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Posted by ブクログ
それぞれの作品から、家族の繋がりや、障害への社会の壁、生きづらさ、けれど、生きていく強さを、感じました。
主人公の家族も、葛藤しながら、家族らしくになっていく過程が、伝わってきて、読んで、よかったです
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今回もすごく良かった。
娘さんの成長についてもっと読みたかったけど、
人工内耳のこととか、
先天性失調児をどう育てていくか、
様々な葛藤が描かれていたのが
胸を打った。
障害者雇用制度についても、
問題はいろいろあるんだろう。
うちの職場にもいらっしゃるけど、
半年〜一年くらいで替わられている。
やっぱり働きにくいんやろうなぁ。
私も確かにコミュニケーションとれていないしなぁ。
身近なところから始めていこう、と
問題意識を持たせてくれます。
それぞれの世界で
手話通訳士の荒井尚人。前作から時がかなり経過し、みゆきと結婚後、女の子を授かる。その子には聴覚障害があった。どのように育てて行くか、尚人とみゆきの葛藤。同時に4つの物語が並行して展開する。聞こえることが普通の私には、聞こえない世界がどんなものか想像できない。しかし、それぞれの世界で、悩みながらも成長してゆく。尚人、みゆき、美和と瞳美、そして司の今後が気になって仕方がない。
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前作も自分の「無意識の偏見」に気づいて衝撃だったが、今回も2話目に出てきた医療従事者の一言に考えさせられた。
ろうという個性、そのありのまま、ではいけないのか?と。
自分の周りが自分と同じような人ばかりではなく、カラフルな様々な個性をもった人がいるのだということを再認識する作品。
その個性ゆえに生きにくさを感じている人もいて…自分はそんな色々を感じられるようでありたい、とか思う。
そして主人公家族の成長を楽しみに読んでいる。
次の作品も読もうと思う。
Posted by ブクログ
「デフ・ヴォイス」3冊目。
みゆきと再婚し家事や美和の世話もしながら手話通訳士を続ける荒井が出会う4つの事案。
第一話、「聴こえる人たち」中心の社会にあって「聴こえない人たち」が不便を強いられる中で、せめて命にかかわることだけでももう少し何とかならないかというぎりぎりの思い。
聴こえない被疑者の調書に『コップが床に落ちてガチャンと割れ』と書く警察の取り調べに始まり、通訳に専門知識が必要な病院での通訳、使えない110番・119番システム、災害があった時の緊急放送、交通機関での事故があった際のアナウンス…、積み重ねて語られる話に今更ながら現実を認識する(作者のあとがきを読めば、本が書かれた頃からは「聴覚障害者のための緊急通報システム」には改善が進んでいるようだが)。
すぐに救急車を呼ぶことが出来ずお腹の中の赤ちゃんを亡くした女性の慟哭に涙を禁じ得なかった。
第二話、一転して、売り出し中のろう者のモデルの通訳を任される。
手話がクールだとかブームだとか言われると違和感がありあり。
イメージが大事なのだろうけど、そういうイメージを作ろうとする世界にろう者の思いを背負っていくにはHALくんはあまりに繊細過ぎた。なので、エピローグで再び登場した姿には嬉しい驚きがあった。
第三話、今度は急死したろう者の素性を刑事の何森とともに探ることになる。他の話とはだいぶ趣が異なる旅情や望郷の念が溢れた渋いお話。
ここでまた「地域手話」という“言語”について初めて知った。
それを手掛かりに訪れた瀬戸内海に浮かぶ島での奇跡のような出来事に胸を打たれる。港での水揚げの光景も良い。
第四話、勤め先を雇用差別で訴えているろう者の女性を原告とした民事裁判の法廷通訳をしてほしいという依頼が舞い込む。
障害者雇用促進法における、就労する障害者に対する合理的配慮についての論議。実際にあった裁判事例をモデルにしているようだが、実際には会社を訴えることがないだけで、あっても不思議でないような事例に思える。
