【感想・ネタバレ】格差と分断の社会地図 16歳からの〈日本のリアル〉のレビュー

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Posted by ブクログ

これは若者に向けて書かれた本だが、とても良い本だと感じた。所得格差、職業格差、男女格差、家庭格差、国籍格差、福祉格差、世代格差と具体的な例を取り上げて説明してくれる。基本的に同じことを言っているのだが、ある世界にどっぷり浸かっている人間は、それ以外の世界にいる人を理解しないというか理解できない。それゆえに教育の欠落や心無い周りの態度で、多くの犯罪が生まれている中、ただ対象に理解のない非難の言葉を発するのみ。そういう人たちの偏見が、社会により深刻な闇を作り出している。若者に今、日本で何が起きているのかを知ってもらえることに、この本は注力していく。
最後に若者に3つの提案をする。
1.新しい仕事を自分自身でつくる。
2.グローバルな世界へ打って出る。
3.新しい生き方を見つける。
不透明な未来だが、それを良い未来にできるのは若者たちのパワーだと思う。政治家や企業経営者などの利権に汲々とするオヤジたちには、そんな力はない。

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2024年01月23日

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P101) パチンコ市場は20兆円。遊ぶ人の約半数が年収300万円以下という統計がある。つまり10兆円をお金のない人達から吸い上げているということになる。
競馬や競艇、競輪も然り。
日本のギャンブルはお金のない人たちから吸い上げるお金で成り立っているといえる。
→これは衝撃。お金持ちの娯楽だと思っていたパチンコが実はそうではなかったと。
貧乏人が負けて更に課金するスパイラルに陥る構図が容易に浮かぶようだ。

P120)社会的、ビジネス成功の秘訣は、常に相手の立場を理解しようと努めること。相手の立場からものを考えるようにすること。


P148)〜
17歳でノーベル平和賞を受賞したマララさんの発言を引用。
世界が沈黙しているのなら、1つの声でも力強いものになる。

言葉は世界を変えるための大きな武器だ。

P183)児童養護施設の役割とは、 自己否定感にまみれた子供たちの考え方を変えること。
何をやってもムダ、どうでもいいんだ。が口ぐせの彼らに寄り添い、信頼関係を築き、自分を大切に思ってもらえる人がいるのだということを分かってもらう。

→とても大きな役割だ。精神的にも疲労は大きいだろうが、社会的な意義は大きい!

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2023年09月07日

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世の中の現実を様々な角度から教えてくれます。
数値的な根拠、事例もあり、説得力があり、自分の視野を広げてくれます。

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2023年09月02日

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結論 日本の闇の部分は本当に闇なのか?

ホストの世界や貧困との差を考えさせられる1冊
普段生きているだけでは興味すら持たない世界をこの1冊で知ることが出来ますし何より今後の日本をどうしなければいけないかを考えたくなります。

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2023年05月23日

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良書。暗澹たる気持ちになった。
16歳向けということで平易にかつ網羅的に書かれていて、教育レベルに関わらず読みきれる本というのも良い。

この本を手に取る"階層"にいる若者にとって、学歴と職業、貧困の再生産と格差の拡大、ジェンダー問題あたりまでは容易に想像がつくと思う。いわゆる、自分ごととして捉えやすく、また解決策を議論することができる程度の知識も持ち合わせているだろう。
しかし、ホストやキャバクラ、風俗業界に生きる(生きざるを得ない)人間の思いを、背景を、想像できる人はどれだけいるだろう。それが経済的困窮だけではなく、虐待による自己否定感やグレーゾーンを含む知的障害とも密接に関わっていると考えたことはあっただろうか。
構造的搾取が問題とされている技能実習生制度を始め、移民問題を労働力以上の問題として考えたことはあっただろうか。低賃金で酷使される外国人労働者は度々問題視されるものの、そのさらに奥の就学の機会を奪われる移民の子の存在は自ら見ようとしなければ見えてこない。移民ギャング、ホームレス、被虐待児童、知的障害者、治安の悪化を、犯罪を彼らのせいにするのは簡単だが、自らが同じ境遇に置かれた際に罪を犯さずにいられるかどうか胸を張って答えることはできないはずだ。もしできると思うなら、それは想像力の欠如に他ならない。誰も彼も、苦しもうと思って苦しんでいるわけではない。貧困を望んで貧困に甘んじているわけではない。

