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高取正男の本は、初めて(だと思う)。近代以前の日本で、どこにでもあった集落の暮らしは、どのようにして成立していたのだろうか、住民は、どのような一生を送っていたのか、積極的、意図的に思いを馳せて考えてみなければ、頭をよぎることすらない普通の歴史に対する興味を呼び起こす、暖かくて豊かな内容。
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原型、と書いてあるけれども、記紀万葉の昔(あくまで例え、これらが中世及び明治の政治利用のために使われたことは明らか)をとりわけて紐解いているわけではない。どちらかというと、たしかに近代化以前ではあるが、中世の様子を見出した感(読み違えていたら申し訳ない)がある。
宮本常一氏から何度か、柳田國男氏のとくに中期の著作からも数度、引用がある(後期については批判的立場が伺える)。話し合いの発言者として村人にそれぞれ権利のあったこと、民謡と馬子歌などの『しごと「うた」』のリズム抑揚のちがい、牛との旅、歩き方の地金などは、勉強になるというよりは、ちょっとふふっと笑ってしまいながら読むことになった。
※話し合いについては、他人事に思ったがためにちょっと笑えたのかもしれない。「鶴の一声」があるまでものを決められない「庶民」の体質と、現在実際の人々の生活を顧みない、所謂「上級国民」の相性を考えると笑いも凍りつく。
ほんの数行ではあるが、アイヌ、国栖(くず)、海人(あま)の人びとにことばが割かれていることに安堵があり、また、権力者の意向に反して共同体から心身ともに遁走(というとどうも伝わりが悪いが)してしまった人びとの記述もある。がーーなんというかーー言ってしまっては身も蓋もないが、いかにものやわらかに取り繕われようと、女性やハンセン病患者に対して差別があったこと、前述の先住民に対して締め付けがあったことをすっぱり認めきられないあたり、わたしとこの本は相性が悪いようである。
Posted by ブクログ
20210820?-0905 Twitterで紹介されていたので気になって入手。最初の話が筆者が学生時代にうっかり妹の湯飲みを使って妹にひどく怒られた話だったので、分かるわかるーって感じで入りやすかった。確かに自分以外の湯飲みでお茶を飲む気はしないなあ。
本書は民俗学入門の傑作、という帯の紹介文の通り、40年くらい前の文章ながら全くの素人の自分でもすんなり読めた。特に最終章の、例外で疲弊した北関東や東北に越後の農民が移住させられた話は興味深く読めた。もう少し深く読んでみたくなった。