障害がある人を雇用する以上は個々の特性や困りごとに合わせてしっかり対応していくことが必要なのは言うまでもなく、自分たちの会社の社員に『透明人間になってしまったような気がしました』というように感じさせないようにしたいと改めて思った(障害がある人に限った話ではないが)。
各話のエピソードと並行して語られる、荒井とみゆきの間に生まれた「聴こえない子」瞳美の育て方や荒井の甥・司の悩み深き行動の描かれ方にも惹かれるところがあった。
『一人でも障害児を減らせるよう』という障害がない者からすると何気ない言葉の罪深さも知れた。
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デフ・ヴォイスシリーズ第三弾。
ろう者が緊急時に通報することの難しさが浮き彫りに。
健常者には当たり前のことが、ろう者にとってはそうではない。
分かっているつもりで、まだまだ分かっていなかったことに気付かされた。
ラスト、彼女自身には聞こえない慟哭が、胸を刺す。
他に、ろう者が会社を訴えた民事裁判、手話を只のパフォーマンスのように扱われ苦悩する、ろう者でモデルのHAL、悪い道に踏み入りそうになっている甥の司。
どの話も苦しく、ろう者たちの叫びが聞こえてくるようで、胸が痛む。
「静かな男」はシリーズの中では異色だが、何森の人の良さも知れて、切なくも温かく、良かった。
毎回、新たな気付きがあって、知れて良かったと思う。
次回作も期待。
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シリーズ第3弾
それぞれ違って、また聾の世界に近づけてとても興味深い。
荒井尚人は、コーダで悩んだ事もあると思うが、彼のような手話通訳士がいる事で助かる人がいる事もきっと事実。技術的な事は小説ながら羨ましく思ってしまう。
4つの短編だが、それぞれまた深く、刑事の何森が主人公になる「静かな男」とても興味深い。
愛媛県宮窪町で使われている「宮窪手話」をモデルに、出身者のろう者、矢野羽衣子さんの研究内容を参考に書かれているらしい。
Posted by ブクログ
より深く聴覚障害者の世界に触れられる本作。もう既にシリーズの虜である。どの話も当事者の悩みや現実を掘り下げる。荒井夫婦の苦悩からの決断もいい。
そうなのだ。自分でなくてもいいのだ。苦悩者に適した人を繋ぐハブでありたい。次作も楽しみ。何森刑事のスピンオフ作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
手話通訳士「デフ・ヴォイスシリーズ」第3作の短編集。ろう者と産婦人科に付き添う話、甥がろう者で進路に悩む話、ろう者のモデルの話、身元不明の遺体がどうやらろう者らしいという話、聴覚障害者に対して会社で配慮されない話など。
どれもすごく面白かった。特に第一話のラストは切ないというかなんというか・・・
Posted by ブクログ
とてもよかった…水久保手話というのがあるのね〜
書きたいものがあっても、書かなくてはならない理由がなければ、完成しないのが小説だってどこかの誰かが言っていたけど、そうかもしれないね
Posted by ブクログ
第1話 慟哭は聞こえない 第2話 クール・サイレント
第3話 静かな男 第4話 法廷のさざめき
エピローグ
耳から得る情報や言葉で発する情報のなんと多いことか。
自分の口から出ていく情報は自分の耳が機能してこそ正しく発信できるのだと思い知らされた。
言葉を出せなくても思いが伝わる場面があるけれど、概要であり雰囲気であり気配でしかない気がして悲しい。
それでも、少しずつ少しずつ辛い思いをする人が減っていく社会に住んでいたい
鈴と小鳥とそれからわたし みんな違ってみんないい
Posted by ブクログ
デフ・ヴォイス第三弾
結婚して子供が産まれた荒井
その子供は耳が聞こえない子…
新生児の頃からの補聴器、人工内耳、それについての葛藤…
もうこのシリーズずっと続いて欲しい(T ^ T)
龍の耳のえいち君が中学生でちょっと登場したのも嬉しかった♪
Posted by ブクログ
1/100
全4話 丸山正樹ワールドはやはり素晴らしい!
