【感想・ネタバレ】南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学のレビュー

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Posted by ブクログ

 まず、南極が巨大な氷のかたまりを乗せている場所である。その氷の大きさなのだが、日本の37倍の面積✖️平均的な厚さ1940メートルというバカでかい氷の塊なのだ。そしてこの氷の塊が全て溶けると、現在の海水面を100メートル以上上昇させてしまうというのだから驚きである。そして過去には何度も南極にも北極にも氷のない時代があり、その時には海水面は140メートルほど高かったのだ。
 そして過去繰り返してきたダイナミックな気候変動が、人間の活動によって明らかに歪められ、異常な変化を起こしている。人間の活動は、温室効果ガスにより1.5°ほど、大気汚染で−0.4°程の影響を及ぼしており、温室効果ガスはこのままだと急速に影響力を高めるようだ。どうなるかを予測するのはとても難しいのだが、大きな流れからすれば、いずれ人間が現在のような規模で生息していられる時代はそれほど永くは続かないのだろう。
 氷河や氷床が地球環境にこれほど大きな影響を与えているというのは驚きの事実で、このことを知っただけでもこの本を読んだ価値がある。

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2021年12月12日

Posted by ブクログ

南極の観測技術が飛躍的に向上した事で、温暖化の影響で、氷が融けて海水準が上がるという予測に変化した。この分野は10年前の教科書では古いのだという。昔より正確に予測ができるようになったという事は、つまり、それだけ脅威が現実味を帯びるという事でもある。本書には、海水準が上がった際の日本地図が載せられる。ドキリとしながら、読む。

融ける量より降る量が多いから積み重なる。氷になり、それが十分に厚くなる事で自らの重みで流れ出す。氷の涵養と消耗のバランスによるのだという。考えてみれば当たり前の事かとも思うが、現象や影響をよくわかっていない。その点を、本書が明確に解説してくれる。南極の平均降水量は砂漠並み。ごく稀にやってくる低気圧が齎す降雪と、少量だが頻繁に降るダイヤモンドダストにより涵養される。棚氷は既に海水内部のものなので、それが融解しても海水準は変化しない。しかし、棚氷崩壊に続いて氷床から海への氷流出が増加する点が問題である。また、棚氷の底面融解による海水塩分の減少。これにより塩分が薄まれば、海水の密度が下がって沈み込みが弱まる。南極沿岸における海水の沈みこみが温暖化する大気の熱を海中へ運び、二酸化炭素の吸収も行っている。こうした海洋循環に影響が出れば、気温の上昇がする危険性がある。「陸上にある氷の海への流出」と「塩分が薄まる事での海洋循環の影響」のダブルパンチで、水面上昇が懸念される。

更に細かく、信頼性を高めるような予測データの話。現在の気温を19世紀と比較すると、温室効果ガスの増加によって1.5度温暖化している。またその一方で、大気汚染によって空気中に微粒子が増え、太陽光が遮られるようになったため、気温が0.4度低下したこともわかっている。太陽活動や火山噴火といった自然要因の気温変化は±0.1度。差し引き1.1度が人間活動による気温上昇と言える。太陽光の遮断や太陽活動までシミュレーションした上で、尚、温暖化するというのだ。

緻密ゆえ、不安が高まる。グリーンランド氷床と山岳氷河は21世紀の温暖化によって致命的な融解が予想されており、修正は困難。一方で、南極氷床は2100年まで融解量は比較的小さい。360ギガトンの水で海水面1mm上昇。南極からは、毎年100ギガトン程度の氷が減っています。ちなみに、日本で消費される生活水は年間約13ギガトン。

正直、地球温暖化はエネルギー政策の陰謀論的な側面もあるのだろうと楽観視していた面もあるのだが、本書を読むと、深刻さが増す。勉強になり、不安にもなった。

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2024年04月18日

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まず冒頭驚いたのは、この地球上に存在する水の殆どが南極に氷として閉じ込められている事。

日本人が一年間に使う水のおよそ200万年分もあるらしい。

異常気象が言われて久しいが、筆者はイタズラにそれを煽ることもなく、どちらかというと淡々と、観測データに基づき今南極に起きていることを分析し記述している。分かりやすく書いてありその姿勢には好感が持てる。

気の遠くなるような年月の中での気象循環が、残念ながら人間活動によって歪められているのはほぼ間違いないが、それを止める有効な手段が見出せないのが今の世界である。
南極の氷にほんとに大きな異変が起きてからでは、その対策は全くの手遅れになるだろう。政治の世界と科学の世界が手を結び、なんとかせんといけないと再確認した。

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2023年08月13日

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地球上にはまだまだ人知の及ばぬ世界がある。南極の氷床研究から占う地球温暖化の行く末。

二酸化炭素の増加、地球温暖化によって南極の氷が融け海面が上昇するという話は良く聞くところ。だが実は南極の氷がどのように溶けるか、特に氷床の底面の融解は未だ謎が多いという。

これぞ研究の醍醐味。未だ多くの仮説の存する世界。海面がどれだけ上昇するかも正確には予測できない。

最先端の研究から見た気候変動、素人にも分かりやすい記載の一冊。

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2022年04月05日

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単に恐怖を煽るだけでなく、最新のデータをベースにした南極の姿は、とても興味深かったです。
何より南極について10年前のデータは、もはや役に立たないといったところが一番記憶に残りました。全体を通してとても面白かったです。