何も弱者を理解して今の境遇に感謝しましょう、強きをくじき弱きをたすけましょう、という結論には至らなくていい。この本の主題はそこではない。ただ、この本をきっかけに、格差と分断の構造を理解して問題を俯瞰的に見られるようになるといいと思う。いま、自分の知らない日本の中で何が起こっているかを理解し、想像し、慮る努力をすべきだ。
きっと、そうした努力は十年、二十年後の人生もとい自分自身を豊かにすることに繋がると思う。



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2023年03月13日

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所得、職業、男女、家庭、国籍、福祉、世代。あらゆる場面にある格差と分断を挙げ原因と対策を示す。
困っていない人は社会の恩恵に助けられている人であり、困っている人は助けが届いていない人であろう。未来と希望を若者に託すためにやるべきことを説く。

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2023年02月08日

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ネタバレ

本書では、所得格差、職業格差、男女格差、家庭格差、国籍格差、福祉格差、世代格差という7つの格差がどのように生まれるのか、その格差によってどういうことが起きるのかが書かれている。「16歳からの〜」とあるだけあって、言葉もわかりやすく大人でも頭に入りやすく、幅広い年代におすすめしたく、また幅広い年代が読んで知る必要のある内容に思う。

私自身、犯罪に手を染めてしまうのは自業自得では、と少なからず思ってしまっていたので、そうではなく、周りの環境からそうせざるを得ないこと、そこから脱することができるのはほんの一握りだということがよくわかった。周囲の人たちが、自分たちの行動で犯罪や被害を減らせると理解することが何よりも大切だと感じた。

また、正直、格差があったとして、それが自分に対してデメリットとなるとは思っていなかった(=つまり、他人事)。もちろん、見返りがあるから格差をなくそう、という考え方が良いとは思わないが、格差をなくすことが、現在そして未来に日本に生きる人たちの利益になることがわかれば、動く人も増えるのではないか。


「福祉格差」
特にこの章を読んでいて、二つの別の作品を思い出した。
①『ミステリという勿れ』
シェア金沢という、大きな土地で障害児、高齢者、大学生が一緒に暮らせる街の話を聞いた時、この作品を思い出した。
2巻では、認知症の人だけが暮らせる村(「ホグウェイ」という村がオランダにあるらしく、その村にはスタッフと認知症の方しかいないらしい)が紹介されている。認知症の方の徘徊は社会問題となっているが、村の中にはバスがないバス停があることで、しばらくバス停で待っていることで満足して家に帰っていくそう。『ミステリと〜』を読んで、こんな村は素敵だな、と思っていた。全くの素人知識だが、認知症は記憶障害や見当識障害などを含む(と私は理解している)ので、実際に日本にも似たような街があるとは知らず、素直に驚いた。障害を持った人を限られたコミュニティに閉じ込めるのではなく、高齢者などと交流の場を作ることで、双方にとっていい影響があることは想像に難くない。もっとこのような街が広がっていけば良いと思う。

②『初恋、ざらり』
私にとって苦手な作品ではあった。ただ、本書にもあるような”知的障害のある女性が風俗にむかってしまうプロセス”がわかりやすい作品。今まで表に出てこなかった格差がこのように漫画などの読みやすい媒体で出てきて世間で広まることで理解が進み、それが(私含め)格差を埋める行動につながれば良いと切に願う。

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2023年01月02日

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若い人向けに書かれていることもあり、わからない用語が出てくることもなく、とても分かりやすく世界のことについて書かれていた。
すごく参考になったし、良かった。
高校生に特に読んで欲しい本だ。

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2022年10月16日

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大きい事件をのニュースを深読みすると、その時の容疑者が置かれていた立場や状況がなんらかの形で関わっていることが必ずあり、自分はそんなことしないだろうと思っていてもそれは相手の立場を理解していないから言えることであり、自分は狭い世界で生きてるなと思うことがあります。
このような社会問題の本を読み何が起きているのかを少しでも知ることができ、日本人としてこれから自分達が何か対策を打たねばならないのではと少し責任感にかられるような思いがあります。
たくさん勉強して生きづらさを感じる人が少しでも減る社会に変えられたらいいなと。