聾者のおかれた現実は本当にそうなのかと気持ちがいっぱいになる。
もっと知りたい!
そう感じます。
Posted by ブクログ
デフ・ヴォイスを読むといつも思うのですが、歩み寄ろう、お互いを理解し合おう、差別を無くそう、お互いの権利を認め合おう…もちろん、そうやって尽力していくことは大事なことなんですが、なんて言うか…根本的な部分では永遠に無理なんではないかと思ってしまいます。それは社会的弱者だけの話ではなく、人間の性みたいなものとして。
インフラ整備は当然のこととして、権利の押し付けや、親切の押し付けみたいなものではなく、ただ、「助けてほしい」「困っている」と気軽に声を上げられて、気軽に助け合える環境になればいいなと思います。「してもらった」「やってあげた」ではなく、親切の押し付けでもなく、その人が必要な時に必要なだけ。
広い世界に飛び出して、いろんなことを知るのもいいことなのですが、狭い世界でもわかり合える人がいるならいいじゃないかと思えます。
荒井一家の今後も見ていきたいですね。
Posted by ブクログ
慟哭は…聴こえると思った。
聴こうとしないだけで、聴こうと思えば聴こえると。
声って、音だけじゃない。
こっちの鼓膜が震えて聞こえるんじゃなくて、心が震えて聴こえるもんだろう。
それは、そんなに難しいことなんだろうか。
前を歩いていた人がリンゴを落としたら、拾うだろう。
小さい子が1人泣いていたら、頭に手を置いてやるだろう。
痛がってる人がいたら、気にかけないか?
それは、そんなに難しい事じゃない。
誰だって気付いて欲しい
だから聞こえる声よりも
聴こうとする感性を大事にしたい。
Posted by ブクログ
自分が知らない世界が広がっている。
静かな男
の、親には心配かけまいと取り繕ってしまう優しさが泣けてしまう。
それでも報われないのが泣けてしまう。
ハンディキャップを持ってる人って、
生活か大変なんだ、
平等に生きやすくなるといいと思いつつ、
自分に余裕がない時に歩み寄ることがてきるのかと葛藤を抱いてしまった。
偽善っぽい自分の汚さを感じてしまった、、、
Posted by ブクログ
シリーズ三作目、四編の連作集。医療、エンタメ、方言手話、障害者雇用について。
娘の誕生、思春期かつSODAとなった娘の美和、甥の司の進学問題と非行など、子どもをめぐるあれこれも描かれて奥行きが深い。
ミステリ要素はほぼなく、差別や苦悩、葛藤がズームアップされているので読んでいて苦しい。
ドラマ「サイレント」からの手話ブームに、HALの葛藤が重なる…。一過性のブームで終わらないよう、色々な面でのバリアフリーにつなげていかないといけないなと思った。
Posted by ブクログ
社会に出た後の聴覚しょう害者がぶつかる現実を知った。いち聴者として生活を送る中で情報が入ってくることがなく、第1弾から今回の第3弾をきっかけで知る機会を得た。
自分の生きている世界は狭い。知らない世界がある。自分はどの立場で何ができるか、もっと知る必要がある。
話の内容も重い内容も含まれているが、最後はあたたかくて、やさしい結末であり安心しました。
Posted by ブクログ
シリーズ3作目で荒井ファミリーの中でも時が経過し、知り合いの子の成長を見る感覚。もし自分が聴こえない子の親になったら、医師の説明にすがって装着しそうな人工内耳について、色々な選択があることを知って考えさせられました。
また、聴こえない人が忙しい職場で孤立していく過程などは身につまされます。ストーリーを楽しみながら社会を見る引き出しが増えました。
Posted by ブクログ
シリーズ第三弾。
ろう者の方々が抱える事情と手話通訳士の関わりを描く、連作四話(+エピローグ+)が収録されています。
本作で主人公・荒井は、みゆきさんと入籍して、瞳美ちゃんという娘を授かります。
“聴こえない子”であることが判明した瞳美ちゃんと、多感な時期を迎えたみゆきさんの連れ子・美和ちゃん。そして悩める甥っ子の司くん等々・・・。各短編と並行して荒井ファミリーの変化の過程も描かれています。
毎回新たな気づきを与えてくれる、このシリーズ。
