星野博美のレビュー一覧

  • 転がる香港に苔は生えない
    長らく積ん読になっていたのは600頁超という量におののいていたのと、1997年と四半世紀近くも前の返還前後のことをいまさら読むのもどうかなと思っていたから。ところが、読み始めると面白くて、どんどん読み進めていけた。四半世紀前の普通の(中の下くらい?)の生活感が何となく味わえる感じがする。騒がしくてバ...続きを読む
  • 転がる香港に苔は生えない
    著者が留学生以来10年ぶりに香港に住みつき返還前後の二年間の香港生活を洞察力、若さと行動力で見事に書き上げた、渾身の一冊。
  • 世界は五反田から始まった
    祖父の手記から、作者の生家のある五反田周辺でおきた歴史の物語を著した、歴史土地ノンフィクション。

    さすが、星野さんである。
    教科書のように味気なくなりがちな郷土史を、家族の歴史や自分の話とが絡み合いながら、楽しく、悲しく紹介していく。
    かつては軍需工場が多くあった五反田付近の、戦争にまつわる話は、...続きを読む
  • 世界は五反田から始まった
    タイトルから勝手に五反田のアンダーグラウンドの話とかサブカル系の本かと想像していたが、著者のファミリーストーリーから、戦前から戦後にかけての日本の、そして五反田界隈の人々の歩んだ苦しい道程が綴られた、日本人が読むべき一冊だった。
  • 世界は五反田から始まった
    「焼け野原になったら、何が何でも戻ってきて、杭を打とう。」帯のこの言葉に吸い寄せられるように手に取りました。戸越銀座で町工場を営む星野家。本書は著者のファミリーヒストリーですが、庶民の目線で描く(著者風に言えば)「大五反田」の戦前〜戦後史とも言えます。小林多喜二の小説の舞台となった場所、品川大空襲、...続きを読む
  • 世界は五反田から始まった
    「んなこたぁない」から始まり、「いや、あるかもしれない」、そして最後は「そうに違いない」、読書中の私に思考をそのまま文字にするとこうなる。

    「世界は五反田から始まった」、いやに挑発的なタイトルと言っていい。私は現職のオフィスが五反田であり、JR山手線を通勤で利用しているが、駅の階段に本書の広告が大...続きを読む
  • 世界は五反田から始まった
    渋谷に育った私(産まれて数年は父の故郷九州に居たので若干ロンダリング)にとって、大五反田は近いけれどほとんど縁がなかった地域。それが高校生の頃、実家が引越して通学や通勤の乗換駅である中延や五反田が生活圏の一部になったから本書に出てくる路線や地名の雰囲気はよくわかる。関東大震災の前年に麹町で(文字通り...続きを読む
  • 謝々! チャイニーズ
    中国の東の海のヘリをベトナムから上海まで行った体験を書いたものである。フィールドワークとしてのノンフィクションとしての読み物であるばかりでなく、一連の旅行記として、通用するものでもある。皮肉として書かれている「地球の歩き方」の出版社であるダイヤモンド社が倒産したことは偶然の一致である。
  • 世界は五反田から始まった
    著者の星野さんと同世代なので、昭和の暮しの風景は何となく想像できました。
    星野さんのおじいちゃんが小さかった孫に言い残した「戻りて、ただちに杭を打て」は、絶望の中から微かに覗く光のように感じられます。
    今の星野さんの実感として語られる「しかしいまは少なくとも、戦争、あるいは戦争に擬似した何かが起こる...続きを読む
  • 世界は五反田から始まった
    3/10東京下町大空襲の死者行方不明者10万人。その後の5月の東京南部?空襲では3/10よりも多くのB29爆撃機が投入されたにもかかわらず、死者は5百余名。この差の原因は?
    「戦争絶対反対」に異論はないがその思考停止にもチクリ。いざ戦争に巻き込まれた時にどうやって生き延びるか、終わらせるか、その先も...続きを読む
  • 世界は五反田から始まった
    ちょっとだけ珍しそうな本を読むつもりで手にしたが、いやいや面白かった。
    たった半径2kmほどの大五反田圏で生きた家の物語がこれほどの本になるとは。空襲を中心とした戦時の話はリアルだが人々の明るさも感じられて温かい気持ちにもなれた。
    自分のルーツなど知りようもないしそれでいいが、結構な物語があっただろ...続きを読む
  • 島へ免許を取りに行く
    読書で声出して笑ったの何年振り?
    開始4ページ目でもう声を上げて笑った。

    作者は絶望の運気を自らの力で変えようと一念発起、40代半ばにしてはるばる東京から長崎五島列島にある合宿制自動車学校へ入校する。

    学校選びの段階から笑わされたけど、わからないことをあけすけに何でも質問する作者の様子と、五島弁...続きを読む
  • 転がる香港に苔は生えない
    香港返還前後に住んだ筆者のフィールドワークである。500ページを超える大著なので、文庫本も厚いと思われる。香港に行く前にこの本を読むと、観光でない香港が味わえるであろう。ガイドブックにもこの本をお勧めで掲載した方がいい。
     フィールドワークでの推薦本やテキストでは紹介されていないのは大著であることと...続きを読む
  • 世界は五反田から始まった
    本当にすばらしい本だった。
    現実に戦争が起こり、今が「戦前」になってしまうかもしれない時期だから、より一層ガツンときた。
    分厚い区史や自費出版の郷土資料を参照し、こんなにすてきな文章と装丁の作品ができることにも感動した。
  • 世界は五反田から始まった
    『一般論ではない。これは私が所属する世界の話である。しかし一方では、こうも思っている。五反田から見える日本の姿がきっとあるはずだ』―『はじめに』

    2007年に出版された「迷子の自由」で嵌まって以来ぽつりぽつりと読み継ぐ作家、星野博美。ルポルタージュを主とする文筆家であるにも拘らず、この人の視野は決...続きを読む
  • 愚か者、中国をゆく
    1987年の中国旅行記である。35年ほど前である。中国の列車のフィールドワークとして読んでみてもとても面白い。これだけの中国の列車の旅について書かれた本はないであろう。ニュースでは帰省の混雑のみ報道されているがそれが一面でしかないということがわかる本である。
  • 世界は五反田から始まった
    誰かの自分をさかのぼる旅に付き合うことが救いになる。きわめて個人的なことが大きな文脈の中にすとんとはまる。尺取り虫のように領土を広げる話は大叔母の紛争を理解させてくれた。それも時代だったのか。
  • 世界は五反田から始まった
    筆者の地元五反田。死期の迫る祖父が遺した手記をベースに描く五反田と星野製作所。

    祖父から父の二代の星野製作所。バルブの部品を加工する工場。五反田には多くの町工場があったという。

    五反田の忘れられた歴史。小林多喜二と荏原郷開拓団そして城南大空襲。戦禍にもたくましく生きる人々。

    コロナ禍で取材旅行...続きを読む
  • 愚か者、中国をゆく
    素晴らしい旅の記録である。時間をおいて、その後の中国の変化から、さらに気がついた事を掘り下げているのが素晴らしい。また、異文化コミュニケーションについて深く考えさせられる。
  • 世界は五反田から始まった
    筆者の生まれ育った五反田の町工場の歴史から、庶民にとっての戦争を見つめ直す1冊。平和教育だけでなく「どう生き延びたのか」を語り継ぐ事の大切さが心に響く。満州開拓団に関する記述が哀しすぎた。