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Posted by ブクログ
乱歩の描く少年探偵団の空白の時代を埋める、辻真先版小林くんと二十面相。めちゃくちゃ面白かった。
終戦直後の8月の東京、明智先生の復員を1人待つ小林くんの前に、暴走する輪タクを追う旧知の中村警部と出会い、追跡を手伝うものの、池に落ちた輪タクからは死体が。
戦後すぐの生々しい焼け跡とそこに住む人々、戦中軍部から甘い汁を吸っておいて、戦後にはすぐ駐留軍に尻尾を振る悪い奴ら……そんな世相をこれでもかと活写する、こんな小説本当に辻真先にしか書けないと思う。
Posted by ブクログ
乱歩の少年探偵団シリーズに捧げられたオマージュ作品は数多いが、小林少年以下のキャラクターが名前だけ登場するような、適当な作品も多い中で、本作は本家の堂に入ったトレースぶりで、群を抜く。ですます体の文体をトレースするだけでも充分に楽しいが、お話の面でも、例えば、小林少年とある人物が読者の目にはバレバレのある作戦を実行するのを、まったく気付いていない風でヌケヌケと描写したりする。迂生は少年探偵団シリーズのそこまで熱心は愛読者とは言いかねるが、それでもこれはたまらない。その上で敗戦の日々に(これは間違っても「終戦」などと書いてはいけない)、辻氏が感じたのだろう、苦い思いをきっちりと刻み込んでいくのはさすが。