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2022年02月18日

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南極の氷って面白い。第1章の南極氷床の基礎知識からして、知らないことばかり。南極氷床の氷は2450万ギガトンあり、日本人が生活に必要とする水を約200万年間にわたって賄える計算になるとは驚きだ。
第2章にある南極の氷の変化の計測も興味深い。重力観測衛星GRACEの2つの機体の名称がトムとジェリーとはネーミングセンスが良い。
第4章の南極の変異がもたらすものは、海洋大循環の停滞が特に面白かった。
南極の氷にはまだまだ未知の部分があるので、今後の研究結果が楽しみだ。

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2021年12月31日

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南極にある巨大な氷(正確には氷床)の事は、温暖化に絡んでニュースにも登場しますが、その実像はあまり知られていません。本書は南極の氷床を研究する筆者による分かり易い、かつ非常に内容に富んだ南極の氷床に関する新書です。
南極に存在する巨大な氷を氷床と呼びますが、そのスケール感は想像以上に巨大です。1辺の長さ1㎞の立方体の水の重さが1ギガトン(1000000000トン!10憶トンですね)となるのですが、この単位を使うと日本全土で1年間に降る降水量が640ギガトン、日本全国で使用される生活用水の総量は13ギガトンとなります。南極氷床の総量は約2540万ギガトンで、日本全国の降水量の約4万年分、生活用水の約200万年分という途方もない量です。そして地球上にある氷(ヒマラヤ山脈などの山岳氷河なども含む)の約90%が南極に存在しています。この規模ですから、南極に存在する氷が全て溶けたら、海水面が世界全体で約50m!上昇するというのも理解できます。
これ程まで巨大なスケール感であることを分かり易い例を挙げて紹介され、そして次に本書で触れられるのが温暖化、気候変動と南極氷床との関係です。南極では21世紀に入って平均して100ギガトンの氷が失われているそうです。100ギガトンというのが相当な量であるというのが先の例からもわかると思いますが、それでも南極の氷床全体から比較すると25万分の1です。これを”たった25万分の1”と捉えては非常に危険だという根拠が、本書後半で解説されています。詳細は本書をご覧いただきたいのですが、地球の気温が数度上昇しても南極の気温が氷の融点を超えることはなく、氷が融解する効果よりも温暖化した熱を海洋が取り込み、暖かくなった海洋にため込まれた熱によって南極の氷床が氷山となって流出する効果が非常に大きくなるとの事でした。
温暖化、気候変動について非常に大きな影響力を持つ南極氷床について、読者の興味をうまく引き出している1冊だと思います。難解な理論や表現も少なく、大変読みやすい印象でした。

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2021年12月19日

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p.63 過去62回の観測隊で派遣された人数は3500人

p.83 支えを失った氷河の流出は加速する
p.85 棚氷が氷河を押しとどめている
p.86 氷床変動のまとめ
p.93 底面融解→接地線後退→棚氷崩落

温暖化→海水温上昇→底面融解融解というシナリオ

p.101 溶けた氷は海水の塩分濃度を下げ、海水温を低下させてしまう。
海流は熱を運び、世界の気候や生態系に関与している。大気にも関与している。
氷床の重みはマントルを押す。

p.103-p.104 1900-2018で海水面は18センチ上昇。
海水の膨張と量の増加が原因でその出所は、ヒマラヤ、アラスカなどの山岳氷河が半分を占め、残り半分は南極、グリーンランドの氷床。

p.108 西南極が融けると海水面は5m上昇

p.114 海洋への淡水流入が海洋大循環を阻害する
p.146-p.147 将来予測についての意見
1、100m相当の氷床変動は起きている
2、人の営みが予測を難しくしている(特にCO2濃度は異常p.148)
p.165 p.175 2019IPCCの焦点は2100年までの環境変化が焦点に
・1.1mの海面上昇を予測
・大気、海洋、陸地の温暖化は人間活動による
・現在の二酸化炭素濃度は異常
p.174 生物の存在 その場に行かないと測定できないことが南極にはたくさん残っている

p.184 行かなくてはいけない理由‼︎
降雪量は現地で測定するしかなく、人工衛星(高さのみ測定)では何による標高変化なのか区別できない

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2021年11月21日

Posted by ブクログ

南極大陸の氷床は、面積で日本の40倍、厚さでは平均2㎞、場所によっては4㎞を超えるという。そしてその氷のすべてが解けると海水面は60メートル上昇すると予想されている地球最大の氷の塊だ。その塊が、今急速に溶けだしている。果たしてこの氷の大陸で何が起こっているのか。そして意外と知られていないこの謎多き南極の実像を、最新の観測結果をもとにレポートしている。

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2022年06月11日

Posted by ブクログ

南極の現状と未来について書いてある本です。専門的な記述も一部出てきますが、読みやすい本です。
環境問題に興味ある方に特におすすめで、温暖化の影響で南極がどうなっているかがわかります。
南極の氷がすべて溶けるとどれくらい海水面が上がるのか、そもそも、南極はどのようにできているのかがわかります。
また、南極が地球に与えている影響、役割もわかります。
南極の状況を通じて、環境問題を考えるきっかけになる本です。

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2022年03月03日

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