ユーザーレビュー 南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学 杉山慎 まず、南極が巨大な氷のかたまりを乗せている場所である。その氷の大きさなのだが、日本の37倍の面積✖️平均的な厚さ1940メートルというバカでかい氷の塊なのだ。そしてこの氷の塊が全て溶けると、現在の海水面を100メートル以上上昇させてしまうというのだから驚きである。そして過去には何度も南極にも北極に...続きを読むも氷のない時代があり、その時には海水面は140メートルほど高かったのだ。 そして過去繰り返してきたダイナミックな気候変動が、人間の活動によって明らかに歪められ、異常な変化を起こしている。人間の活動は、温室効果ガスにより1.5°ほど、大気汚染で−0.4°程の影響を及ぼしており、温室効果ガスはこのままだと急速に影響力を高めるようだ。どうなるかを予測するのはとても難しいのだが、大きな流れからすれば、いずれ人間が現在のような規模で生息していられる時代はそれほど永くは続かないのだろう。 氷河や氷床が地球環境にこれほど大きな影響を与えているというのは驚きの事実で、このことを知っただけでもこの本を読んだ価値がある。 Posted by ブクログ 南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学 杉山慎 南極の観測技術が飛躍的に向上した事で、温暖化の影響で、氷が融けて海水準が上がるという予測に変化した。この分野は10年前の教科書では古いのだという。昔より正確に予測ができるようになったという事は、つまり、それだけ脅威が現実味を帯びるという事でもある。本書には、海水準が上がった際の日本地図が載せられる。...続きを読むドキリとしながら、読む。 融ける量より降る量が多いから積み重なる。氷になり、それが十分に厚くなる事で自らの重みで流れ出す。氷の涵養と消耗のバランスによるのだという。考えてみれば当たり前の事かとも思うが、現象や影響をよくわかっていない。その点を、本書が明確に解説してくれる。南極の平均降水量は砂漠並み。ごく稀にやってくる低気圧が齎す降雪と、少量だが頻繁に降るダイヤモンドダストにより涵養される。棚氷は既に海水内部のものなので、それが融解しても海水準は変化しない。しかし、棚氷崩壊に続いて氷床から海への氷流出が増加する点が問題である。また、棚氷の底面融解による海水塩分の減少。これにより塩分が薄まれば、海水の密度が下がって沈み込みが弱まる。南極沿岸における海水の沈みこみが温暖化する大気の熱を海中へ運び、二酸化炭素の吸収も行っている。こうした海洋循環に影響が出れば、気温の上昇がする危険性がある。「陸上にある氷の海への流出」と「塩分が薄まる事での海洋循環の影響」のダブルパンチで、水面上昇が懸念される。 更に細かく、信頼性を高めるような予測データの話。現在の気温を19世紀と比較すると、温室効果ガスの増加によって1.5度温暖化している。またその一方で、大気汚染によって空気中に微粒子が増え、太陽光が遮られるようになったため、気温が0.4度低下したこともわかっている。太陽活動や火山噴火といった自然要因の気温変化は±0.1度。差し引き1.1度が人間活動による気温上昇と言える。太陽光の遮断や太陽活動までシミュレーションした上で、尚、温暖化するというのだ。 緻密ゆえ、不安が高まる。グリーンランド氷床と山岳氷河は21世紀の温暖化によって致命的な融解が予想されており、修正は困難。一方で、南極氷床は2100年まで融解量は比較的小さい。360ギガトンの水で海水面1mm上昇。南極からは、毎年100ギガトン程度の氷が減っています。ちなみに、日本で消費される生活水は年間約13ギガトン。 正直、地球温暖化はエネルギー政策の陰謀論的な側面もあるのだろうと楽観視していた面もあるのだが、本書を読むと、深刻さが増す。勉強になり、不安にもなった。 Posted by ブクログ 南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学 杉山慎 まず冒頭驚いたのは、この地球上に存在する水の殆どが南極に氷として閉じ込められている事。 日本人が一年間に使う水のおよそ200万年分もあるらしい。 異常気象が言われて久しいが、筆者はイタズラにそれを煽ることもなく、どちらかというと淡々と、観測データに基づき今南極に起きていることを分析し記述している...続きを読む。分かりやすく書いてありその姿勢には好感が持てる。 気の遠くなるような年月の中での気象循環が、残念ながら人間活動によって歪められているのはほぼ間違いないが、それを止める有効な手段が見出せないのが今の世界である。 南極の氷にほんとに大きな異変が起きてからでは、その対策は全くの手遅れになるだろう。政治の世界と科学の世界が手を結び、なんとかせんといけないと再確認した。 Posted by ブクログ 南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学 杉山慎 地球上にはまだまだ人知の及ばぬ世界がある。南極の氷床研究から占う地球温暖化の行く末。 二酸化炭素の増加、地球温暖化によって南極の氷が融け海面が上昇するという話は良く聞くところ。だが実は南極の氷がどのように溶けるか、特に氷床の底面の融解は未だ謎が多いという。 これぞ研究の醍醐味。未だ多くの仮説の存...続きを読むする世界。海面がどれだけ上昇するかも正確には予測できない。 最先端の研究から見た気候変動、素人にも分かりやすい記載の一冊。 Posted by ブクログ 南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学 杉山慎 単に恐怖を煽るだけでなく、最新のデータをベースにした南極の姿は、とても興味深かったです。 何より南極について10年前のデータは、もはや役に立たないといったところが一番記憶に残りました。全体を通してとても面白かったです。 Posted by ブクログ 杉山慎のレビューをもっと見る