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2022年08月25日

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「格差社会」と言われて久しいです。

しかしその格差を身を以て体験していない人
にとっては、格差とは収入の差なのだろうな
ぐらいにしか思っていないはずです。

しかし今は収入の格差どころではないのです。

米国社会で起きているような「分断」が日本
でも起きつつあるのです。

しかも収入の差だけではなく、職業間、男女
間、世代間などで分断が起きつつあるのです。

その内容を徹底した取材に基づいて、リアル
に表現したのが本書です。

「え?日本って今こうなっているの?」とい
う不都合な真実を皆が知って、そこから乗り
越えるべき道筋を説く一冊です。

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2022年06月17日

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「いま、国を動かしている政治家、実業家、あるいは発言力のある有名人を考えてほしい。彼らのうち、どれだけの人たちが日本で起きているリアルを知っているだろうか。
彼らの大半は格差社会の中で超エリートのレールを歩いてきた人たちばかりだ。そんな人たちが教育格差の底辺にいる子供の気持ち、夜の街で働く女性の気持ち、外国籍の不就学児童の気持ち、虐待を受けた障害児の気持ち、ひきこもりの気持ちをどこまで理解できるだろうか。それが難しいからこそ、抜本的な解決策を打ち出せないでいる。」

性別、世代、国籍、…さまざまな観点からの格差社会を描かれ、ティーンエイジャー向けに書かれているのでわかりやすく、かつ涙が出るほど胸が苦しくなるような現状ばかりだった。

自分自身の苦しみを説明するほどの語彙力を持ち合わせておらず、ごはんが食べられない、食べ方すらもわからない。置かれた状況から自分の力だけでは抜け出せず、毎日生きるので精一杯の人たちは何もアフリカのような途上国だけではない、日本国内にこんなにも存在してるなんて、どれだけの人が想像つくだろうか。

今起きている事に真剣に向き合い、負のスパイラルを止めるのは私たち若い世代の動きなくしては実現不可能だと思う。

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2022年03月17日

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ネタバレ

自分の知らない世界が存在していることを認識するべき。
人生のステージが進むにつれ、自分とは異なる階層にいる人達は少なく(見えにくく)なっている。自分のスタンダードが社会のスタンダードではないということを理解したほうがいい。

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2022年01月09日

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16歳に向けて書かれているけど、大人でも知らない現実が次々に出てきて驚きの連続。
かなり興味深い内容だった。
これからも日本を含め世界の格差は広がり続けると言われているけれど、自分だけ助かればいいという考えのままではよくないことがわかる。
社会が分断されてしまうと、対立は避けられない。
「平和を守るために、自分には何ができるだろう」と、一人一人が考えなければいけない。

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2021年12月18日

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いまの日本は階層ごとに断ち切られている状態
かつては学力がなくても手に職を身に付ければ稼げる時代だったが、オートメーション化が進み、シャッター街は潰れ、大型店の雇われ社員になり、給与が抑えられた。大型店の小売やサービス業は価格争いの最前線で、
重要なのは自ら望んでその生活をしているかどうかということ。選択の余地がない中で、現状に苦しんでいるのであれば、それは「貧困」と呼ぶべきものである
貧困の連鎖というのは、教育格差と自己否定感が両輪になって引き起こされる
職業格差は待遇の差だけでなく、特定の職業に対する軽視や差別のようなものを生んでいる。格差の下位に位置づけられる職業であればあるほど精神的な負担は大きくなるいまの日本にはインドのカースト制度、江戸時代の身分制度のような目に見える形での差別制度は存在しないが。
コロナ禍において女性の自殺率が顕著であるにもかかわらず、男性の自殺は前年比減である
職業や職務によって男女の性差ができてしまっていること。それを男女の職業分離と呼ぶ。
少年院にいる子どもの5割が虐待経験、2割がスパルタ教育経験がある
些細な行動が、相手にはとても温かく伝わるものなのだ
豊かな社会というのは、そんな温かさがどれだけあるかということだ
日本の法律では外国人は義務教育の対象外
子どもは真実を映し出す鏡である。彼らにはおごりも、敵意も、偽善もない。もし思いやりに欠け、嘘つきで乱暴な子供がいたなら、罪はその子にあるのではなく、両親や教師や社会にあるのだ。
子供が虐待を受けると、脳に甚大な影響が及ぶことが明らかになっている。脳の海馬や扁桃体などが萎縮し、さまざまな機能が低下する恐れが生じる。
行動障害とは、障害ゆえに社会的に相応しくない言動をとってしまうことだ。
ホームレスの62%に何かしらの障害があることが明らかになった