表題作の第一話「慟哭は聴こえない」では、ろう者の方の緊急通報が困難という問題で、119通報ができずに危険な状態になってしまった、ろう者の妊婦さんがお気の毒すぎて胸が痛みました。
そして、第三話「静かな男」は、いぶし銀キャラ・何森刑事視点でお送りする話で、行き倒れたろう者の素性を探る為何森さんと荒井さんが旅に出る展開なのですが、話の終盤で、テレビ画面越しに手話で語りかける息子の姿を観て反応する老母の姿には思わず涙があふれてきました。
興味深かったのは、ここで登場する「水久保手話」という地域独特の“村落手話”の存在です。あとがきによると愛媛県の「宮窪手話」というのがモデルとのことで、いやぁ、デフ文化は奥深いですね。
そして、前作『龍の耳を君に』の登場人物達が再登場したのも嬉しかったです。
どの話も考えさせられる内容で、多くの方に読んで頂きたいシリーズですね。
Posted by ブクログ
聴者の無神経、無理解で、ろう者が心を傷つけられている場面が多く見られ、こちらも腹立たしい気持ちになりました。
手話は一つの言語だという記述も何度かありましたが、第4話でたくさんのろう者が法廷で「傍聴」していて、手話が飛び交うのを観た裁判長が「私語を謹んで下さい」と言ったのですが、それは手話を言語の一つだと認めたという証拠あり「裁判長、よくぞ言ってくれた」と思わずにはいられませんでした。
Posted by ブクログ
デフ・ヴォイスシリーズの3作目。
ろう者の事件とサブストーリーたる手話通訳士の家族の物語とが上手く織り合わされ、深く優しくて心に残る連作集。
このシリーズやっぱ面白く、ろう者をめぐる新しい知識が増えると言う意味でも、安定、ぐいっとおすすめ。
ただ3作連続で読んで結構満腹なので4作目は文庫になるまで少し待とうかなと思う。この家族の行く末はかなり気になるけど、4作目は、ろう者のコロナ禍マスク社会での困難さも描いているとのことで、時代の出口が見え難い中、ちょっと間を置いてもいいかなと。でもスピンオフ作品に行くだけなんだけど
Posted by ブクログ
デフ・ヴォイスシリーズ3作目
短編4作を収録
・慟哭は聴こえない
・クール・サイレント
・静かな男
・法廷のさざめき』
全体を通して見れば、荒井さんの家族のお話
みゆきとの入籍
そして、子供の誕生……
兄家族との関係、甥の司の進路
瞳美の人生の選択
・慟哭は聴こえない
ろう者夫婦の出産
産婦人科の受診に同席する荒井さん
病院に限らず、特有の専門用語ってありますよね
言葉をそのまま伝えるのではなく、意味を伝えるのが通訳の本来の役割なんでしょうけど、なかなか難しいと思う
110、119は電話による緊急連絡番号ですけど、ろう者にとっては使えないツールですからね
「もっと早くに」と言われてもねぇ……
医者のやり取りも含めて、筆談でちゃんと伝えられないものですかね
・クール・サイレント
ろう者の芸能人
話せと言われたり、人前では話すなと言われたり
手話も見た目のイメージ通りにしろとかってのはどうかと思う……
コミュニケーションは相手の方法に合わせるしかないというのはマイノリティ側からの主張としてはさもありなん
やはり、マジョリティというのは無自覚な暴力ですねぇ
難聴者の言語アイデンティティがシリーズ全編通じて言及されている気がする
停電はろう者にとって恐怖でしかないでしょうね
前のエピソードの夫婦もそうだけど、普段の生活では予測や準備ができても緊急時にはどうしても割りを食ってしまう立場なんですよね
ろう者のドラマと言えば、「愛していると言ってくれ」ですね
聴者の立場としては、相手に伝わる言葉で伝えたいという意味で手話を使うのは自然ですけど
逆の立場だとすると、自分が聞こえない音声日本語で伝えるのは違うということか
ま、ドラマ的な見せ場としては、今まで頑なに発声しなかったというフリが生きてくるシーンなので、そんな演出になるよねーと思う
・静かな男
ろう者と思われる遺体の身元確認
「日本手話」がメインストリームだけど、それにあてはまらない手話
そもそも、日本手話は自然言語と素子さんが1作目で主張してたけど
元々はファミリーサインがデフコミュニティの中でさらに共有、共通化された結果できたものなんじゃないですかね
結果、共有化されなかった手話の地域語が残ったという事なのか?
