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Posted by ブクログ
大作『指輪物語』へと繋がるファンタジー小説。
ホビット(小人族のひとつ)のビルボ・バギンズが、魔法使いガンダルフに誘い出され、13人のドワーフ(同上)たちとともに、龍から宝を取り戻す旅へ出る物語。
「地面の穴のなかに、ひとりのホビットが住んでいました。穴といっても、ミミズや地虫などがたくさんいる、どぶくさい、じめじめした、きたない穴ではありません。(中略)なにしろ、ホビットの穴なのです。ということは気持ちのいい穴にきまっているのです」―――といった調子で物語は始まる。語りかけるような文体だからか、馴染みがないはずの異世界へ、読者が自然に分け入っていけるように感じる(瀬田貞二の訳文の巧みさもあるのだろうと思う)。巻頭に掲げられた地図をはじめとした寺島竜一の挿絵も、物語によく馴染んでおり、眺めていて楽しい。
主人公のビルボが、50歳ぐらいの分別ある大人であるのがまた面白い。冒険に憧れる血筋を持ちながら、足を踏み出すことのなかったビルボが、(事件に巻き込まれるだけでなく)大活躍を始めるところで上巻は終わる。下巻の展開がとても楽しみ。