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2021年09月25日

Posted by ブクログ

こういう本が今必要だなと思っていた。新書で同じような格差や能力主義の本が出版されているが、それらを読むのは意識の高い人だけになってしまう。専門書よりは裾野は広がるとはいえ、若者の手にまでなかなか届かない。
この本は16歳くらいの若者を対象としているが、大人も手に取れる体裁である。
格差がどうして起こるか、それがどのような弊害をもたらしているか、現在見られる現象と結びつけ、データも思い切ってわかりやすく編集しているところに、著書の本気度が伝わる。

これは本当にいい本だ。

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2021年09月09日

Posted by ブクログ

感情に訴えてくるような文章の書き方に中々慣れなかったが、全体的には読みやすい内容だった。

自分の幸せは、自分だけで作れるものではなくて、
人との関わりや様々な人が生み出した技術やサービス、制度に助けられて成り立つものだったことを思い出せた。そして、逆に生活環境や社会の仕組みによって不幸が連鎖していくことも理解できた。

自分の思いもよらぬところに格差は潜んでいる。もう少し自分の周りをじっくり観察して、そこから感じた違和感を無視せずにいたい。そして自分には何ができるか、答えはでなかったとしても考えることをやめないようにしていきたい、と思える一冊だった。

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2024年04月30日

Posted by ブクログ

"両者は、同じ地域に住みながら乗っているレールがまったく違うので、接点がないに等しい。だから相手のことを理解することができず、何かあれば「貧しいのは努力していないからだ」とか「金持ちは不当に富を独占している」と自分の想像だけで相手のイメージをつくり上げるので、距離は開くばかりになる。
 無理解の先にあるのは、衝突だ。 (p.10)"

 本書は、5552さんのレビューで知った。
 決して誇張ではなく、読んでいてくらくらと眩暈がしてくるような、衝撃的な内容の本だった。

 筆者は国内外の貧困、児童問題、事件、歴史などの社会問題を長年取材されてきたノンフィクション作家。本書では「16歳からの〈日本のリアル〉」として、主に中高生の読者に向けて日本にある格差の現状を示すとともに、この問題を解決するため何ができるのか考えるように促す。

 「格差」と聞いて多くの人がまず思い浮かべるであろう「所得格差」について、日本の相対的貧困率が15.4%(2021年度)であることをご存じだろうか? これは先進国中最高レベルの数値である。格差・分断は、今や日本社会の至るところ、その奥深くまで蝕む病魔となっている。社会の「分断」が最初に生じる原因は不景気だったり社会通念だったり様々だと思うが、分断の最も救いようがないところは、それが再生産されるという事実にあると感じた。
”貧困の連鎖の悲劇は、いったんそのループに入ると、なかなか脱出できなくなることだ。そのため、何世代にもわたって貧困がつづくことになる。
 ただし、貧しい家庭に生まれ育った人全員が、そこから抜け出せないわけじゃない。中には努力を重ねて人生を一発逆転させる人たちもいる。
 そうしたことから、大人の中にはこんなことを言う人がいる。
「貧しさをバネに成功した人はいくらだっている。がんばれば、なんでも成し遂げることができるんだ」
 この意見は間違いではない。でも、誰もが逆境を跳ね返して成功を成し遂げられるわけじゃない。
 なぜかわかるだろうか。それは下流の人たちが、上流の人たちと比べて、ある体験をつみ重ねやすいからだ。それが当事者が生きる上での大きな障壁となる。
 その体験とは、挫折体験だ。(p.55)”
 チャンスは皆に平等に与えられているわけではない。ある人がアクセスできる資源は、明らかに彼の属する階層に依存するからだ。そして格差は、遂には人々の心まで侵す。一度分断が深まると、ある階層の人間は他の階層の人間との交わりが断たれ、無理解が広まる。すると、階層間の差異(格差)から敵意が芽生え、分断が一層拡大する。
”ホストは若いからコロナになっても死なないつって平気で店をやってコロナをバラまいている。政府はさっさと歌舞伎町のホストクラブを全部ぶっ潰して追い出せ! どうせ税金も払ってねえようなヤツらに好き勝手やらせるなんてないし、あいつらに医療費をかけるだけムダ(インターネット上の書き込み、p.153)”
”(ホストは)ほとんどが10代で社会からドロップアウトした人間ばかり。そんな人間にまともな仕事なんて用意されていない。だから、歌舞伎町に来てなんとか金を手に入れて、まともな暮らしをしようとしている。ホストには賞味期限があるのをわかっているから、みんな若いうちに1日でも長く働いて稼ぐことに必死だ。
 そんな連中に対して、国がコロナが流行っているから店を閉めましょうと言ったところで、『はい』ってなるわけがないよね。(略)これまでホストは国を頼りにしてこなかったし、国だって見捨ててきた。だから、コロナに関係なく、自分たちは生きていく道を自分たちで決めていくってことだ。(ホストクラブのオーナーの話、p.155)”
(社会問題に限らず)過激なことを言いたがる人は世の中にごまんと居るが、彼らは結局、その言及対象のことをよく知らないまま放言しているに過ぎないのではないかと思う。対象のことを少しでも知れば、切って捨てるような発言はできないはずだと信じているからだ。無理解の上には、何の解決策も立ち上がらない。
 逆に言えば、現状を打開するための第一歩は、問題を直視することなのだ。
”未来を担う君たちがすべきことは、大きく2つある。
 1つ目が、日本社会の足元で起きている格差や分断の問題にきちんと目を向け、何が原因でどういうことが起きているのかを学び、それを改善していくこと。
 2つ目が、君たち自身が地に足をつけて生きることで新しい価値観を示すことだ。(p.343)”