・法廷のさざめき
ろう者の雇用差別の民事裁判
障害者雇用のちょっとした裏側を知ってるので、会社側の態度もまぁ不思議ではない
会社側としてはちゃんと在籍してくれるだけで十分だし、さらに給与もなるべく抑えられたらなおよしだし、最低限の作業さえやってくれるなら損にはならないわけで
聴覚障害に限らず、特別な配慮をせずとも元気に働ける障害者という存在を求めてるからなぁ……
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「聴こえる振りをした」「しゃべれる振りをした」わけではありません。私は、精一杯聴こえる人たちに歩み寄ろうとしたんです。少しでも負担をかけないように、少しでも迷惑にならないように。何とか口を読み取ろうと。何とか声を出して伝えようと。
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マイノリティ側の歩み寄る努力が正しく伝わらないと、ディスコミュニケーションが発生するということですね
手話で主張する傍聴人たちに対して、裁判官が静粛にと訴えるが、ろう者達には「聞こえない」という構図自体が聴者の傲慢に見える
このシーンが社会の構図そのものを表しているんじゃなかろうか?
タイトルの「デフ・ヴォイス」にはシリーズ通して3つの意味が込められていると思うんだけど(ろう者の音声日本語、手話、マイノリティな立場の主張)
今回は特に3つ目のろう者が受けている社会的な抑圧に対する主張の意味が強い
今作は全編を通すと、荒井さんとみゆきさんが瞳美の人生に対してどう思うかというのが描かれている
「あななたちの言葉を覚える」とみゆきさんは言っていたけど、時間や機会の制限から美和ほどは手話を覚えてないし
実際に生まれると「聴こえる」生活になって欲しいというエゴがなぁ……
なんだかんだ言って、みゆきさんは想像力というか、本気の覚悟が足りなかっったのでは?と思ってしまう
荒井さんとどんな会話をしてきたかは分からないけど、荒井さんも果たしてそこまでみゆきさんとコミュニケーションを取ろうとしていたのか疑問
なので、新聞の記事を読んで「障害児は減らさなければならないものなのか、世の中にいてはいけないものなのか」と疑問に思うところも、意見がころころ変わっているような印象も受ける
終盤のあたりで美和もSODAだからなのか、そんなお年頃だからなのか、態度の変容が見える
ただ、エピローグでアノ子がまた出てきて安心した
次の作も文庫化したら読む
あと、解説を読むと、デフ・ヴォイスシリーズ以外の作品も読みたくなってしまうなぁ
Posted by ブクログ
久しぶりのデフ・ヴォイスシリーズ第三弾。年末に文庫化されたのを購入後、積んだままだったんですが、映画『コーダ』『エール』を観て、読まねば!とやっと手に取りました。
コーダ(耳の聞こえない両親から生まれた耳の聞こえる子ども)であり、手話通訳士である荒井尚人を主人公とする「圧倒的な多数の前にあってその声が社会に届きにくい社会的少数者の声」を届けてくれる社会派ミステリ…なんですが、今作はミステリ要素は少なめでしたかね。
今作では、荒井が手話通訳士の仕事に対して「自分にしかできない仕事」として、とても前向きに取り組むようになっていたり、新しい家族ができたためか、なんだか雰囲気が優しく柔らかくなったように感じました。
このシリーズはやっぱりおもしろいしとても良いです。私たちにとって当たり前の日常が、ちょっと視点を変えるだけで当たり前ではなくなることに気づかせてくれます。
