【感想・ネタバレ】剣闘士 血と汗のローマ社会史のレビュー

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Posted by ブクログ

古代ローマの公認殺人競技である剣闘士興行。当時の熱狂はすさまじく、各地に円形闘技場が作られ、祝祭日などは民衆がこぞって闘技場に集うような最大のイベントであり、
政治家も剣闘士興行の人気にあやかり、当選するための手段として剣闘士興行をいかに多く開催するか、いかに派手な演出を凝らした舞台を用意するかといった公約も考えて選挙に望んでいたようだ。

剣闘士を構成する立場の人達は、下層奴隷や犯罪者といった人達が多く、それゆえに自分たちとは立場の違う人達の流血試合を催事として楽しむことに罪悪感はなく、むしろ高揚感の方が勝っていたのだろう。

しかし、紀元前1世紀~紀元1世紀ぐらいの平和なローマ時代では、健闘した闘士は敗北しても生かすチャンスが与えられるなどの恩赦もあり、死者数もそれほど多くなく、あくまでも当時の倫理観のなかでの興行として生活のなかに溶け込んでいたが、時代とともに徐々に流血を求める願望が強くなり、剣闘士興行は終わりを迎える。

剣闘士興行ごとに必ず死者を出さなければならないことは、育てた剣闘士を失うことでもあり、剣闘士団体を維持していくコスト増に見合わなかったことが原因だったようだ。

剣闘士興行に対して批判的だったり、肯定的な哲学者や宗教団体もいたそうだが、倫理や人道的な問題ではなく、最後は結局予算的な都合による幕引きとなってしまったのがなんとも現実的ではある。

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2022年02月03日

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