 本書の内容が強く心に訴えかけてくるのは、筆者が取材によって得た、生の「現実」の重みゆえに違いない。思わず目を覆いたくなる痛ましいエピソードは、自分がこうしてそれほど不自由なく暮らせていることの有難みについて省みることを促す(少々皮肉だが、この本を読む機会があるかないかということに既に格差が顔を覗かせている)。自分のことで恐縮だが、高校から大学に進学して付き合う人間の幅が広がったとき、世の中には色々な人がいること、いかに自分が一つの階層の中に居たかを思い知らされたことを思い出した。自分が今生きている世界のすぐ隣には自分の知らない世界が広がっていて、(とてもじゃないが話が通じなさそうに見えても)そこに生きる彼らの言い分に飽くまでも寄り添おうとすること。これは非常に困難で、しかも「損」な役回りを担うことになるが、全てはそこから始まるのだ。

1 日本の格差はいかにつくられるか――所得格差
2 弱者を食い物にする社会――職業格差
3 男と女の不平等史――男女格差
4 格差と分断の爆心地「夜の街」――家庭格差
5 移民はなぜギャングになるのか――国籍格差
6 障害者が支援をはずされるとき――福祉格差
7 高齢者への「報復」は何を生み出すのか――世代格差

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2024年03月10日

Posted by ブクログ

これとても良い本だった。
中高生に向けて今起きている貧困、格差、そして持つ者と持たざる者の分断をわかりやすく教えてくれる。
格差は自分の属する階層には視野が届きやすいのだが、下の階層で何が起きているのか、どういった理由でそういうことが起きてしまっているのかは見えにくかったり、偏ったバイアスでものを見てしまったりしてしまう。
昨今、よく言われる”自己責任”なんて言葉もまさにそうだ。あなたがその階層にいるのは自己責任だ、自業自得だと言っても、実態はそうでなかったりする。

こんな状況になってるのは政治の責任なので、本来なら国が主導で格差の解決に動かなければいけない。
国民が"自己責任"なんて馬鹿なこと言わないで、政治家たちに仕事しろと発破をかけなきゃいけない。
そのためにもこういった本を読んで、どういう状況にあるのか知らないといけない。
この本だけでは心許ないが入門書としてはオススメ。

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2023年12月19日

Posted by ブクログ

本屋さんで平積みされていて気になったので。
シンプルで分かりやすいタイトルと少しポップな装丁に魅力を感じた。

小さく16歳からの〜と書いてあったから気づかなかったけどそのサブタイトル通り読みやすく事実は述べてるものの暗すぎない雰囲気が良かった。イラストも可愛らしい。

この社会には育ちや生まれや性別、国籍、職業で分断があり現状を知らないから相手の立場を想像できずお互い分かり合えないことを書かれている。

実際の話や事件なども取り上げつつ話してくれるので結びつけやすかった。

最後の「一人一人が起きてることに問題意識を持ち溝を埋める努力をすることでしか負のスパイラルを止められない」とあってその通りだけれどもその余裕がない人、そもそも興味がない人の割合が多すぎると思った。

