に多い気がするので、設定としては違和感なく入り込める。ただ、松浦理英子としては破綻なく今ある実世界を描いているので、意表を突かれる部分はない。

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2023年01月06日

Posted by ブクログ

「不思議」「不思議」と評されているのをよく目にして、興味を持ち読んだ。本当に不思議な作品で、ヒカリ自身のことはよく分からず終わったけど、それが魅力的。…でも、ヒカリ視点で一冊読みたい!(笑)

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2022年09月19日

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松浦理英子恋愛小説の第一人者がつづる感動作、劇団員6人が恋した「ヒカリ」とは謎が謎を呼ぶラスト「どこにいても、ヒカリが今そばにいる人たちに僕らにくれたのと同じようなものをあげてるならそれでいいさ」題名内容も深い意味を感じ取る奇跡の大傑作をの読んで下さい。

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2022年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

登場しない人物について
複数の人物が語ることによって
その人物像が浮かび上がる…

みたいな小説はたまにあるが

こちらは
ヒカリ、登場する〜
けっこう詳細にどんな人物か
紹介されるし
本人がどんな気持ちだったかも
けっこうちゃんと書かれてる

ヒカリ
近くにいたら
好きになっちゃうんだろうな
そし
苦しい別れを経験することになるんだろう

こういう人
実はけっこういるんじゃないか

フツーにいい人でかわいくて
愛嬌もあって
割と能力もあって
勘も良くて察しもよくて
でもたぶんアロマンティックなんだろう
(ある意味アセクでもあるのか?)

劇団という
日常から隔離された密室的集団の中で
そんな人と密に接していたら
絶対に好きになってしまう
それは蜜の味なのか
それとも…




ヒカリ
あなたは今いる場所でも
変わらず光を放ちながら
求心力を持ち続け
人を惹きつけているの?
決して満たされない心を持ちながら…

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2024年04月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新しいファムファタールのお話、ということで読みましたがこれがファムファタールなのだとしたら確かに新しい。
誰からも好かれるヒカリさんは劇団員のいろんな人と付き合う。
そして誰の心にも「穴」を残している。
恋愛感情はどうしてもエゴが入る。
誰よりも好きなあの人に誰よりも好きだと思ってほしい。
それが叶えられないのはお互いが苦しい。
でも好きになっちゃう。
だってあの子は可愛く笑う。
だってあの子は私が過ごしやすいようにしてくれる。

「好き」の定義、好かれることの意味、いろいろ考えてしまうなぁ。

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2022年09月28日

Posted by ブクログ

もと劇団員だったヒカリについて、亡くなった劇団主宰の遺稿をもとに、それぞれが文章のの形で表現する。今ヒカリは何をしているのだろうと苦くあたたかい気持ちで振り返る過去。6人6様のヒカリとの関係感情の揺れが彼女を浮かび上がらせる。それぞれにとって運命の人だったのだ。

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2022年05月31日

Posted by ブクログ

アイデアが面白いと思う。ヒカリという女性について各々が語るというもの。

わざとそうしているのは理解できるけど、私にとっては容姿の描写が少ないことはマイナスだった。

笑顔とか形容詞や比喩表現はうざいほどあるのに、人物の映像になる描写はほとんどない。だから映像にならなくて、入ってこなかった。

例えば、ホストみたいな容姿と書かれているだけで、キリッと濃い眉とか鷲鼻とか厚い唇とかそういうのは書かれていない。身長も体格も1人だけしか描写がない。
考え方や性格がある程度分かれば容姿は関係ない、寧ろ容姿自体を書くことが違う、という意図なのだと感じる。
でも、人物がモヤッとした煙のままだからどんな状況描写もリアルさがなく朧げ。

回想だからハッキリさせないのが狙いなんだろうけど、ハッキリ映像化しても問題なく成立すると思うから像を創って欲しかった。

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2022年03月31日

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