子どもたちの成長や前作に出てきた人たちのその後も見られて嬉しかったです。『刑事何森 孤高の相棒』も読みたいし、シリーズ第四段も読みたい。
***
「彼女が求めているのは、「弱者への支援」ではない。同じ社会を生きる者として、当然の権利を求めているのであった」(232頁)
「聴こえる者も聴こえない者も。障害を抱える者もそうでない者も。互いが歩み寄り、支え合う。この子たちが大人になった頃には、そんな世の中になっていなければいけないのだ」(275頁)
Posted by ブクログ
デフ・ヴォイスシリーズ第三作め。
このシリーズはすべて読んでいる。手話通訳士の荒井とその家族やまわりにいる人々のお話。荒井は自分は聴者だが、両親や兄弟はろう者である。
聴者はろう者のことを理解しているつもりでも、全然理解しきれていないし、逆にろう者の方も聴者の気持ちはわからないかもしれない。
ただ、お互いに理解しあおうとする姿勢が、家族間でも社会の中でも大事だと思い知らされた。おすすめ。
Posted by ブクログ
「デフヴォイス)シリーズ3弾。
みゆきと結婚し、娘が産まれた。だがその子は先天性の聴覚障害があった。
妊婦の手話通訳をした事を通して描かれる医療上の聴覚障害者への対応の問題。
モデルのHALとの仕事で感じた聴者が考える「手話通訳」の問題。
先天性聴覚障害者に対する治療の問題。
聴こえない事を「可哀想な事」と考える聴者の驕りのようなものが描かれていて胸が痛くなる。障害をもつという事について考えさせられる。
Posted by ブクログ
デフヴォイスシリーズ3作目。
通報システム、赤ちゃんが手話を覚える過程や、限られた地域だけの手話があることなど、多くの学びがあった。こんなにも話の種が尽きないことに驚くばかり。本当に奥が深いし、知らないことだらけ。そして語り口が優しく、いつもとても読みやすい。
あの天真爛漫な美和ちゃんも反抗期が来るなんて、なんと寂しい…とここまで読んできた読者はみんな思うのではないかな。大人っぽく成長した英知くんとのこれからがどうなるのか楽しみすぎる!
Posted by ブクログ
ろう者の中で育った聴者の男、荒井が手話通訳を勤めながら、ろう者を取り巻く社会の問題を扱うといった小せる。どうも続巻のようで、聴者で警察に勤めている妻みゆきの連れ子美和との馴れ初めが気になるが、各章が一話となっており、そこそこ楽しめる内容だった。
Posted by ブクログ
シリーズ3作目。
主人公にお子さんが生まれてあっという間に6歳ぐらいまで成長。個人的には2巻でその後が気になった半グレの少年が整備工として出てきたのが嬉しい。良かった、良かった。
どの世界でもそうだと思うけれども、自分と同じ存在が居ると安心感があって、その中に異物が混入すると不安を覚えるのだと思う。それは国籍だったり、文化だったり、趣味だったり色々なケースが考えられるけれども障害もそうなんだろうなぁ。そしてマイノリティがその場でマジョリティになった時、今度は反対に自分たちが強い立場になって弱いものにまで目がいかないという事も往々にしてあるように思う。コーダの存在もまさにそういう反対に疎外された存在なんだろうな、と思う。とはいえ、自分たちの安心できるコミュニティでようやくのびのびできた人たちが、弱者に目を向けられるかというとなかなか難しい問題だと思うし。
状況によって人は強者にも弱者にもなるという事と、だからこそその懸け橋になる人の大切さと難しさ、という事があるんだろうなと読んでいて思ったりしました。