完璧にはなくせなくても今よりまだマシくらいには出来るかもしれない。コツコツ前に進むしかない広い視野で見れば世の中はより良くなっているから。

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2023年05月31日

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知らない物に対しては、分からない、怖い、排除ってなりやすい。自分が生きている世界に、見えてない物・コトがたくさんあるのに、見ている物だけが全てだと思い込んで知らないフリをしてるだけなのかもしれない。
今、自分が生きている世界はどんな所で、どんな人たちがいて、何を思ってどんな風に生きているんだろう。彼らから見える私はどんな風に見えるんだろう。
まずはそこから。同じ船に乗っている誰かに心を寄せる所から。

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2023年03月15日

Posted by ブクログ

小学生でも分かる様に書かれてると思う。
内容がスッと頭に入ってきてとても読みやすかった。

格差と今まで言われてきたものが、今回は分断という言葉も使われていることが気になった。
そろそろやばいのか。

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2022年04月12日

Posted by ブクログ


"分断"とは何か、実例豊富で大変わかりやすい。
そして自分の認識の甘さというか世界の広さを痛感する
真の分断は認識できる格差で説明できるものではなく、想像すらできないギャップがあるんだな。

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・分断→無理解→衝突
・自己責任論の振りかざす甘さ

新自由主義、グローバリズム
個人商店の消滅・大手資本の席巻→コンビニ店長、スーパーレジ打ち

"アフリカのナイジェリアでは、ほんのわずかの富裕層が、国が席を始めとした利権の大部分を独占している。富裕層は高級住宅地の電流を流した要塞のような邸宅で警備員に守られながら暮らす一方で、貧困層は広大なスラムで歌詞と隣り合わせの生活を強いられている。両者が接点を持つ事は皆無に等しく、今なお治安の問題は続いたままだ"
→近未来の日本かもしれない。

情報発信の個人化による格差・異なる階級が見える。オールドメディアはそれを取り上げてさらに拡散。 分断は最近生まれたのではなく、元からありそれが可視化されたとも言える?

所得、職業、男女、家庭、国籍、福祉、世代間

絶対的貧困:1日の生活費が1.9ドル未満、世界の10%
相対的貧困:等価可処分所得の中央値の半分未満 
日本では年収127万円未満、それが15.4%
(例:親子2人家庭で可処分所得が月14万円以下)
日本人の平均年収は430万円

"貧困の連鎖の悲劇は、一旦そのグループに入ると、なかなか脱出できなくなることだ"
貧困層→挫折体験をつみやすい→自己否定感→"心のガン"

個人向け融資ビジネスは計画的な返済を組み立てられない状況・能力にある人が顧客。

出版1.5兆、タバコ9 パチンコ20 性風俗5

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2021年12月27日

Posted by ブクログ

★★★★
今月1冊目
これは深く考えさせられた本。
あらゆる貧困世界などに足を入れてきた石井さんならではの本。
犯罪を犯したからそいつが悪いのではなくその背景などを考えようってね。

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2021年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昨今のニュースでは、「格差」という言葉がよく聞かれるようになった。「格差社会」に始まり、「所得格差」「学歴格差」「教育格差」など、様々な所で人々が格差を意識するようになったのだろう。
本書は、そんな「格差」をテーマにした一冊である。
しかし、格差社会の底辺にいる人々についての話ではない。通常の日本社会の制度からはこぼれ落ちてしまい、存在を切り捨てられてしまったような人々についての話である。
格差の底辺にいれば救いの手が差し伸べられることもあるだろうが、このような人々は格差社会の外(底ですらない)に追いやられている為、救済の手が伸びることはほとんどない。
日常生活の中で接点がない為、その存在すら気づかれずにいることだろう。
本書は、そのような人々について、そのバッググラウンドから社会制度について色々と教えてくれる。そして、決して他人事ではない問題だと気づかせてくれる。

テーマは難しいが、文章は非常に簡単で分かりやすい。厚みがある本ではあるが、読みやすいのですぐに読み切れるだろう。”16歳からの”とサブタイトルがある通り、中高生にもおすすめの一冊である。
日本社会の表には出てこない社会問題について、10代のうちから関心をもってもらいたい。

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2023年09月14日

Posted by ブクログ

データがたくさん示されているところが良い。これを読んでわかったような気になってはいけないとは思うけど、こういう現実があることは知っていてもいいであろう。

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2022年08月26日

Posted by ブクログ

現代社会では自分と異なる境遇を生きている人との接点が無い、という著者の主張はとても納得いくものでした。
接点がないから他人がなぜ苦しんでいるのかが理解できない、理解できないから他人の苦しみの原因を本人の努力不足だと決めつけてしまう。
日本がこれから良くなっていくためには、様々な境遇を生きている人たちがお互いに分かり合って共生できる仕組みづくりが必要だという意見には共感できました。

著書で少し残念だった点が2つ。
1つは、主張の根拠として採用しているデータが今一つ客観性に欠ける点です。例えば「障碍を持つ人の割合は〇〇%であるという説もある」といったような曖昧な表現を使われており、せっかくの素晴らしい主張に水を差すデータの使い方をしているなと思った点です。
2つ目は、養育能力の無い親への対策に焦点を当てていない点です。著書で紹介されている貧困層や不遇な環境で育てられた子どもたちの例を見ると、多分に漏れず親の養育能力の無さに起因しています。イライラして暴力をふるう親、家にも帰らず不倫をする親、酒浸りで仕事もしない親など、同じく子を持つ僕からすると想像もできないような下劣な親の態度のせいで、子どもが不良になってしまっています。
そういう親の元に産まれた子どもたちには何の罪もなく社会が手助けをするべきだと思いますが、そもそもなぜそんな親が存在するのか、養育する気の無い大人からなぜ子どもが生まれるのか、親が正しく子どもに愛情を注いで養育するにはどうするべきなのか、といったこれから親になろうとする大人が親として機能するための教育や対策をすべきだと僕は思うのですが、そこに焦点を当てていない点が残念でした。

この2点が個人的にはどうしても引っかかった状態で読み続けたので批評的な読書になってしまいましたが、僕が知らなかった考え方がたくさんあり参考になりましたし、「シェア金沢」など具体的な取り組みについても学ぶことができて、得るものも多い読書でもありました。

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2022年08月14日

Posted by ブクログ

『本当の貧困の話をしよう』がとても良かったので、これも読んでみた。
『本当の貧困』は古今東西の貧困をグローバルな視点で比較してあって、目からウロコが落ちたという感じだったのだが、こちらは様々な格差と分断はなぜ起きるかを、日本の問題に絞って分かりやすく解説している。この本も大事なところは太字の上にマーカーまでひいてあるし、字もくっきりしていて読みやすい。読書慣れしていない子どもも読みやすい。

『本当の貧困』ほど、「そうだったのか!」という感じはなく、そうだよね、という感じ。しかし大人だからそう思うので、ターゲットの中高生はやっぱり「そうだったのか!」と感じると思う。
タレントの生い立ちや最近起きた事件も例として載っているので、若い人が興味を持って読める内容となっている。
私は読みながら松本俊彦さんの著書を度々思い出した。依存性になる人が、この本に例として取り上げられる人と重なるからだ。虐待(勉強や好成績を強いる教育虐待を含む)、貧困、人間関係の悩み、障害、家庭やコミュニティに居場所がない、など。
恵まれた人こそ、普通に生きていては決して交わらないこういう人々がいることからまず知ってほしいと思う。高校生になったら読むべき。

気になったところは、小澤征爾が裕福でない家庭だったのに「大きな情熱を持って」いたから世界的な指揮者になったと書かれている(P330)ところ。小澤家は家柄良く、何よりインテリの家庭で、クラシック音楽家の家庭の平均よりは裕福でなかったかもしれないが、貧困とは言えないし、情熱だけでなく才能とコミュニケーション能力もあったのである。凡人が「よし、頑張って小澤征爾みたいになるぞ!」とはいかないと思う。(そもそもクラシック音楽家に幼い頃から親しめるのはインテリ家庭)

残念だったのは、参考文献がないこと。飯島愛にしろ小澤征爾にしろ、直接の知り合いでなければ、著書とか評伝とかを読んで書いているのだから、巻末に参考文献は載せるべきだ。新聞記事やテレビ番組なんかも参考にしているようなので、それもあれば言うことないが。(グラフや表の出典は近くに書いてある。)

信頼性の問題だけでなく、興味を持った読者が読めるようにしておくべきだと思う。

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2022年07月24日

Posted by ブクログ

日本における格差について分かりやすくまとめられた本。
導入には最適。
自分が生きる世界以外の世界を知ることはとても大切。
自分さえ良ければ、という人ばかりになったその先にあるものをみんなが想像することが大切。

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2022年01月09日

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